2015年8月17日月曜日

中国経済の行方(6):「中国発 世界大不況!」はやってくるのか、中国経済の減速が一段と鮮明化!

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ロイター  2015年 08月 14日 14:33 JST
http://jp.reuters.com/article/2015/08/14/column-forexforum-yoichiroyamaguchi-idJPKCN0QJ05B20150814

コラム:元安騒動で深まる中国経済への疑念=山口曜一郎氏

[東京 14日] -
 中国人民銀行(中央銀行)による人民元の基準値引き下げによって、マーケットは大きく荒れたが、国際通貨基金(IMF)から人民元の新たな設定メカニズムを歓迎するコメントが出たり、人民銀行が調整は基本的に終了と発言したことなどを受けて、現在の相場は落ち着きを取り戻しつつある。

  しかし、11日から3日連続となった人民元基準値引き下げの背景にある中国経済の動揺がこれで収束したわけではない。
 今一度、人民元安誘導の背景と中国経済および世界経済への影響について考えてみたい。

■<中国は経済をコントロールできているのか>

 中国当局はこれまで経済成長の鈍化が進む中でも、人民元の基準値を元安方向に変更することはなく、基準値と実勢レートのかい離が存在する中で、必要に応じてドル売り人民元買い介入を行っていた。こ
 れには大きく2つの理由があったと見られる。

1つは、経済活動が減速しているのは改革を進めているからという中国政府の姿勢だ。
 外需に問題があるわけではなく、成長刺激のために通貨安政策は取らない、外需依存の経済構造には戻らない、というスタンスがあった。

もう1つは、資本流出懸念だ。
 特に2014年の後半以降、海外への資本流出の動きに中国政府は神経をとがらせていたと見られる。
 通貨安誘導が資本流出を加速させることへの懸念は相当に強かったはずだ。

  しかし、中国当局は人民元の基準値を引き下げた。
 これは、景気減速が中国政府の想定を超えていたためだろう。
 確かに輸出は伸び悩んでいるが、現在は輸入の落ち込みが大きいため、貿易黒字は維持されている。
 それでも、
 通貨安誘導に舵を切ったのは、資本流出への懸念があっても、
 それを上回る経済の下方リスクが存在しており、

 輸出拡大によって景気を押し上げる必要があった
からだと考えられる。
 人民元の市場化との主張には一定の説得力があるが、実際は今回の行動を正当化するためのロジックと見る。

 昨年11月から4回実施された利下げ、株価下落に対する各種対策、そして今回の人民元の基準値引き下げ。
 おそらくこの先、さらなる金融緩和もあるだろう。
 短期的には、これらによって成長鈍化が和らぐ展開はありそうだが、筆者が以前から抱いている
 「中国政府は経済や市場をコントロールできていないのではないか」という懸念
は解消されない。

 「中国だから大丈夫」の部分が揺らぐようだと、先行きの中国経済は不安定な状況が続くことになり、さらなる景気の落ち込みも排除できなくなる。
 経済活動はもちろんのこと、いったん小康状態を見せている不動産市場や株式市場についても、安心はできない。

■<中国減速で悪影響を受ける国の筆頭は>

 一方、世界経済へのインパクトとしては、人民元安に伴うデフレの輸出が懸念されており、グローバル・ディスインフレへの思惑が米国債利回りの低下につながっている。

 しかし筆者は、中国の輸出よりも輸入への懸念を強く持っている。
 中国の貿易輸入額は、年初に前年比20%まで減少したあと、7月に同8.1%まで落ち込みが縮小していたため、市場の一部で最悪期は過ぎ去ったとの見方が出ていたが、一連の中国当局の行動を見る限り、中国経済の減速はまだ終わっていないようだ。
 だとすると、この先の輸入動向についても早期の回復は見込みにくくなる。

