中国経済が崩壊するということはありえない。
駆けていた象が歩き始めただけにすぎない。
問題は、今回のことで
『中国への信用と信頼が大きく低落した』
ということである。
今後は外資の動きもそれに沿ったものになるだろう。
また周辺国の認識も同じようなものになるだろう。
最近までの
『輝ける未来への希望に満ちた大国』
が、
『明日へ揺らぐ大国』
になってしまった、ということである。
つまり、普通の
巨大国に過ぎず、超大国への見通しはなくなった
ということである。
『
ロイター 2015年 08月 28日 16:14 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/08/28/markets-global-china-regulator-idJPKCN0QX0GK20150828
焦点:中国市場の混乱、
背後に規制当局の「頭脳流出」
[上海 27日 ロイター] -
2008年の金融危機の真っただ中、欧米の金融機関は大幅な人員削減を進めていた。
一方、中国政府はそのころ、自国の株式市場の改革を進めるべく、混乱する金融業界から中国系の優秀な人材の「引き抜き」を進めていた。
1年にわたって高騰が続いた中国株が数週間で急落し、政府が対策に躍起になった今年の夏、そうした人材は中国証券監督管理委員会(CSRC)にとって、これまで以上に必要な存在だった。
しかし海外から中国に戻り、「海亀族」と呼ばれたエリート専門家たちはすでに、
当局の仕事に幻滅したり失望したりし、民間企業に戻っていた。
帰国した「精鋭」20人のうちの1人は、CSRCが当時「祖国のため犠牲になる」ことを訴えていたと振り返る。
「われわれは力になりたかったので、家族も中国に戻して高額な仕事もあきらめた」
のだという。
しかし、理想はほどなくして不信に変わる。
収入は民間企業で得られる額に比べると微々たるものであり、CSRCに重用されているようにも見えなかったのが理由だ。
「数年経っても誰1人として昇進せず、一部の人は確たるポジションさえなかった」
という。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の中国エコノミスト、Liu Li-Gang氏は
「当時CSRCは国内外の両方の経験を必要としていたが、
国際経験が最も豊富な人たちが追いやられた」
と語った。
CSRCにもコメントを求めたが、回答は得られなかった。
■<頭脳の流出>
CSRCを去った人の中には、ABNアムロでエキゾチック・クレジット・デリバティブの責任者だったTang Xiaodong氏や、JPモルガン・チェースにいたLi Bingtao氏、ノーベル経済学賞受賞者ロバート・シラー氏に学んでいたLuo Dengpan氏もいる。
彼らのいずれからもコメントは得られなかった。
ロイターの取材に応じた複数の内部関係者によると、
過去1年で規制当局内の退職者が急増している。
上海証券取引所の当局者の1人は
「ほぼ毎週のように退職届を出す人がいる。
退職する人のペースは加速しているように見える」
と語った。
中国のファンドマネジャーらは、そうした専門家の「集団脱出」によって市場が素人の手に委ねられてしまったと嘆く。
香港で外資系銀行に勤めるトレーダーは
「過去数年と同じレベルの専門知識が保たれていない」
とし、それゆえに、「悪意ある」空売りの規制など見当違いの政策につながったと指摘する。
CSRCと定期的にやり取りする大手ファンドの幹部は
「彼らが賢くないというわけではない。
金融の専門知識がないのだ」
と語った。
現在もCSRCに残っている人物によれば、規制当局は、信用取引向け融資残高の急増が意味するところを十分に把握できていなかった。
■<不信の連鎖>
こうした失態は、中国政府の信用を失墜させた。
中国政府は株価の下支え策に
9000億元(約16兆8000億円)をつぎ込んだが、主要株価指数は急落が一服した後、再び下げ基調に戻っている。
株式時価総額はドイツの国内総生産(GDP)を上回る
4.5兆ドル(540兆円)以上が吹き飛んだ格好だ。
株式市場への当局の強引な介入は、中国が公約した金融改革に対する信頼も傷つけた。
中国に帰ってきた金融機関の「精鋭」たちは、自分たちが政策に影響を与えられないことへの不満や、昇進の機会が制限されていること、薄給を理由に規制当局を去って行った。
同僚からの恨み節も聞こえていたという。
上海にある国際ビジネススクール、中欧国際工商学院(CEIBS)のオリバー・ルイ氏は
