2015年7月11日土曜日

中国市場バブル崩壊(3):中国株急落で深く傷ついた共産党の威信、なりふり構わぬ対応へ

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●東洋経済オンライン


ロイター 2015年 07月 10日 17:27 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PK0ON20150710

コラム:中国株急落で深く傷ついた共産党の威信

[ロンドン 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
  今回の中国株急落の影響は、揺れ動く市場そのものを越えて、はるか遠くにまで及びそうだ。
 1カ月にわたる株安は政府が最近打ち出した市場原理導入の方針に疑問を投げかけ、
 政府はそのぶざまな対応ぶりから金融システムの統制力が限られることが露わになった。

 今後は広範囲にわたる改革が苦境に陥るだろう。
 全体像をある程度把握する必要がある。
 株式市場の下落は劇的だ。
 9日の上海/深センCSI300指数は高値から28%下げた。
 ただ、その直接的な影響は対処可能なはずだ。
 同指数は3月末の水準に戻っただけで、年初来ではなおプラス圏を保っている。

 3兆ドルの富が吹き飛んだという主張は、中国の株式市場では時価総額全体の約40%分の株しか自由に取引されていないという事実に目をつぶっている。
 残りの株は経営権を握っている投資家が保有し、その大部分は政府機関だ。
 クレディ・スイスによると、
 中国の家計資産のうち株式の占める比率は9.4%にすぎず、銀行預金や不動産の方がはるかに重要だ。

 しかしだからといって当局は強力な市場テコ入れ策を止めたりはしなかった。
 証券監督管理委員会の肖鋼委員長と中国人民銀行(中央銀行)の習小川総裁はこの2週間に金利の引き下げや新規株式公開(IPO)の認可停止など対応策を次々と打ち出した。
 最も注目を集めたのは大量に株式を保有する株主を対象に6カ月間売却を禁じた措置。
 さらに大手証券は中銀の支援を受けて、中国株式市場を下支えるため総額1200億元(190億ドル)相当の資金を株式投資に充てると発表した。

 非当事者の大多数は、当局がバブル状態の市場を支える必要があると感じたことに当惑した。
 株式市場の状態は、わずか数週間で財を成すことが可能であり、出来高は驚異的で、農家や年金受給者が実体の不明瞭な銘柄に資金を投じていたのだから。

<決定的な役割>

 中国当局が懸念するのは、信用取引を行ってる投資家が借り入れ資金の返済に窮し、広範な金融危機を誘発する展開だ。
 公式統計によると証拠金残高はピーク時で2兆3000億元で、管理可能な水準に見える。
 しかし一部の投機筋は住宅ローンや「影の銀行」から借り入れた資金を投資に回している。
 この数カ月は企業が株式を担保に充てるケースも増えている。

 どう説明しようとも、株式市場での売りを止めようとする当局の取り組みは、習近平国家主席や李克強首相が2013年に打ち出した、経済において市場に決定的な役割をもたせるという約束とは平仄が合わない。
 売りを防いで買いを促すという取り組みは脇に置くとしても、当局は約1500社、時価総額が合計で約2兆8000億ドルもの企業の株式売買を停止した。

 こうした過激な政策が導入されれば、投資家は市場からなおさら逃げ出したいと思うだけだ。
 香港は1987年10月にこうした教訓を学んでいる。
 このときは株式市場が4日間にわたって売買停止となり、再開後に1日で株価が43%暴落した。
 中国では投資家が現金を求めており、売りの対象が債券やコモディティにも広がっている。

 中国当局が市場のテコ入れに動くのは珍しいことではない。
 この数年は国も地方政府も住宅価格の下落を食い止めるために様々な措置を繰り出してきた。
 社債がデフォルトになる恐れがある企業に対しては、密かに支援も行った。

 しかし株式市場はもっと人の目に映りやすい。
 株価が実際に急落すれば、政府に忠実な幹部といえどもすべてがうまく行っているふりをするのは難しい。

<大惨事>

 株安がまず直撃するのは、株式市場を外国人投資家に開放する計画だろう。
 今回の一件で国内の株式市場はまだ十分に成熟しておらず、国際的なベンチマークに組み入れるのは無理だと主張してきた株式指数算出機関はその意を強くするだろう。

