『
サーチナニュース 2015/07/14(火) 10:40
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0714&f=business_0714_024.shtml
中国の実体経済を守るためだ
・・・政府一丸となって株価に介入!=中国メディア
中国メディアの中国青年報は12日、急落が続いていた中国の株式市場で9日から株価が反発し始めたことについて、
「当局が株式市場を下支えした理由は実体経済を守るためだ」
と論じる記事を掲載した。
記事は、中国株式市場で急落が続き、上海総合指数の上海総合指数日足チャート は5178ポイントまら一時3373ポイントまで下落したことを紹介。
株式市場の安定を取り戻すため、国務院国有資産監督管理委員会から公安部までもがさまざまな策を打ち出し、株価急落を食い止めたと報じた。
続けて、今回の中国当局による株式市場の下支え策は「何が目的だったのか」と疑問を投げかけつつ、中国社会科学院金融研究所の曾剛主任の話として、
「株価下落が実体経済に波及することを防ぐためだった」
と伝えた。
さらに、株式市場が「正常」であれば、企業の資金調達の方法を提供すると同時に資金調達コストを低下させる役割があるため、実体経済にとってプラスの作用があると主張。
一方で、株価が急落する際は業績の良し悪しにかかわらず、株価が下落してしまうとし、企業の資金調達という機能を果たせなくなるとしたうえで、
「株価急落が急落すれば、実体経済にとってプラスの作用が失われるばかりか、リスクそのものが実体経済に波及してしまう」
と論じた。
また記事は、中国商務部研究院国際市場研究部の白明副主任の話として、株価急落は消費に影響を及ぼす可能性があったとし、
「株価が急落すれば高いレバレッジで投資を行っていた投資家だけでなく、リスクの低い投資を行っていた投資家にまで悪影響が及ぶ」
と指摘。
消費はマクロ経済における重要な要素の1つであるとし、
「多くの中国人が株式投資をするなかで、株価の下落は消費に影響を及ぼすだろう」
とし、中国当局が打ち出した株価の下支え策は中国の実体経済を守るためとの見方を示した。
』
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現代ビジネス 2015年07月14日(火) 町田 徹
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44150
老舗シンクタンクが発表した
「中国経済予測レポート」驚きの悲観シナリオ
■禁じ手のオンパレード
荒れに荒れた先週(7月6日~10日)の株式市場だが、終わってみれば世界25主要市場の週間騰落率で最も値を上げたのは、ギリシャと並んで世界市場を混乱に追い込んだ中国株(上海総合指数)だった。
その上昇率は前週末比5.18%高と、2位スイス(SMI、2.48%高)、3位ドイツ(DAX、2.33%高)などを大きく引き離したばかりか、23位で3.70%安だった日本株(日経平均株価)とは対照的な動きを見せた。
しかし、この中国株相場の上昇が本物で、先月から続いた下落傾向にピリオドを打ったと考えるのは早計だろう。
というのは、中国の公安当局が空売りを取り締まるとの声明を発表したり、政府系金融機関が中央銀行の資金繰り支援を背景に株式の直接購入に乗り出す方針を示したり、
ひと昔前ならば世界から批判の的になったであろう禁じ手のオンパレードで株価を下支えしているからだ。
足元の経済をみると、不動産バブルの崩壊、積みあがったシャドウバンクの不良債権、鉄鋼などの過剰在庫のヤマと、深刻な問題が一向に解決しない。
それどころか、最近まで年率で2桁の成長が当たり前だったのが、今年度は7%成長の維持すら覚束ない。
さらに、10年後を展望すると、年率「3.0%」と一段と成長が失速することもあり得ると危惧するシンクタンクも出てきた。
■このままでは市場の調整機能がマヒする
中国株高がそれほど長く続くはずがない――。
早くから、こんな見方は多かった。
なぜならば、中国株は2007年10月に上海総合指数が6124と史上最高値を記録した後、翌年のリーマンショックを挟んで3分の1以下に急落したにもかかわらず、
4兆元という巨額の経済対策で株価を人為的に下支えしていたからだ。
