2015年8月27日木曜日

中国メディアが天皇陛下に「侵略戦争の謝罪要求」:混迷する中国共産党政権の確執

_


サーチナニュース 2015-08-27 00:41
http://news.searchina.net/id/1586634?page=1

中国メディアが天皇陛下に「侵略戦争の謝罪要求」

 中国共産党中央宣伝部の管理下にある「光明日報」が26日、
 「だれが日本の侵略戦争の罪の謝罪をすべきか」
と題する記事を掲載した。
 同記事は、昭和天皇の戦争責任を強く主張した。
 今までの中国からの見解として、極めて珍しい論調だ。

 記事は冒頭で
 「恨みには相手がいる。借りには借りた主がいる」
と主張。
 1930年代から40年代にかけて日本軍国主義が侵略戦争を発動したのは、軍国主義を支えた天皇と政府、軍、財閥が力を合わせた結果と主張。

 さらに、
 昭和天皇は日本が対中侵略戦争と太平洋戦争を相次いで画策・指揮した侵略戦争の元凶だった
と主張。

 さらに、東条英機、近衛秀麻呂の名以外にも三井、三菱、住友、安田と財閥の名を挙げ、当時の日本の政治、軍事、経済集団の罪行は、中国に対してだけでなく、アジアと世界の人民、日本人民に対する歴史上の罪人と主張した。

 戦後の日本については、在野の党派と民間人が絶えず、戦争の罪を反省しているにもかかわらず、天皇、政府、軍(自衛隊?)、財閥は公開の謝罪を阻んできたと主張。

 東条英機などの戦争犯罪者は極刑に処せられ、歴史に永久の恥辱を刻んだが、「その魂は散じることはなかった」と主張。

 衆議院が安保法案を“強行採決”したことを人々は「失望した」と表現し、
 「安倍政権は逆流の動きをして、人々の心に背いている」、
 「日本政治の主要勢力は、70年前の戦争に対する立場と態度を根本的に変えていない」
と主張した。

 昭和天皇についてはさらに、
 「死去するまで一貫して、日本の侵略の被害国と被害国の人民に謝罪しなかった」
と主張
 。一方で、村山元首相は談話によって侵略戦争に対する深刻な反省と謝罪し、日中戦争に加わった「多く」の旧軍人や子孫が「勇敢にも当時の罪行を暴露し、殺害した中国人民に謝罪している」と指摘。

 記事はさらに
 「日本の自衛隊は必ずや、当時の侵略軍と徹底的に切り離されることを尊重せねばならない」、
 「日本の財閥集団は、平和発展に積極的な役割を果たし、民族破壊の推進者には2度となってはいけない」
などと主張した。

**********

◆解説◆
 中国はこれまで、昭和天皇を含む天皇や天皇制に対する批判を慎重に避けてきた。
 今上天皇のお言葉について中国メディアは極めて好意的に報じてきた。
 昭和天皇の戦争責任に言及する記事は、極めて異例だ。

 中国が天皇陛下の戦争責任への批判を避けてきた最大の理由は、日本人の対中感情の決定的な悪化を懸念したためと考えられる。
 中国で「権威ある」とされているメディアが、上記のような論説を発表するのは、これまで考えにくいことだった。

 中国では、自国の現政権に対立する上層部勢力が、対日関係で問題を拡大することで、政権に「ゆさぶり」をかけることが、これまでにもあった。
★.上記記事が突然に出てきた背後には、中国内部の問題が関係している可能性も否定できない。



2015年08月28日 12時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150828-OYT1T50061.html

新華社が陛下に謝罪要求、日本は中国側に抗議

 菅官房長官は28日午前の閣議後の記者会見で、中国国営新華社通信が歴史問題をめぐり、天皇陛下に謝罪を求める記事を配信したことについて
  「天皇陛下に対する礼を著しく失しており、これまで表明されてきている中国側の立場とも相いれないものだ。
 改善基調にある日中関係にも水を差しかねず、全く好ましくない」
と述べ、強く批判した。

 そのうえで、外交ルートを通じ、27日に中国側に抗議したことを明らかにした。

 新華社通信は25日、
 「昭和天皇は中国への侵略戦争と太平洋戦争の発動を指揮した侵略戦争の張本人だ」
とした上で、
 「昭和天皇は亡くなるまで日本が侵略した被害国と国民に謝罪を表明したことはなかった。
 その皇位継承者は、謝罪で氷解を、ざんげで信頼を手に入れなければならない」
と主張した。

