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ニューズウイーク 2015年8月24日(月)17時00分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/08/post-3851_1.php
モルディブが憲法修正で中国の植民地に?
外国人の土地所有を史上初めて認めたのは中国との関係緊密化を意識してのこと
インド洋に浮かぶ南国の島国モルディブが先頃行った憲法修正は、最近には例のない超スピード審議だった。
ろくに論議も行わず、参考意見も聞かず、議員が草案を精査することもないまま、モルディブ議会は外国人に土地所有を初めて認めるという憲法修正案を可決した。
これによって与党モルディブ進歩党(PPM)の真意が問われている。
「あまりにも素早い可決に、今はまだ誰もがショック状態にある。
まったく前例のない事態だ」
と、モルディブの主要ニュースサイト「ミニバン・ニュース」の編集長ザヒーナ・ラシードは言う。
今後はモルディブのどこでも、外国人は自由に不動産を所有できる。
外国人には土地の賃借しか認めなかった今までの方針からは画期的ともいえる転換だ。
この憲法修正案は、議会では賛成票、反対票で可決された。
反対派議員らは、今回の憲法修正がインド洋地域で中国に足掛かりを与えることになり、モルディブの北にある隣国のインドと中国の勢力バランスを崩すことになるとみる。
というのも、
★.投資額は事業計画1件につき最低10億ドル。
★.土地の70%は、その投資により埋め立てた場所でなければならない
という大掛かりな条件があるから。
★.こんな投資ができるのは中国ぐらいだ。
反対派は批判を強めている。
「モルディブ外交の最優先課題はインド洋地域の安定を保つこと。
今回の修正は中国のプレゼンス強化につながる」
と、国会議員のエバ・アブドラは言う。
彼女はモハメド・ナシード元大統領の率いる主要野党モルディブ民主党(MDP)から造反して修正案に反対票を投じた1人だ。
「いま懸念されるのは、中国がモルディブに拠点を設け、
モルディブをインド洋における中印対立の前線に置くことで勢力均衡を破るという可能性だ」
半世紀前にイギリスから独立を勝ち取ったのに、国家としての自由を手放すのかとアブドラは与党を糾弾する。
今回の憲法修正で「この国は中国の植民地になる」
と、彼女は言う。
■外交政策が急転換した
アブドラ・ヤミーン大統領は憲法修正を承認した先月下旬、インド洋地域の安全保障に影響が及ぶことも、モルディブの主権が損なわれることもないと語った。
「わが国はインド政府および近隣諸国に対し、インド洋を非武装地域として保つことを保証した」
と、彼は主張した。
インド側の専門家は懸念を隠さない。
「中国を利する修正だ。
70%の埋め立てができるのは中国だけ」
と防衛研究・分析センターのアナンド・クマルは言う。
13年にヤミーン政権が誕生してから、モルディブの外交政策は大きく変わった。
大統領就任後に初めて迎えた外国首脳は中国の習近平(シー・チンピン)国家主席だった。
そのときモルディブは中国の「海のシルクロード」構想のパートナーになることに合意。
中国は、モルディブのインフラ整備に巨額の投資も行っている。
興味深い話だが、ヤミーン率いるPPMは12年、インド企業による総額5億ドルの空港開発計画を葬っている。
国家主権を売り渡す気かと、このプロジェクトを決めたMDP政権を非難した末の結論だった。
その党が今、外国人の土地所有を初めて認めようとしている。
ヤミーンの異母兄のアブドル・ガユーム元大統領も、憲法修正は拙速だとして批判的だ。
「憲法修正案と土地所有権については承認する前に国民に信を問えと、私は大統領に訴えた」
インドも落ち着いてはいられない。
これまでモルディブは常にインドの影響力の下にあった。
中国のプレゼンス拡大につながれば、挑戦状を突き付けられたようなものだろう。
From thediplomat.com
[2015年8月11日号掲載]
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