 さらに重要なのは、広範な経済改革が遅れたり、軌道を逸れる恐れがあることだ。
 中国は年内に金利自由化作業を完了する見通しで、同時に資本統制を緩和して外国人投資家による金融システムへのアクセスを拡大しようとしている。

 中国の政府当局者が、株式市場のほんの一時的な動揺で世界第2位の経済大国を改革する青写真が崩れ去るのを手をこまねいて見ているとは信じがたい。
 実際、当局が市場介入は無益であり、改革を加速させるべきだとの結論に達する可能性もある。

 しかし共産党にとって株価急落の最も厄介な点は、市場を操作しようとしたという事実ではなく、
 取り組みが効果を挙げなかったことが白日の下にさらされた
ことだ。
 株価が足元で下げ止まろうとも、
 共産党の経済運営能力の面での威信は国内でも国外でもいたく傷ついた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



サーチナニュース  2015/07/11(土) 06:02
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0711&f=business_0711_004.shtml

中国株のリスク・・・政府が国民の信頼を失う=韓国華字メディア

 韓国メディア・朝鮮日報の中国語版は10日、値動きの変動幅が大きくなり、急騰と急落を繰り返す中国の株式市場が世界経済に不安をもたらしているとし、
★.中国株急落における最大の問題は
 「過去数十年間にわたって中国の経済発展を導いてきた中国政府が中国国民の信頼を失うこと」
と伝えた。

 記事は、中国株式市場は6月中旬まで世界でもっとも上昇率の高い市場だったとし、2014年6月から1年間で上海総合指数の上海総合指数日足チャート は2倍以上に上昇したと伝え、多くの個人投資家に富をもたらしたと紹介。

 一方で、15年6月以降は上海総合指数の上海総合指数日足チャート がわずか3週間で30%以上も急落し、大混乱を招いたと指摘。
 9日には上海総合指数の上海総合指数日足チャート が大幅に反発し、10日も午前の取引は大幅に上昇しているものの、
 「株価急落に対して中国政府は下支え策を打ち出しており、再び株価が急落するようなことがあれば、さらに下支え策を打ち出すだろう」
とし、“モグラ叩きゲーム”のような局面を迎えていると指摘した。

 さらに、世界の金融市場ではギリシャの債務危機よりも中国株式市場の動揺のほうが影響は大きいとし、中国株式市場の値動きが日本や韓国、米国の株式市場を左右していると伝えた。
 また、フランスの大手金融機関ソシエテ・ジェネラルの予測を引用し、
 「中国の株価急落は中国の国内総生産を最大で1%押し下げる可能性もある」
と伝え、中国は資源輸入大国であるため、中国株の急落はコモディティ(商品)に波及することを恐れる声があるとした。

 また記事は、
★.中国には約9000万人の個人投資家がおり、うち3分の2の学歴は高卒以下
であると指摘。
 さらに米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道を引用し、
★.中国では農民が仕事を放棄し、借金をして株式投資をしている
と紹介。
 さらに、中国株急落における最大の問題は
★.「過去数十年間にわたって中国の経済発展を導いてきた中国政府が中国国民の信頼を失うこと」
と伝えた。



ニューズウイーク 2015年7月10日(金)18時48分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/07/post-3764_1.php

中国の金融市場自由化、株価急落で大きく後退
強引な市場介入を進める政府に
中国内の投資家からも批判の声

[上海/香港 9日 ロイター] -
 中国は金融自由化を着実に進めていたが、先月から始まった株式市場の急落でそうした歩みが後退している。
 中国指導部は2013年、資産価格の決定で市場に「決定的な」役割を担わせると約束。
 ただ、今では株式市場に対する前例のない介入を余儀なくされている。

 ガベカル・ドラゴノミクス(北京)のアナリスト、アンドリュー・バトソン氏は
 なりふり構わない介入は、改革に向けた政府の決意の信頼性や実行力に疑念が生じさせるだろう」
と指摘する。