この間、地方政府の不動産投資を過熱させて経済と市場のテコ入れを図る挙に出たことで、不動産バブルの崩壊とシャドーバンキングが扱う「理財商品」のデフォルト問題を引き起こした経緯がある。
日本の7、8倍という粗鋼の余剰生産能力を抱えた鉄鋼メーカーなど製造業も、不良在庫の整理に困り“ダンピング輸出”に走っていた。
にもかかわらず、中国政府は個人消費の刺激に役立つとの判断から、中国株市場への資金流入を促す政策をとり、上海総合指数は昨年夏から今年6月中旬までに2.5倍に急上昇した。
6月12日には5166と2008年1月以来7年5カ月ぶりの高値を付けている。
だが、その後は勢いが続かず、同指数は7月8日までの間に3割以上も下げる事態になった。
下げ過程では、中央銀行にあたる中国人民銀行が2カ月ぶりの短期資金供給の実施と、政策金利と預金準備率の同時引き下げを決定したのを手始めに、当局は続々と株価下支え策を打ち出した。
中国財政省は年金基金による株式投資を容認する草案を発表し、証券監督当局は信用取引の規制緩和と、証券21社に対する1200億元を投じた投資信託の買い入れを命じ、政府系ファンドは投信の買い上げを発表する、といった具合だ。
さらに上海と深圳の証券取引所が売買手数料の3割引き下げをテコに株式への投資を誘因しようと試みたり、予定していた28社の上場を先送りにして需給関係の改善を試みる決定を下したりした。
なんとか落ち着きを取り戻す端緒になったのは、公安省が9日に打ち出した「悪意ある空売り」の徹底的な取り締まりの表明だ。
摘発を恐れた向きが多かったのだろう。
翌10日には、先物を買い戻す動きが活発化した。
信用取引のために株券や資金の貸借を行う中国証券金融が株式を買い始めたとの見方も広がったことも、株価の回復に寄与したという。
これらが呼び水になって、中国株は先週、主要国の株価の中で最大の上昇を記録したのである。
だが、中国の株価下支え策は尋常の策とは言えない。
異次元緩和の名の下に、日銀や年金積立金管理運用機構(GPIF)に大規模な株式や投資信託の買い入れを続けさせている日本政府には批判する資格はないが、中国のやり方は明らかに市場の価格形成機能をマヒさせるものと言わざるを得ない。
■悲観シナリオと「反日化」への不安
そこで、紹介しておきたいのが、保守的なことで知られる
老舗シンクタンクの日本経済研究センターが6月30日に公表した「アジア経済中期予測」報告書
の内容だ。
習近平総書記が掲げた「新常態」への移行を通じて、中国は経済成長のソフトランディングを目指しているとしながらも、
「生産年齢人口の減少や地方政府の債務増加など様々な構造問題の改革が進まず」、
実質GDP成長率(年率)は、標準シナリオで
「2020年で5.2%、25年で4.1%に」、
悲観シナリオで「25年に3.0%に」低下しかねない
としているのだ。
同報告書は、悲観リスクについて、
「中国が農業、戸籍、労働、土地、社会保険などの構造改革を行わなければ、
高成長が続いた国の成長率は急落する傾向が歴史的にある」
と中国経済がこれまで考えられないペースの減速に陥る可能性を指摘している。
日本のバブル経済崩壊が国力の転換点になったように、
GDPで世界第2位の経済大国に躍り出た中国の世紀も、
ついに「終わりを告げた」公算が大きい。
今後数年間は、中国向け輸出がさらに落ち込み、日本経済にとって依存できる外需は米国向け輸出が中心になるだろう。
一方、株価という経済の鏡をいくら磨いて見せても、長年のツケで、中国の実体経済の進退はいよいよ窮まりつつある。
もはや、そのことを覆い隠すのは難しい状況だ。
こうした時に、乱暴な指導者たちが採る常とう手段は、経済の他に不満のはけ口を作ることだ。
日米や東南アジア諸国が懸念する南沙諸島や尖閣諸島への中国の露骨な領土的野心の顕れや、習近平総書記のライバルとされる政治家たちの汚職問題の追及は、そうしたはけ口作りの色合いが濃い。
これまで以上に、我々は隣国との付き合い方に十分に注意を払う必要がありそうだ。
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現代ビジネス 2015年07月15日(水) 磯山 友幸
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44185
観光地、百貨店は大損害!?
株価暴落で「爆買い中国人」が姿を消す
銀座の家電量販店に押し寄せる中国人の姿も間もなく見られなくなる?
