『
ロイター 2015年 08月 24日 18:41 JST Peter Thal Larsen
http://jp.reuters.com/article/2015/08/24/column-china-stock-idJPKCN0QT0UM20150824
コラム:中国株急落、強まる世界への感染力
[香港 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
株安という中国の病いの感染力が強まっている。
24日の中国株は8%以上急落。市場の混乱はアジア株のみならず、商品や通貨にも波及している。
背景には、中国の政策運営能力に対する信頼が揺らいでいること
がありそうだ。
中国株式市場は外国人投資家の売買比率が低く、これまでは中国株が乱高下しても、海外市場への影響は限定的だった。
ところが、今回は様相が一変。
アジア株は軒並み急落し、マレーシアリンギやインドネシアルピアなどリスク資産からは資金が流出している。
銅、アルミ、原油先物は6年ぶりの安値をつけた。
金融市場のムードが一変することは珍しくないが、
中国の景気減速は目新しい話ではない。
製造業PMI(購買担当者景気指数)は低迷しているが、最近の住宅統計を見ると、不動産価格は上昇に転じている。
中国当局の一連の介入が原因だ
という分析の方が説得力がありそうだ。
人民元の切り下げで元安進行への懸念が浮上したとの見方だ。
人民元の下落率は過去2週間で4.6%にとどまっているが、今後さらに元安が進む可能性がある。
資源国や、中国企業と競争する輸出企業、また中国に進出している海外メーカーや、海外の中国企業に資金を貸し付けている金融機関は、前提の見直しを迫られつつある。
さらに、海外投資家の間では、中国指導部への信頼が揺らいでいるようだ。
きょうの株安は、株価対策の空しさをはっきりと示した。
政府が公的資金による下支えを中止したのであれば、きょうの売りは健全な調整と言えるのかもしれない。
しかし、たとえそうであったとしても、
中国が数々の経済問題を乗り越えられるという神話が永遠に失われた
ことは確かだ。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
』
『
レコードチャイナ 配信日時:2015年8月24日(月) 16時55分
http://www.recordchina.co.jp/a117321.html
経済低迷、株式バブル崩壊、天津爆発
…それでも中国人の海外旅行が増え続ける5つの理由―米メディア
2015年8月24日、中国・環球時報によると、米誌フォーブスは23日、
「危機的な時期でも中国人海外旅行者が増え続ける5つの理由」
と題した記事を掲載した。
中国経済の低迷、株式バブル崩壊、天津の危険物保管倉庫での爆発。中国は困難な1年に直面している。
だが中国本土からの海外旅行者数には、いかなる低迷もみられない。
今年上半期に海外を訪問した中国人は延べ6190万人。
前年同期から13%増えた。
その理由として、次の五つが挙げられる。
中国の株式市場は今年、暴騰暴落し、経験の乏しい「庶民投資家」は重大な損失を被った。
だが中国で最も豊かな5%にしてみれば、数千ドルの費用でプーケット島やカリフォルニア州でバカンスを楽しむ力が削減されたわけではない。
彼らは香港やマカオ以外の海外に繰り出すのに十分な資金を有している。
中国経済の低迷で多くの高級ブランドが頭を悩ませているが、五つ星クラスの豪華な海外旅行の「安さ」は、高級スポーツカーのマセラティやブレゲの高級腕時計の比ではない。
天津市浜海新区にある危険物を保管する倉庫で発生した爆発による地下水汚染などの被害は、それほど長期的なものではないのかもしれない。
だが当局による情報の透明度不足は、
「この国の環境危害は多くの都市が被害を受ける大気汚染にとどまらない」
という中国人の懸念を側面から証明するものでもある。
「清潔で安全な環境」は、中国人を海外旅行に引きつけるの魅力の一つだが、今後はその傾向がさらに強まるだろう。
中国人は金さえあれば海外旅行に出かけられるというわけではない。
ビザ取得の問題がある。中国人に対しノービザもしくはアライバルビザを提供する国もいくつか現れた。
昨年末からは、米国、カナダ、豪州、韓国、EU加盟国の多くが続々と、中国人客に複数回入国できる長期ビザを発給するようになった。
中国本土からの旅行先として、2012年上半期には香港とマカオが全体の62%を占めていた。
だが今年上半期には、その割合は53%にまで低下している。
