2015年8月31日月曜日

中国経済はソフトランディングできるのか?(2):日本のバブル崩壊に似ている点、違う点

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JB Press 2015.8.31(月) 加谷 珪一
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44639

中国経済の復活が意外と早いかもしれない理由
日本のバブル崩壊に似ている点、違う点

 人民元の切り下げショックに端を発した中国経済に対する懸念は株式市場を直撃し、パニック的な世界同時株安を引き起こした。
 中国経済が今後、どのように推移するのかはまだ何とも言えないが、少なくとも短期間でV字回復するというシナリオは描きにくくなっている。
 それは、
 中国が日本のバブル崩壊後と同じように、深刻なバランスシート不況に突入した可能性が高い
からである。

 もっとも中国経済はまだ発展途上であり、日本のバブル期ほどの成熟度には達していないとの見方もある。
  日本の歴史に当てはめれば、旧山一証券が破たんの瀬戸際まで追い込まれた1965年のいわゆる「(昭和)40年不況」に近い状況かもしれない。
 もしそうだとするならば、思いのほか早いタイミングで成長軌道に復帰させることも可能となるわけだが、果たしてどちらだろうか。

■中国経済は非常にちぐはぐな状況

 2000年代における中国の実質GDP成長率は10%を超えていたが、2010年以降はそのスピードが目立って低下している。
 中国政府は経済成長率の目標を10%台から7%前後に引き下げており、これを新常態(ニューノーマル)と位置付けた。
 今後は7%程度の安定した成長を維持するという意味である。

 10%から7%に成長が鈍化しただけなので、影響は限定的と思われがちだが、決してそうではない。
 この数字は物価の影響を考慮した実質値であり、名目値では15%だった成長率が12%に低下している。

 中国の名目GDPはすでに1300兆円に達しており日本の2倍以上の規模がある。
 1300兆円の規模を持つ経済が15%成長すると毎年200兆円近くの富が生まれるが、これが12%に低下すると毎年の増加分は160兆円程度に減少してしまう。
 つまり実質の成長スピードが10%から7%に落ちただけで、毎年、40兆円以上の機会損失が発生する計算となる。
 中国の成長鈍化が及ぼす影響の大きさが想像できるだろう。

 中国経済は途上国型なのでGDPに占める個人消費の割合は低い。
 これまでの経済成長は、主に公的インフラ投資と活発な輸出によるものであった。
 だが中国の公的インフラは過剰投資に近い状況となっており、投資のペースは一気に落ち込んだ。
 また世界景気の減速懸念から輸出が低迷しており、これが国内の設備投資の縮小に拍車をかけている。

 一方で、中国はスピードが鈍化したとはいえ、先進国から見れば驚異的な成長率が続いてきたことに変わりはない。
 これまで何度も景気失速が指摘されたが、中国における住宅取得意欲は依然として活発であり、一部では不動産価格の上昇も見られる。
 成長の継続で豊かになる中間層が増えており、消費の拡大が続いているからである。

 中国経済は、成長ペースの鈍化で大混乱となっているものの、相対的には高い成長が続いているという、非常にちぐはぐな状況にある。

■中国は実質的にバブル崩壊のフェーズに入っている

 だが好調な個人消費も永久に継続するわけではない。
 公共事業の削減や設備投資の縮小は、最終的に雇用の減少という形で個人消費に影響を与えることになる。
 また不良債権の増加によって、金融システムが機能不全を起こす、
 いわゆるバランスシート不況に陥る可能性が高くなってきている。

 実は中国経済は2~3年前から、すでに
「実質的なバブル崩壊状態に突入」
している可能性が高い
 世界経済は、80年代の日本におけるバブル経済、2008年のリーマンショックなど数多くのバブル崩壊を経験しており、バブルがどの程度まで拡大すると崩壊に向かうのか、ある程度、予測できるようになっている。

 例えば、日本の80年代バブルが崩壊した1991年、国内の総融資残高(金融機関とノンバンクを合わせた数字)は約785兆円であった。
 当時の日本のGDPは474兆円なので、融資残高はGDPの約1.7倍の規模に達していたことになる。