■テコ入れは無駄骨に終わる
中国・上海株の動揺が続いている。
上海総合株価指数は6月12日に7年5カ月ぶりの高値水準である5166を付けたが、その後、下落に転じ、7月8日には取引時間中に一時3500を割り込んだ。わずか1カ月で32%もの急落を演じたのである。
同じタイミングで問題が表面化していたギリシャの債務危機と重なって、世界の証券市場は大きく振り舞わされることとなった。
日経平均株価も激しい値動きに見舞われた。
上海株の暴落に対して中国政府は様々な市場介入策を打ち出している。
6月末に中国人民銀行が利下げに踏み切ったが、それでも株価下落が止まらないと見るや、政府が年金基金に株式での直接運用を認める方針を発表。
さらに、空売りの規制強化や証券会社による株式の買い支えなど露骨なテコ入れに乗り出した。
最終的には、全上場企業のほぼ半数に当たる1400社の取引が停止された。
株式市場に出て来る売り物をストップし、買い支える政策を打ち出したことで、ようやく上海株指数は下げ止まったかに見える。
7月13日には一時、指数が4000を回復する場面もあった。
では、これで上海株の動揺は収まったかといえば、そうではない。
歴史的にみれば、
市場原理を国家権力で捻じ曲げようとする行為は、ことごとく失敗
してきた。
中国株市場は中国の国内投資家しか売買できないA株が存在するほか、売買対象の株式の多くは国有企業で、中国政府が主要株主になっているものが多い。
もともと自由な市場とはかけ離れたいびつな市場ではあるのだが、それでも、
中国人投資家の行動を国家が統制することは簡単ではない。
■中国経済の限界が見えた
昨年7月の段階では上海総合株式指数は2000前後だったから、まだまだ含み益を持っている投資家も少なくない。
利益の出ているうちに売却してしまおう、という意識が働くことは想像に難くない。
売りが売りを呼ぶということである。
日本では、これまで何度も中国バブル崩壊が取り沙汰されてきた。
ここ何年もの間、経済誌の中国特集は、バブル崩壊モノと相場が決まっていた。
過去にバブルを経験した日本人からすれば、「いつか来た道」に見えるのだろう。
だが、それでも現実の中国経済は簡単には壊れなかった。
★.ひとつは中国内陸部に膨大な「フロンティア」を抱えていること。
経済成長が鈍化しても、他の先進国に比べれば、新しく生まれるパイの規模は大きかったのである。
★.さらに、市場原理だけで動いているわけではない国家統制経済という体制の違い
もあった。
だが、今回は、中国経済の歪みはかなり限界点に達しているように見える。
中国当局のなりふり構わぬ市場介入の異常さをみていると、そう思えてくる。
では、中国バブルが本格的に崩壊するとして、日本経済にはどんな影響があるのだろうか。
バブルの崩壊は主として中国国民が売買しているA株が舞台なので、海外投資家が直接損失を被る度合は大きくない、という識者もいる。
だが、隣国のマーケットが崩れれば、タダでは済まないというのが現実ではないか。
すでに日本の大手証券会社や銀行が販売した中国株投資信託は解約ができなくなっている。
上海市場で多くの銘柄が売買停止になったことが影響している。
中国株投信を持っている人からすれば、気が気ではないだろう。
だが、それ以上に問題なのは、中国の実体経済が悪化し、それが日本経済にどんな影響を与えるかだろう。
まっ先に影響が出始めるのは、日中間の貿易だ。
■6月の貿易統計に注目
2014年の日本から中国への輸出は金額ベースで対前年比6.0%増加、中国からの輸入も8.6%増えた。
前年の2013年は輸出9.7%増、輸入17.4%増だったので、伸び率は鈍化しているものの、いずれも大きく伸びていた。
日中間の貿易収支は2014年で5兆7949億円の赤字。
つまり、中国側からみれば貿易黒字を稼いでいるわけだ。
中国の実体経済が悪化すれば、日本からの輸出は減ることになる。
月別の貿易統計をみると、3月に前年同月比3.9%増だった輸出額は、4月には2.4%増、5月には1.1%増と鈍化の兆しが見られる。
5月の統計で、興味深いのは、電気機器などは輸出金額は増えているものの、輸出数量は減っていることだ。
半導体等電子部品は金額では15.1%増えていたが、数量ベースでは7.9%減っていた。
このほか、音響機器も数量では25%減、自動車も台数では44%減となっている。