香港・マカオの観光業界にとっては頭の痛い話だが、世界のその他地域について言えば、中国人の海外旅行者が今後、20%以上の伸びを見せないとしても、多くの国が受け入れる中国人客の数は大幅に増え続けることを意味している。
一定のステータスを有する中国人の間で、海外旅行が固定的な消費スタイルの一つになっていることも大きな理由だ。
今後は、富裕層に続き、これまで国内旅行に甘んじてきた層も、海外旅行の大軍団に加わることになるだろう。
』
大げさに書いているが、単にタイムラグではないのか。
半年後の今年の年末あたりにどうなっているかだろう。
昨日景気が悪くなったからといって、今日それが反映されるわけではあるまい。
巨艦は簡単には舵は切れない。
大きければ大きいほど惰性がかかる。
そして、落ち込み始めたら簡単には回復しない。
小手先で動くほど中国の経済は小さなものではない。
慣性、あるいは惰性が大きいくモノをいう経済である。
民間に見えるまで時間がかかる。
「影響ない」と言っても必ず何処かで何かが変わってくるものである。
それが出てくるまで少々時間がかかるということである。
中国でパスポートを所有している人は中国全人口の5%に当たる6,800万人という。
その3/4にあたる5,000万人くらいが海外旅行を楽しめる人口だという。
残りは学生あるいは海外への出稼ぎ労働者という。
この5千万人が中国の対外国への顔になっている。
庶民投資家レベルでは海外旅行などはそうたやすくは行かれない。
海外旅行を楽しめるレベルの中国資産家は年に複数回出かけるという。
ここには厳然とした差がある。
『
時事ドットコム (2015/08/24-16:26)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2015082400566
上海株、大幅続落=下げ止まらず8.5%安
【上海時事】週明け24日の中国・上海株式相場は大幅続落し、市場全体の値動きを示す上海総合指数は前週末比8.5%安の3209.91で終了した。
ロイター通信によると、1日の下落幅としては2007年2月末以来の大きさとなった。
』
『
フジテレビ系(FNN) 8月24日(月)17時14分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20150824-00000986-fnn-int
上海株大幅下落、-8.49% 3分の2以上の銘柄がストップ安に
中国・上海は24日、朝から土砂降りの雨となっている。
週明けの上海株式市場は、ある種、それ以上の大荒れとなっている。
取引は、日本時間午後4時ごろに終了した。
その終値、上海総合指数は、先週末に比べて-8.49%。
一時、一瞬だが、9%にも達した。
3分の2以上の銘柄が、ストップ安となっている。
以前は、この証券会社には、雨の日でも大勢の投資家が訪れていたが、その数は、めっきりと減った。
損に損を重ねて、「株離れ」が進んでいるとみられる。
21日に、ある投資家は、「もう、持っている株は全部売る。株から足を洗う」と話していた。
しかし、24日、その投資家の姿があった。
再び話を聞いてみようとすると、気まずかったのか、取材は断られてしまった。
「損が膨らみすぎて、やめたくてもやめられない」といった声が、投資家から聞こえる。
』
『
サーチナニュース 2015/08/25(火) 09:20
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0825&f=business_0825_016.shtml
中国経済が世界の動揺招いた
・・・世界同時株安の持続を懸念する声=中国メディア
中国メディアのFX168は22日、中国経済の成長鈍化が世界の金融市場の動揺を招いたと伝え、世界同時株安の持続や世界的な通貨安競争を懸念する投資家が増えていると伝えた。
記事は、このほど発表された中国の8月の中国製造業景況指数(PMI)速報値が47.1にとどまり、2009年3月以来となる水準まで落ち込んだことを紹介。
事前予測は48.2、7月の確報値は47.8だったとし、
「8月のPMIが予想に届かなかったばかりか、7月よりさらに悪化した」
と紹介。
さらに、PMIは景況の改善と悪化の節目を50とし、50を下回った場合は製造業活動の減速を示すと紹介し、中国のPMIが50を下回ったのは6カ月連続と紹介した。
さらに、8月のPMIが2009年3月以来、最低の水準となったことを指摘し、
世界第2位の経済大国である中国の経済成長が大幅に減速していると懸念が高まった
と伝えた。
