香港は東京都あるいは大阪府の半分ほどの面積である。
これに最下位の香川県を加えて、狭い都府県ナンバー3となる。
ここの住民は720万人である。
埼玉県人口とほぼ同じになる。
つまり、東京都の半分の面積に、埼玉県と同じ人口が暮らしていることになる。
『
ニューズウイーク 2015年7月2日(木)17時28分 楊海英(本誌コラムニスト)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/07/post-3744.php
チベット化する香港が漢民族支配を脱する日
「高度な自治」との鄧小平の約束はどこへやら、
雨傘革命を経て香港民族の勃興が始まる
●雨傘革命 シンボルの黄色い傘を掲げ中国主導の選挙に抗議する香港市民 Tyrone Siu-REUTERS
「競馬もダンスパーティーもそのまま続ければいい」
と、赤い中国の第2世代の指導者・鄧小平が「鉄の女」サッチャー英首相に語ったのは82年9月のこと。
ヘビースモーカーの鄧はイギリスのレディーに少しも遠慮せずに絶えず足元の壺に痰(たん)を吐き捨てながら、
「もしも香港を中国に返還しなければ、武力行使もあり得る」
と話した。
困難な会談の中で、中国政府は香港とその宗主国に「港人治港」、すなわち「香港人による香港統治」と「資本主義体制は50年変わらない」とする構想を主張した。
2年後の84年12月には「一国二制度」を明記した「中英共同声明」が結ばれ、20世紀が幕を閉じる前の97年7月1日にイギリスが植民地香港を中国に返すことが決定された。
中国も国際社会との約束を守る時代になるか──。江沢民(チアン・ツォーミン)総書記が人民解放軍を香港に進駐させ、最後の香港総督クリス・バッテンがジェントルマンらしく船に乗って去っていったときに、チャイナウオッチャーたちはそう夢想していた。「港人治港」の政策が本当に50年間も変わらなければ、香港から自由と人権尊重の思想が北上して中国大陸に民主化をもたらす可能性もある──私も絶望と希望半々の気持ちでそう見ていた。
絶望的に考える理由は、中国のモンゴル・チベット政策にあった。
中国共産党は21年の結党直後から諸民族に「自決権」を付与すると声高に宣言していた。
諸民族がもし中国から独立したければ、共産党はその独立運動を支援するし、独立の意思がなければ中華連邦を共に建立しよう、と訴えていた。
■チベットやウイグルも注視した香港「高度の自治」
甘いスローガンはその後、日中戦争終戦後にも掲げられた。
蒋介石率いる国民党との内戦に勝つためには、引き続き諸民族を自陣営にとどめておく必要があったからだ。
内戦が有利に進むにつれ、民族自決の標語も次第に降ろされ、
漢民族による、漢民族のための中華人民共和国を樹立
したときにはもう何ら実権のない「区域自治」しか与えなくなった。
諸民族が共産党にだまされた歴史から、モンゴル人とチベット人、それにウイグル人は誰も北京が標榜する「香港の高度の自治」が本当に実現し維持できるとは信じていなかった。
希望も少しはあった。
仮に香港人の「高度の自治」が長期間にわたって持続できるならば、諸民族も同様の権利を求めようと内心考えていた。
漢民族同士で高度の自治を享受しながら、ほかの諸民族には実権のない「区域自治」しか下賜しないのはあからさまな差別だからだ。
チベット人の政教一致の最高指導者ダライ・ラマ14世法王も香港の「高度の自治」を注視し続けたし、モンゴル人やウイグル人の知識人たちもそうした希望を持っていた。
結局、共産党は自民族の香港人をチベット人やモンゴル人以上に「優遇」しなかった。
