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ロイター 2015年 07月 15日 11:50 JST
焦点:株急落で一段と色あせる「中国の夢」
[常州/温州(中国) 14日 ロイター] -
今年4月、上海株式市場の主要株価指数が心理的な節目である4000を突破。
それから約1週間後、中国共産党機関紙の人民日報は社説のなかでこれを取り上げ、強気相場の始まりを意味するだけではないと論じた。
同紙の主張は、習近平国家主席が推進する国家の繁栄と安全保障を拡大する「中国の夢」が資本市場に反映され、長期的に「ばく大な」投資機会をもたらすことになるというものだった。
中国株式市場の大半を占める個人投資家から危機が全体に波及するリスクは差し当たり小さいとみられるものの、過去1カ月ほどの株式市場の混乱は少なからぬ人の夢を打ち砕いている。
中国政府は先に、同国経済の危険地帯となりかねない不動産ブームと不良債権増大に対処すべく策を講じ、危機を回避しようとしてきた。
大規模刺激策主導から消費主導へと成長のギアをシフトさせなければならない中国政府にとって、株価急落は痛手でしかない。
上海から450キロ南に位置する温州にある医療機器会社の管理職、Zhou Sujuanさん(44)は、株価急落で200万人民元(約4000万円)の損失を出した。
「大きな心痛だ。回復するのにある程度時間がかかるだろう」
とZhouさんは話す。
習主席が描く将来のビジョンは、数百万人足らずの投資家をはるかに超えるものであり、人口約13億人の中国が安定を維持する鍵となる。
政府が相次ぎ政策を講じたことで、少なくとも今のところ株式市場は落ち着きを取り戻している。
しかし、さまざまな経歴を持つ一般市民への取材から見えてくるのは、政府が約束を果たすことの難しさだ。
最近のデータがその課題の大きさを物語っている。
<永遠のダメージ>
中国政府が株価急落に歯止めをかけようと講じた一連の措置は、国内需要主導のオープンかつダイナミックな経済への改革に対する中国共産党の「真剣度」に疑問を呈するものだった。
中国政治経済学が専門の米カリフォルニア大学サンディエゴ校のビクター・シー准教授は
「大規模な国家介入、特に大量保有株主の売却停止や空売りの捜査は、
根底から、そして永久に金融セクター改革を傷つけた」
と指摘した。
新規株式公開(IPO)の停止も、中国経済を将来けん引するかもしれない民間企業の資金調達オプションを閉ざすことを意味する。
Ren Zhengmingさん(54)もそのような会社を経営する1人だ。
Renさんは、上海から高速鉄道で約1時間のところにある常州で、車などに使われる金属部品を製造する会社を営んでいる。
Renさんは、上海から高速鉄道で約1時間のところにある常州で、車などに使われる金属部品を製造する会社を営んでいる。
中国製造業のご多分に漏れず、Renさんも右肩上がりのコスト上昇や輸出の鈍化、内需の伸び低迷を実感してきたという。
従業員の数は数年前の約200人から100人程度に減り、利益率も5年前の約25%から落ち込んでいるという。
小規模製造メーカーの多くは人民元高で輸出が打撃を受け、人件費などのコスト上昇で利益が圧迫されて競争力を失っている。
Renさんのケースもその典型的な例だと言える。
<外資も危機感>
在上海米国商工会議所が3月に実施した調査によると、中国経済に対する楽観的見方は著しく後退。
在中国欧州連合(EU)商工会議所も6月、中国の経済成長の伸び鈍化と改革の遅れを受け、一部企業が解雇(レイオフ)を検討していると明らかにした。
在中国欧州連合(EU)商工会議所も6月、中国の経済成長の伸び鈍化と改革の遅れを受け、一部企業が解雇(レイオフ)を検討していると明らかにした。
銅や原油といったコモディティー価格は下落しているが、その原因の1つには中国需要の減退が挙げられる。
Renさんは会社の将来を義理の息子にまかせるとし、「私たちにできることは、若い世代のために土台をつくることだ」と話す。
しかし、中国の若者の多くは就職に苦労している。
今年の大卒者は前年比22万人増の749万人で過去最高を記録。
遼寧省大連市にある東北財経大学出身のHu Xiaoさんもその1人。
Huさんは150以上の職に応募したが、まだ仕事が決まっていないという。
新華社は、今年の就職活動は「かつてないほど厳しいものの1つ」だと伝えている。
今年の大卒者は前年比22万人増の749万人で過去最高を記録。
遼寧省大連市にある東北財経大学出身のHu Xiaoさんもその1人。
Huさんは150以上の職に応募したが、まだ仕事が決まっていないという。
新華社は、今年の就職活動は「かつてないほど厳しいものの1つ」だと伝えている。
<サービス業は好調か>
一方、上海のIT起業家であるXiao Pengさんは楽観的な見方をしている。
Xiaoさんは中国人の消費者行動の急速な変化に乗じて、週末の活動を奨励するアプリを開発した。
Xiaoさんは中国人の消費者行動の急速な変化に乗じて、週末の活動を奨励するアプリを開発した。
「過去10年間、中国人の週末の過ごし方と言えば、麻雀をしたりテレビを見たり、レストランに行くぐらいだったが、若い世代は経験することにもっとお金を使いたがっている」
とXiaoさんは話す。
とXiaoさんは話す。
Xiaoさんの会社は2年足らずで従業員数120人規模に成長。
中国では向こう15年で4億人が都市部に移動すると見込まれており、Xiaoさんは
「政府は経済を活性化するため消費を促している。
かなり楽観的に見ている」
と述べた。
中国では向こう15年で4億人が都市部に移動すると見込まれており、Xiaoさんは
「政府は経済を活性化するため消費を促している。
かなり楽観的に見ている」
と述べた。
とはいうものの、消費者の慎重さを示す例もある。