 世界貿易機関(WTO)のデータによれば、
★.2014年の世界の輸入額における中国のシェアは10.3%
米国の12.4%に次いで高く、
 ドイツ(同6.4%)や日本(同4.3%)
を大きく上回る。
 中国の存在が大きくなっているというのは衆目の一致するところだが、中国の輸入インパクトは今や米国並みであり、中国の輸入が10%減少した時のインパクトは米国の輸入の8%減少に匹敵する。

 当然、経済における中国向け輸出のウェイトが高い国が大きくダメージを受ける。
 気になる国を挙げていくと、まず筆頭はドイツだ。
 ドイツの輸出全体に占める中国向けの割合は10年前の2.5%から今や6%台に上昇しており、中国向け輸出はドイツの国内総生産(GDP)の2.5%に相当する。
 他の条件が変わらず中国向け輸出が10%減少すれば、GDPを0.2%押し下げるほどの影響力だ。
 これはユーロ圏経済にマイナスに働くだろう。

 個別国で甚大な打撃を受けるのは韓国だ。
 輸出に占める中国向けの割合は25%を超えており、中国向け輸出の対GDP比は約10%と高い。
 また、オーストラリア、ブラジルも輸出における中国向けの割合がそれぞれ約3割、約2割と高く、資源国、新興国が相応の影響を受ける。
 こうなると、世界のけん引役である
 米国への影響が気になるところだが、輸出に占める中国向けの割合は8%程度と低く、
 中国向け輸出の対GDP比はわずか0.6%だ。

 影響の波及経路は広範にわたるため、貿易動向のみで測ることはできないが、少なくとも対中貿易が米国経済に与える直接的なインパクトは限られる。
 米国経済の内需が堅調である限り、当面の金融政策に決定的な影響を及ぼすことはなさそうだ。

■<元安に起因するデフレ輸出は杞憂か>

 では、デフレ輸出の懸念についてはどうか。
 世界の輸出における中国の割合は12%と高いことから、デフレ輸出への懸念は共有できるが、為替レートの減価による影響は限定的と見る。

 かつて中国デフレ輸出論が台頭した2000年代前半のドル人民元レートは1ドル=8.28元であり、名目実効為替レートは現在よりも2割以上、人民元安水準にあったが、現在は11日の基準値の引き下げ前から4%程度の通貨安が進んだ状態であり、これがすべて名目実効為替レートに反映されたとしても昨年末の水準に反発する程度だ。

 当時、為替レート以外にデフレ輸出の要因とされた安価な労働コストについても、日本貿易振興機構(JETRO)の調査を見ると、2000年代前半から現在にかけて賃金が3倍以上も上昇している都市が少なくない。
 よって、人民元安を主因としたデフレ輸出の可能性はそれほど高くなさそうだ。
 それよりも、中国経済の成長減速に伴う世界的な需要の減少や商品価格の下落を、景気とインフレの下方リスクとして注視しておきたい。

 なお、当面のドル人民元相場については、いったん6.43―6.44元レベルで落ち着くと見る。
 理由は3つある。
 まず、ちょうど2010年の6.82元レベルと2014年の最安値である6.04元の半値戻しに当たること。
 次に、過去の為替レートと輸出動向の関係を分析すると、一定の輸出増加が期待できる水準であること。
 最後にこれを超えるレベルで人民銀行が為替介入を行ったと推測されるからだ。

 ここから先は、中国の経済と金融市場が安定性を取り戻すかどうかが注目される。
 人民元相場をめぐる混乱が一服したところで、先行きを楽観する声も出ているが、
 今回の措置による景気減速からの脱却の可否、
 消費主導への転換が進まず公共投資と輸出依存に戻らざるを得ない経済構造、
 為替市場と対照的に市場メカニズムを排除した株式市場、
 多額のドル建て負債など固定相場によって溜まっていた歪みの表面化リスク、
など不透明要因は依然として多い。

 相場はしばらく落ち着きを取り戻すと見るが、中国経済の動揺が収まらないままであれば、いずれ再び「中国政府は経済や市場をコントロールできていないのではないか」という疑問が台頭することになるだろう。