続けて、世界経済はこれまで中国の経済成長によって支えられてきたため、中国経済の減速は世界に大きな悪影響をもたらすと指摘。
特に中国と経済的な結びつきの強い資源輸出国が中国経済の減速の影響を受けていると指摘し、中国に鉄鉱石などを輸出しているオーストラリアは通貨が売られていると指摘した。
また、中国経済の鈍化によって、世界経済の成長も鈍化することを懸念した投資家たちは、継続的な世界同時株安や世界的な通貨安競争が起きることを懸念していると伝え、世界の金融市場における資金がリスク回避のために金や債権市場に流れ込んでいると報じた。
』
「世界第2位の経済大国」という甘い果汁を飲んだだけに、その果汁にトゲが含まれていることを知った衝撃は大きい。
『誉のレッテル』はいいことばかりを運んでくるわわけではない。
巨大な責任がずっしりと肩にかかってくるのである。
日本はその荷重に約40年耐えてきた。
そして後ろの20年は「失われた20年」と言われるほどに困難な事態に陥った時期でもある。
「早く誰かに代わって欲しい」
と願望しつつも、20年間苦闘の歴史を歩み続けることになってしまった。
かわってくれる誰もいなかった。
そして揚々に、この肩の荷をありがたいことに中国が嬉々として背負ってくれた。
日本にとれば、
「ありがたや、有り難や、アリガタヤ、arigataya!」
である。
今、
日本は責任を逃れて「せいせいした!」
と安堵の息をしているところであろう。
栄誉と裏腹の責務は中国にかかっていく。
今後なにごとにつけて、世界は中国を非難の対象にしていくことになる。
それが
世界第2の経済大国の持つ宿命でもある。
これから逃れることはできない。
それが、『誉のレッテル』の重みである。
『
サーチナニュース 2015/08/25(火) 09:40
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0825&f=business_0825_019.shtml
中国経済は「底硬い」!
安定成長の趨勢変わらず=中国メディア
中国メディアの新華社は21日、世界経済および商品市況、金融市場が不安定になりつつあることに対し、
「中国経済には世界経済の激流に飲み込まれないだけの能力がある」
と論じる記事を掲載した。
記事は、世界の主要国の経済は力強さに欠けると指摘する一方、中国経済は多くの外部リスクに直面しているが、それでも
「世界の経済成長におけるエンジンである中国には
外部リスクに打ち勝つ能力がある」
と主張した。
続けて、国際通貨基金(IMF)の見解として、世界経済は短期的に金融市場における動揺と資産価格の下落というリスクを抱えていると紹介し、IMFが2015年の世界経済の成長率見通しを3.5%から3.3%に引き下げたことを紹介した。
さらに、先進国の経済も不安定だとし、利上げを控えた米国経済も先行きが不透明だとしたほか、欧州経済は量的緩和を行っていることで、ある程度安定しているとしながらも、ギリシャの債務危機はまだ解決したわけではないと指摘。
また、日本経済は2015年打2四半期の成長率が3四半期ぶりのマイナスに転じたと伝えた。
続けて、中国は不安定な世界経済のもとで「外部圧力にさらされている」と主張し、世界では貿易保護主義が台頭し、世界の需要減退もあわせて中国の輸出は厳しい状況だと指摘。
また、中国への直接投資も減少する一方で、中国を含めた新興国から資金が流出しており
「米国の利上げが近づくにつれ、新興国からの資金流出はさらに加速するだろう」
と論じた。
また記事は、中国の生産者物価指数(PPI)も41カ月連続で前年同月比でマイナスとなったことで、深刻なデフレ圧力にさらされていると指摘する一方で、「中国経済にはさまざまな外部リスクが存在するとしながらも、中国経済は底堅く、安定成長の趨勢は変わっていない」と主張。
さらに、IMFの林建海事務局長が
「中国には経済発展における貴重な経験を持ち、改革に向けた強い決意を持っている」
と述べ、さらに第三次産業にはさらなる発展の余地があり、中国国民の教育水準が向上し、労働力の質が高まっていることも中国経済の成長につながるとの見方を示したことを紹介した。
』
● FNNニュース 2015/08/25
● JNNニュース 2015/08/25
『
サーチナニュース 2015/08/25(火) 15:34
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0825&f=business_0825_053.shtml
人民元切り下げ、「通貨戦争」と無関係
・・・「真の水準」に回帰しただけ=中国メディア