 配信された記事は26日付中国紙・光明日報が掲載したが、中国共産党機関紙・人民日報などは掲載していない。



朝日新聞デジタル 8月28日(金)11時52分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150828-00000036-asahi-pol

「陛下に礼を失している」 
官房長官、新華社報道を批判

 菅義偉官房長官は28日午前の記者会見で、中国の国営新華社通信が天皇陛下の戦争責任について謝罪を求める評論を配信したことについて、「天皇陛下に対する礼を著しく失している」と批判した。
 そのうえで、「改善基調にある日中関係にも水を差しかねず、全く好ましくない」と述べた。

 同通信が25日に配信した論評を受け、日本政府は27日、外務省局長と在北京大使館の公使がそれぞれ中国側に電話で抗議している。

 同通信は論評の中で、
 「昭和天皇は亡くなるまで被害国とその国民に謝罪を表明したことはなく、その皇位継承者は謝罪で雪解けを、悔いることで信頼を手に入れなければならない」
と主張していた。



サーチナニュース 2015-08-26 07:21
http://news.searchina.net/id/1586478?page=1

中国は日本に「謝罪迫る資格」な
し・・・莫大なODAを忘れたか? 
ドイツもイタリアも侵略の謝罪はせず=仏メディア

 フランス国際放送、RFIはこのほど、運営するニュースサイト(中国語版)で、
 中国が歴史問題で日本に毎年謝罪を迫るのは根拠がない
などの主張を紹介する記事を掲載した。
 日本が莫大(ばくだい)なODAなどで中国を支援してきた
ことにも触れた。

 記事は、複数の中国人が示した意見を紹介する形で書かれている。
 まず
★.日本が戦争行為を反省し、永遠の不戦の誓いをしていることは「だれでも知っている」
と指摘。
 一方で、
★.中国人と韓国人が毎日のように「日本の侵略と植民の歴史」を唱えているのは「見劣りがする」
と断じた。

★.謝罪については、田中角栄元首相が国交正常化のために訪中した際にすでに、「深々と頭を下げた」
と指摘。
★.日本は「贖罪のための賠償もした」として、ODAなどによる巨額の対中経済援助を挙げた。

 記事は続けて、「今の
★.平和主義の日本が、軍拡主義の中国に服従することはない。
★.民主主義の日本が、権威主義の中国に服従することはない。
★.国際主義の日本が、民族主義の中国に服従することはない
」と論じた。

★.戦争については、人類の歴史で「日常茶飯事」だった
と主張。
★.侵略行為の認定も勝利国によるもので、
 敗戦国は領土喪失、賠償、一定期間の占領、戦争犯罪者の裁判などが強いられるが、
 「これらが終了すれば、謝罪や清算はすべて完結したことになる」
と論じた。

 さらにドイツやイタリアも侵略国であり敗戦国だが、
★.「何度も繰り返して相手国に謝罪するのは見たことがない」、
★.「国際法でもそんなことは定められていない。
 中国以外の世界中の第二次世界大戦の“被害国”は、そんなことをしない」
と論じた。

**********

◆解説◆
 中国では「ドイツは戦争についてきちんと謝罪」が“常識”になっている。
 しかし、中国でよく例となるワルシャワにおけるブラント首相(1970年当時)の謝罪も、ユダヤ人の迫害に対するもので、ポーランド侵攻を含む戦争発動に対するものではない。

 1985年の終戦40周年式典でのフォン・ヴァイツゼッカー大統領の演説では「われわれ全員が過去からの帰結にかかわりあっており、過去に対する責任を負わされている」と述べたが、「反省」や「謝罪」の言葉はなかった。

 イタリアは日独と同盟する枢軸国として第二次世界大戦に加わったが、戦局が不利になると指導者のムッソリーニを排除し(最終的に処刑)、連合国側に加わり日本にも宣戦布告した。
 このため、他の連合国と同格ではないが、敗戦国扱いは受けていない。



レコードチャイナ 配信日時:2015年8月26日(水) 19時14分
http://www.recordchina.co.jp/a117550.html

日本は謝罪も経済支援もした!
中国のくどい“お詫び要求”に根拠などない―仏メディア

 2015年8月17日、仏国際ラジオ放送ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版は中国外交部が安倍晋三首相の戦後70年談話に満足しなかった点に言及し、
 「中国が歴史問題で日本に毎年のように謝罪を迫るのは根拠のないことだ」
とする記事を掲載した。