「彼らは外に出れば、よりローリスク・ハイリターンで高い収入を得られる。(出て行くのは)無理もない」
と語った。
(原文:Samuel Shen and Engen Tham、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)
』
『
ニュースソクラ 8月28日(金)17時31分配信 ニュースソクラ編集長 土屋直也
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150828-00010001-socra-bus_all
世界同時株安の裏に、中国権力闘争へのおびえ
■米国景気が下支え役
今週の株式相場はニューヨーク市場のダウ平均が一時1000ドル以上の下げを記録するなど、世界同時株安となった。
中国の利下げなどで落ち着きを取り戻しつつあるが、どうして市場はここまで大きな反応を示したのだろうか。
ずばり、それは中国の習近平政権の対応力への疑心暗鬼がある。
★.単に経済政策を間違えるリスクというよりも、共産党の長老、とりわけ江沢民元国家主席との権力闘争が激しすぎて、
政策転換を打ち出す余裕がないとの警戒感がある
のだろう。
ニュースソクラでも取り上げたが、
★.中国では主要な検索サイトで江沢民という人名の検索ができなくなった
という。
香港や米国の中国語や英文サイトでは大いに話題になり、中国政府の情報当局が「江沢民」を人民から遠ざけようとしている兆候と受け止められた。
腐敗摘発に熱心な習政権が江沢民の周辺にまで摘発の手を伸ばし始めているとの情報は乱れ飛んでいた。
たとえば、江沢民派に属する河北省党委書記が7月28日に解任されている。
例年夏に開かれる、江沢民氏や胡錦濤氏など主席OBも交えた会議、北戴河会議は開催が見送られたとか、江沢民氏は出席できなかったとの情報も流れている。
OBたちが習近平政権へ方針変更を迫ろうとしていたとの観測から、開催が見送られたという解説だ。
中国中枢では権力闘争が深刻化しているのは間違いなさそう。
習主席は、江沢民主席の長男、江錦恒氏の摘発も射程に入れているとの見方もある。
一方で、権謀術数にたけた江沢民氏が反撃しないわけがなく、政治的な混乱は避けられないとの見方が広がっているわけだ。
中国は財政・金融の政策出動余地がまだまだある。
バブル崩壊による経済の落ち込みを先送りするだけの体力は残っている。
だが、権力争いのなかで、「正常化」にこだわってきた習政権が、政争の具となるのを恐れて、本格的な景気対策に舵を切れないリスクは小さくない。
これは7月の株価急落の際にも、ニュースソクラのコラムで指摘していた懸念だ。
その構図は、いまも少しも変わっていない。
権力闘争も決着したとはいえない状況だろう。
中国を巡るマネーの動きはすでにはっきりと変わっている。
中国の外貨準備高がピークに比べ3000億ドル程度も減っている。
経常収支が黒字の中での外貨準備の目減りは、中国からの資本の流出が大量になってきていることを示している。
経済の変調を先取りした動きで、足元ではさらに加速している可能性が高い。
ただ、世界全体でみれば、米国経済が堅調で、中国をはじめとする新興国の落ち込みをカバーできる状況にある。
その点からみれば、株価が底を割るような動きをするのはまだ先ではないか。
とりあえず、中国は金融政策を発動し、上海株急落に対応する姿勢を示した。
米国内総生産(GDP)成長率は、米国経済の堅調ぶりを確認できた。
今週はじめにニュースソクラが指摘していたとおりの展開となった。
来週以降、市場が注目するのは中国での権力闘争と米国景気の行方。
どちらが材料にされるかで、相場展開は間逆の動きを示すのだろう。
』
『
サーチナニュース 2015/08/29(土) 06:06
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0829&f=business_0829_005.shtml
中国株式市場、
最大のリスクは「元凶の理解不足」=中国メディア
和訊網は27日、不安定な状況が続いている中国株式市場における最大のリスクについて論じる記事を掲載した。
記事は、中国人民銀行が政策金利と預金準備率を同時引き下げたことで金融株が強く反発したものの、市場全体を安定化させるほどの影響力は持たなかったと解説。
また、
★.今回の上海株式市場の暴落は、6月から7月にかけて発生した「第1段階の災難」に続く