 一方、米国のリーマンショックは2008年に崩壊したが、その直前の米国における総融資残高は約22兆ドルであった。
 当時の米国のGDPは14.5兆ドルなので、総融資残高はGDPの約1.5倍である。日本と米国では状況が異なるが、過剰流動性が不動産価格や株価を押し上げたという図式は同じであり、バブルが崩壊する水準というのもほぼ一致している。

 では現在の中国はどうだろうか。
 少しデータが古いが、2012年時点での中国における金融機関の総融資残高は約68兆元である。これにシャドーバンキングによる融資を加えると約87兆元になる(シャドーバンキングには様々定義があり、中国の統計は先進国と比較すると信用しにくい面があるが、ここでは各種統計の平均値を用いている)。

 中国における2012年のGDPは53兆元なので、総融資残高のGDP比は約1.6倍ということになる。
 もしこの数字が正しいとすると、日本や米国がバブル崩壊を起こした時と同じ水準であり、中国はいつバブル崩壊を起こしてもおかしくない状況と判断できる。

 実際、中国政府はそのように認識している可能性が高く
そうであるからこそ、ソフトランディングを実現すべく、市場をコントロールしようと試みている

■日本のバブルと類似なら不良債権処理には時間がかかる

 中国の市場メカニズムは限定的であり、事実上の統制経済システムと考えてよい
 最悪の場合には、取引を強制的に停止したり、各種の情報を開示しないといった手段で、金融パニックを回避することも不可能ではない。
 中国経済は予断を許さない状況だが、
 投資家の多くがリーマンショックの再来を想定していないのは、こうした理由からである。

 だが、ハードランディングではないにせよ、中国の金融システムに多額の不良債権が発生した場合、これを解消するには、相応の時間がかかる。
 先ほど、日本のバブル崩壊と米国のリーマンショックは相対的な規模感が類似していると述べた。
 しかし、バブル崩壊から回復するまでの時間は日米両国で大きな違いが見られる。

 米国は量的緩和策という新しい政策の導入もあり、バブル崩壊から数年で経済を回復軌道に乗せることに成功した。
 米国の金融機関はほぼすべての不良債権処理を終えつつあり、最大の懸念材料だった不動産価格もこのところ上昇が著しい。

 だが日本は不良債権の処理に20年近くの年月を必要とした。
 それは日本経済のダイナミズムが米国よりも乏しく、権利関係の処理や資本の手当に時間がかかったからである。
 また日本の金融市場の透明性が米国市場に比べて低かったことも、処理が遅れる原因の1つになった可能性が高い。
 市場の透明性が低いと市場参加者の疑心暗鬼が解消されず、正常な取引に回帰しにくいからだ。

 中国は日本市場よりもさらに透明性が低く、不良債権の処理は困難を極める可能性が高い。
 中国のバブル崩壊も、相対的な規模は日本のバブル崩壊やリーマンショックに近い水準である。
 場合によっては5~10年という単位が必要になるかもしれない。

■今の中国は日本の80年代ではなく60年代

 もっとも中国経済に対しては別な見方もある。
 中国経済の成熟度は低く、80年代の日本の水準にはまだ到達していないという解釈である。
 確かに中国の1人当たりGDPは約7600ドルと日本の5分の1程度の水準しかない。
 日本における1人あたりGDPが現在の5分の1だったのは1960年代後半である。
 そうなってくると、中国経済は日本のバブル時代よりもさらに一時代前に位置しているということになる。

 中国の2000年代の実質GDP成長率は平均すると10%強だが、日本において同程度の実質成長率が見られたのは1950年代から60年代にかけてである。
 ネット環境の整備など、イノベーションの発達で時間差が縮小しているとはいえ、中国経済は日本の60年代に近いと考えた方がよさそうだ。
 東京オリンピックが1964年の開催だったことも、やはり今の中国との類似性を感じさせる。

 1960年代における大型不況といえば「40年不況」だろう。
 1955年前後を起点とする神武景気、それに続く岩戸景気で日本経済は好景気に沸き、株価は長期の上昇相場となった。
 相場がスタートする前の日経平均株価は300円台だったが、株価はみるみる上昇し一時は1800円に迫る水準となった。
 証券会社は投資信託の大量推奨販売を通じて相場を煽っており、個人投資家が株式市場に殺到するという状況だった。
 投資信託のあまりの売れ行きに「池の中の鯉」と形容されたくらいである。