  同記事は中国の作家らの文章を引用し、中国の寛大さに感謝を示した安倍談話を「中国への尊重」と評価。
 過去の戦争を反省し、永遠の不戦を誓った日本に比べ、日本による侵略、植民地化をくどくどと訴える中韓はあまりにも遅れていると指摘する。
 さらに、田中角栄元首相が初めて毛沢東国家主席(当時)に会った際、頭を下げたことに触れ、
 「日本が中国に謝罪していないなどということはない」
 「反省や謝罪だけでなく、罪を償うための賠償もしている」
と巨額の対中支援や対中投資を例に挙げた。

 さらに、
 「平和主義を掲げる日本が軍事拡張路線を進む中国に服従するはずがなく、
 民主主義の日本が権威主義の中国に屈することはない。
 国際主義の日本が民族主義の中国の配下となることもない」
と述べ、現実的な中国人は日本人とむやみに張り合おうとすべきではないと指摘した。

 このほか、
 「人類にとって戦争は日常茶飯事で、侵略者と被侵略者の違いは、どちらが勝ったかで判断される」
 「領土割譲や賠償、戦勝国による一定期間の占領、戦争裁判などが終われば、敗戦国の謝罪や清算も終わりを告げられる」
との意見を紹介し、
 償いを終えた敗戦国にいつまでも戦争問題を訴え続けることに疑問を呈した。

 その上で、日本の首相が替わるたびに中国が謝罪を求めている点を挙げ、同じ敗戦国であるドイツやイタリアでは見られない事態だと指摘。
 また、「日本人と中国人では謝罪の捉え方が違う」と説明し、
 「中国人にとっての謝罪は負けや失敗を意味するがゆえに中国人は謝罪問題に対して強い姿勢に出る」
との見方を紹介した。
 そして最後に
 「安倍談話に盛り込まれた“謝罪”というキーワードは、
 表面上は中国の勝ちのように思われがちだが、
 国際世論を考えれば本当の勝者は安倍首相だ」
とまとめた。



サーチナニュース 2015-08-27 08:31
http://news.searchina.net/id/1586644?page=1

中国製戦車が米軍攻撃で「破壊・炎上」
・・・共産党系メディアが画像を大量掲載、
意図は不明



 中国共産党機関紙「人民日報」系列の「環球網」は24日、
 「中国製戦車が中東の戦争で破壊された場面」
と題する写真記事を掲載した。
 20枚以上の写真を用い、中国製の戦車が米軍により破壊されたり炎上している様子を紹介した。
 中国では9月3日の抗日戦勝利70周年の記念行事に向け、自国軍の強大さを誇示する記事が多い。
 環球網がこの時期に、やや古い写真とはいえ、自国製戦車の「悲惨な状況」を強調する記事を報じた理由は不明だ。

 1991年の湾岸戦争時に破壊されたイラク軍戦車の写真を「中国製の69式」と紹介した。
 中国で軍事情報を扱う多くのサイトが、同記事を転載。中華網は軍事情報ページで
 「悲惨!」、
 「米軍のためにくず鉄にされた」
などと伝えた。

 中国人民解放軍の戦車の原点になったのは「59式」だ。
 同戦車は、ソ連で1947年に量産型が完成した「T-54」戦車を中国でライセンス生産したものだ。
 中国は64年、59式の改良に着手。
 しかし60年には中ソ対立が表面化しており、ソ連の援助は全く考えられなかった。

 1969年に中ソ国境を流れるウスリー川のダマンスキー島で、国境を巡る中ソ間の大規模な軍事衝突(珍宝島事件)が発生した際、中国軍は地雷でキャタピラーを破壊されたソ連軍の「T-62」戦車を鹵獲。
 ソ連における当時の主力戦車だ。
 中国は同戦車を研究して、59式の改良に役立てたという。

 「改良型59式」戦車が完成したのは1974年だったが、「69式」と命名された。
 同戦車には赤外線探照灯が取りつけられ、夜間の行動能力も獲得。
 主砲は100ミリ滑腔砲で、エンジンは580馬力だ。

 記事は、
 「69式戦車は、中国が最も多く輸出した装甲車両。
 イラクはかつて、69式戦車を最も多く配備する国だった。
 1991年の湾岸戦争で、69式戦車の多くが戦場で破壊された」
と解説した。