 例えば、今年3月には株式新規公開(IPO)手続きの改革が打ち出されたが、需給悪化を恐れる政府はこのほど、複数の企業にIPO計画を中止するよう指示した。

 また、証券各社は政府の意向に従い、総額1200億元(190億ドル)を株式購入に充てると発表。これは証券各社の海外展開に向けた資金も損なうことになる。

■パイプ役の香港も打撃

 中国市場に海外から資本を呼び込むためのパイプ役を担う香港も打撃を受けている。
 昨年11月には上海と香港市場の株式相互取引が始まったばかりだ。

 ハンセン指数<.HSI>は4月の高値から16%下落。
 香港取引所<0388 .hk="">の株価下落率はその2倍強に達している。

 香港取引所の経営陣はこれまで、深セン株式市場との相互取引、債券や商品の相互取引といったその他の中国関連プロジェクトに期待感を示していた。

 香港取引所株を保有するある投資家は「出来高の落ち込みや、中国の市場改革がストップする可能性が意識され、香港取引所の株式に売りがかさんでいる」と話す。

■「健全な市場なら介入不要」

 MSCIは先月、ベンチマークとなるエマージング・マーケット・インデックスに中国A株を採用するのを見送ると発表。
 A株市場の自由化やアクセス性への懸念が背景となった。

 実際に自由化やアクセス性は後退。中国証券監督管理委員会(証監会)はこのほど、持ち株が5%以上の株主を対象に向こう6カ月間、株式売却を禁止する措置を発表した。

 証監会にコメントを求めたが、回答はなかった。

 金山資産管理(ゴールド・マウンテンズ・アセット・マネジメント)の陳晴・執行取締役は
 「(こうした措置を取れば)外国人投資家の懸念を強めることは間違いない」
と話す。

 国内投資家も同様だ。
 国有企業に勤務するという個人投資家の女性チャンさん(50)は
 「健全な市場なら政府の介入は不要なはずだ」
と語った。

(Pete Sweeney記者、Michelle Price記者 執筆協力:Umesh Desai, Saikat Chatterjee and Lawrence White 翻訳:川上健一 編集:田中志保)



ダイヤモンド・オンライン編集部 2015年7月10日
http://diamond.jp/articles/-/74746

中国株バブル崩壊が世界に与える傷の深さ

■なりふり構わぬ株価維持策
安定にはまだ時間を要する

中国政府当局の対応は、まさになりふり構わぬものだった。

 6月12日、ついに中国株式市場のバブル崩壊が始まった。
 この日の上海総合指数5166ポイント、深セン総合指数3141ポイントを頂点に、中国の株価は坂を転げるように急落。
 これに対し、政府当局はありとあらゆる策を打った。

 追加利下げ、
 取引手数料の引き下げ、
 年金基金による株式への投資上限引き上げ、
 信用取引の規制緩和、
 信用取引の追証規定の廃止、
 新規株式公開(IPO)の停止、
 適格外国機関投資家(QFII)の投資枠拡大、
 持ち株比率5%以上の大株主の株式売却を禁止、
 政府系ファンドや証券会社を動員しての買い支え、
さらには
 警察による“悪質な空売り”の捜査
──もはや“何でもあり”である。
 何より、
 上海・深セン両市場で約半数の銘柄を取引停止に至らしめた
ことは、世界の市場関係者を驚愕させた。

 そこまでやっても、株価の下落は止まらなかった。
 6月12日から7月8日までの下落幅は、上海総合指数で32%、深セン総合指数で40%に及ぶ。
 7月9日、相場はようやく反発。
 今度は上海総合で6%、深セン総合で3%という急上昇を見せたが、これで投資家の動揺が収まったとは思えない。

  「取引停止を解除したときにどうなるか。
 上下10%以上も株価が振れる状況が1ヵ月以上続いており、市場は疑心暗鬼になっている」(西濱徹・第一生命経済研究所主席エコノミスト)

