2015年6月30日火曜日

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●プロジェクトX 運命のゴビ砂漠  2002/10/15放送
2015/02/21 に公開





「医療観光/メディカルツーリズム」:「お客様は神様です」

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サーチナニュース  2015/06/30(火) 05:50
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0630&f=business_0630_001.shtml

日本で患者は「お客様」
・・・自国を嘆く中国人が病院に殺到=中国メディア

 中国の大手ポータルサイト「捜狐」は28日
 「なぜ、日本の病院は中国人でいっぱいなのか」
と題する文章を掲載した。

 いわゆる「医療観光/メディカルツーリズム」で日本を訪れる中国人が増加していることを受け、その理由を分析した。
 理由としてまず
 「中国に近く文化面も似ている」、
 「ビザ発給など、医療観光客を誘致する政策が実効されたこと」
などを挙げたが、さらに大きな理由としては
 日本における医療の充実
を指摘した。

 病院の待合室や病室、シャワールーム、手術室、リハビリ施設などの写真を多数掲載。
 いずれも開放的で明るい雰囲気だ。
 文章は「リラックスして医療を受けられる」と強調した。
 なお、使われた写真は日本国内の水準でも、施設が相当に整っている医療機関のものと考えてよい。

 文章はさらに、日本における医療サービスの質の高さを強調した。医療技術が世界一流であるだけでないと強調。日本には「お客様は神様です」という信念があり、患者も「お客様」とみなされるので、「病院は必ず、忠実にあなたの世話をする」と解説した。

 文章は最後の部分で、
 「日本の医療観光が中国人の熱烈な支持を集める根本的な理由」
として、
★.中国国内の病院の「技術やサービスの総合的な水準が、国民が求める水準に達していないこと」
と指摘。
 さらに
★.「治療費は高騰しているのに病気は治らない。
★.入院するのも(順番待ちなどで)難しい。
★.医者には『付け届け』が必要」
などと論じ、
 「やはり、われわれ自身に原因があったのだ」
と指摘した。

**********

◆解説◆
 日本政府・観光庁は2010年11月、「医療観光プロモーション推進連絡会」の設置を決定。
 それ以前から、「訪日外国人旅行者3000万人の実現」を目指す取り組みの一環として、「インバウンド医療観光に関する研究会」を開催するなどしていたが「医療観光プロモーション推進連絡会」の設置で、民間や地方など、外国人患者等の誘致に意欲的に取り組む各主体のプロモーション支援、情報共有、実情把握に取り組むことになった。

 日本政策投資銀行は2020年における日本の医療ツーリズムの潜在的市場規模を5507億円、経済波及効果を2823億円とする経済波及効果の試算を発表した。
 来日する医療ツーリスト数は42万5000人で、
 うち中国人は31万2000人
との見方を示した。



ZUU online 2015/8/6 17:20
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150806-00000024-zuuonline-nb

中国「爆買い」が今度は病院で?
 「医療ツーリズム」で病院が外国人でいっぱいになる日

 アベノミクス成長戦略でも投資の重要性が指摘されている医療分野。
 中でもその可能性について議論されてきた医療ツーリズムだが、日本ではなかなか広がりを見せない。
 賛否分かれる医療ツーリズムは日本でビジネスと成長するのだろうか。

■医療ツーリズムに対する誤解

 2008年ごろから日本でも注目を集めるようになった医療ツーリズム。
 当初、「Medical Tourism」が「医療観光」と訳されたこともあって、
 「健康診断で日本を訪れた外国人に、ついでに観光してもらってお金を落としてもらおう」
というとらえ方が主流だった。

 しかし本来の医療ツーリズムは、自国で適切な治療を受うけられない患者が健診や療を受けるために他国へ渡ることを意味する。
 たとえば、
★.アメリカなど自国の治療費が高額な国の患者や、
★.イギリスの様に診断後の治療までの待機時間が長すぎる国の患者、
★.中国や中東産油国、ロシアなど、十分な医療施設がない国の患者たち
が他国で治療を受けるというものだ。
 彼らの目的は治療を受けることであって観光ではない。

■アジアに多い医療ツーリズム先進国

 こうした需要に対し、高度で適切な価格の医療サービスを提供している医療ツーリズム先進国として挙げられるのが、
★.タイやインド、韓国
などだ。

 たとえばタイのバムルンラード国際病院やバンコク病院では、多数の国・地域からの患者を受け入れるため、言語や文化、宗教への対策がしっかりとなされている。
 患者のビザ申請などの支援サービスも充実している。
 またインドのアポロ病院やナーラーヤナ・フリーダヤーラ病院、アラヴィンド眼科病院では、独自の手術方式や経営手法により、アメリカと比べてもそん色のない、高い成功率の手術を1/10以下の価格で提供。海外の患者から高い評価と人気を集めている。
 ほかにも、韓国では主に美容形成のニーズが多く、ソウルや釜山などに年間数十万の美容整形希望者が訪れている。
 タイやインドの病院の多くは株式会社化しており、また患者の信用を得るために国際的医療評価であるJCI (Joint Commission International)認証を取得している。

 この様に医療ツーリズム先進国においては既に競争優位性が確立されている。

■海外の患者受け入れに消極的な日本

 日本の病院やクリニックには、海外の患者を積極的に受け入れようという姿勢は見られない。
 その理由は、日本には国民皆保険制度があることだ。
 慣習を変えてまで外国人の患者を呼び込もうというモチベーションが働かないのだ。

 しかし、日本でも医療ツーリズムに興味を示し、実際に実験的に医療ツーリズムを公表せずに行っているところもある。
 社会保障費の抑制が叫ばれる中、病院経営を成り立たせるために、競合施設に先駆けようと考えているからだ。

■日本の病院が持つ競争優位性と投資価値の有無

 医療ツーリズムが日本でビジネスとして成長するための課題や問題点も、既にいくつも浮き彫りになっている。
1つは日本語を流ちょうに話し、かつ医療の知識を持つ中国人スタッフの雇用。
2つ目は第患者が病院に来るまでの間や、病院を離れてから必要になるファシリテーター、コーディネーターと呼ばれる専門の通訳などスタッフの確保。
そして3つ目は、患者が来院直前になってキャンセルする、いわゆる“ドタキャン”の問題や、患者や家族が院内で起こすトラブルだ。

 このように問題や課題はあるものの、日本が医療ツーリズムで他国に勝てる要素はある。
 まず日本は世界に類を見ない医療機器大国である。
 CTやMRIと言った診断装置の保有台数は世界でも圧倒的にトップクラスであり、また重粒子線治療器機、陽子線治療器機、放射線治療器機をも保有する。
 これらは“体を切らずに治す”非侵襲治療を癌患者に提供できるので、海外の癌患者が日本を渡航先として選ぶ可能性は高いはずだ。

★.実は日本は、先進国では普通に使える医療機器が使えない、いわゆる「デバイス・ラグ」と言われる状況にある。
 このため、医師達は最先端の医療機器を使わずに患者を治そうとしてきた。
 その結果、治療技術は世界でもトップクラスといえるほどだ。
 特に心臓血管治療や脳神経血管内治療におけるカテーテル治療の技術は抜きん出ている。

 日本における医療ツーリズムの競争優位性はここにある。
 こうした、非侵襲(または低侵襲)の医療機器を開発している企業や、株式会社化して次の時代を見据えている病院に投資する価値は十分ある。

 日本の病院、クリニックには、外国からの患者を受け入れるだけの高い技術やホスピタリティがある。
 中国からの観光客の「爆買い」が話題の今、日本全国の観光地や小売店は中国からの買い物客でいっぱいだ。
 日本の病院が本腰を入れれば、今度は病院が外国人でいっぱいになるかもしれない。




中国の盛流と陰り



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2015年6月29日月曜日

「東洋一の堅艦」と呼ばれた清国の戦艦「鎮遠」、 その錨が日本の岡山市にあるって知ってました?