「第2段階の災難」であり、「第1段階」よりも急激なものだった
とした。
そのうえで、
「現在の株式市場最大のリスクは、株価指数がどれだけ下落したかということではなく、
★.マネジメント層すら問題の出所や下落の元凶について理解していないことである」
との見解を示した。
市場を救う策としてベストなのは「対症療法」であるものの、「敵」がどこにいるのか、さらには「敵」の具体的なプロフィールすら分からない状況では、市場救済の難易度は高いとした。
一方で、ここ数日の中国金融先物取引所の挙動を見る限りでは
「徐々に第2段階の災難の発生源について見当がつき始めているようだ」
とし、同取引所が株価指数先物取引における過度の投機行為を抑制し、市場に理性を取り戻すことを目的としたアクションを繰り出していると解説した。
しかし、このアクションによる効果は薄く、過度の投機行為に本質から打撃を加えるに至っていないと指摘。
その背景として、A株市場はなおも未熟な市場環境であり、それに組み合わされる制度もマッチしていないため、取引制度に不平等が生じており、容易に機関による投機行為を加熱させる状態にあることを挙げ、
「資金や情報、そして技術で優位性を持っている大型機関こそが、
市場における最大の投機家なのだ」
と論じた。
そして、極端ともいえる市場環境において市場を救済するためには「極端な手段を講じるべき」であるとし、株式指数の先物取引を一時停止までして、市場に対する心理を安定させる必要があると提言した。
』
『
BBCニュース 2015.8.28 視聴時間 02:38
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44656
中国株式市場の急落に端を発した世界的な株価下落はなぜ起きたのか。
英証券会社パミュール・ゴードンの市場専門家デビッド・ビュイック氏は市場参加者の変化に注目しています。
』
『
サーチナニュース 2015-08-29 10:05
http://news.searchina.net/id/1586943?page=1
中国経済の悪影響が「世界に蔓延」、高致死率!
=韓国メディア・・・ありえない!=中国メディア
中国メディアの環球網は27日、世界の金融市場が動揺しているなか、中国の一挙手一投足が注目を集めていると伝える一方、
「世界は中国経済の減速に対し、過度に警戒している」
と主張した。
記事は、世界同時株安に対して安倍晋三首相と米オバマ大統領が電話会談を行い、緊密な連携を確認したとしたほか、中国の中央銀行である中国人民銀行が追加利下げを行ったことに対し、菅義偉官房長官が「日本および世界経済にプラスとなることを望む」と指摘したと紹介。
中国の一挙手一投足は日本でも関心を集めていると論じた。
さらに、韓国メディアが「中国がくしゃみをすると、世界が(悪)影響を受ける」と論じ、新興国の通貨が下落していることについて、一部メディアが、
★.中国発のウイルスがかつて世界中で多くの感染者を出したスペイン風邪のように「世界に蔓延しつつあり、高致死率の恐怖が拡散している」
と報じたと紹介。
一方で記事は、「世界は中国経済の減速に対し、警戒が過度だ」と反論し、米ワシントン・ポストがこのほど
「中国株式市場の急落は大きな問題だが、近い将来の崩壊を意味するものではない」
と論じたことを紹介。
また、中国株の急落を経済の減速の予兆と認識する声もあるとしながらも、「この見方も間違っている」と主張した。
また、米オンラインメディアの「ザ・フィスカル・タイムズ(The Fiscal Times)」が
「中国経済は予想より好調」
と主張し、中国の工業部門は不調だが、サービス業と消費が伸びていると指摘し、
「中国経済が構造転換を進めるなかで、教育水準が高い従業員を必要として、給与水準も高いサービス業が伸びてきていることは良い兆し」
と主張したことを紹介、
「世界は中国経済の減速に対し、警戒しすぎだ」
と主張した。
』
『
サーチナニュース 2015/08/30(日) 11:22
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0830&f=business_0830_005.shtml
中国経済は「日本が歩んだ道」を辿るのか=中国メディア
中国メディアの環球網は28日、北京大学国家発展研究院院長の姚洋氏の手記を掲載し、世界で一時株価が急落したことに対し、
「中国経済を理由に世界の金融市場が一時動揺したこと無視することはできない」