Zhang Yingyiさん(30)は上海でフルタイムの事務職をしながら、3歳の娘を育てる母親だ。
同国で増えつつある共働き中流層に属し、250万元で買ったマンションに住み、最近メルセデス・ベンツB180を購入した。
Zhang Yingyiさん(30)は上海でフルタイムの事務職をしながら、3歳の娘を育てる母親だ。
同国で増えつつある共働き中流層に属し、250万元で買ったマンションに住み、最近メルセデス・ベンツB180を購入した。
マンションと車のローンが重くのしかかり、上海の高い生活費が家計を圧迫しているというZhangさんは、家族が服を新調することはほとんどないと話した。
<不動産と債務が重荷>
バブル抑制へ政府が打ち出した規制強化策が功を奏し、中国の不動産市場はこの2年ほど落ち着きを見せている。
販売は減速し、新規着工件数も急減、銀行はデベロッパーや住宅購入者への融資に慎重になっている。
今月発表された2つの調査によると、6月の住宅価格は2カ月連続で下落した。
販売は減速し、新規着工件数も急減、銀行はデベロッパーや住宅購入者への融資に慎重になっている。
今月発表された2つの調査によると、6月の住宅価格は2カ月連続で下落した。
不動産市場の減速はデベロッパーだけでなく、家電から鉄鋼メーカーまで他の業界にも影響を与えている。
一部のエコノミストは、住宅および住宅関連部門が国内総生産(GDP)に占める割合は約3割と推計している。
一部のエコノミストは、住宅および住宅関連部門が国内総生産(GDP)に占める割合は約3割と推計している。
不動産市況が好転し始めた兆しもある。
皮肉なことに、株式市場の乱高下が、投資家を不動産に向かわせる可能性がある。
皮肉なことに、株式市場の乱高下が、投資家を不動産に向かわせる可能性がある。
不動産のほか、債務も成長の足かせとなっている。
新発債の発行を地方政府に認め、これを債務と交換する計画を今年打ち出したことで、地方発の債務危機が発生するとの懸念は大いに後退した。
ただ、滞納金が依然として投資を抑制している。
新発債の発行を地方政府に認め、これを債務と交換する計画を今年打ち出したことで、地方発の債務危機が発生するとの懸念は大いに後退した。
ただ、滞納金が依然として投資を抑制している。
<希望の光も>
株価は急落したが、中国経済の「アルマゲドン」を予想する人はほとんどいない。
年間成長率は比較的緩やかである一方、10兆ドル規模である現在の中国経済は、1990年に成長の伸びが鈍化した時と比べて数倍にも膨らんだ。
2015年第1・四半期の中国の経常黒字は756億ドルに上り、外貨準備高は3兆ドルを超える。
2015年第1・四半期の中国の経常黒字は756億ドルに上り、外貨準備高は3兆ドルを超える。
これまでのところ、中国政府は自国経済の変化について楽観的な見方を変えていない。
指導部に近い関係筋はロイターに対し、政権幹部は株式市場の問題を危機とはみなしていないと語った。
指導部に近い関係筋はロイターに対し、政権幹部は株式市場の問題を危機とはみなしていないと語った。
しかし、株価急落をめぐる政府の対応について、国内の一部では公然と批判する声が出ており、共産党の経済運営にも珍しく不満があがっている。
前述のZhouさんは、娘を良い学校に行かせるため、引越し先で家を購入する希望を持っていた。
しかし、株価急落でその夢は待たなくてはならなくなった。
自分自身が欲深かったことを認める一方、Zhouさんは市場を強引に操作する官製相場を非難。
「政府は理不尽だ。
永遠に計画市場、計画経済のままだ」
と語った。
しかし、株価急落でその夢は待たなくてはならなくなった。
自分自身が欲深かったことを認める一方、Zhouさんは市場を強引に操作する官製相場を非難。
「政府は理不尽だ。
永遠に計画市場、計画経済のままだ」
と語った。
(John Ruwitch記者、Brenda Goh記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)
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日本経済新聞 2015/7/16 6:30
http://www.nikkei.com/money/features/67.aspx?g=DGXMZO8929059014072015000000
中国、究極のリスクは「財政の持続性」(津上俊哉)
中国に精通した経済官僚から、経営コンサルティング業に転じた津上俊哉氏。
2012年まで8年間は中国企業を投資対象とするベンチャーキャピタルの運営に携わるなど、異色の経歴の持ち主だ。
世界の市場を揺るがした中国株の乱高下や経済見通しについて語ってもらった。
■上海株はしばらく不安定な状況
上海総合株価指数は昨年夏から上昇局面に入り、今年6月までの1年間で2.5倍になりました。
深圳のベンチャー向け市場「創業板」に上場している企業は株価収益率(PER)が200倍を超えるものがゴロゴロ、中には1000倍以上という企業もあり、異常な水準まで上がっていました。
誰が見てもバブルだったということでしょう。
6月12日にピークをつけたあとは1カ月の下落率は一時3割を超えました。
それまで株価を支えていたのは「株価が下落しても政府が必ず支えるはずだ」という「政策相場」への期待でした。
暴落当初は、国民の期待を裏切らず、中国人民銀行(中央銀行)が利下げと預金準備率の引き下げにダブルで動く「異例中の異例の措置」を打ち出しました。
政府はこれで市場に頭をもたげた弱気を一気に吹き飛ばすつもりだったのでしょう。
ところが、発表後も株価は下げ止まらず、下支えの神通力の衰えが鮮明になりました。
7月10日前後を境に上海株はようやく下げ止まる兆しが見えてきましたが、なにせ、大量のPKO(株価維持策)やIPO(新規株式公開)凍結という人為的な政策の下での反騰です。
上海株はしばらく不安定な状況が続くでしょう。