  「政府当局の対策は、株価をある程度下げ止める効果はあるだろうが、上げることは期待できない。
 押し上げに寄与するのは大手証券会社21社が1200億元を拠出してのPKO(株価維持策)だけだが、
 市場の規模と比較すれば額が小さく、効果が出る期間が短い」(齋藤尚登・大和総研主席研究員)

  「投げ売り状態になっている。
 政府系ファンドや証券会社に買わせているものの、どこまで下がるか想定が難しい」(三尾幸吉郎・ニッセイ基礎研究所上席研究員)

 まだ当分、不安定な状況が続くのは必至だ。
 問題は、どの水準で安定するかである。

 専門家の間では、上海総合指数で「3400ポイント」が節目だとする意見が多い。

 中国の株価上昇は、昨年11月の利下げを契機に始まり、今年3月以降に急加速した。
 減速があらわな実体経済との乖離は、春の時点から指摘されていた。
 “買うから上がる、上がるから買う”という明らかなバブルであり、崩壊は時間の問題だった。

 そのバブル状態になる前の時点、今年1~2月の最高値の水準が「約3400ポイント」だ。
 7月9日の上海総合指数の安値が3374ポイントであり、現在、まさにそこでの攻防が繰り広げられているわけだ。

 ただ、“異常な値上がり”の後には“異常な値下がり”があるのが常だ。
 3400ポイント、あるいは多少の下ブレを見込むとして年明け以降の下値である3100ポイントの水準を切ると、売りが売りを呼ぶ展開が収まらない可能性がある。
 場合によっては、一年前の水準である2000ポイント台まで下落することもあり得よう。
 「だからこそ、政府はなりふり構わぬ防衛策を取った」(西濱主席エコノミスト)。

■実体経済への影響は軽微
日本での「爆買い」も続くか

 もう一つの問題が、中国の実体経済への影響だ。
 ひいてはそれが、日本経済、世界経済への影響度を左右する。

 直接的に影響するのは、消費である。
 中国の株式市場は売買代金で個人投資家が8割を占め、国民の10人に1人が投資家であると言われる。
 そこに損失が生じれば、逆資産効果、つまり家計や心理面を通じての消費下押しが無視できない。
 そして中国経済自体がいっそうの減速となれば、中国への輸出比率が高い米国、欧州、日本、新興国へと、その打撃が波及することになる。
 日本にとっては、中国人観光客による「爆買い」への影響も懸念されるところだ。

 三尾上席研究員は、
 「4000台に戻って安定するのか、3000より下で安定するのか、それによって大きく違う」
とする。
 4000台なら、昨年の今頃からすれば2倍の株価であり、その頃に買った投資家はかなり儲けていることになる。
 一方、バブルに入ってから高値づかみをしてしまった投資家はかなりの損をすることになるが、
 「両者の影響を相殺できるのが4000ポイント程度。
 3000を下回ると、プラスの人がほとんどいなくなる」。

 現時点では、手段を選ばぬ政府当局の対応策もあって、3200~3400ポイントで踏みとどまるのではないか、というのが多くの専門家の観測だ。
 そうなれば、実体経済への打撃も軽微で済みそうだ。

 春以降、信用取引等で過大な投資を行っていた個人投資家は大損失を免れ得ず、既に自殺が相次いでいることなども報じられているが、
 そうした人々は「時価総額に占める比率で見れば、多くて1割程度」(三尾上席研究員)であり、経済全体への影響は大きくないとの見方が多い。

 さらに、そもそも株価上昇による消費喚起が起きていなかった、ということもある。
 政府には、住宅や株式という資産価格を上げることで消費を活発化する狙いがあり、そのために昨年11月以降、利下げや住宅取引規制の緩和を行ってきたのだが、目論みに反して「消費は底堅い、という程度の動きでしかなかった」(齋藤主席研究員)。
 消費がGDPに占める比率も3割程度しかない。
 つまり、株価下落で剥落するものが、もともと大してない、ということだ。

 また、今回のバブル局面で投資を行っていたのは庶民層が主で、中国の消費動向に大きな影響を及ぼす富裕層は、あまり動いていなかったとの見方もある。
 日本で「爆買い」を行っていたのも富裕層だ。
 依然として円安・人民元高が続いていることもあり、その面での影響も、さほど心配はいらないかもしれない。