と指摘、中国経済はかつての日本と同じ道を辿ることを避けられるのかと疑問を投げかけた。
記事は、世界の金融市場が動揺した背景には、中国国外で
「中国経済はかつての日本と同じ道を辿ることになるのか」
という疑問が生じていたとし、
高度成長期を終えた日本経済がバブル崩壊後に
22年間にわたって経済が停滞していること
を指摘した。
続けて、日本は豊富かつ廉価な労働力を背景とし、輸出によって高度成長を実現したとし、世界における日本製品に対する需要が減少し、人件費が上昇すると経済成長が大幅に低下すると同時に物価も下落したと論じた。
さらに、こうした事例は、高度成長を遂げた国ならば日本以外の国でも起きていると伝えた。
さらに、中国のこれまでの発展モデルは日本が成長してきた道と似ていると指摘する一方、
中国の高齢化は日本よりも急速に進んでいると伝え、
1973年の石油危機は日本経済にとっての1つの転機となったと指摘。
また、今回の世界的な金融市場の動揺や危機は73年の石油危機の影響を超える恐れがあるとし、そのため中国が日本と同じ道を辿るのではないかと懸念が高まったと論じた。
また記事は、中国は一人っ子政策として知られる計画生育政策(人口規制政策)を緩和することで人口を増やし、教育で労働力の質を向上させることもできると指摘。
定年退職の年齢を引き上げれば生産年齢人口の減少も食い止められるとしながらも、
★.「日本でも教育水準はずっと向上してきたうえ、
科学技術の革新も行われてきた」
とし、それでも日本は経済成長の鈍化を食い止められなかった
と指摘、
「中国も教育水準の向上や技術革新によって経済成長を続けられると過信してはならない」
と論じた。
一方で、中国には日本にはない強みがあるとし、それは「人口の多さと広い国土だ」と伝え、中国は国土が広すぎるために発展の規模が地方によって大きく異なり、まだまだ成長の余地が残されていると主張。
上海などの沿海部の成長が鈍化したとしても、内陸部の成長を刺激することで、中国は今後も国内総生産(GDP)成長率で7%前後を維持できるはずだと主張した。
』
『
新潮社フォーサイト 青柳尚志 2015年8月27日
http://www.fsight.jp/articles/-/40421
中国株ショック「全球的連鎖」の衝撃波
中国発の株安連鎖はとてつもない震度で、全世界を襲っている。
株式、商品、為替の市場で起きていることは、信じられないボラティリティー(変動率)の高まりだ。
にわか専門家たちは、深刻な顔つきで解説を繰り広げるが、本当のところは一体どうなっているのか。
そもそも
6月半ばから始まった中国株バブルの崩壊
は、いかにして「全球(グローバル)化」したのか。
かねて指摘していたように、と古証文を出す趣味はない。
だが、先月の記事(「中国版『リーマン・ショック』の危険度」(2015年7月29日)で
「中国の場合は人民元安の容認による輸出の拡大というカードを切ろうとしている」
と指摘したように、8月11日に中国人民銀行は通貨人民元の切り下げに踏み切った。
この措置は公式には、人民元相場の変動性を高め、国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引き出し権)入りを目指すもの、と説明された。
確かに8月11日から13日までの3日間での人民元の対ドル相場の下げ幅は合わせて4.6%にとどまる。
「10%もの引き下げで輸出テコ入れを狙うものではない」。
異例の記者会見で、人民銀の副総裁は慌てて釈明した。
中国に自由な通貨変動を促していたのは、ほかならぬIMFなのだから、
この釈明には「五分の理」があることは否めない。
だが、
中国経済の先行き不安が広まる中での、突然の通貨切り下げが「輸出後押しでない」と言っても、誰が信じよう。
8月24日月曜日の世界的な株価暴落(新ブラックマンデー)の導火線に、火を付ける結果となったことも否めないだろう。
大きな経路は、中国向けの輸出依存度の高いアジア諸国への打撃である。
人民元が下がれば、これらの国々の輸出採算は悪化する。
具体的には、韓国、マレーシア、タイ、台湾などの景気には、先行き警戒信号が灯っている。
例えば韓国は中国に一点張りし続けた結果、対中輸出の比率は25%強と、対米比率の2倍となっている。
サムスン電子や現代自動車などは、中国需要の落ち込みが経営を直撃している。
海外株式投資の4割が中国株というから、中国ショックの震度は推して知るべしである。