 当時の日本市場は、今の中国市場と同様、未成熟で機関投資家がほとんど育っていなかった。
 個人投資家や事業法人の投機的な取引が中心で、市場のボラティリティが高く、乱高下しやすい状況だったのである。

■中国経済の復活は意外と早いかもしれない

 こうした上昇相場は永久に続くものではなく、日本の株式市場は深刻な株価下落に悩まされるようになる。
 証券会社による投資信託の買い支え、公的機関による株価の買い支えなど、様々な株価対策が行われたものの、株価の回復には数年を要した。

 この間、投資信託の解約が殺到したことで、証券会社による買い支えは限界に達し、山一証券はとうとう破たん寸前まで追い込まれた。
 当時、大蔵大臣だった田中角栄元首相による鶴の一声で、山一に対する日銀無制限特融が決まり、同社が何とか破たんを免れたのは有名な話である。

 こうした状況を打開したのは、結局のところ経済成長であった。
 政府は景気対策として戦後初の赤字国債を発行、財政出動を強化したことで、経済は再び成長軌道に戻った。
 金融システムが抱えた含み損は、経済規模の拡大で相対的に小さくなり、やがて大した問題ではなくなった。

 つまり、日本経済はまだ若く、まだ十分な成長余力があったことが不況脱出の原動力となった。オイルショックによる低迷を経て、バブル経済がピークに達するのは、約25年後である。

 現在の中国経済について、80年代の日本と考えるなら、中国はすでに成熟期に入りつつあり、バランスシート不況は長期にわたって続くことになる。
 逆に中国の現状を60年代の日本と考えるならば、中国経済にはまだ十分な成長余力があるという解釈が成立する。
もしそうであるならば、中国経済の復活は意外と早いかもしれない。



サーチナニュース  2015/08/31(月) 08:18
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0831&f=business_0831_007.shtml

中国バブル崩壊とアメリカ利上げの行方

 中国・上海株式市場の暴落は収まったのだろうか。
 底を打ったということで東京市場も回復に転じたが、さほどというかあまりに信頼は置けないのではないか。

 当の中国は、上海株式市場の暴落をもたらしたのは、アメリカが9月に利上げを目論んでいるためだとしている。
 原因はアメリカにあり、中国はその被害者だというわけである。

 利上げ=インフレ退治ということでドル高になれば、
ドルペッグをしているため元の通貨価値も実質的に上昇する。
 それは困る、
 中国がやりたいのはデフレ退治だと、人民元の切り下げを実施したのだということになる。
 その元の切り下げが、上海の株式市場に飛び火した。

 皮肉なことに上海株式市場が落ち着くと、アメリカの利上げが頭を持ち上げる。
 「世界はアメリカの利上げに対応できる」、と。
 アメリカは利上げ=インフレ退治、
 中国は利下げ=デフレ退治
と方向性が逆である。
 しかし、アメリカはアメリカで、中国の事情は斟酌しない。
 しかし、そうなると上海市場がまたまた混乱に陥る。
 ドルペッグ制のマイナス面が露呈している。

 習近平は、自国経済がバブル崩壊状況にあることを認めるわけにはいかない模様だ。
 だから、アメリカはよろしくそのあたりの「空気」を読んで、利上げをしばらく棚上げしてほしいというのが本音に違いない。

■利上げは延期=世界経済が底割れしては元も子もない

 中国は、政策金利を引き下げるなど金融緩和を実施し、地方政府にインフラ投資を要請している。
 地方政府としては、すでにインフラ投資はやり過ぎており、借金漬けになっているのが現状だ。
 それにまたインフラ投資をして、収賄などを疑われるのも怖い。
 これではインフラ投資は掛け声のみということになる。

 中国は、AIIB(アジアインフラ投資銀行)をテコにした「一帯一路構想」の推進を提唱してきている。
 だが、
 周辺国へのバブルの「輸出」を目前にして、
 バブルが崩壊した格好にほかならない。

 リーマンショック時のアメリカと同様だが、バブルの当事国は動けない。
 となればアメリカはせめても利上げを見送り、リーマンショック時の「恩返し」をする番になる。

 ドルペッグでは、アメリカが利上げをすれば、
 元はドルに連動して高くなりデフレを助長することになりかねない。
 アメリカは利上げを止めて、中国に猶予を与える必要がある。