■より重大な問題は改革路線の後退リスク

 無論、先述の通りさらなる下落のリスクが消えたわけではなく、予断を許さない。

 さらに中長期的に見た場合、より重大な問題は、今回の株価下落とそれに対して政府が行った方策が、習近平政権が進めようとしていた経済成長モデルの転換を後退させる可能性が高いことである。

 「政府当局が行った株価下支え策は、2013年11月の三中全会でうたった“市場機能の重視”という方針に逆行する」(齋藤主席研究員)

 「なりふり構わぬ防衛策は、つまり問題の先送りにすぎない。
 また消費喚起の道半ばの頓挫で、現政権がスローガンとして打ち出した
 “新常態”への転換が、簡単ではないことが明らかになった(西濱主席エコノミスト)

 7月15日に発表される4~6月期GDPも、注目要素となるだろう。
 成長率は政府目標の7%を切るとの予測が大多数だが、これが投資家心理に悪影響を与える恐れがある一方で、結果が悪ければ景気対策への期待が浮上し、かえって株価が上昇する可能性もある。
 要は市場が政府に刺激策を催促する形だが、それに応えれば改革路線はいっそう後退することになる。
 「当局としては頭を悩ます展開」(西濱主席エコノミスト)だ。

構造転換・改革路線の後退は、中国経済が“ハードランディング”するリスクを増す
ことを意味する。
 世界経済にとっては、むしろそのリスクの方が大きい。

(ダイヤモンド・オンライン編集部 河野拓郎)



朝日デジタル 2015年7月12日05時30分
http://www.asahi.com/articles/ASH7C5QKZH7CUHBI02D.html

中国、力任せの株価対策 
市場ルール軽視に懸念

 急落が続いていた中国の株式市場は10日まで2日連続で反発し、パニックは収束の気配を見せ始めた。
 政府の力任せの株価対策が効果を発揮しつつある格好だ。
 ただ、市場ルールを軽視したとも取れる対策が、市場をゆがめたことの「副作用」も懸念される。

 代表的な指数の上海総合株価指数は8日、直近のピークから32%安まで下落したが、その後の2日間で同25%安まで値を戻した。

 株価が暴落して個人投資家が財産を失えば、社会不安につながる可能性がある。
 これを恐れて中国政府は4日以降、なりふり構わぬ市場への介入に乗り出した。
 値下がりの要因となる新規株式の発行を停止。
 国有証券大手を中心に株式の買い支えを打ち出した。

 対策は日を追ってエスカレートした。
 理論上は無限にお金を刷ることができる中央銀行の中国人民銀行が、国策会社を通じて証券市場に資金を供給すると発表。
 株の買い支え指示はほとんどの国有企業に広がり、上場企業の大株主も株の買い増しを求められた。

 9日には捜査機関まで加わった。孟慶豊・公安省次官が証券監督当局に乗り込み、「悪意のある空売りを取り締まる」とアピールした。
 国内からは「法的には不透明だ」(上海の研究者)と批判も起きた。

 自社株の取引停止を申請できる制度の利用も殺到し、8日からは全上場企業の約半分が取引できない異常事態が続く。
 取引される株の数をしぼり、株価の上昇をねらった当局の意向、との見方もある。

 停止している銘柄の取引再開や、政府の対策が終わる「出口」が今後、市場の波乱要因となりそうだ。
 みずほ銀行(中国)の細川美穂子主任研究員は
 「中国市場から離れる投資家が出てくる可能性もある」
と長期的な影響を指摘する。



 傷ついた中国政府が国民への威信回復にかけたのは日本でも過去によく行われた
 「公共投資の前倒し」
という手法。


ロイター 2015年 07月 8日 20:11 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0PI17Z20150708/

中国政府、成長支援で2500億元支出へ 公共事業も前倒し

[北京 8日 ロイター] -
 中国国務院(内閣に相当)は8日、中国経済で支援が最も必要な分野の成長を促すために
 「2500億元(403億ドル)」
の支出を行うと発表した。

