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2015.7.20(月) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44337
米国抜いて「世界の肥満超大国」になる中国
脂肪は文化の問題?
野菜をたくさん食べても太る理由
筆者は毎年、夏休みに家族で米国へ飛ぶ。
その際、上海浦東空港のチェックインカウンターで並ぶべき列を見つける絶対確実な方法がある。
並んでいる乗客の腹回りが一番立派な列だ。
一番太った人たちは皆、米国に向かうのだ。
だが、7月初めの中国紙によると、我が家はじきに新たな戦略を見つけなければならないかもしれない(出発便の表示板で便名を探すといった何か急進的な方法だろう)。
国営通信社の新華社は、中国は今、過体重もしくは肥満に分類される人口の割合が西側諸国を上回ったと報じた。
さらに興味深いことに、新華社は続けて、中国が推定で米国を抜いて世界の肥満超大国になった理由は、大半の人が想像するものではないと主張した。
ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)よ、リラックスするといい。
今回ばかりは、どうやらKFCのせいではないようだ。
■原因はファストフードではなく、むしろ火鍋?
人気チェーンのKFCを所有しているヤム・ブランズは、確かに中国のファストフード市場の揺るぎないトップ企業かもしれない。
だが、中国を太らせているのは、同社ではない。
原因はむしろ、火鍋にありそうだ。
近頃は、野菜さえもが中国人を太らせているようだ。
ますます豊かになることは、料理に用いる油脂の量を増やせることを意味し、どうやら、それが本当の原因のようだ。
火鍋や焼き肉のような、脂っこく、塩辛い食事である。
中国共産党の機関紙、環球時報は、いずれにせよ、すべてが二重思考だと述べ、
「肉製品を食べることが金持ちのライフスタイル(を送ること)と履き違えられている」
という専門家の発言を引用した。
新華社は、中国が今や西側より太っているという主張を裏付ける統計を一切示していない。
同社の記事は、国家衛生・計画生育委員会の研究を根拠としている。
研究によると、
★.中国では2012年に成人の3割が過体重で、その割合は10年前より3割膨れ上がった。
また、6~17歳の子供の1割近くが過体重で、その割合は2002年の2倍に上るという。
具体的な定義や他国の比較統計は示されていない。
しかし、たとえ中国がこの尺度でまだ世界を制覇していないとしても、まもなくするだろう。
肥満問題に関する直近の国際研究は、中国がすでに米国に次ぐ2位の座につけ、なお急浮上していることを示していた。
ここで、人々を太らせている例の野菜の出番となる。
2011年のある調査では、野菜を多く摂取し、ファストフードをあまり食べない、比較的裕福な家庭に育った中国の若者が、そうじゃない若者より太っていることが分かった。
「過体重関連の相関関係は、中国文化と西洋文化では異なる役割を果たしているように見える」。
この研究の著者らはこう結論づけた。
言い換えると、
脂肪は文化であり、肥満ブームはそれ以上に文化的だ
ということだ。
例えば、最近では中国の中間層が以前よりたくさんステーキを食べる余裕があることは明らかだ。
それほど明白でないのは、「なぜ彼らがそれをよいことだと思うのか」、だ。
■食に関する文化の違い
「リトルフィッシュ」というあだ名のユ・ペイディは、熱心に肉を食べるこの新世代の1人で、多くの同胞と同じように、それが実際、より健康的な選択肢だと信じている。
彼の30歳の誕生日に、数人で昼食をともにした。
だが、彼は自分の食習慣を大きく変える計画はない(最近の健康診断で、肝臓あたりに心配の種があることが分かったにもかかわらず、だ)。
「牛肉は身体にいいと思う。
タンパク質が豊富だし・・・食べたら太るのだとすれば、豚肉よりずっと栄養価が高いんだろう」。
上海のパブで照り焼きビーフをガツガツ食べながら、彼はこう言った。
西側の多くの人は牛肉が心臓に悪いと考えていることを知っているかと尋ねてみると、彼は仰天した。
では、中国人以外の多くの人がエビがコレステロール値にとって悪いと考えていることを知っているか?
これも聞いたことがないという。
どちらが正しいのか、筆者には全く分からない。
要は、我々の2つの文化の食に対する信念が大きく異なるということだ。
筆者は、中華料理は全体的に見て、洋食よりも健康的だと考えている。
そして彼は全体的に見て、その逆だと考えている。
そんな話をしていたら、筆者の同僚の中国人女性がおもむろに口を開き、自分は体重を落とすために1日に1個アボカドを無理やり食べるようにしていると言った。
筆者はこれに対し、全く同じ理由から何十年間もアボカドに触れていないと告げた。
静脈と動脈もきっと文化の問題なのだろう。
■スポーツジムは大盛況だが・・・
幸運にも、我々はもっと頻繁にスポーツジムに行くべきだという点で話が合った(あるいは、リトルフィッシュの場合、とにかく通い始めるということ)。
彼の両親はどこに行くにも自転車と徒歩なので、運動をする必要がない。
しかし、中間層で専門職に就く彼の世代の人間は、選択肢がないことを知っている。
スポーツジムは中国のすべての都市でブームとなっており、リトルフィッシュも近く入会する予定だ。
彼の近所のショッピングモールには間違いなく、ジムが新たにオープンするだろう――何軒もの新しいステーキレストランのすぐ隣に。
By Patti Waldmeir in Shanghai
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【中国の盛流と陰り】
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