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レコードチャイナ 配信日時:2015年6月29日(月) 7時20分
http://www.recordchina.co.jp/a112636.html

「東洋一の堅艦」と呼ばれた清国の戦艦「鎮遠」、
その錨が日本の岡山市にあるって知ってました?
=中国ネット「知らなかった!取り戻そう!」




 2015年6月27日、中国中央テレビのウェブサイト・央視網は、同局が制作したドキュメンタリー番組
 「甲午(日清戦争)第5回:沈没」
の動画を公開した。
 以下はその概要。

 日清戦争において、黄海海戦(1894年9月17日)で激突した清国海軍の北洋艦隊と日本海軍の連合艦隊の間には、軍事力レベルに大きな差が開いていた。
★.北洋艦隊には1881年の建設当時、「東洋一の堅艦」と呼ばれていた甲鉄砲塔艦「鎮遠」や同等級の「定遠」などの主力戦艦12隻が含まれていたが、総トン数は3万2396トン。
★.連合艦隊は同じく12隻だったが、その総トン数は4万849トン
だった。
 各艦の最大出力や最大速度を比較しても、その差は歴然としており、
★.清国海軍は黄海海戦で巡洋艦「経遠」「致遠」「超勇」「揚威」の4隻を失ったが、
★.日本側は巡洋艦「松島」、コルべット艦「比叡」、砲艦「赤城」、仮装巡洋艦「西京丸」4隻が大破したものの清国に比べて被害は小さかった。

 この海戦で大きな損害を出した清国海軍は事実上無力化し、1895年1~2月の威海衛の戦いで日本海軍に敗北。
 鎮遠は前年の12月14日、威海衛沖で座礁していたが、同年2月17日に日本海軍につかまり、戦利艦として日本海軍に編入。
 日露戦争に参加した後に練習艦となり、1912年に解体されたが、その主錨は現在、岡山県岡山市の吉備津神社となりの「福田海本部」という宗教施設の敷地内に安置されている。
 この施設は食肉として処理された牛の鼻輪が全国から集められてできた「鼻ぐり塚」があることで有名だが、鎮遠の主錨はその塚の奥に設置されている。

この動画を見たネットユーザーの反応は以下の通り。

「知らなかった!」
「取り戻すべきだ」
「戦利品なんだから、日本の物でしょ」
「歴史を知ることのできるドキュメンタリーっていいよね。
 くだらない抗日ドラマをやめて、ドキュメンタリー番組を放送してほしいよ」




2015年6月28日日曜日

露骨に日本の顔色を伺い始めた中国の真意はどこに:中国に反日教育などない???

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 最近、中国の日本に対する風当たりが非常に弱く
なってきている。
 時には「よいしょ」すらしている。
 短絡的に言えば
 「中国が政治的経済的に追い詰められてきた」
となるが、果たしてそうなのであろうか。
 下の記事のように
 ミエミエのウソすらつき始める
ようになっている。
 日本としてはその真意が知りたいところだろう。


レコードチャイナ 配信日時:2015年6月28日(日) 18時40分
http://www.recordchina.co.jp/a112550.html

中国に反日教育などない―専門家

 2015年6月26日、香港メディア・大公網は記事
 「専門家:中国に反日教育はない、
 日中の戦略的適応には最低10年以上が必要だ」
を掲載した。

 中国社会科学院日本研究所共産党委員会書記、副院長の高洪(ガオ・ホン)氏は25日、中国記者協会主催の談話会「ニュース茶座」に出席。
 「現在の日中関係」をテーマに中国内外の記者と交流した。

 「日本軍国主義が復活する可能性があるのか」
との大公網記者の質問には、
 「軍国主義とは軍人によるファシズム政体であり、復活の可能性はない」
と答えた。
 一方で
 現在の日本と中国は力関係が入れ替わる極めて敏感な時期であり、
 安定するまでには最低でも10年以上の時間が必要
との見通しを示した。

 また中国は反日によって国民の凝集力を高めているのではないかとの質問には、まったくの逆だと一蹴した。
 2005年、小泉純一郎元首相の靖国参拝を契機に中国各地で反日デモが行われた。
 その際、高副院長は大手ポータルサイトのウェブ編集者に講義したが、「なぜ中国は軍事力で尖閣諸島を占領しないのですか?」といった質問をしてきたという。
 高副院長は政府の要請に従い、正確な報道をすること、報道は消火器であるべきで火種であってはならないと諭したとのエピソードを披露。
 中国政府が推進しているのは反日教育などではない
と断言している。


  少し前までは
 『日本人は生活の隅々まで浸透した中国製品から離れることはできない』
と豪語していたが、いまではそのトーンは落ち、逆に我々は
 『日本製品から離れることはできない』
ということになっている。
 クルクル論旨の変わるのが中国メデイアの特徴だが、時に以前に言ったことを反省することも必要なのではないかと、反省好きの日本人は思ってしまう。


サーチナニュース 2015-06-28 22:21
http://news.searchina.net/id/1579339?page=1

日本製品から離れることはできない=中国メディア

 中国メディアの騰訊網は25日、中国スマートフォン産業の致命的な弱点は「日本製の部品に過度に依存していること」と指摘しつつ、日本製品依存は
 「スマートフォンだけでなく、日本製品を排斥することなど到底不可能だった」
と論じる記事を掲載した。

 記事は、日本製品の排斥など止め、身の回りの製品にどれだけ「日本の血」が流れているかを見てみるべきだとし、中国でも人気の高いiPhoneには多くの日本企業の部品が搭載されていることを指摘。
 さらに、「iPhoneの目は日本製」と形容したうえで、ソニー製のイメージセンサが採用されていると紹介した。

 また、中国で人気の高い中国メーカーのスマホにはシャープやジャパンディスプレイのハイエンドパネルが採用されていることを指摘し、
 「中国メーカーのスマホの“顔”も日本製だった」
と論じた。

 続けて、旺盛な消費意欲を背景とした「爆買い」で知られるようになった
 中国人は「国外の高品質な製品を買い求めている」
と指摘し、日本でも見られた“爆買い”は日本の製造業の技術力の高さや消費者本位の考え方が支持されたためとの見方を示した。

 そのほかにもデジタルカメラや産業用ロボットなど多くの分野で日本製が圧倒的な存在感を示していることを指摘し、
 「経済のグローバル化を背景に、日本製品はわれわれの生活のあらゆる場所に浸透している」
としたうえで
 「日本製品よ、あなたから離れることはもうできない」
と伝えた。