また道路建設などの大規模な公共事業を前倒しで実施する方針も明らかにした。

大幅な下落が続く株式市場については言及しなかった。



現代ビジネス 2015年07月13日(月) 真壁 昭夫
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44144

安定か混乱か、世界が注目
中国政府の「株価急落対策」は効果があるのか

 7月に入り、中国株式市場の動向に注目が集まっている。
 6月から上海総合指数は急上昇し、同月12日には一時、リーマンショック後の高値を更新した。
 しかし、上昇相場は長続きせず、その後急速に下落した。

 株価の不安定な展開は中国経済に対する懸念を高め、世界的に株価が不安定になったり、鉄鉱石や原油など商品市況にも下落圧力をかけている。

 急落した株式市場への懸念を抑え込むために、中国政府は矢継ぎ早に思い切った対策を打ち出した。 株価対策が急速かつ大規模に打ち出されたことを受けて、市場の懸念はひとまず沈静化したとの見方もある。

 しかし、中国の実体経済は未だ不安定な状況を脱していない。
 そうした実体経済の動向を見ると、今後、中国株式市場が不安定に推移する懸念は残っている。

■なりふり構わぬ下落対策も効果なし?

 6月下旬以降、株価の下落を食い止めるために、中国はなりふり構わず思い切った対策を打ち出した。
 主な対策は、
中央銀行による利下げや
流動性の供給、
IPO(株式の新規公開)の制限、
証券会社などによる株式買い入れ、そして、
株式の売買の停止
がある。

 政府は思い切った対策を打ち出すことで、投資家の信頼を回復させたかったのだろう。
 しかし、対策導入後も相場は下落し、6月末から7月8日までの間、上海の株価は約18%下落した。
 この間、中国政府はさらになりふり構わず次々に策を発表した。
 売買停止の強化だけでなく、
 公共投資の前倒し
も発表して懸念の払しょくに努めた。

 こうした矢継ぎ早の対策を受けて、漸く、7月9日、10日の間に相場は10%反発した。
 ファンドマネージャーの一人は、
 「ひとまず悲観論が後退し、市場は落ち着きを取り戻しつつある」
と話していた。
 しかし、景気の先行きを考えると、依然、相場の下方リスクが意識されやすい状況に変わりはない。

 一連の対策は、取り敢えず中国の株式市場に落ち着きをもたらすことだろう。
 しかし、これで株式市場が安定に向かうかと言えば、そう簡単ではない。
 かなりの懸念が残っている。
 過度な期待は禁物だ。
 基本的に、相場安定化策は市場機能を低下させやすい。
 特に売買停止の結果、特定銘柄への売り圧力は解消されづらくなっている。
 流動性低下も懸念される。

■中国経済はあまりに脆弱

 この状況下、多くの投資家にとって、市場全体の適切な水準がどの程度なのか把握しづらくなっている。
 そのため、買い意欲は一時的な反発を狙った短期的なものになりやすい。
 その結果、指標の悪化などを受けて相場は上下に大きく振れやすくなると考えられる。

 中国政府にとって、株式市場の緩やかな上昇は景気減速への不満を解消するために重要だったと考えられる。
 しかし、相互取引などの結果、想像以上のスピードで中国の株式バブルが発生してしまった。

 その結果、中国経済のファンダメンタルズは、政府による強力な介入なしには下支えが利かないほど脆弱な状況にある。
 今後も中国政府は株式市場や景気刺激を狙った対策を打ち出す可能性がある。
 それが景気回復、そして、相場の安定につながるのか、世界経済の状況と併せ、冷静に検討する必要がある。



東洋経済オンライン 2015年07月13日 三尾 幸吉郎 :ニッセイ基礎研究所 上席研究員
http://toyokeizai.net/articles/-/76594

崩れ落ちた中国株、
相場暗転で何が起きるか
政府は矢継ぎ早に株価対策を実施

 上昇一辺倒だった株式相場が瞬く間に暗転してしまった。
 中国の代表的な株価指数である上海総合指数は、直近1年で2倍以上にハネ上がり、年明け以降も6割上昇。
 その伸び率は世界の株式市場の中でも突出していた。
 ところが、6月12日につけた5166.35ポイント(終値ベース)をピークに、3週間余りで3割以上下落した。