6月中旬、香港の立法会(議会)は中国政府が支持する特別行政区長官選挙の改革案を否決した。
中国寄りの議員は多くが退席し、賛成票を投じたのはわずか8人。
反対票を投じたのは民主派議員27人全員を含む28人。
法案可決には定数70の議会の3分の2以上の賛成が必要なため、成立しなかった。
法案は17年の行政長官選挙で香港市民に1人1票の直接選挙権を与える内容だったが、親中派しか立候補できない仕組みで、野党議員や民主派の活動家らは「偽の選挙だ」と反発してきた。
昨年秋に起きた大規模な「雨傘革命」と称する抗議運動も「50年間変わらない高度の自治」はすべて形骸化してきた事実を示している。
英国情緒が残る街を占拠した青年たちは今、「香港民族」という概念を打ち出している。
大陸の漢民族とは文化も精神も異なるので、当然、自決権を獲得する権利があるとの思想だ。
広東語と北京語はイタリア語とフランス語以上に違う、という言語学者の知見に即して考えるならば、香港民族の闘争は今後も続くだろう。
[2015年7月 7日号掲載]
』
『
サーチナニュース 2015/08/28(金) 17:46
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0828&f=business_0828_057.shtml
「一帯一路」に活路
――積極的不干渉を放棄=香港ポスト
梁振英・行政長官は先ごろ、香港が資本主義経済の発展モデルとして掲げていた「積極的不干渉」の放棄にあらためて言及した。
政府が適度に経済運営に介入したり産業政策を講じるべきとの理念は梁長官が就任前から主張していたものだが、
昨今の経済成長の低迷を受けてこれを強調し、
中国政府が掲げる「一帯一路」戦略への呼応に活路を求めている。
梁長官は8月初めに新華社のインタビューを受け、
「特区政府は経済発展の面では時代遅れの積極的不干渉の考え方を放棄すべき」
として、適度に企業への誘導・協調を図るとともに国家戦略の「一帯一路」によるチャンスを生かしてこそ香港の経済発展に有利になると説明した。
シンガポールや韓国との競争に対して
「政府が役割を発揮することを考慮せざるを得ない」
と述べ、政府は「一帯一路」専門機関の設置も検討していることを明らかにした。
「積極的不干渉」の放棄は梁長官がかねて表明していたものだが、新華社のインタビューをきっかけに財界派である自由党の鍾国斌・主席から批判が上がった。
梁長官はこれに答えるため8月25日付香港各紙に寄稿。
昨年11月に施政報告の諮問を行っていた際、自由党は広東省の香港系企業がミャンマーの香港工業園に移転するのを支援するよう提案したことなどを挙げ、
英国植民地時代の「積極的不干渉」政策なら絶対に受け入れられないことや、実は「積極的不干渉」時代は英国系企業が香港の各業界で特権を持っていた矛盾を指摘した。
さらに経済への「適度な介入」として、市場が優位性を発揮しているとき政府は干渉せず、
不動産投機、粉ミルク、越境出産の問題など、市場動向が香港市民や社会の利益に背くときは政府の介入が必要であると論じた。
梁長官は8月13日、中華全国帰国華僑連合会などが主催した「一帯一路」セミナーで講演。
特区政府の諮問機関である策略発展委員会、経済発展委員会、香港・中国本土経済貿易協力諮問委員会の委員を集めた連席会議を行い、「一帯一路」に関する意見を求め、すでに政府が討論・研究を行っていることを明かした。
政府の基本的な構想は、香港が4大支柱産業などを生かして「一帯一路」における
?資金調達・資産運用
?貿易・物流促進
?高付加価値・専門サービス
?多角的観光
?新興産業??