中国メディアの経済参考報は19日、中国人民銀行が突然人民元を切り下げたことに対し、
「一部に通貨安競争を招くとの叫ぶ人がいる」
と伝える一方、為替レート問題での、いわゆる
「通貨戦争」が起きるはずはないと反論
した。
記事は、過去10年間において人民元は上昇し続けてきたと主張し、上昇幅は35%に達したと指摘。一方で、ユーロや円は下落し、人民元に対する下落幅は50%を超えていたと主張し、中国が人民元を「わずかに切り下げたことに対して批判があることに驚きを禁じ得ない」と反発した。
さらに、通貨戦争を招くといった批判があることに対しても「完全に誇張」と批判した。
中国が人民元レートの調整を行った背景は、中国の輸出が減少傾向であり、特にEU向けの輸出が減少していることと主張。
中国の輸出減少は中国経済の鈍化という影響もあるが、
「為替レートの影響で、中国の製造業の価格競争力が削られていることも要因の1つ」
と主張した。
さらに、米国では利上げが行われる見通しであり、ドル高が進行する一方で円やユーロ、ウォンも下落したが、主要20カ国・地域のG20参加国のなかでドルに対して強かった通貨は人民元とサウジアラビアのリヤルだけだったと主張した。
続けて記事は、中国は人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用されることを願っているとし、そのために為替市場の自由化のための改革を行っていると主張。
「改革の結果として人民元は下落したが、これは市場の需要に合致したものだ」
と論じた。
中国人民銀行の張暁慧総裁補佐は13日、人民元のレートがこのところ、人民銀行が毎日発表する取引の基準値(中間レート)から大きく下にずれたレートで取り引きされていたと発言。
人民元切り下げはあくまでも「市場の水準に戻したもの」
と主張した。
経済参考報も、同主張を踏襲した。
また、人民元がこれまで35%も上昇していたことに比べれば、5%ほど下落したことは
「通貨の切り下げ競争にはあたらない」、
「ましてや通貨戦争ではない」、
「人民元の真の価格水準に回帰しただけ」
と主張した。
』
理屈的にはそうなのだが。
しかし、人と社会の心理はそうは動かない。
なりふり構わない公権力の介入は人と社会を不安にさせる。
怖いのはそこだ。
一度外してしまったタガは元へは戻らない。
下手すると漂流してしまう。
それが怖い。
このことで中国当局のソフトな経済コントロールが効かなくなってしまい、
パワーに溢れた強制力でやっていくしか術がなくなってきているという印象
をあたえてしまっていることは確かである。
6月の末、50カ国の参加によって「AIIB」の設立調印式が行われたとき、中国には大きな信用と信頼感が寄せられていた。
ところがたった2カ月でそれが地に落ちてしまった。
もはや中国を信頼するものはほとんどいないし、中国自体も防戦に追われる日々となってしまっている。
時代とは無情だ。
あっというまに世界の、あるいは社会の潮流は変わる。
今後はおおきな上下動を繰り返しながら、ゆっくりと下降線をたどって行くことになるのだろう。
たくましく草原を疾走していた巨象は、次第に疲れを覚え走ったり歩いたりになる。
それが『新常態』ということであろう。
そして主に歩くことがメインになる。
『低常態』になる。
座り込むことはないだろう。
歩き続けることはできる。
よって中国経済は崩壊しない。
軽やかに風を切っていた頃は戻ってこない。
ゆっくりと歩みを進めることになる。
その歩みに沿った発展は見込める。
しかし、昔の栄華が蘇ることはない。
もし再度の栄華を期待するなら、そのためにはしばらく座り込んで体力補強をせねばならない。
そのようなことはありえない。
すなわち、中国経済が歩みを止めるなどということは考えられない、ということである。
象の歩みに例をとると、そんな風に中国経済を見ることができる。
『
ロイター 2015年 08月 26日 18:36 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/08/26/markets-asia-policy-idJPKCN0QV0VO20150826
アングル:アジア通貨に激震、
当局は下落容認から防衛にシフト
[シンガポール 26日 ロイター] -
輸出減少とデフレリスクに直面するなか、通貨価値の緩やかな下落は多くのアジア諸国にとって都合が良かった。
しかし、中国が8月11日に予想外の人民元切り下げを発表したことは、ボラティリティの波を引き起こし、アジア各国の為替管理だけでなく、その成長戦略まで混乱させている。
