2015年6月2日火曜日

米軍の戦力配備は明らかに北東アジアに傾斜:米国のリバランス

_

●横須賀に追加配備されるイージス艦が日本へ向けて出発 チャンセラーズビル (BMD対応艦)
2015/05/28 に公開
在日アメリカ海軍横須賀基地に追加配備されるタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「チャン­セラーズビル」(CG-62)が、2015年5月28日カルフォルニア州サンディエゴ­海軍基地を出発 (「ベースライン9」と呼ばれる最新のイージスシステムを搭載するBMD(弾道ミサイ­ル防衛)対応艦)


2015年06月02日(Tue)  岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5011

新日米ガイドラインを
豪州や東南アジアも活用せよ
米国のリバランスへの貢献

 アジア専門家のマルコム・クックが、豪戦略政策研究所(ASPI)のブログ「Strategist」に4月29日付で寄稿した論説の中で、
 新日米ガイドラインを評価するとともに、豪州や東南アジアもこれを活用する形で、より積極的な対米協力の素地を作り、米国のリバランスに貢献すべきだ、
と述べています。

 すなわち、米国のリバランスは、東アジアに対する米国の前方展開を強化するという一方的なコミットメントだけではなく、同盟国や拡大する安全保障パートナーが米国に対する更なる支援を提供するという相互的な関係によって成り立つ。

 北東アジアにおいて日本は、新ガイドラインにあるように、自国の防衛以外にも、第三国における危機や弾道ミサイル防衛、地域における能力構築などで貢献する機会を掴んだ。

 東南アジアを広く捉えれば、豪州も、米海兵隊のダーウィンへの展開やスターリング海軍基地へのアクセス拡大といった形で、米国が地域安全保障に果たす役割を手助けする機会を得ている。
 また、シンガポールは米海軍のLCS(沿海域戦闘艦)の母港を提供しているし、
 フィリピンは昨年、米比拡大防衛協力協定(EDCA)を締結している。

 ただ、新ガイドラインでは、尖閣諸島が日米安保条約の適用対象であることが改めて明記されたが、フィリピンが領有権を主張している南シナ海の島嶼においては、米国のコミットメントを示すものはない。
 この点、米国の北東アジアに対するコミットメントは、東南アジアのそれよりも、遥かに深いと言える。

 また、今次ガイドラインで定められた同盟調整メカニズムや、民間空港・港湾の共同調査、弾道ミサイル防衛向上のための協力は、日米同盟をより深く、広範なものにしている。
 他方、2014年に行われたAUSMIN(米豪「2+2」)では、豪州の地域における弾道ミサイル防衛に対する潜在的協力オプションを検討するための作業部会を設置するにとどまっている。
 これは、日米同盟が米豪同盟よりもいかに深化しているかを反映するものである。

 こうした動きの背景には、「日本の軍」の拡大の他、中国や北朝鮮と隣接するという地理的状況も影響していようが、
 米軍の戦力配備は明らかに北東アジアに傾斜しており、今後もこの傾向は続くであろう。

 フィリピンについて言えば、2016年の選挙次第では、中国との領土紛争に関する同国の政策が一変する可能性があり、一部では最高裁がEDCAを無効とする判決を下すのではないかと懸念されている。
 そうなれば、フィリピンにおけるリバランスは未完に終わる。

 新ガイドラインは、3カ国や多国間協力の重要性を強調している。
 豪州はこの強力なガイドラインを活用すべく、日本との関係や機能的な3カ国協力の強化を続け、地域の弾道ミサイル防衛に対するコミットメントをより明確にすべきである。
 これは、東南アジアに対するリバランスを強化することにも資するはずである、と論じています。

出典:Malcolm Cook,‘US-Japan defence guidelines: pushing the rebalance’(ASPI Strategist, April 29, 2015)
http://www.aspistrategist.org.au/us-japan-defence-guidelines-pushing-the-rebalance/

* * *

 筆者は、シンガポール東南アジア研究所上席研究員、豪ロウィー研究所客員研究員を務めている、アジア専門家です。
 この論説では、米国のアジアへのリバランスは、アジアへの米国のコミットメントを意味するだけではなく、同盟国や増加する安全保障パートナーに、米国に対するさらなる支援をする機会を提供するものであり、新日米ガイドラインは、日本がその機会を捉え、日本の防衛のみならず、地域の安全保障の支援を強化しようとするものである、として新ガイドラインを高く評価しています。