*山口曜一郎氏は、三井住友銀行市場営業統括部副部長兼調査グループ長で、ヘッド・オブ・リサーチ。1992年慶應義塾大学経済学部卒業後、同行入行。法人営業、資本市場業務、為替セールスディーラーを経て、エコノミストとして2001―04年に ニューヨーク、04―13年ロンドンに駐在。ロンドン大学修士課程(金融学)修了。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。



サーチナニュース 2015/08/14(金) 16:02
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0814&f=business_0814_032.shtml

ドイツ経済の「危うさ」
・・・中国事情で露呈=中国メディア

 中国メディア・環球網は11日、ロシアメディア・スプートニクが9日に
  「中国経済が風邪を引けばドイツも風邪を引く」
と題し、フランスの経済学者が
 「ドイツの工業生産量が減少した原因は中国にある」
と論じたと報じたことを伝えた。

 記事は、6月のドイツの工業生産量が1.4%減少したと紹介したうえで、
 「EUにおいて最大かつもっとも安定した経済を持つドイツ経済の危うさが露呈した」
と解説。
 そのうえで、フランスの経済学者Mathieu Mucherie氏が現地メディアの取材に対して「想定の範囲内」と語ったことを伝えた。

 また、同氏が「
 ドイツが長きにわたって外国経済に依存してきたからだ。
 ドイツの経済モデルは、もはやこれまで認められてきたような安定さを持っていない」
と語ったことを紹介した。
 さらに
 「われわれはこれまで、多くの指標からドイツの工業生産が衰退し、
 中国経済の成長鈍化が予想よりも大きいとしてきた」、
 「多くの人が世界経済の成長、とくに中国-EU間の貿易増加を期待しているが、このような状況は起きておらず、世界経済に改善は見られない」
と論じたとした。

 そして、現在の中国は株価の乱高下、不動産バブル、経済成長の鈍化といった各種問題に直面しており、なかでも中国経済の成長鈍化はドイツを含む世界的な問題であると解説。
 中国国内におけるドイツの高級自動車ニーズが著しく低下し、ドイツの自動車製造業が需要不足に苛まれているとしたほか、BMWの現地ディーラーが「大幅な値下げをしなければ、販売数の下落に歯止めがかけられない」との見解を示していることを伝えた。



時事ドットコム 2015/08/17-07:35
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2015081700039

中国景気減速、ドイツ車に打撃
=販売不振、過剰生産に

 【フランクフルト時事】
  中国の景気が減速する中、中国で絶大な人気を誇ってきたドイツ車への打撃が懸念され始めた。
 販売不振で過剰生産の様相が強まり、メーカーの株価が急落する事態となっている。

 中国でのドイツ車の新車販売台数は7月まで6カ月連続で前年同月の実績を下回り、1~7月の累計は前年同期比5.6%減の約223万台。
 2桁増が続いた前年までと比べると、急激な落ち込みだ。
 人民元切り下げ発表後の11日には、中国向け輸出がさらに細るとの見方から、高級車メルセデス・ベンツを製造するダイムラーの株価が前日比5.15%安となるなど、自動車関連株が売り込まれた。
 販売の減少は景気減速の影響が大きいが、日本メーカーや中国メーカーは対照的に増加を達成。
 「自動車需要が、沿岸部から所得が比較的低い内陸部に移った」(ドイツ銀行)ことが、ドイツ製高級車の苦戦につながったとの見方もある。



サーチナニュース 2015/08/17(月) 10:20 
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0817&f=business_0817_018.shtml

中国GDPの「信ぴょう性」 
国外から懐疑的な声=中国メディア

 中国メディアの河北新聞網は13日、中国国家統計局が2015年上半期における中国の国内総生産(GDP)が前年同期比7.0%増と発表したことについて、中国国外ではさまざまな反応が見られたと伝え、数値の信ぴょう性について懐疑的な声があることを紹介した。

 記事は、中国の15年上半期のGDP成長率が7.0%増となったことに対し、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は
  「世界経済に多くの不確実性が存在するなか、中国経済の回復を示す数値である」
と論じたことを紹介。