昨年来の株高は金融緩和で加速されました。
不動産はすでに高値圏にあったので、みんな株式投資に動いたというわけです。
だから実体経済はどんどん減速しているのに株価だけ上がった。
金融緩和は普通は景気刺激のためにやるものですが、昨年秋からの金融緩和は実は景気の刺激のためではない。
高い金利負担に耐えかねている地方政府や国有企業の債務圧縮、いわゆるデレバレッジ支援のためです。
地方政府や国有企業は08年のリーマン・ショック後の大型景気対策で借金を膨らませて投資を拡大し、中央政府に協力しました。
しかし、膨大な借金で首が回らなくなり、金融緩和で低利な借り入れに切り替えさせるなどの支援策を講じたわけです。
目的がデレバレッジ支援だから、緩和したからといって現に経済は反転していない。
ポストバブルというのはそういうものです。
■不動産バブルの崩壊は考えにくい
一方で、日本で1990年代に起きたような不動産バブルの崩壊が中国でもあるかという命題に対しては、わたしは「ない」と答えています。
中国の土地マーケットは日本とは全然違って、
供給者は地方政府しかいない独占構造なので、売り急ぎは起きない。
中国の不動産業は大手を中心に基本的にヒットアンドアウエーです。
つまり物件を抱え込まない。
つくったらすぐに現金化する。
全然買い手がつかないゴーストタウンも地方にありますが、一般的には供給された物件は短期間にオーナーの手に渡っている。
だから不動産会社がただちに破綻という風にはならない。
中国経済を楽観してはいけませんが、本屋に並んでいるような崩壊論もあれは極論。
そういうことにはならないと思っています。
わたしは究極的な中国経済のリスクは財政の持続可能性だと考えています。
そもそもリーマン・ショックの後に公共投資を大幅に拡大して経済の落ち込みを防ごうとしたわけですがそれ以来、借金をしてそれで投資を拡大した。
まあ人工的な成長率のかさ上げです。
それがいったんものすごく効果を上げた。
それで、高度成長はまだまだ続くという幻想に陥ってしまったんですが、
持続可能ではないので、どこかでやめなければならない。
いま中国は効率が高い投資案件はほとんどやり尽くしました。
日本でいえば東海道新幹線から整備新幹線、東名高速から本四架橋へと先食いしてきて、もうけが出ない投資しか残っていない感じになってきているんです。
その結果として、投資の効率がどんどん落ち、借金だけは積み上がっていくんですけれども、それに見合ったパイ(GDP=国内総生産)の拡大がない。
■中央・地方政府の債務、GDPの半分に
その結果、債務とGDPの比率がすごく上がっている。
中央政府と地方政府の債務はざっくりGDPの半分ぐらいになっています。
日本と同じで債務増大といっても国債などは基本的には国内消化。
だから、いますぐギリシャだ、なんだということにはならないんですけど。
中国共産党も債務拡大にブレーキをかける方向ですが、まだまだ足りない感じがします。
あと10年もすると中国も本格的な高齢化社会を迎える。
2030年以降になると、年金債務が急激に重くなってくる。
しかも日本でいえばGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のような年金支払い原資の積み立てがされていないんです。
だから、高齢化による財政の悪化というのがストレートに来てしまう。
それを考えると、あんまり足元の安定を重く見過ぎて、高めの成長率を無理して追い求めると、将来の財政が苦しい状況をぐーっと手前に引き寄せてしまう可能性がある。
■「中国が米国のGDPを抜くことはない」
わたしの持論は「中国が米国のGDPを抜くことはない」です。
政府目標の7%成長は高すぎると思います。
本当の成長率は現時点ですでに「5%を切っている」と思いますよ。
過去数年間で投資バブルを経験したということを否定しようがないんで。
投資バブルの後はデレバレッジによる「バランスシート不況」が来てしまって。
しばらくは景気低迷のトンネルをくぐらなければいけないのが市場経済の姿だと思うんです。
そこを共産党の過去の公約との関係で無理に成長をかさ上げ続けなければいけないのがちょっと危ういですね。
中国の景気減速が訪日観光市場に及ぼす、いわゆる「インバウンド」消費への影響が心配されていますが、今後雇用や給与に陰を落とし始めると、これまでのような伸びが期待できなくなる恐れはあります。
しかし、日本の観光市場は中国でまだまだ揺籃(ようらん)期だということ、そして中国の物価高に円安がダブルで働いているおかげで、日本での消費力は簡単にしぼんでしまうことはないと考えています。
中国人にとって、日本は「何から何まで安い」国なのです。
■インバウンド消費は簡単にしぼまない
日本の自治体が地元需要の喚起のために2~3割分お得になる地域振興商品券を配っていますが、それにたとえれば、中国の観光客は円安効果などで国内より5割分はお得な商品券を青天井で使えるような状況です。
「爆買い」現象にはちゃんと理由があります。
この「見えない商品券」効果が働く限り、訪日観光市場への影響は限定的なはずです。
確かに中国経済はリスキーな部分があります。
でもそれは誰でもいえる。
日本企業はそれでもまだ食わなくてはいけない企業がたくさんある。
どこまで食えるかということを見通すのがプロです。
その観点でいうと、
「ここから先は10年プラスマイナス5年です」
といっています。
いまGDPは当てにならない。
代わりに自社の製品・サービスの売れ行きをみろと。
ライバルをみろと。
会社によってはこの事業の付加価値ではこれ以上食っていくのが難しい場合もあるかもしれませんが、まだいける会社は多いと思います。
最近の話題ではLIXILとかが中国の現地法人の粉飾で多額の損失を計上した出来事がありました。
中国の企業は魔物が潜んでいるといわれます。