 恫喝的非難一本でやってきた中国だが、いまは自己メンツをいかにたもちながら日本を懐柔するかに腐心している。
 その理由はなぜか。
 いくら中国が日本に脅しをかけても、
 日本が全く『怯えてくれない』というやるせなさ
がある。
 それはなぜなのか。
 日本は中国を、政治でも経済でも軍事でも全く恐れていない
という現実がある。
 日本は中国を怖れていない、というより中国の圧力を利用して
 『お詫びと反省の国から、普通の国へ
と国のスタイルを変えよう
とまでしている。
 日本にとって中国の恫喝は「千載一遇のチャンス」と捉えている節がある。
 中国はこの3,4年の経緯から、そのことがおぼろげながら分かってきたようだ。
 いわく
 『日本には脅しは通用しない。
 脅すとそれを利用して逆に強くなっていく』
ということである。
 それは、
 中国の行く手を阻む、ということに通じる
ことが分かってきた。
 よって、中国のトーンは一時より極度に落ちてきている。
 下記の記事などはその典型である。
 恫喝が無効と分かった今、いかにソフト的に抑えこむか、に力点が移動している。
 以前からすると中国は元気がなくなっている。
 あの鼻っぱしの強いハッタリは影もなく消えている。 


レコードチャイナ 配信日時:2015年6月29日(月) 8時9分
http://www.recordchina.co.jp/a112659.html

王外相「日本は中国の発展と台頭受け入れられず」
=安倍政権の戦後70周年談話に強いけん制―中国外交部

 2015年6月27日、中国外交部によると、中国の王毅(ワン・イー)外相は、北京で開かれた「第4回世界平和フォーラム」で、対日政策について
 「中日関係の問題の根幹には、日本が中国の発展と台頭を受け入れ、歓迎できていないことがある」
と述べた。
 以下は王外相の発言。

 中日両国は最も近い隣国であり、われわれは平和的共存と協力を望んでいる。こ
 れは中国の既定方針であり、変わることはない。
 しかしながら、中日関係の問題の根幹には、日本が中国の新たな発展と台頭を受け入れ、歓迎できていないことがある。
 中国の発展は日本に利益をもたらすが、心理的に日本はその準備ができていない。

 だが、事情は変わりつつある。
 日本のある友人が、
 「中国の発展は良いことだ。
 中国の復興は過去の歴史上、あるべき姿に戻るだけだからだ」
と語った。
 私は、時間の移り変わりとともに、
 中日関係も遅かれ早かれ正常かつ安定した軌道に乗るだろう
と考えている。

 今年は世界反ファシズム戦争・抗日戦争の勝利70周年にあたる。
 日本はいまだにどうやって歴史問題を適切に処理するかという問題に直面している。
 日本にとって、対外的には他国の有益な経験を鑑とすることができるし、国内では正義と平和を望む声が高まっている。
 鍵となるのは、日本の指導者がどのような選択をするかということだ。
 歴史の影の中にとどまり続け、歴史という被告人席に立ち続けるのか、それとも各国、とりわけ日本の侵略を受けた国との和解を果たし、未来を切り開くのか。
 これは日本の指導者の眼前に置かれた重要な問題であり、われわれはそれに注目している。



JB Press 2015.6.29(月) 阿部 純一
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44143

日本人の「中国語」離れが示すもの
もはや元には戻れない日中関係

■日本にすり寄り始めた中国

 2014年11月の北京で開催されたAPECの場で行われた日中首脳会談は、習近平主席のホストとしてあるまじき冷淡な対応にほとんどの日本人は鼻白む思いを抱いた。
 ところが、今年4月にインドネシアで開催されたバンドン会議60周年の場では、中国側から日本に首脳会談が持ちかけられ、前回と比べればかなり友好的な雰囲気で首脳会談が行われた。

 とはいえ、中国側が用意した会談の場には、北京での会談同様、日中両国の国旗が用意されていなかった。
 中国国内に向けて、中国は日本に対して決して妥協的な対応をとっているわけではないことをアピールする必要があったのだろう。

 そうした流れの中で、5月下旬、自民党の二階総務会長が観光業界代表団3000名を引き連れ北京を訪問した。
 異例にも習近平主席が会談に応じ、人民大会堂での「中日友好交流大会」と銘打った晩餐会で習近平主席は40分にわたる演説を行い、日中の民間交流の重要性を訴えた。中国共産党機関紙「人民日報」ほか中国の官製メディアがこれを一面で大々的に報じた。
 日中関係の修復を図ろうとする中国側の意図が明確になったイベントであった。

★.なぜ中国が日本に対する態度を変え、友好ムードを演出しようとするまでになったのか。

 もちろん、背景的な事実関係は指摘できる。
 経済面で言えば、
★.中国が「新常態」と言われる成長率鈍化の時代を迎える中で、
★.日本の対中直接投資が昨年度に対前年比で40%近い減少を見せたこと、
★.中国が大々的に喧伝して日本にも参加を呼びかけたアジア・インフラ投資銀行(AIIB)に日本が参加を見合わせたこと
等がある。

 政治面では、日米同盟の強化が一段と深まる中で、中国による南シナ海の岩礁の埋め立てを巡って関係が険悪化しているフィリピンやベトナムと日米が連携を高めようとしている状況がある。

 とりわけ南シナ海での「航海の自由」を主張する米国と、南シナ海の領有権を「核心的利益」とする中国との対立が鮮明化する中で、米国を中心に形成されつつある対中包囲網を崩す意味でも、日中関係の修復は中国にとって喫緊の課題となっているのかもしれない。

 しかし、日中関係はそのような中国側の思惑を超えて冷却化が進んでいる。
 本稿では日中関係の今後はどうなるのかを焦点に、もう「元通り」には戻ることがないであろう状況を検証してみることにしたい。

■世論調査が明確に示す民意の「中国離れ」トレンド

 内閣府が毎年秋に実施している外交に関する世論調査では、1978年から親近感の調査が始まり、それによって日本人の中国に対する親近感の増減変化を時系列的に見ることができる。

●中国に対する親近感(出所:内閣府)

 この図で言う
★.「親しみを感じる」は、「親しみを感じる」と「どちらかと言えば親しみ尾を感じる」の合計で示され、
★.「親しみを感じない」も同様に「どちらかと言えば親しみを感じない」とする回答との合計である。

 この図を見て直感的に理解できるのは、
 親しみを感じる層と親しみを感じない層の比率がかつては完全に逆転している
ことである。

 1978年から88年までは「親しみを感じる」が「親しみを感じない」を圧倒していた。
 だが、1989年の天安門事件で「親しみを感じる」が急減し「親しみを感じない」が急増したことによって、両者が拮抗するようになる。
 この拮抗時期は2003年まで続き、以降は「親しみを感じない」が「親しみを感じる」を圧倒する時期となる。

