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JB Press 2015.6.9(火) 川島 博之
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43953
大挙して来日する中国人旅行者の懐事情とは
マナーの悪さはしょうがない?
いまや“庶民”も日本へ
政府観光局によると、この4月に日本を訪れた外国人観光客は176万人、前年同月比45%増である。
その中でも中国人は113%増加して、40万5000人になった。
外国人観光客の4人に1人は中国人である。
お土産の購入においても中国人の存在感が際立っている。
外国人がお土産に使うお金は約5万円であるが、中国人は12万円も使う。
お土産を大量に購入する理由は、既にJBpressにも紹介されているが、見栄を張るためである
(参考:「中国人はここまで『面子』を重んじる!」「爆買いを生む濃密な人間関係、『圏子』とは?」)。
そんな彼らの懐事情を探ってみよう。
■海外旅行をしているのは都市部の最高所得層
中国統計年鑑は都市と農村ごとに5つに階層を分けて、階層別の所得の推移を記載している(図1、図2)。
中国では都市に7億人、農村に6億人が住んでいる。
だから各階層の人口は都市では1億4000万人、農村では1億2000万人ということになる。
図1 農村住民5分階層別所得
(単位:元/人、出所:中国統計年鑑)
図2 都市住民5分階層別所得
(単位:元/人、出所:中国統計年鑑)
都市の最高所得層の2013年の平均所得は5万6000元。
1元20円とすると112万円。
中国の都市部の世帯人数は3人だから、これに3を掛けると世帯収入になり、
318万円である。
ただ、所得は毎年大きく増加している。
円安もあるが、この所得の増加が日本を訪れる観光客増加の原動力になっている。
中国人観光客は土産を買う他に、宿泊代などで合計21万円を日本に落としている。
それに航空券代を合わせると、1人当たりの出費は30万円程度であろう。
団体旅行では夫婦や母娘など2人が参加するケースが多いから、
一家の支出は約60万円になる。
どれほどの収入があれば、1回の旅行で60万円も支出できるのだろうか。
その推定は難しいが、都市に住む最高所得層が海外旅行に出かけていることは間違いない。
その下の層の平均収入は3.2万元。
世帯収入は12万元。
この層でも訪日は可能と思うが、年収の4分の1にも相当するお金を1回で使う世帯は少ないと思う。
それ以下の層が日本を旅行することはできないだろう。
農村は最高層でも1人当たり所得は2.1万元。
農村の世帯人数が都市より多く4人であることを勘案しても、世帯収入は10万元に届かない。
これでは日本旅行は無理だ。
現在、日本に来て爆買いしている人々は、都市で所得が上位5分の1に入る人々だけだろう。
それでも、その総数は1億4000万人になる。
秋葉原や銀座で爆買いしている人々の平均世帯収入は318万円程度。
もちろん1億4000万人もいるのだから、その上位に位置する人々の収入は高いが、多くの観光客が来るようになった昨年あたりから、お土産を買う客の単価が落ちているとされるから、上位5分の1に所属する人々の中でも下の方に位置する人までが訪日するようになったのだろう。
なお、日本人の平均世帯収入は537万円(2013年)である。
■マナーの悪さはしょうがない?
2015年に入って、中国の経済成長率は明らかに低下し始めた。
それに伴って、今後、庶民の所得も伸び悩むことになる。
そう考えると、日本を訪れる中国人が今以上に増えることはないのかもしれない。
近い将来に、農村に住む人々までが日本に来るようになることはないだろう。
現在の中国の状況は日本のバブル時代によく似ている。
ただ、違っている点がある。
1980年代に入って所得が向上した日本では、円高になったこともあって、誰もが海外に行くことができるようになった。
しかし、中国では都市に住む上位5分の1の人しか海外旅行を楽しむことができない。
なお、習近平政権による汚職追放運動が続く中で、十分な所得を得ている汚職役人やその家族は日本を訪問していないようだ。
彼らは首を縮めて目立たないようにしている。
現在、団体旅行で日本に来て爆買いをしている人々は都市の最上位層に属する人々であるが、その平均世帯収入は318万円に留まる。
収入が都市の上位5分の1に入ると言っても、庶民なのだ。
時に彼らのマナーの悪さが問題になるが、それは“地”が出ているだけのことである。
まあ、大目に見てあげよう。
その余裕が、日本の豊さを示すことになる。
』
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レコードチャイナ 配信日時:2015年6月17日(水) 15時50分
http://www.recordchina.co.jp/a111770.html
中国人の訪日ブームがさらに拡大、
5月は前年の2.4倍に
=訪日外国人総数、5割増の164万人―日本政府観光局発表
2015年6月17日、日本政府観光局が発表した
5月の訪日外国人客数は、前年同月比49.6%増の「164 万2 千人」で、これまで5 月として過去最高だった2014 年の「109 万7 千人」を54 万5 千人上回った。
例年5 月は4 月の桜シーズンと夏休みシーズンの狭間で、伸び率が鈍化する傾向にあったが、今年に入ってからの勢いは衰えなかった。
5月までの累計も750万人を突破し、今年年間で1800万人に達する勢い。
円安傾向、航空路線の拡大、査証の要件緩和などが増加の要因とみられる。
国別では中国が前年同月比133.6%増(約2.4倍)の38万7000 人でトップ。
旺盛な訪日ブームを背景に、南方航空の広州-大阪便増発、広州-福岡便の再開といった航空路線の拡充や、桜や芝桜等の鑑賞を目的とした訪日プロモーションも増加要因となった。
以下台湾の33万9000人(前年同月比20.5%増)、韓国の31万5000人(同61.5%増)、香港の12万1000人(70.3%増)の順。
中国、台湾、韓国、香港の東アジア地域の合計は116 万3千人と、当月の訪日外客数全体の7 割以上を占めた。
6月以降は多くの国で夏休みシーズンに入り、訪日旅行市場の繁忙期を迎えることから、一層の訪日外国人客の増加が見込まれる。
ただ、韓国で中東呼吸器症候群(MERS)の感染が拡大していることを受け、訪韓を見合わせる動きがあり、影響が注目される。
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【中国の盛流と陰り】