わたしは確かにまだまだ中国の会計というのは怪しげな部分を含んでいるのは事実だと思いますけれど、専門家と一緒にデューデリジェンス(資産査定)をやればかなりのことは分かるんです。
なにもかもでっち上げという風に見るのもちょっと極論だと思います。
■ベンチャーキャピタルでは歯がゆい思い
役所を辞めて04年に設立した東亜キャピタルは中国の私営企業に対する投資の会社でした。
サイズとしては小ぶりな会社が多かったですが、いろいろ経営者に会い、デューデリもしましたが、しっかりやればその辺のことは分かってくるもんですよ。
一時は北京、上海、深圳といった本土の未上場企業10社程度に投資していました。
ベンチャーキャピタル時代は歯がゆい思いをしました。
当時はベンチャーへの投資資金は香港や米ナスダックなどへの海外上場じゃないと回収できなかったんです。
中国本土の市場では未上場の段階の投資はその後会社が上場しても市場では売却できないというルールでした。
需給対策が目的で、そういう規制をされると、国内のベンチャーファンドは厳しい。
中国では政府とのコネクションがビジネス拡大の鍵になっている側面もあり、結局IPOまでこぎ着けたのは1件も出ませんでした。
■中国は成長企業が続々、米ベンチャーファンドも触手
2000年代初めは時期的にまだ早かったのかもしれません。
でもいまは生きのいい成長企業がどんどん生まれている。
とくにスマートフォンなどネットに絡むバリューチェーン。実は中国は日本よりも進んでいるんじゃないかと思います。
ノンバンキングも買い物もタクシー呼ぶのもネット。
ネットに絡んだサービスがものすごく隆盛を誇っている。
昨年ニューヨークに上場したアリババ集団の成功物語に触発された若者の「創業」ブームが広がっています。
「有力なベンチャー企業がどんどん増えてくれば、中国株の未来は暗くない」
と語る
シリコンバレーをまねて、若者の企画書にマネーをポンと出すエンジェル投資家も増えてきた。
昨今話題のドローンも中国の動きが遥かに速い。
大疆創新科技(DJI)という深圳の有名なベンチャー企業は3年で売上が150倍、いまや世界中に製品を提供し、セコイアキャピタルなど著名な米ベンチャーファンドが上場時の時価総額100億ドルの前提で投資を持ちかけているといいます。
こうした企業がどんどん増えてくれば、中国株の未来は暗くないと思います。
●津上俊哉(つがみ・としや)氏 1957年愛媛県生まれ。80年東大法学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。96年外務省に出向して中国の日本大使館経済部の参事官。2000年北東アジア課長、02年に経済産業研究所の上席研究員。04年に東亜キャピタルを設立、社長に就任。12年から津上工作室代表。著書は「中国台頭」(日本経済新聞出版社)、「中国台頭の終焉」(同)、「巨龍の苦闘」(角川新書)など多数
(聞き手は電子編集部シニア・エディター 佐藤一之)
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日本経済新聞 2015/7/16 6:30
http://www.nikkei.com/money/features/67.aspx?g=DGXMZO8929059014072015000000
中国、究極のリスクは「財政の持続性」(津上俊哉)
中国に精通した経済官僚から、経営コンサルティング業に転じた津上俊哉氏。
2012年まで8年間は中国企業を投資対象とするベンチャーキャピタルの運営に携わるなど、異色の経歴の持ち主だ。
世界の市場を揺るがした中国株の乱高下や経済見通しについて語ってもらった。
■上海株はしばらく不安定な状況
上海総合株価指数は昨年夏から上昇局面に入り、今年6月までの1年間で2.5倍になりました。
深圳のベンチャー向け市場「創業板」に上場している企業は株価収益率(PER)が200倍を超えるものがゴロゴロ、中には1000倍以上という企業もあり、異常な水準まで上がっていました。
誰が見てもバブルだったということでしょう。
6月12日にピークをつけたあとは1カ月の下落率は一時3割を超えました。
それまで株価を支えていたのは「株価が下落しても政府が必ず支えるはずだ」という「政策相場」への期待でした。
暴落当初は、国民の期待を裏切らず、中国人民銀行(中央銀行)が利下げと預金準備率の引き下げにダブルで動く「異例中の異例の措置」を打ち出しました。
政府はこれで市場に頭をもたげた弱気を一気に吹き飛ばすつもりだったのでしょう。
ところが、発表後も株価は下げ止まらず、下支えの神通力の衰えが鮮明になりました。
7月10日前後を境に上海株はようやく下げ止まる兆しが見えてきましたが、なにせ、大量のPKO(株価維持策)やIPO(新規株式公開)凍結という人為的な政策の下での反騰です。
上海株はしばらく不安定な状況が続くでしょう。
昨年来の株高は金融緩和で加速されました。
不動産はすでに高値圏にあったので、みんな株式投資に動いたというわけです。
だから実体経済はどんどん減速しているのに株価だけ上がった。
金融緩和は普通は景気刺激のためにやるものですが、昨年秋からの金融緩和は実は景気の刺激のためではない。
高い金利負担に耐えかねている地方政府や国有企業の債務圧縮、いわゆるデレバレッジ支援のためです。
地方政府や国有企業は08年のリーマン・ショック後の大型景気対策で借金を膨らませて投資を拡大し、中央政府に協力しました。
しかし、膨大な借金で首が回らなくなり、金融緩和で低利な借り入れに切り替えさせるなどの支援策を講じたわけです。
目的がデレバレッジ支援だから、緩和したからといって現に経済は反転していない。
ポストバブルというのはそういうものです。
■不動産バブルの崩壊は考えにくい
一方で、日本で1990年代に起きたような不動産バブルの崩壊が中国でもあるかという命題に対しては、わたしは「ない」と答えています。
中国の土地マーケットは日本とは全然違って、