 そして直近の2014年調査では「親しみを感じない」が83.1%の過去最高を示し、「親しみを感じる」は過去最低の14.8%を示した。

 世論調査は、その時々の日中関係をかなり忠実に反映している。
 例えば、拮抗時期の1992年に「親しみを感じる」が55.5%に上昇した背景に「天皇皇后両陛下の中国訪問」があった。そ
 の後、徐々に「親しみを感じない」が上昇し、96年に「親しみを感じる」を初めて上回る。
 それはこの時期、中国が96年秋の「包括的核実験禁止条約」の署名をひかえ、駆け込み的に毎年核実験を繰り返した事実がある。

 「親しみを感じない」が「親しみを感じる」を圧倒する時期においても、2008年に「親しみを感じる」が38.5%まで盛り返したのは、この年に胡錦濤主席が5月に国家主席として、また7月には洞爺湖サミット出席のため2度の訪日を行い、東シナ海ガス田をめぐる日中協議の進展にも一定の成果を上げたことが指摘できる。

 いずれにしても指摘できるのは、1980年に「親しみを感じる」が78.5%あったのが、今や14.9%(2014年)にまで低下し、逆に80年に「親しみを感じない」が14.7%に過ぎなかったものが、82.1%(2014年)にまで上昇したという長期トレンドの現実だろう。

 80年代、日本人の多くは中国の現実を知らず、日中戦争での加害者意識による贖罪感から異常な「日中友好ムード」に踊らされていた。
 だが、89年の天安門事件で中国共産党の独裁政権による民主化運動への苛烈な弾圧を目の当たりにし、以後、総理の靖国神社参拝問題、尖閣諸島の領有問題や反日暴動・デモなどが繰り返されたことによって、日本人の意識において「日中友好」の虚構性が認識されるところとなった。

 このような日本人の中国に向けられた民意が今後逆転する可能性があるかといえば、否定的にならざるを得ない。
 政治的にも経済的にも、さらに軍事的にも大国である中国と隣接する日本という現実に立脚すれば、日中関係が安定的に推移することが望ましい。
 しかしながら、中国に対するイメージが好転する要素がまったく見えない中で、中国に対する近親感が低下する一方では、建設的な関係構築もままならないであろう。

■これまでに4回あった「対中投資ブーム」

 2000年代はじめ、小泉政権下の日中関係は「政冷経熱」と表現された。
 小泉総理の度重なる靖国神社参拝で日中関係が冷え込み、首脳会談の開催さえままならない状況が生じていた。
 しかし、冷え込んだ政治関係と無関係に経済関係はヒートアップしていた。
 2001年の中国のWTO(世界貿易機関)加盟による中国経済の一層の開放、市場経済化の一層の進展を期待した日本の経済界は対中直接投資をこの時期、急増させたからである。

 日中経済関係が日本国内の民意とは独立して動いていたのは、経済のグローバル化が背景にある。
 日中経済関係においては、これまで4回の「対中投資ブーム」を経験しているが、そのいずれも日中の枠に留まらない国際的な経済環境の変化があったからである。

★.最初の対中投資ブームは1980年代半ばに起きた。
 その背景には、85年の「プラザ合意」による急速な円高があり、日本企業とりわけ製造業はこぞって中国に生産拠点を求めるようになった。
 以後の中国が「世界の工場」と呼ばれる先駆けであった。
 しかし、この投資ブームは、89年の天安門事件で中国が国際的な経済制裁を受け、日本の対中ODA(政府開発援助)も凍結されるといった状況の中で終わりを迎えた。

★.2回目の対中投資ブームは、90年代前半に起きた。
 92年春の鄧小平による「南巡講話」で中国の改革開放路線が再点火され、また同年秋の天皇皇后両陛下の中国訪問によって凍結されていた対中ODAが再開されたことで、日本が中国の国際社会への復帰を後押ししたことが背景にあった。
 この時期は、ASEAN諸国など東南アジアの経済発展も顕著な時代であったが、97年に発生したアジア通貨危機によってこのブームも終わりを告げることとなった。

★.3回目のブームは、すでに述べたように2001年の中国のWTO加盟を契機とするものであった。
 中国自身も99年頃から各種規制の緩和に取り組み、WTO加盟に備えていた。
 この時期に至ると中国は「世界の工場」のみならず、経済的に豊かになった中国人民の「巨大市場」への期待も織り込まれるようになっていた。
 しかし、このブームは、日本側が一極集中的な対中投資のリスクを自覚したことによって、2004年にピークを打って以降、勢いを失ってしまった。
 小泉政権下における日中政治関係の長期化する冷え込みが与えた影響も無視できないであろう。

★.4回目のブームは、2008年秋に世界経済を襲ったリーマン・ショックに対し、中国が4兆元投資を実施するなど果敢な対策をとったことから、世界に先駆けていち早く危機を脱し成長力を回復したかに見えた状況下で2011年から2013年にかけて発生した。
 日本も円高に苦しむ局面に立たされており、また中国が世界経済を牽引する役割を期待されていたこともあって、4回目のブームが生じたのは当時の状況下では自然な流れであった。

■日中経済関係はピークアウト

 改めて指摘するまでもなく、中国は2010年にGDP規模において日本を凌駕し、世界第2位の経済大国の座についた。
 経済発展の果実が労働者に分配されたことによって、人件費の高騰という現象が生まれ、日本の中国進出企業の輸出競争力を著しく削ぐこととなった。

 同時に、2012年秋には、民主党政権による、いわゆる「尖閣諸島国有化」が中国の反日感情に火をつけ、日系企業の工場、デパート、スーパー、日本料理店等が暴徒に襲われ、中国人が所有する日本メーカー製自家用車さえ反日のターゲットとなった。
 中国における政治リスクの顕在化である。

 さらに、習近平政権下の中国では、経済の後続改革を推し進めるため、成長率の鈍化を受け入れつつ改革を目指すという「新常態」に移行している。
 かかる状況下で日本の対中直接投資は、2012年には70億ドルを超えていたのが、以後減少局面に入り、
 2014年には対前年比38.8%減の43億3000万ドルと過去最大級の落ち込み
を見せた。

 中国では産業構造の高度化を目指すという政策によって、貿易構造が先進工業国型に近づき、日中間の貿易構造も相互補完的なものから競合的なものに変化しつつある。
 そのため、日本企業は中国市場において現地企業、外国企業との激しい競争にさらされており、新たなビジネスチャンスを見つけ出すことが容易ではなくなっている。
 競争力を維持できなくなった日本企業の中国撤退や事業縮小も、そうした文脈から出てきた現象である。

 このような現実を前提に考えれば、日本にとって新たな対中投資ブームが生まれることは展望しがたいだろう。
 中国市場にしっかり根を下ろした日系企業も多数あることを考えれば、中国が日本にとって最大の経済パートナーであり続けることは十分に予想できる。
 しかし、もはやかつてのような日本企業の対中進出フィーバーは起こらず、
 日中経済関係は良く言えば安定的、悪く言えば惰性的に推移する
ことになろう。

■中国離れを象徴する「中国語離れ」

 これまで、世論調査による日本人の対中親近感の喪失トレンド、4回のブームを経ながらも対中直接投資の動向から日中経済関係の行き詰まり感が顕在化してきたことを論証してきた。

 最後に触れておきたいのは、中国語学習者の動向である。

 近年、大学の第2外国語で中国語を選択する学生が減少していることは伝え聞いていた。
 中国語学科のある大学の中で、中国語学科が定員割れしている大学が出てきているという話もある。