 中国は、リーマンショック直後に4兆元(57兆円)の国内インフラ投資を行って、世界経済の底割れを防いだ。
 中国は、アメリカが苦しみもがいている時にアメリカに塩を送った。
 アメリカはそんな「故事」はすっかり忘れただろうが、
★.中国バブル崩壊で世界経済が底割れしては元も子もない。

■日本は企業&市場改革を徹底して経済の「質」を上げろ

 日本もアメリカの利上げが延期されれば、「ドル安円高」になるのだから、それはそれで無難とはいかない。
 日銀の3度目の異次元金融緩和の出番ということにならざるをえない。
 日本は異次元金融緩和以外にそんなにやれることはないが、コーポレートガバナンス・コードなど企業&市場改革を徹底すべきではないか。

 東芝ではないが、社長をやって、副会長、会長をやって、相談役をやって死ぬまで会社にしがみつくようなのがあまりにも多い。
 その都度、部屋よこせ、クルマよこせ、秘書よこせ、である。
 社員たちの企業年金をカットして、会社を救ったとして、会社に残るといった事例すらある。
 「押し込み」など古典的な手口で粉飾決算を行う構造がそこにある。

 個人・大株主のオーナーが社長(CEO)を兼任して、チェック&バランスを説明しないような会社も少なくない。
 わざわざCEOを切って、個人・大株主自らがCEOになるようなケースもある。
 スチュワードシップ・コードではないが、機関投資家、そして個人投資家も、ガバナンスなど頭にない企業は敬遠すべきではないか。
 企業&市場改革が、経済の「質」を上げることになる。

 さらには、オリンピック関連施設・道路などインフラ投資など前倒しできるものは前倒しするなど「特需」を少し演出することも必要かもしれない。

 バブルを癒すには次のバブルをつくるのが手っ取り早い
のだが、そう都合よくはいかない。
★.中国のバブル崩壊は、どうにも低迷の序曲ということになる
のではないか。

(小倉正男=経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社で編集局記者・編集者、金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)



レコードチャイナ 配信日時:2015年8月31日(月) 6時20分
http://www.recordchina.co.jp/a117791.html

中国経済が世界経済成長の足を引っ張る?―中国メディア

 2015年8月28日、ここ1~2週間の間に、世界の株式市場、外国為替市場、大口商品市場は一斉に大きく変動し、ウォッチャーたちの間では中国経済が世界経済成長の足を引っ張っているという見方が出ている。
 こうした見方がむやみに伝わり広がるのを見過ごせば、投資家の判断を誤らせ、変動をさらに大きくするだけでなく、グローバル経済の「病気」の原因について誤診を招き、経済復興プロセスを遅らせることになる。
 中国経済網が伝えた。

 どのような要因が世界市場の変動を引き起こすのだろうか。
 根本を考えれば、真の原因は米連邦準備制度理事会(FRB)の金利引き上げ観測の高まりによる打撃、グローバル経済の回復プロセスにおける不確定性が引き起こした懸念にある。
 国際金融危機の発生後、発達したエコノミーは主に量的緩和で事態の悪化を回避しようとした。
 こうしたやり方はデレバレッジのプロセスを遅らせ、回復プロセスの進度をバラバラにし紆余曲折を繰り返させることになった。
 FRBの金利引き上げの見方が広がったため、相場には大きな動揺が広がった。
 資料によると、金利引き上げの観測が高まったため、今年第2四半期(4-6月)だけで1200億ドル(約14兆5000億円)の資金が新興市場から逃げ出し、新興市場の通貨は米ドルに対し相次いで値下がりした。

 実体経済こそが世界経済好転の基盤であり、グローバル市場の非理性的な動揺を長期にわたって避けようとするなら、各国が手を携え、一緒になって実体経済を強く大きくしなければならない。
 中国にとっては、中国経済をしっかり運営し、特に実体経済を強く健全にすることが必要だ。
 また発展・改善の途上にある資本市場をしっかりと運営することも必要だ。
 現在は財税やレートなどの分野の改革の取組を引き続き強化し、実体ある企業の負担を着実に軽減することが必要だ。
 また金融による実体経済支援の「血管」がよりスムースに流れるようにし、金融の発展によって実体経済の発展をさらに支援することが必要だ。

(提供/人民網日本語版・翻訳/KS・編集/武藤)