 さらに、京華時報が「中国経済はすでに困難な時期を脱した」とし、GDPに占める第三次産業の割合が上昇した点について「中国の内需構造の改善を示す」と評価したことを伝えた。

 一方で、中国のGDP成長率について「驚きを示したメディアもある」と伝え、一部では
 「人びとの予想を大きく上回る数値だった」、
 「中国の第2四半期における成長率も7.0%増になったことは多くのアナリストを驚かせた」
などと、中国発表の数値を驚きとともに報じた国外メディアもあると紹介した。

 また記事は米国の著名な経済紙などは
 「中国当局が発表する数値は国外から懐疑的な目で見られている」
と伝え、さらに
 「多くの評論家は中国が発表した差し障りない数値は政治的理由によって捻じ曲げられた結果に見えると指摘している」
などと報じたことを紹介。
 そのほか、
 「中国の経済指標は故意に捻じ曲げられたものではなく、算出方法に問題があるため、GDP成長率は実際より1-2%ほど高い数値となっている」
との指摘があることを伝えた。

 続けて、中国には「独立した統計局はない」とし、
 世界的な金融機関グループであるモルガン・スタンレーなどでエコノミストを務めた経歴を持つ人物の発言として
 「中国の統計局は地方政府から上がってくる数値をまとめただけに過ぎない」
と指摘。
 地方政府が数字をねつ造している可能性を示唆したうえで、中国の実際のGDP成長率は4-5%程度にまで落ち込んでいるとの見方を示した。



サーチナニュース 2015/08/18(火) 08:32
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0818&f=business_0818_010.shtml

世界経済に「デフレリスク」高まる
・・・シグナルも出ている!=中国メディア

 中国メディアの中国投資咨詢網は17日、人民元切り下げが世界に与えた影響は落ち着き始めたとする一方、原油価格が大幅に下落したと伝え、世界経済がデフレに陥る可能性が高まっていると論じた。

 記事は、ブラジルの通貨レアルからマレーシアのリンギット、中国の人民元にいたるまで世界各区の通貨が対ドルで下落していることを指摘し、
 「世界がデフレに陥る1つのシグナルだ」
と論じた。

 さらに、もう1つのシグナルとして原油価格の下落を挙げ、13日には2009年3月以来となる1バレル=42ドルを下回ったと指摘。
 アナリストからは
 「原油価格が1バレル=40ドルを下回れば、
 経済的なことだけでなく、政治的にも何か間違ったことが世界で起きていることを示すもの」
との声があがっていると紹介した。

 続けて、通貨安競争だけでなく、「原油戦争」も起きつつあると伝え、世界の産油国は原油生産量を減らすどころか、むしろ増やそうとしていると主張し、米資源開発サービス大手ベーカー・ヒューズのデータとして、米国では油田の数が14日の週までに2つ増え、計672箇所に達し、過去最高となったことを紹介。

 また、国際エネルギー機関(IEA)のデータを引用し、
 世界の原油生産量は2016年末まで過剰供給の状態にある
と伝え、石油輸出国機構(OPEC)の7月の原油生産量はここ3年間で最高の水準に達したと報じた。

 供給過剰による原油価格の下落を受け、中国やロシアなど原油生産コストが高い国は打撃を受けており、中国では原油生産量が減少しているほか、シェールガスの開発も不調だと指摘した。
 中国も経済の失速を背景に石油需要が鈍化しているとし、
 「産油国のバランスシートを長期にわたって支えることは不可能」
と指摘した。

 さらに記事は、
★.中国が人民元を切り下げたことで「莫大な債務を抱える中国において、国民の生活コストも上昇する」
と指摘。
 さらに、アジアにおいては通貨安競争を引き起こすことになると主張し、世界経済がデフレに陥る可能性が高まっていると論じた。



ブルームバーグ 2015/08/18 09:00 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NT8YJ56K50XW01.html