■「近隣窮乏化策」に走る中国
中国の政策運営が異形なのは、
★.貿易収支と経常収支が依然として黒字のなかで、「通貨安のカード」を切った
ことである。
経常黒字は低下したとはいえ、国内総生産(GDP)比で2%台。輸出が振るわないというが、それ以上に内需の不振から輸入が落ち込んでいるのだ。
輸入額は昨年11月以降、前年同期比でマイナスが続いている。
こんななかで、なすべき策は内需のテコ入れだろう。
確かに財政、金融面で内需刺激には努めているものの、過去の過剰投資と過剰債務が足かせとなり、一向に経済のエンジンがかからない。
共産党幹部と長老たちが一堂に集い、戦略を話し合う「北戴河」の会議でも、習近平執行部は江沢民を筆頭とした長老グループから経済失政を責め立てられたに違いない。
八方ふさがりに陥った現政権が切ったカードが、通貨安による外需の拡大だった。
自国経済が窮乏に陥ったとき、通貨安に誘導して輸出競争力を高め、相手国の需要を奪う策を「近隣窮乏化」と言うが、いま中国は絵に描いた近隣窮乏化策に走っているのだ。
欧米諸国が「新たな貿易戦争」の火蓋が切って落とされた、と懸念する
のも無理はない。
■打撃大きい「カザフスタン」「アフリカ」
世界経済へのダメージという点では、実はこの貿易戦争の前に、中国は大きなカオスを巻き起こしつつある。
国際商品相場の急落である。
原油など国際商品を押し上げてきた、中国による資源・食料の「爆食」が衰える。
そんな観測から、国際商品は底抜け状態となっている。
原油は国際指標であるWTIでみて1バレル40ドルをも割り込んだ。
国際商品の指標となるCRB指数は、リーマン・ショックの後でさえ割らなかった200の大台を下回った。
商品市況の悪化は世界的な需要不足とデフレの懸念を映している。
日銀が掲げる2%の物価目標の達成も困難になる。
エコノミストはそんな議論を好むが、より重要なのは資源輸出国の台所が直撃されることだろう。
9月3日に北京で開かれる「抗日戦勝利70周年記念式典」に出席する国の1つも、中国発の商品ショックで経済運営がにっちもさっちも行かなくなった。
中央アジアの産油国カザフスタンである。
中国とロシアを主な輸出先として、中国には原油を輸出することで、経済を営んできた。
ところが、原油安、中国需要の減退、人民元安がトリプルパンチとなり、為替の管理相場を維持することが出来なくなったのだ。
8月20日に通貨を変動相場に変えたが、たった1日で2割を超える大幅安となった。
対中輸出の落ち込みが目立つのは、中国が資源開発に乗り出し、丸ごと購入してきたアフリカ諸国も同じである。
中国からの直接投資の受け入れ拡大と対中輸出で有卦に入ってきたが、今や舞台は暗転した。
カザフスタンと同様、アフリカ諸国の対中貿易にも異変が起きている。
2010年ごろからの対中黒字が雲散霧消し、今や対中赤字に直面
しているのだ。
外貨獲得に苦しむアフリカ諸国から、中国は外貨をむしり取っている。
マルクス主義の国際経済論からいえば、帝国主義的な収奪ということになろうが、ここではネーミングなどどうでもよい。
資源輸出国を中心とした新興国の対外収支が急速に悪化し、デフォルト(債務不履行)に陥る国が出てきかねないこと。
それが商品相場の底割れがもたらす、潜在的なリスクなのである。
■四面楚歌のサウジアラビア
あえて鬼になって言えば、名もない小国が飛んだとしても、世界経済へのダメージは小さい。
最も警戒すべきは中東の産油国、なかでもサウジアラビアである。
★.今年夏、国際金融界のビッグニュースの1つは、サウジによる8年ぶりの国債発行だった。
最大の産油国であり、採掘コストも低いはずのサウジでさえ、対外収支と財政収支が逼迫していることが、白日の下にさらされた。
ほかでもない。
国王の交代の後、サウジの王政は累卵の危うきにある。
内に王族内のゴタゴタ、外に核開発合意でツメを研ぐイラン。
そして「イスラム国」の勢力が、サウジ国内に浸透し始めている。
厳重な警戒を敷いていたはずのモスクで「イスラム国」による自爆テロが起きたことは、王室の心肝を冷やしたに違いない。
南にはイエメンの内戦が続く。四面楚歌なのだ。
民心を離反させないために、サウジ家が行っているのは、徹底的なバラマキである。
電気ガス代、医療費から教育費までタダにして、国民を抱き込もうとしている。
しかし、自由もなく、厳格な戒律で支配された体制は、いつ「アラブの春」に見舞われてもおかしくない。
人口ピラミッドは圧倒的に若者中心で、しかも彼らの満足する仕事はない。