供給者は地方政府しかいない独占構造なので、売り急ぎは起きない。
中国の不動産業は大手を中心に基本的にヒットアンドアウエーです。
つまり物件を抱え込まない。
つくったらすぐに現金化する。
全然買い手がつかないゴーストタウンも地方にありますが、一般的には供給された物件は短期間にオーナーの手に渡っている。
だから不動産会社がただちに破綻という風にはならない。
中国経済を楽観してはいけませんが、本屋に並んでいるような崩壊論もあれは極論。
そういうことにはならないと思っています。
わたしは究極的な中国経済のリスクは財政の持続可能性だと考えています。
そもそもリーマン・ショックの後に公共投資を大幅に拡大して経済の落ち込みを防ごうとしたわけですがそれ以来、借金をしてそれで投資を拡大した。
まあ人工的な成長率のかさ上げです。
それがいったんものすごく効果を上げた。
それで、高度成長はまだまだ続くという幻想に陥ってしまったんですが、
持続可能ではないので、どこかでやめなければならない。
いま中国は効率が高い投資案件はほとんどやり尽くしました。
日本でいえば東海道新幹線から整備新幹線、東名高速から本四架橋へと先食いしてきて、もうけが出ない投資しか残っていない感じになってきているんです。
その結果として、投資の効率がどんどん落ち、借金だけは積み上がっていくんですけれども、それに見合ったパイ(GDP=国内総生産)の拡大がない。
■中央・地方政府の債務、GDPの半分に
その結果、債務とGDPの比率がすごく上がっている。
中央政府と地方政府の債務はざっくりGDPの半分ぐらいになっています。
日本と同じで債務増大といっても国債などは基本的には国内消化。
だから、いますぐギリシャだ、なんだということにはならないんですけど。
中国共産党も債務拡大にブレーキをかける方向ですが、まだまだ足りない感じがします。
あと10年もすると中国も本格的な高齢化社会を迎える。
2030年以降になると、年金債務が急激に重くなってくる。
しかも日本でいえばGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のような年金支払い原資の積み立てがされていないんです。
だから、高齢化による財政の悪化というのがストレートに来てしまう。
それを考えると、あんまり足元の安定を重く見過ぎて、高めの成長率を無理して追い求めると、将来の財政が苦しい状況をぐーっと手前に引き寄せてしまう可能性がある。
■「中国が米国のGDPを抜くことはない」
わたしの持論は「中国が米国のGDPを抜くことはない」です。
政府目標の7%成長は高すぎると思います。
本当の成長率は現時点ですでに「5%を切っている」と思いますよ。
過去数年間で投資バブルを経験したということを否定しようがないんで。
投資バブルの後はデレバレッジによる「バランスシート不況」が来てしまって。
しばらくは景気低迷のトンネルをくぐらなければいけないのが市場経済の姿だと思うんです。
そこを共産党の過去の公約との関係で無理に成長をかさ上げ続けなければいけないのがちょっと危ういですね。
中国の景気減速が訪日観光市場に及ぼす、いわゆる「インバウンド」消費への影響が心配されていますが、今後雇用や給与に陰を落とし始めると、これまでのような伸びが期待できなくなる恐れはあります。
しかし、日本の観光市場は中国でまだまだ揺籃(ようらん)期だということ、そして中国の物価高に円安がダブルで働いているおかげで、日本での消費力は簡単にしぼんでしまうことはないと考えています。
中国人にとって、日本は「何から何まで安い」国なのです。
■インバウンド消費は簡単にしぼまない
日本の自治体が地元需要の喚起のために2~3割分お得になる地域振興商品券を配っていますが、それにたとえれば、中国の観光客は円安効果などで国内より5割分はお得な商品券を青天井で使えるような状況です。
「爆買い」現象にはちゃんと理由があります。
この「見えない商品券」効果が働く限り、訪日観光市場への影響は限定的なはずです。
確かに中国経済はリスキーな部分があります。
でもそれは誰でもいえる。
日本企業はそれでもまだ食わなくてはいけない企業がたくさんある。
どこまで食えるかということを見通すのがプロです。
その観点でいうと、
「ここから先は10年プラスマイナス5年です」
といっています。
いまGDPは当てにならない。
代わりに自社の製品・サービスの売れ行きをみろと。
ライバルをみろと。
会社によってはこの事業の付加価値ではこれ以上食っていくのが難しい場合もあるかもしれませんが、まだいける会社は多いと思います。
最近の話題ではLIXILとかが中国の現地法人の粉飾で多額の損失を計上した出来事がありました。
中国の企業は魔物が潜んでいるといわれます。
わたしは確かにまだまだ中国の会計というのは怪しげな部分を含んでいるのは事実だと思いますけれど、専門家と一緒にデューデリジェンス(資産査定)をやればかなりのことは分かるんです。
なにもかもでっち上げという風に見るのもちょっと極論だと思います。
■ベンチャーキャピタルでは歯がゆい思い
役所を辞めて04年に設立した東亜キャピタルは中国の私営企業に対する投資の会社でした。
サイズとしては小ぶりな会社が多かったですが、いろいろ経営者に会い、デューデリもしましたが、しっかりやればその辺のことは分かってくるもんですよ。
一時は北京、上海、深圳といった本土の未上場企業10社程度に投資していました。
ベンチャーキャピタル時代は歯がゆい思いをしました。
当時はベンチャーへの投資資金は香港や米ナスダックなどへの海外上場じゃないと回収できなかったんです。
中国本土の市場では未上場の段階の投資はその後会社が上場しても市場では売却できないというルールでした。
需給対策が目的で、そういう規制をされると、国内のベンチャーファンドは厳しい。
中国では政府とのコネクションがビジネス拡大の鍵になっている側面もあり、結局IPOまでこぎ着けたのは1件も出ませんでした。