 中国で、
 「自国の兵器は米国製などに比べて、相当に遅れている」
との論調は珍しくない。
 しかし、旧式とはいえ自国兵器が実戦で破壊された写真を公開することは多くない。
 まして現在は、9月3日の抗日戦勝利70周年の記念行事に向け、自国軍の強大さを誇示する記事が次々に配信され「盛り上がっている」状況だ。
 環球網が上記記事を発表した意図は不明だ。


  天皇謝罪要求記事といい、中国製戦車炎上記事といい、意図不明なものが多い。
 抗日パレードを前にして共産党内部で何らかの抗争が発生しているいのではないかと想像してしまう。
 あるいは下のロシ記事の引用も同じ。
 何かありそうな雰囲気が濃厚である。


ニューズウイーク 2015年8月31日(月)15時45分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/08/post-3877.php

中国新華網「天皇に謝罪要求」──安倍首相不参加への報復か


●解決済み 92年に訪中し、お詫びもした天皇陛下(左端は当時の江沢民総書記)REUTERS

 8月25日、中国政府の新華網は、日中戦争における昭和天皇の責任を問い日本を非難した。
 安倍談話に対しては安倍首相が抗日戦勝行事に参加する可能性があることから控えた中国だが、不参加となった今、なり振り構わない。

■正常とは思えぬ新華網の「天皇謝罪要求」

 8月25日、中国政府の通信社である新華社の電子版「新華網」は
 「日本の侵略戦争の犯罪行為を謝罪すべきは誰か」
というタイトルで評論を載せた。

 その要旨は以下のようなものである。

1].日本軍国主義が発動した侵略戦争は、軍国主義の天皇や政府、軍隊、財閥などの主要な勢力が作り上げたもので、(中略)多くの犯罪を犯し、侵略戦争に対して逃れない罪を負っている。

2].裕仁天皇(昭和天皇:筆者注)は、日本が侵略した被害国と人民に、死ぬまで謝罪の意を表したことがない。
 その後継者(現在の明仁天皇:筆者注)は、(中略)謝罪を以て氷解を得、懺悔を以て信頼を得、誠実を以て調和を得るべきだ。

 とても尋常な感覚を持っているとは思えない評論だ。

 天皇の戦争責任に関しては、1946年から1948年にかけて行なわれた極東国際軍事裁判(東京裁判)において
 「戦争犯罪人としての起訴から日本国天皇を免除する」
ことが合意され、天皇を訴追しないことが決定された。

 この問題は「国際的に」すでに解決済みなのである。

 東京裁判においては、各国検事をメンバーとした執行委員会が設立されており、その中に「中華民国」の代表もいる。

 中国はつねに「一つの中国」を主張して、「中華民国の功績」は「中華人民共和国の功績」として、今まさに「中華民国」による「抗日戦争勝利」を受け継いで(横取りして?)、盛大に戦勝70周年記念を祝賀しようと燃え上がっているのではないのか?

 抗日戦争勝利は自分(現在の中国)のものだが、中華民国の代表が入っていた東京裁判は「中華人民共和国が参画していなかったから、別途、天皇の戦争責任を追及してもいい」とでも言うつもりだろうか?
 常軌を逸している。

 おまけに1992年、昭和天皇の「継承者」である明仁天皇は、江沢民総書記(当時)の強引な招聘により中国を訪問して、きちんと「謝罪」を表明した。
 これは歴史的な出来事であった。
 このとき江沢民は、1989年6月4日に起きた天安門事件において民主化を叫んだ若者を武力鎮圧したことに対する西側諸国の経済封鎖を、何とか日本の天皇陛下の訪中によって切り崩していこうともくろんでいた。

 その政治利用が懸念されながらも、明仁天皇は訪中して中国人民に頭を下げ、謝罪している。 
そのおかげで西側諸国は経済封鎖を徐々に解いていき、中国はこんにちの経済繁栄を手にしたのではなかったのか――。

 その恩を忘れて、このような主張を載せる新華網には、良心もモラルもない。
 それなら中国は、なぜここまで常軌を逸脱した行動を取るに及んだのか。
 至近の時系列を見てみよう。

■安倍首相の不参加表明との関連

 8月24日、安倍首相は参院予算委員会で9月3日に北京で開催される抗日戦争勝利式典には参加しないと明言した。
 同日、菅官房長官も記者会見で「9月上旬に検討していた中国訪問を見送ることにした」と表明した。