中国の外貨準備、
月間5兆円ペースで減少へ-人民元の下支えで

  (ブルームバーグ):
 ブルームバーグの調査によると、中国人民銀行(中央銀行)が人民元の下支えで介入に動くことに伴い同国の外貨準備高は月間400億ドル(約5兆円)前後のペースで減少する見込みだ。

 調査は先週の突然の人民元切り下げ後にストラテジストやトレーダー合わせて28人を対象に実施した。
 調査の予想中央値によれば、
★.保有額が世界最大である中国の外貨準備高 は年末までに3兆4500億ドルと、
 7月末時点の3兆6500億ドルから減る見通し。
 予想範囲は3兆-3兆7100億ドル(約430兆円ー465兆円)。
 人民元は年内に1.6%安の1ドル=6.50元になると見込まれている。

 シティグループのストラテジスト、ケン・ペン氏(香港在勤)は
 「人民銀は元を確実に安定させる必要があるため、向こう3カ月間に頻繁に外為市場に介入するだろう。
 中国はこうした目的を達成するため外貨準備の一部を使っていく」
と述べた。

★.人民銀は約20年ぶりの低成長に取り組む中で資本流出を阻止するため元の下落を制限する方針だ。
 こうした元の下支えが外貨準備を減らすことになるが、
 この7カ月間に1920億ドル減少した外貨準備はなお2位以下の国々の少なくとも3倍余りに上る。 

原題:China Reserves Seen Dropping $40 Billion a Month on Yuan Support(抜粋)



現代ビジネス 2015年08月18日(火) 町田 徹
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44781

これは戦争の引き金になる「禁じ手」だ!
人民元切り下げが世界経済にもたらすリスク

■恐るべき苦境

  栄枯盛衰――。
 第2次世界大戦の終結から70年の節目を迎えた先週のこと。
 5年前に、名目GDP(国内総生産)で日本を抜いて世界第2位に躍り出て、経済大国の名をほしいままにしてきた中国の退潮を象徴する出来事が起きた。

 先週木曜日(13日)までの3日間の累計で約4.5%に達した人民元の切り下げだ。
 中国は懸命に否定しているが、人民元を低めに誘導し、輸出を伸ばそうと目論んでいることは明らかである。
 だが、周知の通り、通貨安誘導は「近隣窮乏化策」とも呼ばれ、かつてブロック経済を招いて世界大戦の引き金を引いた。
 経済政策の禁じ手だ。

 その禁じ手をあえて選択せざるを得なかったところに、中国指導部の苦境が象徴されている
 成長鈍化を「新常態」と言い
くるめて、実質GDPで7%の成長を維持するとしてきたものの、
★.その達成は困難で、力で抑え込んできた不満が爆発して、社会不安に発展しかねない状況にある
のだ。

 リーマンショックや中国バブルの崩壊に直面しながら、中国は強引な空ぶかしを繰り返して問題の先送りを続けてきた。
 その経済の実態は、一体どうなっているのだろうか。
 歴史的な節目を迎えた中国の実情を探ってみよう。

 各地の株式市場は先週水曜日(8月12日)、時ならぬ世界同時株安の様相を呈した。
 中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が、2日連続で為替レートの目安となる基準値を引き下げたことを受けて、人民元相場がほぼ4年ぶりの安値をつけたことが引き金だった。

 日経平均株価は一時400円を超す下げを記録。
 上海、韓国、インドネシア、ベトナム、シンガポールなどのアジア株指数は全面安となった。
 さらに株安の連鎖は、欧州に波及。独DAX指数が約3%の下落を記録した。
 米国でも、ダウ工業株30種平均が一時300ドル近く下げて、年初来安値を更新する場面があった。

 突然の相場急落に、世界各地で中国を非難する声が沸き上がった。
★.批判に共通していたのは、中国が鈍化した成長力を元安誘導による輸出拡大で補おうとしている
というものだ。
 日本の証券アナリストからは
 「市場に驚きを与えてまで景気刺激に注力しなければならないほど、中国経済は悪化している」
と指摘する声があがった。