 急落のきっかけは複数挙げられており、中でも、
★.高騰に警戒感を強めた中国政府が6月上旬、「場外配資」と呼ばれる株式投資向け融資の規制に乗り出したことが大きい。
 年初来高値をつけた同月12日、新規公開株の急落で損失を被った投資家が自殺したとの報道がなされたのも、センチメントの急激な悪化に影響を及ぼしたと考えられる。

■個人投資家が意欲的だったワケ

 市場ではこれ以上の需給悪化を防ぐため、30社近くの新株発行計画が凍結された。
 ほかにも、証券会社と政府系ファンドによる株式相場への多額の買い支えが発表されるなど、政府は矢継ぎ早に株価対策を打ち出している。

 相場の雰囲気がガラリと変わったのは、これまでの株価上昇が景気実態を反映したものではなく、あまりに期待先行で買い進まれてきた側面が強かったからだ。
 工業生産の推移をはじめ、代表的な景気指標は2014年から低迷しており、同年11月から今年5月に至るまで、中央銀行である中国人民銀行は3度もの利下げを行っている。

 にもかかわらず、相場の“主役”である個人投資家の意欲は、なぜ衰えなかったのか。

 一つは、金融不安の沈静化がある。
 一時、中国では通常の融資とは別の「影の銀行」と呼ばれる取引で積み上がった、財テク商品や社債のデフォルト懸念が高まっていた。
 これに対し、中国人民銀行の金融緩和のほか、追加的な景気対策も功を奏し、市場は落ち着きを取り戻した。

 上海市場と香港市場で相互に株式取引を開放する方針が伝えられ、海外資金が流れ込むとの期待も高まった。
 国際的な株価指数を算出する米モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルが、中国本土株を新興国株価指数に組み入れる検討を始めたことで、需給の改善期待を一段と高めたのである。

さらには今年3月、中国共産党の機関紙である人民日報(海外版)が「上海総合指数は年内に4000ポイントを突破する」と報じたことも、個人投資家の心理を大きく後押ししたはずだ。足元の景気は不調でも、政策期待と4000ポイントの“お墨付き”によって、個人投資家の資金がさらに流れ込んだのだろう。

 状況が一変したことで懸念されるのは、個人投資家に対するデレバレッジの影響だ。
 株価急落により残高は減少したとはいえ、上海証券取引所の信用買い残は直近でも1兆元を超えている。これは前年同期比で4倍以上の規模だ。

■大量に残る信用買い残

 6月下旬、中国証券監督管理委員会の報道官は、相場の下落について、「先の過剰上昇に対する自発調整」と楽観的な見解を示していた。

 しかし、いっそうの株価下落で信用取引の追加保証金が支払えず、投資家が損切りに追い込まれると、売り圧力がさらに膨らむ。
 2014年前半に1日当たり1000億元だった売買代金は、ピークアウトする直前の6月上旬には1兆元超。
 一連の買い支え策で相場が落ち着いたとしても、含み損を抱えた投資家の“玉”が出てくることで、回復の頭を抑えかねない。

 くしくも株式市場の大崩れと前後して、工業生産や不動産市況が底を打つなど、一部の景気指標には明るさも見られていた。
 今年3月、日本の国会に相当する全国人民代表大会で掲げられた、2015年のGDP(国内総生産)成長率の目標は7%前後(2014年の実績は7.4%)。
 第1四半期(1~3月)は7%だったが、7月15日に公表される第2四半期(4~6月)には、7%を切る可能性が高い。

 政府としては、第2四半期の結果を底に回復に向かい、年間目標を達成するのがメインシナリオだったはず。
 個人投資家の心理が株価下落で急激に冷え込めば、消費に影響が及び、景気回復に思わぬ水を差す。
 あの手この手で、株価下落を食い止めようとする中国政府の姿勢は、不安の裏返しに違いない。

(「週刊東洋経済」2015年7月18日号<13>「核心リポート01」を転載)





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