の5つのプラットホームの役割を担う。
?では人民元オフショア市場やイスラム金融への対応、
?ではASEANとの間で来年合意をめざす自由貿易協定、
?では鉄道・空港・港湾・発電所などのインフラ施設の運営・管理、
?では検査・計測・認証、クリエーティブ産業
などが強みになるという。
高官らによる「一帯一路」への言及も相次いでいる。
港区省級政協委員連誼会が8月5日に開催した「一帯一路」に関するフォーラムでは、特区政府財経事務及庫務局の陳家強・局長が「一帯一路」は香港の金融センターとしての地位を向上させると説明。
当局は「一帯一路」に関連する税務条例の修正案を来年度の立法会に提出し、企業が香港に資産運用拠点を置くのを推進することを明らかにした。
曽俊華・財政長官は8月16日、公式ブログで「一帯一路」戦略の下での香港のイノベーション科学技術産業の発展の余地を述べた。
提唱された5つのプラットホームのうち?の新興産業、特にイノベーション科学技術産業について財界からは「一帯一路」の恩恵があるかどうか疑問が出ている。
だが曽長官は
「香港の科学技術の水準は『一帯一路』でのインフラ施設の建設に貢献できる」
と指摘し、医療設備、汚水処理、通信、交通、エネルギーなどの分野を挙げた。
例えば香港科学園の企業が開発している光ファイバーによる熱センサーシステムは、電気ケーブルや鉄道、オイル管などの破損状況を予測して事故発生を防ぐことができ、香港科技大学が研究している汚水処理技術は「21世紀海上シルクロード」の沿線国家に適したものであると説明した。
■中国本土との連携に遅れ
袁国強・司法長官は8月20日、上海市で開催されたフォーラム「香港法律及解決争議服務研討会」で講演し、「一帯一路」によって中国企業が積極的に海外進出を行う過程で、複雑な国際商業・貿易ルールや法律環境に直面したり、詳細なリスク管理計画が必要になると指摘。海外投資の処理や海外資産の保護、国際商業争議の解決などで香港の法律・争議解決専門家が中国企業に多角的なサービスを提供できると述べた。また香港はアジア国際仲裁センターとして、国際的知名度を持つ仲裁機関の事務所が多いことや、1万人余りの地場弁護士と30カ国・地域から来た1200人余りの外人弁護士がいることを挙げ、1国2制度の下で「一帯一路」推進に向けた確かな法律サービスを提供できるとアピールした。
香港が「一帯一路」戦略による商機をつかむには、まず本土との連携強化が重要だ。梁長官が1月に発表した施政報告では経済分野について、国家の高度成長と優遇政策、本土の他の都市と異なる制度の優位性を生かすことが強調された。第13次5カ年計画に呼応するため、特区政府はすでに中央政府に提案を出したことや、広東省政府と広東省自由貿易試験区について積極的に協議することに言及した。
広東省自由貿易試験区は広州市南沙、深セン市前海・蛇口、珠海市横琴からなり、4月に設立された。国務院が発表した「中国(広東)自由貿易試験区総体方案」では、同試験区が本土と香港・マカオの深い経済協力を推進するとともに、21世紀海上シルクロードの重要ハブとして位置付けられ、香港・マカオの優位性を発揮して「一帯一路」建設に積極的に参加することが掲げられている。3~5年の改革試験を経て高度な国際標準の法整備や投資・貿易環境を備えることを目指す。特に人民元建てによる越境での決済、投資、融資、株式上場などを推進する金融分野での開放・革新措置が注目されている。
香港と珠江デルタ西岸を結び、広東省西部、広西チワン族自治区、ベトナムへの重要なルートとして戦略的意義を持つ港珠澳大橋も建設されている。梁長官が8月12日に珠海市を訪問した際、港珠澳大橋管理局の朱永霊・局長は海底トンネルの沈埋函33個のうち19個まで完成し、プロジェクトの最難関である海底トンネルが来年には貫通する見通しを明らかにした。梁長官と会談した珠海市の李嘉・党委書記も「本土側の主要工程は来年、基本的に完成する」と明言。港珠澳大橋の本土部分は来年完成することが確定的となったが、梁長官は記者会見で香港側の工程について「来年の完成は難しい」との見方を示した。香港での港珠澳大橋建設はさまざまな障害により完全に後れを取っている。
中国の発展から香港が取り残されていくことが警告され始めたのは約10年前だが、いよいよ切迫した状況となってきたようだ。
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【中国の盛流と陰り】
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