5月は株価が大幅に上昇していた頃だが、もしかすると実体経済には陰りが出ていたのかもしれない。
もちろん季節要因もあるため、1ヵ月だけの統計では判断が付かない。
7月末にも発表される6月の貿易統計でどんな数字が出てくるのか。
さらに株価下落が鮮明になった7月の貿易にはどんな影響が出るのか、今後の数値から目が離せない。
もうひとつ、今後注目しておきたいのは、日本にやってくる中国人観光客の数だ。
日本政府観光局(JNTO)の推計によると、今年1~5月に中国から日本にやってきた人の数は171万6400人。前年の同じ期間は83万人だったから、2倍以上になった。
桜のシーズンだった4月には1カ月間で40万5800人が日本を訪れ、過去最多を記録した。
5月も38万7200人と前年同月の2.3倍だった。
■日本の消費が一気に冷え込む
中国人観光客のお目当てのひとつは日本国内での買い物。
都心の百貨店やドラッグストア、郊外のアウトレットなどで、大量に商品を買う「爆買い」が話題になっている。
もちろん為替が円安になったことで、中国人からみた日本の物価が大幅に安くなったことが引き金であることは間違いない。
だが背景には、中国で株価が大きく上昇したことで、保有する株式の価値が上昇したり、実際に売買益を得たことで、資金が旅行や消費に回っているものと思われる。
日本でも指摘される「資産効果」消費である。
上海株の大幅な下落が一過性ではなく、中期的に続くとすると、そうした資産効果に逆ねじが入る可能性も出てくる。
いわば「逆資産効果」だ。
保有株の価値が目減りしたり、損失を被ることで、一気に財布のひもを締めることである。
つまり、上海株の大幅下落が、日本で起きている中国人の「爆買い」を終わらせることになる懸念もありそうなのだ。
昨年4月の消費税率引き上げ以降、日本国内の消費は芳しくない。
そんな中でひとり気を吐いてきたのが「爆買い」だった。
百貨店の高級品や化粧品などは中国人観光客が今や最良の顧客になっている。
そんな爆買い中国人が姿を消すことになったら、消費が一気に冷え込むことになりかねない。
中国からの旅行者で賑わう地方の観光地もうかうかしていられない。
訪日外客数の7月、8月の統計が出るのはまだ先だが、これまで急激に増えていた中国からの来客数に変化が出て来るのかどうか。
今後も注目していきたい。
』
『
2015.7.16(木) The Economist
(英エコノミスト誌 2015年7月11号)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44307
中国株:市場の洗礼受ける中国政府
矢継ぎ早に打ち出した必死の株価対策、
経済改革のペースに疑問符
株価急落に対する中国政府のパニック的な対応は、経済改革のペースに疑問を投げかける。
ほぼ2年にわたり、中国における経済改革への期待は、ごくわずかな文言の変化を根拠としてきた。
中国共産党は、2013年後半に開催した幹部会議で、資源配分における「決定的役割」を市場原理に担わせると宣言した。
それまでは、市場原理の及ぼす影響力は「基礎的」なものとされてきた。
はなはだ心もとない拠り所ではあるが、この表現の変化が、中国政府が企業や貿易、金融に対する支配を緩めるのではないかとの大きな期待を支えていた。
このような期待は、7月第2週に入って起きた中国株式市場の暴落で打ち砕かれた。
現地時間7月7日の取引終了時には、中国各地の証券取引所に上場している2774銘柄のうち実に90%以上の取引が売買停止あるいはストップ安に陥った。
株価は1カ月足らずで3分の1下落し、3兆5000億ドルに相当する資産が吹き飛んだ。
これはインドの株式市場の時価総額を上回る額だ。
しかし、株価の急激な落ち込みやこれが中国経済に与える影響以上に憂慮すべきなのは、この暴落を食い止めようとして打たれた、中国政府のパニック的な対策の数々だ。
今回の株式市場の混乱は、現在の中国を率いる習近平国家主席と李克強首相にとって、就任後初の深刻な経済的汚点だ。
株式市場が受けた打撃を修復しようとする中国当局の試みは失敗に終わり、ただでさえ悪い状況をさらに悪化させただけだった。
今や、中国共産党が誤った結論を引き出し、中国経済を不安定性に対してさらに脆弱にするという危険性が生じている。
■危険信号となった赤旗
第1の過ち――中国に対して悲観的な見方をする人たちがよく犯すもの――は、今回の株式市場の急落が経済崩壊の予兆だとする考え方だ。