 こうした現実を裏付ける指標として、日本中国語検定協会が毎年3回実施している中国語検定試験の受験者数を年間の合計で概観すると、近年の受験者数のピークが
★.2011年の年間7万7642人であったのが、
★.翌2012年には5万9879人(前年比22.9%減)、
★.2013年には4万5348人(同24.3%減)、そして
★.2014年には3万3833人(同25.4%減)
と、わずか4年間で受験者数は半分以下に激減していることが分かる。

 こうした中国語学習への関心の低下は、もはや
 就職のためのスキルとしての中国語の魅力が相当程度減退している
ことをうかがわせる。
 同時に、中国に対する関心そのものが低下している
こともあるように思われる。

 こうして日本にとっての中国という存在が「親しみを感じない」というレベルから、
 そもそも「関心がない」レベルへと進んできている
とすれば、日中関係が今後、1980年代に見られたような積極的な相互交流を進めた時代を再現することなど不可能だろう。


 「揉み手で日本を歓迎する」、
そこまで卑屈にならなくてもいいのに!。
 日本が不気味
というより、自国の経済の後退を前にして、落ち込んだ時のさまざまな救援手段を用意しておきたいという国内事情からの発想からではないかと思うのだが。


レコードチャイナ 配信日時:2015年6月30日(火) 18時20分
http://www.recordchina.co.jp/a112838.html

中国は日本の「一帯一路」インフラ建設の参加を歓迎―中国メディア

 2015年6月30日、中国新聞社によると、中国公共外交協会の張九桓(ジャン・ジウホワン)副会長は27日に広西チワン族自治区南寧市で開催された第2回広報文化外交(パブリック・ディプロマシー)地方・大学フォーラムに出席し、
 「中国とラオス、タイとの鉄道協力事業は『一帯一路』(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)建設の構成要素であり、中国は沿線諸国が『ともに参画し、ともに建設し、ともに恩恵を享受する』ことを歓迎すると同時に、その他の非沿線諸国の参加協力も歓迎する」
と述べた。

 駐タイ大使、駐シンガポール大使、駐ネパール大使などの経歴がある張副会長は、
 「関連の報道にあるように日本がタイと高速鉄道建設で協力するなら、中国はこれを歓迎する。
 中国と沿線諸国との共同の努力によって鉄道などのインフラ建設をしっかりと進めるだけでなく、他国の参加も『一帯一路』のよりよい建設にプラスになると信じる」
と述べた。

 張副会長は、
 「東南アジア諸国は海上シルクロードの重要な一部であり、中国の協力の重点でもある。
 『一帯一路』建設は各方面の利益に合致し、協力・ウィンウィンを達成できるプロジェクトであり、中国と東南アジアの関係全体が新たな飛躍を遂げるのを促進する」
と述べた。

(提供/人民網日本語版・翻訳/KS・編集/武藤)



サーチナニュース 2015/07/11(土) 15:46
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0711&f=business_0711_011.shtml

日本企業の中国離れ
・・・政治とは無関係=中国メディア

 中国メディアの東方早報は7日、中国社会科学院世界経済与政治研究所の倪月菊研究員による手記を掲載し、日本企業が中国から撤退していることと
 「日中関係の冷え込みは無関係だ」
と主張した。

 記事は、中国に進出していた日本の大手企業が中国国内の工場を閉鎖するケースが相次ぎ、多くの中国人労働者が職を失ったとし、
 「日本企業が中国から全面的に撤退するという噂(うわさ)も流れた」
と指摘。
 さらに、日中関係が改善しなければ日本企業の撤退はさらに拡大するとの見方もあるとしながらも、
 「一部の日本企業が中国から撤退していることと政治は無関係だ」
と論じた。

 続けて、2013年における日本の対外直接投資を地域別にドルベースで見た場合、香港や韓国、インド、カナダへの投資も減少したと伝え、
 「日本による直接投資が減少したのは中国だけでない」
と主張。

 さらに、円安が進行したことでドルベースの日本の直接投資はアジア、北米、欧州いずれも減少したと主張する一方、香港や台湾、シンガポールといった金融や農業、石油資源といった分野が強い国への直接投資は増えていたと指摘し、
 「日本の直接投資の重点が製造業などから食品やサービス業へと移りつつあることを意味する」
と論じた。

 また記事は、一部の日本企業が中国から撤退していることは「政治とは無関係」であり、
★.円安による日本回帰のほか、
★.中国経済の成長鈍化、
★.日本企業のチャイナプラスワン戦略
といった要因によるものだと主張。

 さらに、円安が継続する限りは、日本の対外直接投資も減少傾向を続ける見込みだと主張する一方で、中国の経済構造の変化に伴い、日本企業の対中投資の構造も変化するはずとし、日本の製造業分野における対中投資が大幅に減少しても、
 「中国ではサービス業が伸びており、日本企業の対中投資の重点はサービス業に移っていくだろう」
と論じた。


  なんと、スクランブルの回数まで減少しているという。


TBSニュース (2015/07/17 12:23)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2540954.html

4月から6月までのスクランブル発進、過去2年で最少



 日本の領空に近づく他国の軍用機などに、自衛隊の戦闘機が緊急発進する「スクランブル」の4月から6月の回数は173回で、四半期の統計としては過去2年間で最も少ない回数でした。

 防衛省によりますと、今年度の第1四半期=4月から6月までの3か月間に自衛隊の戦闘機がスクランブル発進した回数は173回でした。

 3か月ごとの統計としては2013年度の第1四半期以来の少なさで、昨年度の第1四半期の340回の半数でした。

 国別では、中国機に対するスクランブルが114回で最も多く、去年度の第1四半期に235回を記録したロシア機に対するスクランブルは57回と大幅に減っています。



レコードチャイナ 配信日時:2015年8月17日(月) 7時27分
http://www.recordchina.co.jp/a116408.html

進む外資の中国離れ
―日中関係改善への期待高まる

 中国商務省によると、昨年の日本から中国への直接投資実行額は前年比38.8%減の43億3000万ドル(約5050億円)だった。
 前年実績を下回るのは約4%減だった13年に続き2年連続となる。
 日中経済協会によると、天安門事件の影響で投資が約35%落ち込んだ1989年を上回る異例の下落率だ。

 この動きは今年に入ってからも変わらない。
 中国商務省によると、今年1~5月の日本から中国への直接投資実行額が前年同期比9.4%減の17億8000万ドルで、減少率は1~4の7.8%からやや拡大し、対中投資が振るわない状況が続いている。

 12年秋に日本政府が尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化して以降、中国では反日デモによる日系工場襲撃や日本製品のボイコットの呼び掛けも起きた。
 新規進出や事業拡大を見合わせる日本企業が増えたことが背景にある。

 日本だけでなく、米国からも20.6%、東南アジア諸国連合も23.8%、欧州連合も5.3%、それぞれ減少した。
 中国は都市部を中心に工場労働者の賃金や、店舗、事務所の賃料が高騰しており、生産拠点などを東南アジアなどに移す企業も多い。