■中国は成長企業が続々、米ベンチャーファンドも触手
2000年代初めは時期的にまだ早かったのかもしれません。
でもいまは生きのいい成長企業がどんどん生まれている。
とくにスマートフォンなどネットに絡むバリューチェーン。実は中国は日本よりも進んでいるんじゃないかと思います。
ノンバンキングも買い物もタクシー呼ぶのもネット。
ネットに絡んだサービスがものすごく隆盛を誇っている。
昨年ニューヨークに上場したアリババ集団の成功物語に触発された若者の「創業」ブームが広がっています。
「有力なベンチャー企業がどんどん増えてくれば、中国株の未来は暗くない」
と語る
シリコンバレーをまねて、若者の企画書にマネーをポンと出すエンジェル投資家も増えてきた。
昨今話題のドローンも中国の動きが遥かに速い。
大疆創新科技(DJI)という深圳の有名なベンチャー企業は3年で売上が150倍、いまや世界中に製品を提供し、セコイアキャピタルなど著名な米ベンチャーファンドが上場時の時価総額100億ドルの前提で投資を持ちかけているといいます。
こうした企業がどんどん増えてくれば、中国株の未来は暗くないと思います。
●津上俊哉(つがみ・としや)氏 1957年愛媛県生まれ。80年東大法学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。96年外務省に出向して中国の日本大使館経済部の参事官。2000年北東アジア課長、02年に経済産業研究所の上席研究員。04年に東亜キャピタルを設立、社長に就任。12年から津上工作室代表。著書は「中国台頭」(日本経済新聞出版社)、「中国台頭の終焉」(同)、「巨龍の苦闘」(角川新書)など多数
(聞き手は電子編集部シニア・エディター 佐藤一之)
』
『
サーチナ 7月17日(金)6時3分配信
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0717&f=business_0717_005.shtml
世界経済のリスク・・・ギリシャ危機より中国経済成長の鈍化=中国
中国メディアの人民日報は16日、中国経済が衰退しているとの論調が世界中で聞こえ始めたと伝え、一部では
「ギリシャの債務危機よりも、中国経済の成長鈍化のほうが世界経済にとってリスク」
との見方もあると伝える一方、
「各国の中央銀行が金利を維持したことは世界経済に対する自信を示すものだ」
と主張した。
記事は、英国や韓国、オーストラリアなどの中央銀行が金利維持を発表し、日本銀行も15日に金融政策決定会合を開き、金融政策の現状維持を決定したことは
「各国の中央銀行が世界経済の先行きを楽観視していることを意味する」
と論じた。
一方で、世界第2位の経済大国として、中国経済の動向が世界の注目を集めるのは当然のこととする一方、国際通貨基金(IMF)の報告を引用し、
「金融市場における動揺は、中国の新しい経済モデルへの転換が大きな困難に直面していることを示すもの」
と報じた。
また記事は、中国を始めとする新興国の世界経済に対する貢献はますます拡大していると伝え、
★.中国の14年における世界経済の成長率に対する貢献度合いは38%
に達し、10年の23%を大きく上回ったと指摘。
さらに中国は銅やアルミニウム、綿花の輸入大国であり、ブラジルや南アフリカにとって最大の貿易パートナーであると指摘。
さらに、米国の投資銀行モルガン・スタンレーの関係者の話として、
「中国は靴やおもちゃといった製品の輸出のほかに、
★.近い将来、世界に新しいものを提供するだろう」と伝え、それは「衰退」であると主張。
★.世界経済が衰退するとすれば、それは「中国発」となる
との見方を示し、中国経済の鈍化が続くことが世界経済の衰退の始まりになるとの見方を示した。
』
『
サーチナニュース 7月19日(日)14時3分配信
http://news.searchina.net/id/1581910?page=1
「中国バブル」はリスク!
・・・世界経済への影響は不可避か=中国メディア
中国メディアの匯通網は16日、スイスの大手金融機関であるクレディ・スイスのアナリストによる分析を引用し、
中国における資産バブルは世界経済にとって最大のリスクであり、
「中国のバブルがまもなく崩壊することを懸念している」
と報じた。
記事は、クレディ・スイスのアナリストが
「中国経済にはデフレが忍び寄っているうえ、不動産価格の下落幅も拡大している」
としたうえで、
中国からマネーが大量に流出している
と指摘したことを紹介した。
さらに、
中国の名目GDPの伸びが5.8%まで低下している
ことを挙げ、中国の
不動産価格が15%下落すれば中国の実質GDPの伸びは3%未満まで低下する
おそれがあると警鐘を鳴らし、
「中国のバブルがまもなく崩壊することを懸念している」
と報じた。
また、中国メディアの房天下は16日、米メディアの報道として、「Economy&Markets」の関係者が
「世界経済のリスクとなっている中国の問題は不動産だ」
と指摘したことを紹介し、
中国で株価が急激に上昇したのは「不動産価格が上昇できなくなったため」
と論じた。
続けて記事は、中国の株式市場では投資家の多くが証券会社から資金を借りて信用取引を行っていることを指摘し、
「一時急落した株価は現在はリバウンドしているものの、そのリバウンドも長くは続かない」
との見通しを示した。
さらに、中国では貯蓄の多くが不動産に投資されていると伝え、上海総合株価指数が2000ポイントまで下落すれば
「不動産市場にも波及し、不動産バブルも崩壊するだろう」
と論じた。
』
『
週刊現代 2015年07月20日(月)
「週刊現代」2015年7月25日・8月1日合併号より
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44260
死人続出!