 論説は、米国の北東アジアに対するコミットメントが、東南アジアに対するものより遥かに深く、日米同盟は米豪同盟より深化している点を指摘し、豪州は、3カ国や多国間協力の重要性を指摘している新ガイドラインを活用し、東南アジアに対するリバランスの強化に努めるべきである、と述べています。豪州のこのような積極姿勢は、米国、そして日本の歓迎すべきところであり、評価されるべきでしょう。

 日米同盟が米豪同盟より深化しているというのは、確かに事実ですが、豪州は、9.11の同時多発テロ事件を受け、米豪同盟に基づき集団的自衛権を発動し、2001年10月以降、米軍の作戦支援のため、官邸、空中給油機、戦闘機、陸軍特殊部隊などを派遣しています。
 また、イラク戦争に際しては陸海空合わせて約2000人の兵力を派遣しています。
 これらは日本以上の軍事的貢献であり、歴史的には豪州が米豪同盟に基づき、米国を支援してきたことを忘れるべきではありません。

 ただ、豪州には中国との経済関係を重視すべきであるとの見解もあること、また、豪州では二大政党間での政権交代が比較的頻繁に行われ、政権によって米豪同盟への見方が変わる可能性が常にあることは留意すべきです。

 論説は、フィリピンの対米協力には不確定要素があることを指摘しています。
 フィリピンは東南アジアの安全保障環境で重要な国であり、今後のフィリピンの政治、司法の動きを注視する必要があります。



朝鮮日報 記事入力 : 2015/06/03 11:13
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/06/03/2015060301706.html

横須賀に米新鋭イージス艦配備、中国をけん制か
南シナ海の領有権争いを繰り広げる中国のけん制が目的
最新の対空防衛システムを備えた軍艦



オンライン軍事専門メディア『ミリタリードットコム』が「米国が、在日米軍基地に最新式の巡洋艦と航空母艦を配備する」と1日付で報じた。
  このところ南シナ海に人工島を建設してこの地域の領有権を強化しようとしている中国をけん制し、北朝鮮の核兵器および長距離弾道ミサイルの脅威に対処するための戦略だと解釈されている。

 報道によると、米海軍の新鋭イージス巡洋艦「チャンセラーズビル」(CG62)=写真=が先月28日、カリフォルニア州サンディエゴから横須賀にある在日米軍基地に向けて出港した。
 今後チャンセラーズビルは、海上安全保障作戦や自衛隊と共同の海上パトロールなどを行い、合同軍事演習にも参加する計画だという。
 最近、米海軍の巡洋艦現代化計画に基づき武器システムの改良作業を終えたチャンセラーズビルは、空襲やミサイル攻撃から航空母艦を守ることができる最新のイージスシステム「ベースライン9」を搭載している。
 「ベースライン9」を搭載した艦艇が前進配備されるのは、今回が初めて。
 チャンセラーズビルのカート・レンショー艦長は
 「最も優れた戦闘艦を前進配備するのが米海軍の原則。
 現在、チャンセラーズビルより優秀な軍艦はない」
と語った。

 「チャンセラーズビル」は、対空・対艦能力はもちろんのこと、対潜攻撃機能までも備えており、多様な作戦の遂行が可能だ。
 米海軍の関係者は
 「チャンセラーズビルが横須賀港に移動することになったのは、ここにいる米海軍第7艦隊の戦力を強化するための措置。
 バラク・オバマ大統領が発表した
 『アジアに軸足を移す(Pivot to Asia)』政策
に基づいて新鋭艦をアジア・太平洋地域に配備する、海軍の長期計画の一環」
と語った。

 オバマ大統領は1日、ホワイトハウスで東南アジアの青年指導者らと会談し
 「(南シナ海に人工島を建設する中国の行為は)いくら合法と言い張ろうが、肘で他人を押し出すやり方にほかならない」
と批判した。

 一方米国は、2017年までに弾道ミサイル防衛(BMD)能力を持つイージス駆逐艦2隻を横須賀に追加配備する計画だ。
 その一環として、
 今年の夏には駆逐艦「ベンフォールド」(DDG65)が、
 17年には駆逐艦「ミリアス」(DDG69)
が配備される。
 在日米軍横須賀基地の原子力空母も、最新の艦に変わる。
 米海軍は08年9月、横須賀に原子力空母「ジョージ・ワシントン」を配備したが、近いうちに、性能を改良した空母「ロナルド・レーガン」と交代させる計画だ。




中国の盛流と陰り

_