■日本にとっても厄介

 さらに、米財務省の報道官が声明を出して
 「輸出でなく、基本的に内需主導型の経済を目指すことが米中両国の利益にかなう」、
 「(元の自由化)改革の後退は、難しい事態を招くだろう」
と警告する騒ぎも起きた。
 その声明には、いつまでたっても解消されない巨額の対中貿易赤字を抱える米国の苛立ちが反映されていた。

 一連のリアクションの背景にあるのは、このところ様々な経済指標が極端に悪化している事実と、それに伴う実体経済への不信だ。
 例えば、7月は消費が伸び悩み、自動車などの生産が落ち込むなど減速が鮮明で、放置すれば、中国経済が底割れしかねない状況だ。
 特に、7月の輸出額は、市場の大方の予想に反して、前年同月比8.9%減と大幅な落ち込みをみせた。

 中国の場合、輸入が輸出を上回る勢いで落ち込んでいることが事態を複雑にした。
 輸出以上に輸入が縮小することで、貿易黒字が拡大する傾向にあるため、対中貿易赤字に苦しむ国々から、巨額の貿易黒字を溜め込んでいながら、一段の輸出拡大を狙って、通貨安競争の引き金を引きかねない政策に走ることは許さないとの苛立ちが広がったのだ。

 日本にとっても、中国の通貨切り下げは厄介だ。
 元安で割安になった中国製品が雨後の筍のように流入して、デフレ経済に逆戻りという悪夢が現実になりかねない。
 このところ、流通事業者やホテル業界を活気づかせる原動力になっている、中国人観光客の“爆買い”が冷え込むリスクもある。

 こうした批判に対して、中国人民銀行の易綱副総裁は13日、異例の記者会見を開いて
 「(中国当局の狙いは)相場形成の仕組みを一段と市場化する」
ことにあると強調し、元安誘導を狙ったものではないと釈明した。

 2005年7月に「管理変動相場制」(毎朝公表する基準値から上下2%の変動を認めるもの)を採用して以来、市場実勢とかけ離れる一方だった基準値の決定方法を見直したに過ぎない
と主張したのだ。
 そして、11日にその宣言を行ったうえで、即日、「基準値(の決定)を前日の市場の終値を参考にする」方式に変更し、実勢に近づけることにしたというのである。

■都合のよいことだけを発信

 自らの言い分を補強する狙いがあったのだろう。
 中国人民銀行は12日、上海外国為替市場で人民元買い・米ドル売りの為替介入に踏み切った。
 これまで市場実勢を無視した人民元の価格形成を批判してきた国際通貨基金(IMF)には、中国の対応を肯定的に評価する声が皆無ではない。

 しかし、中国人民銀行の言い分を鵜呑みにすることはできない。

 その第一の理由は、人民銀行の記者会見がオープンなものではなく、人民銀行が指名した一部メディアだけが出席できるものだったことだ。
 人民銀行はこれまで、首脳の定例会見の場を設けて来なかった。
 今回、内外から厳しい批判を浴びたことに慌てて、刷り込みやすいメディアだけを招へいし、都合のよいことだけを内外に発信させる意図が丸見えだった。

 第2のポイントは、中国の場合、最も代表的な経済指標であるはずのGDPが、政府によって脚色されており、信用に値しないとされてきた点である。
 余談だが、この点については、李克強首相が、中国のGDP指標を信用していないという風聞がある。

 もともと間接情報が報じられたものとされ、真偽のほどは不明だが、現在のポストに登り詰める以前の地方幹部時代に、「(GDPは)人為的で信頼できない」として、比較的信用できる電力消費、鉄道貨物輸送、銀行融資の3指標に「注目している」と漏らしたというものだ。

 中国の2014年の実質GDPは7.4%と、24年ぶりの低水準に減速した。
 それでも、習近平政権は、今年の全人代で、構造改革を断行して7%前後の成長を維持する方針を表明した。
 成長の鈍化を「新常態」と喧伝したことは記憶に新しい。
 そして、その公約通り、今年1~3月と同4~6月の実質GDPは、そろって前年同期比で7.0%増と目標を達成したとしている。