 新華網が実質上の「天皇謝罪要求」を載せたのは、その翌日の8月25日である。
 8月14日に安倍談話が発表されたとき、中国は激しい安倍批判を避け、ただ「自分自身の判断を回避している」という批判をしただけだった。
 もちろん、8月12日に天津の爆発事故があり、人民の関心はもっぱら爆発事故に集中し、ネットには「抗日戦勝行事に燃えている間に、天津が燃えた。
 自分の足元を見ろ!」という書き込みさえ現れていた。

 習近平政権にとっては安倍談話どころではなかったという側面もあったろうが、それ以上に、
 「もしかしたら安倍首相は、9月3日の式典に参加するかもしれない」
という甘い期待があり、酷評を避けたと見るべきだろう。

 中国はすでに公の場で正式に、安倍首相を招聘していると表明していた。
 中国は実は、水面下の交渉で来ないかもしれないと判断された国に関しては「招聘した」とは公表していない。
 だというのに、安倍首相は最終的には「参加しない」と決定したのだ。

 習近平国家主席が、どれほどメンツを潰されたと思っているか、想像に難くない。
 その結果が、このなりふり構わぬ論評となったのではないだろうか。
 中国のネットには、「天皇謝罪要求に対する日本の抗議は不当である」という情報が充満している。

■中国を増長させるアメリカの二面性

 中国をここまで増長させる背景には、アメリカの二面性がある。
 オバマ大統領自身は参加を見送っておきながら、国務省のカービー報道官は、25日の記者会見でアメリカのボーカス駐中国大使が「オバマ大統領の代理人として」、9月3日の抗日戦勝70周年記念に参加すると発表したのだ。
 カービー報道官はさらに「記念式典において、ボーカス大使は米大統領が選んだ代表だ」と述べている。
 中国はこれを以て、アメリカは大統領級の代表が参加するとして、大々的に報道した。

 アメリカの二面性は、これに留まらなかった。
 8月28日、アメリカのライス大統領補佐官(国家安全保障担当)が訪中し、人民大会堂で習近平国家主席と会談したのである。
 ライス大統領補佐官は訪中の目的を、形の上では
 「今年9月の習近平国家主席訪米の準備のため」
としているが、実際は違う。
 なぜなら彼女は、習近平国家主席に、つぎのように述べているのだ。

――中国が第二次世界大戦勝利70周年記念を盛大に祝賀しているこの年に当たり、オバマ大統領とアメリカ側は、あの戦争における中国人民の多大な貢献と、米中両国があのとき結んだ深い友情を高く評価する。

 あのときアメリカが友情を結んだ相手は「中華民国」主席、蒋介石だったはずだ。
 習近平国家主席は、「アメリカと友情を結んだ蒋介石」の国民党軍を倒した中国共産党軍が誕生させた「中華人民共和国」の主席である。
 あの戦争における主戦場で戦った「中国人民」は、現在の共産党政権が倒した国民党軍だ。

 アメリカまでが歴史を歪曲しようとするのだろうか。

 そもそも日本が安保法案などを急いで成立させようとしている原因の一つは、アメリカが尖閣諸島の領有権に関して「紛争関係者(中国、日本、台湾)」のどちらの側にも立たないと宣言しているからだ。
 それを良いことに中国は尖閣周辺で強気に出ている。
 そのため日本は中国の脅威をより強く感じ、それが安保法案を正当化しようとする試みに貢献している。
 とんでもないサイクルだ。

 オバマ大統領がこのたびライス補佐官に言わせた言葉は、
 「経済を重んじ、自国の利益のみを重んじて、
 勝者が歴史を書き換えていく」
典型のようなものである。

 来年の米大統領選に立候補している共和党のマルコ・ルビオ上院議員は、オバマ政権の「領有権中立論」に対して「尖閣諸島は日本の領土」と明言し、対中強硬論を主張している。
 さて、中国におもねることなく、経済を発展させていくことができるのか。
 オバマ政権のように、二面性を持ったり、歴史を書き換えたりしないのだろうか。

 少なくとも日本は、こんな米中に利用される存在になってはならない。
 敗者でも、正しい論理は、毅然と貫くべきだ。
 それによって先の大戦の責任から逃れようとするものでなく、もちろん正当化しようというものでもないことは言を俟(ま)たない。

(追記:なお日本は駐中国の日本国大使をはじめ大使館関係者全員が不参加を表明。
 その選択が賢明なのか否かは検討の余地がある。
 村山元首相は参加する)

[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数







_