 「これだけ、はっきりと数字に表れてくると、
 中国指導部もこれまで強硬一辺倒だった対日関係の見直しを考えざるを得なくなっている。
 今年4月に習近平(シー・ジンピン)国家主席が安倍晋三首相と2回目の首脳会談を行ったり、
 9月の軍事パレードに招待して3回目の首相会談をちらつかせるなど、日中関係は今後、徐々に改善する方向にあるのは間違いない」。
 日中経済を担当する北京の外交筋は、このように指摘する。

 予想以上の中国経済の悪化が日中関係改善の大きな材料になっている形だが、
 「経済的にも、政治的にもチャイナリスクは大きいだけに、習近平指導部の対応を注意深く見極める必要があり、予断は許さない」
と同筋は分析している。

 そういえば、先月訪れた北京でも日本人観光客の姿をほとんど見かけなかったが、日中関係が改善すれば、中国を訪れる観光客やビジネスマンも多くなるのに違いない。
 また、そうなって欲しいものだ。

◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。





中国の盛流と陰り



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2015年6月27日土曜日

農村部住民の7.2%にあたる7017万人が貧困層:その暮らしとは

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レコードチャイナ 配信日時:2015年6月27日(土) 15時51分
http://www.recordchina.co.jp/a112559.html

 「肉は年3回しか食べない」中国で最底辺の暮らしとは?
 「1200人の村人のうち1100人は非識字者」の最底辺の暮らし
―中国国営メディア

  2015年6月22日、中国農村部がいまだ抜け出せない貧困問題。
 中国国家統計局の調べによると、
 農村部住民の7.2%にあたる7017万人が貧困層
とされている。
 国営メディア・新華社通信は過去半年にわたって、中国中西部の貧困地域を取材。
 貧しさの最底辺にいる人々の暮らしぶりを調べた。

 四川省最南部の涼山イ族自治州。
 人口の半分を少数民族のイ族が占めるこの地域に住むある農民は、ひとつ屋根の下で家畜の牛と人間が一緒に暮らしている。
 屋内は昼間でも外の光が入ることなく真っ暗闇で、牛糞の匂いが鼻を突く。
 4つのレンガに木の板を渡しただけのベッドと、3つのレンガを置いただけのかまどが、居室にある家具のすべてだ。
 このかまどで少しばかりのジャガイモが茹でられていた。
 これが家族全員の昼食だという。
 米や肉は一家にとってぜいたく品。
 米は10日に一度、肉は1年に3回の特別な祭りの時にしか口にできない。
 3人の子供のうち、学校へ行かれたのは1人だけだ。

 貴州省南部の黔南プイ族ミャオ族自治州。
 ある農民の築数十年になる自宅には、まともな「壁」がない。
 木の枝と竹の皮を寄せ集め、牛糞を塗り固めた隙間だらけのむしろを壁がわりに、雨風をしのいでいる。
 少しのたきぎや農具、生活用品があるだけのこの家は、煮炊きすることで天井に溜まった真っ黒なススがひも状になってあちこちからぶら下がっている。

 記事ではそのほかにも、三面の壁しか残されていない築300年の家に住む人や、ハチの住処となって穴だらけの土壁の家に住む人、たった1台のテレビしかない人口67人の村や、1杯の米飯を数十人で分けあって食べる村などが紹介されている。

 寧夏回族自治区固原市。常に干ばつにさらされているこの地域では、1回の水汲みのために40kmの道のりを行く。
 1回につき1トンを汲んできて、もつのは2週間。
 1回でもっと多くの水を汲んできたいと思っても、水は長く置けば腐って飲めなくなる。
 同じく湖南省西部の湘西トゥチャ族ミャオ族自治州でも、まともな飲み水を得る暮らしは夢のまた夢だ。
 村人がやっとの思いで引いた水路にはほとんど水は流れておらず、しかも水路の周辺では家畜の糞尿が散乱している。
 晴れの日が数日間続いただけで、水はたちまち枯渇する。

 貴州省南部の黔南プイ族ミャオ族自治州。
 ある村では村民1200人のうち、1100人が非識字者か、機能的非識字者(簡単な読み書きはできても社会的にはほぼ役に立たない)だ。
 同じく甘粛省臨夏回族自治州のある村の小学校は、1年生は50人が在籍するが、5年生はわずか5人。
 ほとんどが中途でドロップアウトしてしまうのだ。
 ある村では、これまでたった1人も高校に進学できたケースがないという。
 こうした教育機会の欠如は、貧困脱出の最大の障害となる。
 しかし、貧困の最底辺にいる人々にとって、子供を学校にやるということはたいへんな出費である。
 貧困家庭に学費免除の制度が敷かれていても、教科書代などの諸経費はかかる。
 そして働き手としての子供を失うことになるからだ。



JB Press 2015.7.8(水) 川島 博之
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44213

中国が民主主義導入を嫌う本当の理由
北京のレストラン事情から垣間見えた中国の真実

 近代的なビルが林立してその間をたくさんの自動車が行き交っている。
 その街並みは東京やニューヨークなど先進国の都市となんら変わるところがない。
 北京は世界有数の都市になった。

 中心部のオフィス街の地下にはサラリーマンが昼食を取る小奇麗なレストランが並んでいる。
 一昔前は中国料理が中心だったが、今ではイタリア料理、日本料理などを提供する店も多い。
 スターバックスやケンタッキーフライドチキンなどもある。

 そこで普通に昼食を取ると40元から50元ほどかかる。
 1元を20円とすると800円から1000円。
 もはや、北京の物価は東京と変わらない。
 ものによっては北京の方が高いくらいだ。

 北京のオフィス街に店を構える飲食チェーン店の経営者の話を聞く機会があった。
 その話から、中国が抱える深い闇が見えてくる。

■ 自分が働く店に、客としては入れない従業員

 昼食時に訪ねたその店は、満員で入り口には行列ができていた。
 ところが、経営者の話を聞いて驚いたのは、従業員の賃金の低さである。
 注文を取って料理を運んでいる人の月給は1600元から2000元程度(約3万2000~4万円)でしかない。
 それは周辺のレストランでも変わらないそうだ。
 ボーナスは年2回出されるが、支給額は年間で1カ月分の給料程度に過ぎない。
 ただ、社員寮に住んで賄い飯がついているために、それでも何とか暮らせると言っていた。

 アルバイトも雇っているが時給は16元(約320円)。
 バイトの場合には寮を用意する必要がなく、社会保険を払う必要もないので、その分、安く済む。
 ただ、定着率が悪いために、アルバイトを無暗に増やすことは難しいとも言っていた。

 経営者は「店の従業員たちは休日などに、自分が働くチェーン店で昼飯を食べたことはないはずだ」と言う。
 従業員たちには高すぎる。
 昼食の代金が3時間の労働の対価だとすれば、そんな昼飯は食べないだろう。
 日本の飲食店で働いている人が3000円の昼食を取るイメージである。
 それは他の店でも同じことで、レストランで料理を運んでいる人々の多くは、その店の料理を食べたことがないという。

 まあ、日本でも超一流の店であれば同じことが言えるかも知れない。
 だが、中国では昼飯時にサラリーマンが行列を作るような店でも、その店で働く人は、自分が働く店の料理を食べることができない。