「イスラム国」はそんな隙間を突いて着実に浸透している。
王家の生き残り策はアメとムチ。
国民にはバラマキを一層厚くするとともに、反対勢力は軍と治安警察で徹底的に排除するということだ。
だが、そんな政策を続ける限り、財政資金はいくらあっても足りない。
その一方で、逆オイルショックが世界を襲う中では、原油収入は先細りになるばかり。
しかも宿敵イランに対する経済制裁が解かれれば、イランは国際市場に原油を供給してくるに違いない。
こう見ると、サウジを起点に中東が砂嵐に見舞われても不思議ではない。
■「全球的」市場混乱のメカニズム
中国発のショックには別の経路もある。
新興国の代表である中国経済がぐらついた結果、新興国投資全般のリスクが著しく高まり、新興国からの資本流出が拡大しているのだ。
新興国と先進国の間のヌエのような存在である韓国は、最大の被害者の1人だろう。
外国人投資家による韓国の株式、債券の売越額は、7月だけで5000億円にのぼった。
主な19新興国市場からの資金流出額は、1年余りで1兆ドルに迫っている。
こうした新興国でドル・パニックが起きると、それこそ2008年のリーマン・ショックの再来となる。
米連邦準備制度理事会(FRB)による金融の量的緩和(QE)の下で、マネーは先進国ばかりでなく新興国に流れ込んでいたので、こうした金融不安は先進国の金融機関や投資家にも、ブーメランとなって跳ね返ってくる。
中国株バブルの崩壊が、「全球的」な市場混乱となって波及しているのは、こういったメカニズムが働いているからである。
その危機は8月24日の週明け以降、新たな段階を迎えている。
何よりも24日のニューヨーク市場で、ダウ工業株30種平均が寄り付き直後に一気に1000ドル下げたことが示すように、
グローバルな投資家の間では極端なリスクオフ(危険回避)の空気が広がっている。
買い手不在の間隙を縫って、相場の方向を加速するようなファンドの機械的な売りが襲う。
プログラム売買と言うべき、こうした高速取引を手掛けるファンドにとって、もうそろそろといった相場の値ごろ感などは存在しない。
他方で機関投資家は、株式などの損失額が一定限度を超えると、自動的な損切りを余儀なくされる。
かくて金縛りの悪夢に見舞われているような、株価の急落が演じられる。
24日の欧米市場で円相場が一気に1ドル=116円台まで急騰したのも、同じようなプログラム取引が背景にある。
日本株も同様である。日経平均株価は21日に2万円の大台を割ったが、24日には1万9000円台、25日は1万8000円台を次々と割り込んだ。
とりわけ、日中に約1000円の値幅で乱高下を演じた25日のマーケットは、人間がプログラムに振り回されている図の典型だろう。
問題は、一連のプログラム取引が、必ずしも浮世離れした産物ではないことにある。
中国経済の失速と中国株底割れの先にあるのが世界経済の下振れであることを、マーケットは冷徹に織り込んでいる。
しかも、景気悪化や市場混乱に対するグローバルな政策対応の力が弱っていることを、世界を駆け巡る投資マネーはしっかりと見抜いている。
■いまこそ「経済運営のプランB」を
何よりも中国当局のグリップが著しく弱っている。
自ら煽った株式バブルが崩壊し、官民挙げた株価維持策が市場の自重の前に崩れ去った。
★. 市場型社会主義という成功モデルが壁に突き当たったというのに、打開の道が見いだせない。
しかも経済と市場の混乱をよそに、三国志を思わせる熾烈な権力闘争が繰り広げられつつある。
「北戴河会議」の最中に起きた天津爆発事故が作為かどうかは別にして、民心離反はハッキリしている。
国内で「第2文化大革命」のような混乱に陥るか、人民解放軍の抑えが効かなくなるかはともかく、中国の政治が制御不能になるようだと、世界の市場混乱はこんなものでは済まないだろう。
安倍晋三政権も経済運営で腹を固める時が近づいている。
緩やかな景気回復のシナリオを語り、成長戦略を論じるのもよいが、いま試されているのは「新たなリーマン・ショック」での被害を最小限に抑えるための「経済運営のプランB」なのではないか。
それに対し、アベノミクスの失敗と囃す声も起こるだろうが、国家運営はディベート大会ではない。危機を正確に見積もり、先手を打って備えるようにしないと、日本経済が根っこから崩れることになりかねない。
』
【中国の盛流と陰り】
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