これはまずあり得ない。
確かにわずか数週間で中国の株式市場は3分の1下落したが、それでも3月のレベルに戻ったにすぎない。
1年前と比較すると、現状でも75%上昇しているのだ。
劇的な暴落の中で見過ごされているのは、中国経済に株式市場が果たす役割はまだ小さいという事実だ。
中国全土の株式市場における浮動株の時価総額(売買に供される株式の総額)は、国内総生産(GDP)の3分の1ほどで、100%を越える先進諸国と比べると低い。
家計の金融資産のうち株式に投資されているのは15%以下で、そのため株価が急上昇した際にも消費が押し上げられることはほぼなかった。
ゆえに今回の急落が消費に与えるダメージもほとんどないはずだ。
<<以下 有料版>>
』
『
2015.7.17(金) Financial Times (2015年7月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44328
中国株ショック、国内外に持続的な影響
人民元に下落圧力、
すでに減速しているアジア諸国に追い討ち
先週の中国株急落の光景は、世界金融危機の後に中国人が口にした自国の金融システムの優位性に関する満足げな発言を覚えている多くの西側観測筋の間に、他人の不幸を喜ぶ気持ちを引き起こした。
そのような満足感は理解できる。
この数日間ほど規制当局者と政府高官が必死になり、なすすべがないように見えたことはめったにない。
上げ相場の速度を緩めようとする取り組みは、当局者が予見できなかった株価急落を食い止めるための壮絶で多面的な取り組みと化した。
★.株価下落の多くの理由の1つには、喜んでお金を借りて、株価が上昇し続けることに賭ける投資家に資金を融通するシャドーバンク(影の銀行)の役割があった。
また、
シャドーバンクと、まさにこの脆弱性の原因を結びつけた外国人観測筋はほとんどいないが、識者は常々、
シャドーバンクは最終的に中国政府を悩ませることになると警告してきたではないか?
■「中国のロードランナー・モーメント」では済まない
ある大手銀行の最高経営責任者(CEO)は
「中国のロードランナー・モーメント」
に言及した。
アニメの鳥のロードランナーを追いかけまわす不運なワイリー・コヨーテのように、崖っぷちから飛び出してしまった経済が、地面がもう支えてくれていないことに気づき、落下する瞬間のことだ。
しかし、これは中国だけにとってのロードランナー・モーメントではない。
金融市場間のつながりがかつてないほど密になり、大きな揺れがあっという間に伝播する世界では、中国株の下落の波及効果は恐らく、クレジットや為替、コモディティー、国債を含むさまざまな市場で持続的な結果を招き、中国国内の外国企業の運命に影響を与えるだろう。
さらに中国経済は、過去よりずっと大きな基盤からとはいえ、すでに減速していた。
これは、中国が生み出す外貨準備が減り、諸外国に還流するドルが減ることを意味している。
同時に、中国政府は国内経済を助成し、株式市場の混乱が以前のように路上での暴動を引き起こさないようにするために支出を拡大する必要がある。
景気減速と、既存の準備金からバランスシートの穴を埋めるために使われるお金の増加という組み合わせは、米国債市場のような国外の投資先への公的資金の流れを減少させるかもしれない。
株式を発行するか、または市場での抜け目ない投資――多くの場合、借りたお金を使った投資――を通じて棚ぼた的な利益を上げることで債務を削減したいと考えていた多くの企業にとっては、株価下落はとりわけ悪いニュースだ。
今、こうした企業の債務はさらに膨らんでいる。
もしこれらの企業がドル建てで資金を借りており、ドル建ての収入が少なかったとしたら、アジアのドル建て債券市場における債権者は懸念を抱く十分な理由があるだろう。
■各国に多大な影響を及ぼす中国の需要減退
加えて、オーストラリアの鉄鉱石採掘業者から米国に本社を置く自動車メーカーに至るまで、あらゆる企業の懐を潤してきた中国の需要は、株価急落の前ですら、すでに軟化していた。
鉄鉱石価格は過去1週間だけで20%下落した。
主に、中国本土からの需要の下方修正を受けた動きだ。
最新の統計(過去10日間の混乱は反映されていない)は、中国の小売売上高が弱含み、(その9%を占める)自動車に対する需要が急減したことを示しており、クレディ・スイスはこれを「最後の成長エンジンが奪われた」と評した。