■都会のOLと出稼ぎ従業員の格差

 それでは、店で昼食をとっているサラリーマンは、どれほど収入を得ているのだろうか。
 店の経営者は、北京では大卒の初任給は3000元程度(約6万円)であるが、中心街のオフィスに働く人々は1万元から2万元(約20万~40万円)はもらっているだろうと言っていた。

 女性でも30歳ぐらいの人であれば、数千元はもらっている。
 そして、オフィスで働く女性の多くは親元から通勤しているので、給料を小遣いとして使うことができる。
 独身貴族であるとともに、都市戸籍を持っている。
 ここがミソだ。
 そんな彼女たちが小奇麗なレストランで昼食を取っている。

 ここまでの話に、現代中国を理解する上で重要な情報が多く含まれている。

 レストランで働いている人々は農民の子弟である。
 多くは高卒。
 北京には出稼ぎで来ている。
 都市戸籍は持っていない。
 農民戸籍である。
 そのために、北京で働いても年金や医療保険の面で、北京の戸籍を持つ人に比べて著しく不利になっている。

 中国の人口は13億人だが、
 都市戸籍を持つ人は4億人、
 農民戸籍が9億人だ。
 9億人のうち、都市に出稼ぎに来た3億人の「農民工」は、レストランなどの従業員として働いている。
 その多くは若者である。
 農村には老人や子供だけが残されており、都市に比べて著しく貧しい。

 中国で奇跡の成長の恩恵を受けたのは都市戸籍を持つ4億人だけである。
 農民戸籍を持つ9億人は取り残されている。
 彼らは都市に出ても低賃金でこき使われるだけ。
 レストランの従業員になっても大した給料が得られないために、働いている店で食事をすることすらできない。
 それは、昔の奴隷に近い境遇である。

■民主化をあえて進めないインテリや中産階級

 日本でも飲食チェーン店の劣悪な労働条件が問題になることがある。
 ただ、そのようなチェーン店で働く人々も、休日に仲間と類似の店で食事をすることはできよう。
 その程度の賃金は貰っている。
 格差社会などと言って騒いでも、日本の格差などかわいいものだ。

 中国では都市戸籍を持つ4億人が、農民戸籍を持つ9億人の犠牲の上に立って繁栄を謳歌している。
 中国共産党はここ数年、内需を拡大するために農民工の給料を上げる政策をとってきた。
 それによって農民工の給料は少々上がったのだが、その一方で中国の輸出競争力が削がれてしまった。
 その結果、日本でも「China+1」などと言う言葉が聞かれるようになった。

 このことからも分かるように、
 中国の経済発展は農民を安い賃金でこき使うことによって成り立っている。
 農民を安い給料でこき使うことができなくなれば、
 大した技術を持っていない中国は成長し続けることはできない。

 中国が民主主義の導入を嫌う真の理由がここに隠されている。
 そして、民主化が叫ばれているにもかかわらず、第2の天安門事件が起こらない理由もここにある。

 現在、中国の都市の生活水準は先進国並みになった。
 そんな国で共産党はかなり強引な統治を行っている。
 それでも都市に住むインテリや中産階級が黙って共産党に従っているのは、彼らが現行のシステムにおける利益の享受者であるからに他ならない。

 真に民主的な政府ができれば、その政府は9億人もいる農民の意見を代弁することになる。
 それでは都市に住むインテリや中産階級の望むところではない。
 本来、民主化運動は都市に住むインテリや中産階級がその担い手になるはずなのだが、彼らは真の民主化が進めば都市戸籍という特権を失ってしまう。
 だから、民主化運動が盛り上がらない。
 これが、いくら非難されても、中国で共産党体制が続く真の理由である。



中国の盛流と陰り



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南シナ海問題(7):大国中国を前にしての小国フィリピンの言い分、「国際公法への中国の挑戦」と

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●中国が埋め立てを進める南シナ海・スプラトリー諸島(南沙諸島)の7つの環礁(カルピオ判事のプレゼン資料より)


JB Press 2015.6.26(金) 松本 太
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44145

フィリピン最高裁判事、中国の主張を一刀両断に
フィリピンからのメッセージ(その1)


●「海洋公共財に関する共通の行動に向けて」と題したワークショップで基調講演するフィリピンのアントニオ・カルピオ判事

 マニラに来ています。
 また来てしまったというべきでしょうか。
 昨年、バレンタインデーのカップルで賑わうマニラを訪れて以来、もう4度目になります。
 なにしろ、フィリピンの人々からの日本への熱い期待が尋常ではないのだから、無理もありません。

 つい3週間前のアキノ大統領の訪日が象徴するように、日本とフィリピンの関係は絶好調です。
 その大きな理由は、やはり南シナ海で中国が急速に進めている埋め立て工事にあります。
 大きな中国を前にして、小さなフィリピンは、単独では立ち向かえない
のです。

 かといってASEANだけでも心もとなく、アメリカとの同盟関係が頼りですが、日本のようなアジアの同胞との関係強化こそが、やはりフィリピンの人々の心の支えとなるといった雰囲気がマニラに漂っているのです。

■国際法に基づいて中国の道義を問うカルピオ判事

 今回マニラを訪れたのは、「海洋公共財に関する共通の行動に向けて」(Towards Common Actions on Maritime Commons)と題して地域の専門家を集めたワークショップ(6月15日開催)を、世界平和研究所、フィリピン外務省の外交研究所、フィリピン大学の海洋問題・海洋法研究所の3者共催で開催することが目的です。

 結果から言うと、会議には100人近くの人々とテレビ・カメラのクルーが押し寄せて、大きく盛り上がりました。
 というのも、フィリピンの最高裁判所判事で南シナ海問題についての権威でもあるアントニオ・カルピオ判事に基調講演を快く引き受けてもらえたからです。
 翌日のフィリピンの各紙にはカルピオ判事の言葉が並ぶこととなりました。

 「南シナ海紛争における法の支配」と題する今回の講演を聞いて改めて思いました。
 カルピオ判事は、本当にフィリピンにとっての国の宝なのです。
 どんな国でも、国家を支える意志と能力と、そして何よりも知的パッションを持った人々がいて初めて国家が有効に機能するとすれば、中国と対峙するフィリピンにとってカルピオ判事は本当になくてはならない人物だからです。

 南シナ海での中国の不法な動きを前に、カルピオ判事は、フィリピンの直面する課題の只中に身を置き、冷静な言葉と分析で問題の輪郭を正確に切り取り、フィリピンの人々ばかりか国際社会に対して国際法に基づく道義を提示しようとしています。

 今回から4回に分けて、カルピオ判事の示してくれた国際法の解釈を紹介しつつ、皆さんと一緒に南シナ海問題を改めて考えたいと思います。

■中国の埋め立て工事の現状とは

 まずカルピオ判事が示してくれた事実を整理してみましょう。
 それは以下のとおり、最近撮影された画像を元にした、中国による7つの礁での埋め立て工事に関するフィリピンから見た詳細な分析です。