 ところが、かつて李首相が「注目している」と述べた、同じ時期(1~6月)の
★.中国のエネルギー消費量は、前年同期比で0.7%増と横ばい圏だ。
★.発電量も同0.6%増に
過ぎず、こちらもGDPの伸びを大きく下回った。

 省エネ技術が普及してエネルギーの利用効率が上がったとしても、エネルギー消費量や発電量とGDPの伸びがこれほどかい離するのは不自然過ぎる。
 こういった点に、多くのエコノミストが中国の実質GDPが水増しされているのではないかと疑う理由がある。

■「通貨戦争」がはじまる

 補足すると、その水増しを少なめに見積もるエコノミストは、
■中国の実質GDPの伸びを4~6%程度
とみている。
 一方、水増しが大きいとみるエコノミストの一人は匿名で筆者の取材に応じ、
 「中国のGDPの大半を占めてきた製造業の電力使用量がマイナス0.4%と減っているのだから、
実質GDPがマイナスだったとしても驚かない」
との見方を明かした。

 振り返れば、リーマンショック後、中国は、巨額の財政出動をするとともに内需振興のために地方政府による不動産開発を奨励したものの、不動産バブルが崩壊。「
 影の銀行」と呼ばれるノンバンクが一般向けに販売した理財商品を中心に、巨額の不良債権が発生した。
 その一方で、日本の7、8倍とされる過剰生産力を抱えた鉄鋼業などの在庫や生産設備の整理は今なお、手つかずである。

 昨年来のGDPの減速は、そうした問題を先送りしてきたツケに他ならない。
 日本が1980年代のバブル経済の崩壊を機に、構造的な経済力の衰えに直面したのと同じように、
★.中国バブル崩壊は中国経済の成長にピリオドを打つもの
となるだろう。

 昨秋以来、4回を数える利下げの効果が見えないジレンマの中で行われたのが、今回の人民元の切り下げだ。
 今年7月下旬に中国政府がまとめた輸出振興策にも、人民元の下げ余地を大きくする案は盛り込まれていた。

 少数民族や成長から取り残された農村部を中心にした政情不安がくすぶる中で、経済成長の鈍化が更なる社会不安を招くのは確実だ。
 それゆえ、習指導部はかねて取り組んできた反腐敗運動だけでは不十分と判断、国内経済の立て直しを最優先課題に据えた。
 そして、世界から批判を受けるリスクを承知で、歴史的な賭けに打って出た。
 それが、今回の人民元の切り下げというわけだ。

 しかし、通貨の切り下げが期待通りの効果をあげるかどうかは、未知数だ。
 デフレ経済の克服を大義名分に掲げて、黒田日銀が進めてきた異次元の金融緩和に伴う円安が、期待されたほど輸出振興策になっていないのは、その好例だ。
 通貨安は輸入物価を押し上げて、消費や国内の企業活動を鈍化させるリスクを伴う。
 GDPの起爆剤になる保証はない。

 加えて、周辺国が対抗して自国通貨の低め誘導に踏み切る懸念がある。
 中国の場合は、今秋の実施が確実視されている米連邦準備理事会(FRB)の利上げに伴い、資本の海外流出が加速するリスクも勘案しなければならない。

 習指導部が起死回生を目論む歴史的な賭けは、中国にとどまらず、世界経済全体の足を引っ張りかねない。
 人民元の切り下げは、そんな大きな危険性をはらんでいる。



時事通信 2015/8/21 19:18
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150821-00000100-jijnb_st-nb

真の中国成長率、5%か
=デフレ指摘の論評が拡散

 【香港時事】今年上半期の真の中国経済成長率は名目3%、実質5%―。
 デフレを指摘する中国の有力エコノミストが書いたとされる論評がインターネット上で広がり、反響を呼んでいる。
 香港紙リンゴ日報(電子版)などが21日までに伝えた。




中国の盛流と陰り



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