この数カ月、人民元がドルと足並みをそろえて上昇し、資本流出――昨年の大半の期間を通じて見られた特徴――が減ると、中国政府高官は公然と、通貨が高すぎると心配するようになった。
円安とユーロ安に直面し、輸出の見通しも怪しくなったように見える。
しかし、株式市場が30%下落し、これに応じて株価を支えるために金利や預金準備率が引き下げられた今、人民元にはむしろ下落圧力がかかっている。
貿易がほぼ横ばい状態にある世界では、人民元の価値の下落はどんなものでも、すでに成長の減速と月々の輸出の大幅減少に見舞われている東アジア、東南アジア諸国にさらに圧力をかけることになるだろう。
先週末までに、中国当局は空売り筋と外国ファンドを激しく非難し、先物取引の活動について外国証券会社を厳しく追及していた。
大揺れの株式市場の動きを何か単純なものと見なすと、大事なポイントを見落とすことになる。
株価下落の影響はこの先当分、中国本土と国外の双方で悲痛なものになるだろう。
By Henny Sender
』
『
ダイヤモンドオンライン 2015年7月17日 真壁昭夫 [信州大学教授]
http://diamond.jp/articles/-/75135
中国株バブル崩壊で見せた共産党政権の狼狽ぶり
■未成熟な投資家層と市場を理解していない政府
足元で、ギリシャ問題と並んで中国の株式市場の動向が世界中の注目を集めている。
人民銀行の金利引き下げなどの影響もあり、同国を代表する上海総合株指数は6月12日までの一年間で約2.5倍にまで跳ね上がった。
まさに“株式バブル”の状況だった。
バブルは永久に続くことはない。
その後、上海の株式市場は下落に転じ、一時は下落に歯止めがかからない状況となった。
株価の急落に対して、共産党政権はなりふり構わぬ株価下支え政策を打ち出し、7月9日~13日、株価はようやく10%以上反発した。
今回の中国株式市場の動向の背景には、個人投資家が取引の約8割を占めるという特性がある。
❏ 主要先進国の株式市場には、大きく分けて二通りの投資家がいる。
★.一つは機関投資家で、
投資理論などの専門知識を持ち、それなりの合理性を持って運用に当たることが多い。
★.もう一つのカテゴリーは個人投資家で、
彼らの多くは、どちらかというと機関投資家のように理論には精通していない。
その時の相場の雰囲気などに影響されることもある。
中国の個人投資家は、最近、口座を開設して投資を始めた人たちが多いと言われている。
彼らは、株式投資で儲かると思えば、資金を借りてでも投資を行う傾向が強いという。
同国の経済専門家の友人にヒアリングすると、「一種のギャンブル感覚で株式の売買をしている」と嘆いていた。
そうした売買が多いと、今回のように、どうしても株式市場は上下幅が大きくなる。
❏.もう一つの注目ポイントは、株価急落に対して、
共産党政権が慌てて、なりふり構わぬ“力任せの対策”を打ったこと
だ。
共産党政権は本当の意味で、市場の機能を理解していない
のかもしれない。
常に自信に満ちているように見えた、中国共産党政権の狼狽ぶりがよく分かる。
■政府の株価押し上げ策がバブルを発生させた
今年1~3月期、4~6月期の中国のGDP成長率はともに7%だった。
ただし、この数字を鵜呑みにしている専門家は少ない。
同国経済の総責任者である李克強首相でさえ、実際はさらに下振れ要素があると発言している。
重要な経済指標である電力消費量や鉄道の貨物輸送量などを見る限り、中国経済の現状はかなり厳しいと捉えるべきだ。
そうした実体経済からすれば、株価が大きく上昇することには疑問符が付く。
それにもかかわらず、株価は1年間で2.5倍にも上昇した。
その不思議を解く重要な鍵は二つある。
★.一つは中国政府の政策だ。
政府は景気下支えのため、矢継ぎ早に利下げを行うと同時に、株価を押し上げる方策を取った。
昨年11月、上海と香港の株式市場は取引の相互乗り入れを可能にした。
これによって、従来、制限されていた香港や海外投資家の中国本土への株式投資と、本土の投資家の香港株式投資が解禁された。
そうした措置は、中長期的に投資家層を広げる方策として相応の効果がある。
一方、短期的に資金流入が活発になることで、株式市場が活況を呈する場合がある。
今回の緩和措置は、中国株式バブル発生の引き金の一つになった。
そうした市場環境の変化に加えて、投資の習熟度がそれほど高くない国内の個人投資家が、一緒のギャンブル感覚で株式売買を行った。