中国バブル、ついに大崩壊
このままでは中国全土で暴動が始まる
この1ヵ月で、2億人が1000万円の財産を失った。
株価の大暴落が引き金となって、リーマン・ショック、ユーロ危機に続く金融危機がやって来るのか。
■全国各地で続発する飛び降り自殺
「中国株は、中国共産党が胴元になっている賭博です。
共産党は配下に収めている政府機関と官製メディアを使って煽り、2億人以上の国民を株式市場に駆り立てておきながら、あげくその資産を収奪したに等しい。
いまや中国全土が大混乱に陥っていて、夥しい借金を抱えて自殺する人も相次いでいます」
こう証言するのは、元中国有力紙の編集委員で著名コラムニストの頂利氏だ。
自殺第一号は先月10日、湖南省で起こった。
省都・長沙市のタワーマンション22階から、32歳の侯氏が飛び降り自殺したのだ。
その日の午後3時過ぎ、証券市場が終了した後、侯氏は「金儲けをしたい屍」と題した「遺書」をネットにアップした。
〈【この世に別れを告げるにあたって、私はただこう言いたい。
賭けをする者は、負けたら負けに従うべきだと。
私は全財産を担保に、170万元(1元≒19・6円、約3300万円)という4倍の信用取引で『中国中車』の株を買った。
だが、その結果たるや……。
もう誰も恨まない。
いまは自己の欲望を愚かだと思うばかりだ。
そもそもは、家族に安らかな生活を送ってほしいと思って始めたのだ。
それがまさか、一日で全財産をスッてしまうなんて。
もういい。
私の家族よ、君たちを愛している。
そして、この世界を愛している】〉
侯氏が飛び降りた日、「中国中車」の株価は、一日で9・73%も暴落した。
中国株は、一日の取引で10%下がると取引停止となるので、ほとんどストップ安の状態だ。
以後、2億人以上と言われる中国の「股民」(個人株主)たちが、全財産を失って「跳楼」(飛び降り自殺)するケースが中国全土で続出。「
跳楼」という言葉が、にわかに流行語になっている。
中国で6億人以上が使用しているSNS「微信」(WeChat)では、こんな小話が飛び交う。
〈【男性 この高層マンションの屋上に上がりたいのだが。
管理人 一体いくら損したんだ?
男性 実は、50万元(約980万円)ほど……。
管理人 ならば2階までだ。
そこの階段の行列に並べ。
男性 なぜだ?
管理人 損失額が100万元以上で3階、
500万元以上で4階、
5階以上は1000万元以上損したVIPのみ
を通しているからだ】〉
北京在住のジャーナリスト、李大音氏が指摘する。
「私の周囲にも、50万元損したなんていう知人はザラで、1000万元以上損した友人もいます。
7000万人以上が、平均30万元から50万元は損したと、中国メディアは報じていますが、これは極めて控え目な数字でしょう」
一昔前までは、株で儲けてマンションと車を買うというのが、中国人の財テクのパターンだった。
ところが最近は、すでに持っているマンションと車を売り払って株式に投資するという人が、続出していた。
「それというのも、中国で株価が低迷した'12年8月に、『股民』を増やそうと、自分の持ち金の何十倍分も掛けられる信用取引を解禁したからです。
このハイリスク&ハイリターンの信用取引に、一攫千金を狙う中国人が殺到しました。
昨年の深圳証券市場の取引額の37%にあたる27・5兆元(約540兆円)が、信用取引によるものでした。
これにハマった人々が、今回の暴落で全財産の何十倍もの借金を抱え込んでしまった。
その結果、『跳楼』するしかなくなったのです」(李氏)
悲劇は、大学のキャンパスにも及んでいるという。
李氏が続ける。
「6月の新華社通信の調査によれば、中国の大学生の実に31%(約790万人)が、日々株の売買をやっていて、そのうち26%は、5万元以上つぎ込んでいます。
そのため、大学生の破産者が、にわかに社会問題化しています。
それどころか、中国全土で高校生、中学生、果ては小学生まで、株に熱を上げていた子供たちが大量にいたことも問題になっています。
親が築いた財産を、子供が成人する前にすっかり食い潰してしまったわけです」
■株価が1ヵ月で47%ダウン
アメリカに次ぐ世界2位の株式市場である中国株が大暴落した。
今年に入って中国株は絶好調だった。
6月12日には、日経平均株価にあたる上海総合指数が、5178ポイントを付けて引けた。
ちょうど2年前に2000ポイントを切ったことを思えば、平均株価は2・5倍以上に膨れ上がっていた。
だが週明けの6月15日から株価は暴落を始め、7月8日の終値は3507ポイント。
実に1ヵ月弱で、47%も下落したのだ。
日本で言えば、2万円の日経平均株価が1ヵ月で1万3500円台まで下落したことを意味する。
それに加えて、
全体の77%を海外投資家が占める日本株
と違って、
中国株の主役は、2億人以上の「股民」で、全体の82%を占める。
そのため、株価暴落は中国社会を直撃しているのだ。
まさに、中国バブル大崩壊である。
前出の李氏が語る。
「6月12日の金曜日に最高値を更新したことで、多くの『股民』たちが、一気に勝負に出ました。
なぜなら週明けの6月15日は、中国人なら誰もが知っている習近平主席の62回目の誕生日。
習近平政権のキャッチフレーズは『中国夢』(チャイニーズ・ドリーム)なので、
誕生日に習主席が全面的な株価のストップ高というビッグな夢を国民にプレゼント
してくれると期待したわけです。
ところがあろうことか、習近平主席の誕生日の朝から、ほとんどの株価が、まるで底が抜けたように落ち始め、上海総合指数は一時、5048ポイントまで落ちた。
この日の終値も5062ポイントで、一日で200ポイント以上、率にして2%も暴落したのです。
まさに『習近平暴落』で、国民はすっかり夢から覚めました」
6月末に、全国の銀行は、中国銀行監督管理委員会に対して会計報告を行うことを義務づけられているため、証券業界に貸し付けている資金の回収に走った。
それによって、そもそも実態以上にハネ上がっていたバブル状態の株価を支えられなくなったことが、大暴落の直接の原因と言われる。
その他、直接の売買が禁じられている欧米ヘッジファンドによる謀略説も飛び交っている。