中国人民銀行(中銀)による約2%の元切り下げは、
同国経済のもたつきをあらためて示す格好となり、
アジアの通貨と株式は数年ぶり安値に下落。
その流れは世界全体に広がった。
中国経済をめぐる懸念はいまや、世界経済の成長をめぐる懸念やコモディティ価格の下落、米国の利上げ時期にまで影響を与えている。
1997─98年のアジア通貨危機で通貨切り下げに追い込まれた記憶がまだ残るアジアでは、資本逃避や市場の乱高下、借り入れコストの急上昇につながる通貨の急落によって、通貨を緩やかに下落させるという選択肢が突如として消えてしまった。
韓国やタイなどの中銀は、自国通貨に対する売り圧力を強めかねない利下げを先送りしており、経済成長や景気対策は後回しとなる可能性が高い。
インドネシア中銀も先週の政策会合で主要政策金利の据え置きを決定した。
同国の経済成長率は6年ぶりの低水準に減速し、インフレ率は鈍化しているにもかかわらず、中銀は、金融政策において通貨ルピアの安定を最優先すると表明。
マルトワルドヨ総裁は今週、「われわれは競争的な通貨切り下げに追随しない」と述べた。
インドネシア中銀はルピア相場の安定に向け、積極的な介入を行っているほか、入札制度の変更を通じ、銀行の余剰短期資金を吸収し、ルピアの投機取引を防ぐ措置も講じている。
ルピアIDR=は年初来、対ドルで14%下落。
外貨準備の低さや債券市場における外資比率の高さから、インドネシアの資産は特に売られやすくなっている。
しかし、インドやシンガポールなどの金融当局でさえ、市場が乱高下する状況で利下げを決定できる可能性は低い。
三菱UFJ(香港)の東アジア市場調査責任者クリフ・タン氏は
「アジアの金融当局は当面、高い金利に耐える覚悟でいなければならない」
と語る。
キャピタル・エコノミクスのアナリストは顧客向けノートで、マレーシアとインドネシアの当局は自国通貨が暴落する場合、利上げすら迫られる可能性があると指摘した。
シティバンクはすでに2015年のアジアの成長率見通しを6.1%から6%に引き下げた。
理由として、中国の元切り下げに伴うボラティリティ、中国の景気減速、他国の政策対応を挙げた。
また、タイの成長率は3.5%から2.7%に引き下げた。
■<歓迎されないボラティリティ>
タイ政府は経済成長率が予想を下回ると認め、景気対策として通貨バーツの下落を歓迎してきた。
しかし中銀は8月の会合で、金融市場のボラティリティを理由に政策金利を据え置いた。
バーツTHB=は今週、対ドルで2009年以来の安値を記録。
年初来下落率は8%に達しているが、その大半はここ数カ月の下げが占める。
オーストラリア・ニュージーランド(ANZ)銀行(シドニー)の金融市場調査グローバル責任者リチャード・イエットセンガ氏は
「これは明らかに不快な動きだ。
当局者は、これが歓迎すべき値下がりではなく、歓迎されないボラティリティであると認識してほしい」
と語った。
韓国中銀は今週、ウォンKRW=が約4年ぶり安値を付けるなか、ドル売り介入を実施。
円に対するウォンの競争力低下を受けて今年に入って続けてきたウォン安政策から一転、ウォン防衛に動いた。
中銀は元の切り下げ発表から2日後、政策金利の据え置きを決めている。
三菱UFJのタン氏は、アジアの中銀は政策をさらに協調させ、
何兆ドルにも上る外貨準備を使うことで自国通貨防衛のため、より積極的な策を講じることができる
と指摘する。
(Vidya Ranganathan記者 翻訳:高橋恵梨子 編集:加藤京子)
』
『
東洋経済オンライン 2015年08月24日 西村 豪太 :週刊東洋経済 記者
http://toyokeizai.net/articles/-/81412
元安誘導でなく「容認」、人民元騒動の大誤解
本質は人民元の国際化に向けた改革の第一歩
景気の底割れを防ぐために通貨の切り下げに追い込まれた──。
中国が対ドルの人民元レートの目安となる基準値を、8月11日から3日間連続で切り下げたことについて、日本の報道は「輸出テコ入れの元安誘導」説の一色だ。
だが事態はそう単純でない。
確かに中国の輸出は7月には前年同期比8.3%減少。
1~7月でも同0.8%のマイナスである。
しかし、一連の措置によって、元の対ドルレート基準値は4.5%切り下がっただけで、
輸出増の効果は限定的だろう。
そもそも、リーマンショックがあった2008年以降、中国のGDP(国内総生産)成長率に対する輸出入の影響は、大きく縮小した。
2014年の実質成長率7.4%への寄与は0.1ポイントでしかない。