しかも、人民銀行の金利引き下げによって、資金を借りて投資を行う“信用取引”のコストが大きく下がった。
個人の信用取引の拡大が、上昇し始めていた株価をバブルの水準まで押し上げる重要な要素となった。
投資に精通した機関投資家が多ければ、個人投資家の動きを幾分かは抑えることができたかもしれない。
しかし、中国の株式市場では、そうした思慮深い投資家の割合は低かった。
■強引な対応策は一時しのぎにすぎない
6月12日、上海総合株指数は約5166ポイントの高値を付けた後に下げに転じ、7月8日までに約32%下落した。
“上がるから株を買う”から、“下がるから株を売る”という逆回転が始まったのである。
その間、中国政府はなりふり構わぬ株価対策を講じた。
6月28日には4度目の金利引き下げを行い、29日には年金基金に株式運用を認める方針を発表した。
しかし、それでも株価の下落に歯止めがかからず、株価押し下げの要因となり得る新規上場を停止し、証券大手などによる株式の買い支えの方針を打ち出した。
さらに、中国人民銀行は、証券市場に潤沢な資金を供給することを明言し、国有企業や大手企業に株式の購入を求めた。
さらに、7月9日には証券当局の高官が、「悪意のある空売りを厳しく取り締まる」との姿勢を明言した。極めつけは、株式の取引停止を申請可能にする制度を導入した。
これは、企業自身が「自社の株式が売られて株価が下がりそうだ」と考えると、当局に申請して株の取引を停止することができる仕組みだ。
この制度によって、中国株式市場では一時、上場企業の約半分は取引することができなくなっていた。
株式売買を大きく制限する措置で、市場の本質的な機能を不全化する行為だ。
これらのなりふり構わぬ対策によって、7月9日~13日はとりあえず、株価は10%以上反発した。
しかし、これで問題のすべてが解決したとは言えない。
投資家の中には、売りたくても売れない株式を保有せざるを得なくなっている人もいる。
そうした投資家は、停止措置が少しでも緩めば保有株式の売却に走ることが想定されるからだ。
ということは、政府の強引な方策は一時しのぎにすぎず、今後、株価が不安定な展開を続ける可能性が残っていると見るべきだ。
■共産党の政権基盤が盤石でないことが浮き彫りに
今回の一連の株価動向とそれに対する政府の対応策を見て、より明確になったことは、中国の株式市場の未成熟さだ。
同国の株式市場は主要先進国の株式市場と異なって、投資理論などに基づいて効率的な投資を狙う機関投資家の存在が極めて少ない。
逆に、相場の勢い=モメンタムに動かされやすい個人投資家が中心であるため、どうしても株価の振れ幅の大きなマーケットになりやすい。
一方、市場の動きをコントロールすべき当局が、本当の意味で市場の本質を理解していない懸念がある。
それは、一連の首をかしげたくなるような力技の政策発動を見ても分かる。
これによって、中国の株式バブルの問題が完全に片付いたとは考えにくい。
それらを総合して考えると、同国の株式市場は未成熟と言わざるを得ない。
世界第2位の経済大国の株式市場と監督当局がそうした状況にあることを、われわれ自身が十分にリスク要因として頭に入れておくことが必要だ。
★.もう一つはっきりしたことは、中国政府の対応のまずさだ。
習近平主席の表情を見ていると常に自信に満ち溢れているようだが、実のところ、共産党政権のコントロールがすべての分野に及んでいるわけではないのだろう。
6月中旬以降、株価が下落する局面では、政府の狼狽ぶりと強引な政策が目立った。
その背景には、株価が大きく下落して多くの人々に不満が蓄積すると、政府の政策運営に支障が出る懸念があるのだろう。
あるいは、さらに進んで共産党政権を維持するのが難しくなることも考えられる。
中国の友人に尋ねても、
「景気が落ちていることや異民族のテロなどで、共産党政権に対する人々の信認は低下しているかもしれない」
と指摘していた。
その意味では、共産党政権は盤石の政権基盤を持っているとは言い難いのかもしれない。
今回の株価動向はそうした状況を浮き彫りにしていると言えそうだ。
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【中国の盛流と陰り】
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