欧米ヘッジファンドが、密かに雲南省経由で5000億元(約9兆8000億円)を持ち込んで中国株を買い、信用取引でしこたま儲けた後、上海総合指数が5000ポイントを超えたところで売り抜いたというものだ
。だがこの説は信憑性に乏しいことから、
責任を逃れようとしている習近平政権が意図的に流しているという説もある。
「実は『習近平暴落』は、今回が6回目なのです。
1回目は'07年10月に、経済オンチの習近平が胡錦濤主席の後継者となることが確定した時でした。それまで過去最高値の6429ポイントを付けていた上海総合指数は、一気に暴落したのです。
2回目の暴落は、'12年11月に第18回中国共産党大会で習近平総書記が誕生した時で、『ウルトラ・レッドライン』と言われた2000ポイントを割りました。
3回目が、翌'13年3月に習近平の国家主席就任を決める全国人民代表大会が開かれる前日で、3・65%の大暴落。
4回目が同年6月の習近平主席60歳の誕生日です。
5回目が、同年11月に習近平政権の今後の政策発表を行った翌日でした。
つまり
市場は、習近平という稀代の経済オンチの指導者を嫌悪している
のです」(前出・李氏)
■習近平は経済オンチ
今回も習近平主席は、経済オンチぶりを見せつける能天気な行動に出た。
株価暴落が始まった6月16日には、本人のたっての希望で、2泊3日で貴州省遵義への視察に出かけた。
習主席が誰よりも尊敬する故・毛沢東主席が1935年、「遵義会議」を開いて権力基盤を確立した中国共産党の「聖地」だ。
中国中央テレビのニュースは、繰り返し毛沢東主席と習近平主席に共通する偉大さを報じた。
一方で、株価暴落に警鐘を鳴らすような報道は禁止されたのだった。
ちなみに毛沢東主席もまた、極度の経済オンチとして知られた。
「15年でイギリス経済を追い越す」と意気込んで、国中の鍋まで鉄鋼に変えようとした結果、約3500万人の国民を餓死させている。
晩年には文化大革命を起こし、丸10年にわたって国の経済をマヒさせた。
習近平主席も、毛沢東主席以来の経済オンチなのである。
7月7日は、抗日戦争のきっかけとなった盧溝橋事件が勃発して78周年の記念日だった。
そこで習近平主席は、株価暴落で自殺者が相次いでいるにもかかわらず、中国共産党の「トップ7」を全員引き連れて、北京郊外の盧溝橋にある抗日戦争記念館を訪れたのだった。
これにはさすがに中国人たちも呆れ、「微信」には、習近平批判が飛び交った。
〈いまは「抗日戦争勝利」よりも、「金融戦争勝利」だろうが!〉
〈「中国夢」を勇ましく唱えるのだったら、早く「股災」(株の災い)の火を消してくれ!〉
この直後に、中国政府は「股災」という単語を、ネット上で検索不能にしてしまった。
中国政府は6月末から、まさになりふり構わぬ対策を講じた。
6月27日、国務院傘下の中国人民銀行(中央銀行)は、今年に入って3度目となる政策金利の引き下げを発表。
2日後の29日には、今後は公的年金基金の最大3割、約11兆7000億円で中国株を購入して支えていくことを決めた。
7月に入っても、4日に中国証券監督管理委員会が、大手証券会社21社に、総額2兆3500億円以上を株式投資にあてさせると発表。
上海証券指数が4500ポイントを回復するまで、各社は保有株を売却できなくなった。
国務院も同日、当面IPO(新規株式公開)を認めない方針を定めて、予定していた28社のIPOの延期を決めた。
7月8日には、中国証券監督管理委員会が再び、5項目からなる機関投資家の「株式売却禁止措置」を発表した。
■中国全土で暴動が始まる
今回の株価暴落の影響は、中国の国民ばかりか、地方自治体をも直撃している。
中国経済が専門のRFSマネジメントのチーフ・エコノミスト、田代秀敏氏が解説する。
「地方の財政赤字は、過去10年で26兆8985億元(約530兆円)にも達しています。
これほどの巨額債務は、とても返還できないので、地方自治体が企業に資金を提供し、その資金を税収として回収する『空転』を行って、見せかけの税収を得ている状態です。
国務院は昨年5月に、総額1092億元の地方債発行を認可しましたが、こんなカラクリが続くわけもありません。
そのため、中国人民銀行が地方債をいったん買い取って、債券市場で売却していこうとしている。
ところがいまや株価の大暴落によって、こうした措置を講じる体力も残っていないのです」
前出の李氏も続ける。
「今回の株価暴落によって、巨竜の心臓部を直撃された格好です。
いま国務院の幹部たちの間で言われているのは、もしも上海総合指数が3000ポイントを切ったら、金融危機の到来を覚悟しないといけないということです。
'08年のリーマン・ショック、
'09年のユーロ危機に続く
中国発の世界的経済危機が、間近に迫っているのです」
今後、中国の経済的混乱が引き金になって、政治的な混乱が起こってくる可能性も十分に考えられる。『産経新聞』北京特派員の矢板明夫氏が語る。
「日本の場合は、株は上がろうが下がろうが完全に自己責任だと、誰もが割り切っている。
ところが中国市場は政府によるインサイダー取引が日常茶飯事で、一般の『股民』からすれば納得できないことが多い。
それでもこれまでは株価が上がっていたので我慢してきましたが、国民がこれだけ大損害を被ると、デモや暴動が全国各地で頻発するのは必至です」
冒頭の頂氏も警鐘を鳴らす。
「習近平主席のやり方から見て、まずは経済担当の幹部たちを『生け贄』として血祭りに上げるでしょう。
だが今回の株価暴落で、
★.習近平政権に対する国民の信頼はガタ落ちした
ので、国民はそれくらいでは納得しない。
★.経済は長期低迷し、
★.政府に対する国民の突き上げも増していく
でしょう」
1989年の天安門事件では、民主化を求める市民たちを、共産党政権は銃弾で弾圧した。
だが21世紀の現在、習近平政権が同じ事をやれば、国民に完全に見放されるのは必至だ。
★.習近平政権最大のピンチ
を迎えた。
もちろん、日本も対岸の火事ではいられない。
天安門事件当時は、日中間の経済関係も微々たるものだったが、いまや中国は、日本の全貿易の約2割を占める最大の相手国であり、
★.中国では2万3000社の日系企業が
1000万人の中国人を雇用
している
のだから。
』
【中国の盛流と陰り】
_