■10年間で6元台に切り上がった
では、中国人民銀行(中央銀行)は、何を狙ったのか。
東短リサーチの加藤出社長は
「人民元の国際化に向け、改革の第一歩を踏み出したということではないか」
と見る。
中国は2005年7月、人民元のドルペッグ(米ドルとの交換レートの固定)を見直し、現行の管理変動相場制に移行した。
毎日、当局が定める基準値の上下0.3%内で変動を認める、というものだ。
それは人民元が不当に安く抑えられ、貿易不均衡を生んでいるという、欧米からの批判への対応だった。
後に変動幅は拡大され、現在は2%まで広がっている。
基準値の算出方法が明らかでないことから、現制度も「事実上のドルペッグに近い」と見る向きは多い。
それでも、開始時8.28元だった対ドルレートは、10年間で6元台に2元近く切り上がった。
今回の措置は、これまでブラックボックスだった基準値の設定に際し、前日終値を参考にするというもの。
人民銀行は「基準値と市場の実勢が懸け離れて、その差が3%程度集積した」として、実勢に近づけるために制度を見直したと説明している。
「市場の実勢」は、現物と先物(1年物)との乖離に表れている。
2014年夏ごろから元先物は現物より一貫して安く推移してきた。
一方で現物はほぼ1ドル=6.1~6.2元の狭いレンジに収まっており、欧米、特に米国に配慮した中国当局が、元買い介入により元安に歯止めをかけてきたのをうかがわせる。
■人民元をIMFのSDRに
背景にあるのは米国がこの9月にも利上げを開始するという観測に基づく資金流出だ。
ドルで調達した資金を元に換え、中国に投資してきた投機筋が、ポジションの解消に動いているとみられる。
元がドルと強くリンクした状態で米国の利上げが始まれば、ドルに引きずられる形でユーロや円に対する元高が進みかねない。
中国では景気対策のための金融緩和が続いており、金融政策の方向性は米国と正反対なのだ。
市場メカニズムによる調整が十分利かない現状は、早晩改める必要があったのである。
その第一歩として、介入してでも元安を止めるという政策について、見直しを図ったのではないか。
人民元の変動をより許容する方向に進むことは、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引き出し権)の通貨バスケットに、ドルやユーロ、ポンド、円に続き、人民元を入れるという中国の国策にプラスとなる。
IMFは「元の過小評価はすでに解消された」としており、今回の措置も歓迎するとのコメントを出した。
8月19日にはSDRの通貨構成を今年は据え置くことが発表されたが、「来年以降に入る可能性は小さくない」(加藤氏)。
中国には元買い介入を止めたい、もう一つの理由があった。
デフレ傾向が顕著だからだ。
消費者物価指数(CPI)こそまだプラスだが、卸売物価指数(PPI)は41カ月連続でマイナス。足元の7月にはマイナス5.4%と大幅に下落した。
「PPIの下落は建設関連の投資が不振なことによる企業活動の停滞を反映している」と神戸大学の梶谷懐教授は分析する。
投資偏重の経済構造を変えたい中国政府は、これまで金融緩和を景気対策の柱に据えてきた。
ところが、市場から通貨を吸い上げる元買いは、その効果を減殺してしまう。
デフレ脱却のためには政策の交通整理が必要だった。
元安を誘導したのでなく、市場の実勢に合わせた下落の「容認」が実情、と思われる。
■不気味な投機筋の動き
8月12日には1ドル=6.45元近辺まで下がった場面で元買い介入があった。
「これで当局の考えているラインがわかった。
米国やIMFも介入を非難せず、中国の政策にお墨付きを与えた格好だ」
とニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎・上席研究員は言う。
しばらくは、元がさらに下がり続ける、というシナリオはなさそうだ。
9月には習近平国家主席の訪米という一大イベントが控える。
そこで為替政策を批判されるようなことは避けたいはず。
ただ
「米国の利上げが始まり元安圧力がさらに増したとき、介入がなければ、1ドル=6.7~6.8元くらいまでの下落がありうる」
と三尾氏は見通す。
厄介なのは、人民元の対ドル先物レート(1年物)も、実勢値に合わせて下がっていること。
「今回の切り下げで莫大な利益を得た投機筋は“2匹目のどじょう”を狙う」(梶谷教授)。
完全な変動相場制なら解消されるはずの歪みを抱えた状態で、中国当局は望まない介入を続けざるをえないだろう。
(「週刊東洋経済」2015年8月29日号<24>「核心リポート02」を転載)24>
』