●・「ファイアリクロス礁」は、もともと高潮時に1メートルだけ姿を現している環礁だった。
 現在、中国による200ヘクタールに及ぶ最大の埋め立て工事が完了に近づいており、2015年中に3000メートルの滑走路と大型船が寄港できる港が造成されつつある。
 その規模は、インド洋の米軍基地であるディエゴ・ガルシア島の2倍になると予想されている。


◉ファイアリクロス礁の工事の様子(カルピオ判事のプレゼン資料より)

●・「ジョンソン南礁」はフィリピンの排他的経済水域(EEZ:沿岸から200海里)内にあり、中国による埋め立てがほぼ完成に近づいている人工島である。
 しかし、もともとジョンソン南礁は低潮時のみに海面上に姿を現す「低潮高地」(Low Tide Elevation, LTE)であり、国連海洋法条約に基づけば、原則として領海を主張できない。
 中国軍は1988年にジョンソン南礁のベトナム駐留軍に戦いを仕掛け、ベトナムから武力によって奪い取った。
 その際に77名以上のベトナム兵士が戦闘で亡くなっている。

●・「マッケナン礁」での埋め立て工事もほぼ完成に近づいている。
 6.8ヘクタールに及ぶこの環礁もフィリピンのEEZ内にあるLTEである。
 フィリピンのパラワン島までは178海里であり、一方、中国の海南島までは784海里もある。
 現在、中国はこの環礁に6階建ての建物をほぼ完成している。

●・「ガベン礁」は、フィリピンのEEZの外側にあるLTEである。
 このサンゴ礁でも、マッケナン礁と同様の6階建ての建物がすでに完成している。


◉ガベン礁の工事の様子(カルピオ判事のプレゼン資料より)

●・「クアテロン礁」もフィリピンのEEZの外側にある。
 もともと高潮時にも姿が見られるサンゴ礁である。

●・「スビ礁」もフィリピンのEEZの外側にあるLTEである。
 100ヘクタールに及ぶ埋め立てが進められ、3000メートルの滑走路の工事が進んでいる。

●・「ミスチーフ礁」はフィリピンのEEZの内側にあるLTEである。
 1995年にフィリピンから中国が奪取した。
 この環礁では、西側の9キロに及ぶ領域が埋め立てられつつある。
 南側の3.5キロに及ぶ埋め立て工事の部分がつながるように工事が進めば、全体で500ヘクタールに及ぶ環礁が埋め立てられるおそれがある。
 フィリピンにとって重要なのは、ミスチーフ礁がフィリピンのパラワン島から125海里しか離れていないという点だ。
 今後、ミスチーフ礁が中国海空軍の基地となるならば、フィリピンのそのほかの島や環礁への補給を中国が封鎖することができるようになってしまうおそれがある──。

 ちなみに、会議に参加していたフィリピン軍関係者などによれば、こうした埋め立て工事のスピードは最近とみに加速しているようです。

 6月16日に発出された中国外務省の声明において、「埋め立て工事を近日中に完了する」としているのは、米国との関係を忖度した中国の関係改善に向けた動きではないかとの北京発ニュースが流れました。
 しかし、それはずいぶん表面的な理解で、マニラでは、むしろ中国の本当の意図は、もともと予定していた工事を一層加速して進めることではないかとの見方がもっぱらでした。

■フィリピンの常設国際仲裁裁判所への提訴の内容

 次にカルピオ判事は、このような埋め立て工事が中国によって進められている中で、フィリピンが常設国際仲裁裁判所に提訴している内容が国連海洋法条約の解釈問題であることについて、分かりやすく解説してくれました。

★.フィリピンが提訴しているのは、中国とフィリピンの間の領土問題ではありません。
 あくまでも南シナ海の島や環礁の法的地位と権原をめぐる提訴なのです。

 重要なのは、その裁判の結果によっては、「九段線」の主張に基づいて中国が埋め立て工事を加速している7つの礁と、2012年にフィリピンから実効支配を奪ったスカボロー礁に関して、中国が領海やEEZに対する主張を行うことが法的に無意味であることを明らかにする可能性を秘めているということです
(注:「九段線」とは中国が南シナ海の領有を主張するために引いている海上の境界線)。

 カルピオ判事は次の5つの論点を指摘します。

(1):中国の九段線の主張は、そもそも(中国大陸という)陸地から測られたものではないので中国の領海やEEZを構成しない。
 それはフィリピンのEEZを侵すものとなるのか。

(2):フィリピンのEEZ内にあってLTEであるミスチーフ礁、ジョンソン南礁はフィリピンの管轄下にあるかどうか。
 また、フィリピンのEEZの外にあるがフィリピンの大陸棚に存在するスビ礁は、海洋上の権原を有するかどうか。
(注:「大陸棚」とは、原則として領海の基線からその外側200海里の線までの海域の海底を指す。
 地理的条件等によっては、海洋法条約の規定に従い延長することができる。
 沿岸国は大陸棚での人工島、設備、構築物の設置が認められている。
 一方、沿岸国以外の国は、沿岸国の同意なしに大陸棚で探査および天然資源の開発などを行うことができない)

(3:)ガベン礁およびマッケナン礁(ヒューズ礁を含む)はLTEであり、それ自体の権原を有しないが、その低潮線は、ベトナムが現在実効支配するナムイット島およびシン・カウ島の領海を図る基線の決定に活用できるかどうか。

(4)ファイアリクロス礁およびクアテロン礁は、フィリピンのEEZの外にあるが、フィリピンの大陸棚に位置しており高潮時に水面上にある。
 それらはEEZを有しないのかどうか(カルピオ判事は、スビ礁、ガベン礁、ファイアリクロス礁、クアテロン礁のいずれも200海里を超えてフィリピンの大陸棚に位置していると見なしています)。

(5):スカボロー礁は、どの国が所有するにせよ、12海里の領海を有するかどうか、また、200海里のEEZを有するかどうか。

★.さて、法的に重要なのは、
 中国が埋め立て工事を行っている少なくとも5つの礁は、低潮高地(LTE)である
という事実です。

 国連海洋法条約第13条1は、
★.「低潮高地とは、自然に形成された陸地であって、低潮時には水に囲まれ水面上にあるが、高潮時には水中に没するものをいう」
と定義しています。
 また、同条2によれば、こうした
★.「低潮高地は、その全部が本土または島から領海の幅を超える距離にあるときは、それ自体の領海を有しない」
とされているのです。



■「中国は国際秩序に挑戦していることになる」

 論点を示した上で、カルピオ判事は国連海洋法条約に従って次のように解釈します。

1].フィリピンのEEZ内にあってLTEであるミスチーフ礁、ジョンソン南礁、マッケナン礁などについては、高潮時に姿を見せる岩ではないので、当然、
(1):12海里の領海も、
(2):その上空の領空も、
(3):200海里のEEZも、大陸棚も、
(4):500メートルの安全水域も
有しません。
 従って、これらの環礁で行われている中国の埋め立て工事は明らかに国連海洋法条約に違反していることになります。

2].一方、ファイアリクロス礁およびクアテロン礁は、高潮時も水面上にある「岩」であるので、EEZは有しないものの、そこで行われる埋め立て工事は領土の拡張ということになり、国連海洋法条約上、何ら問題はなく、12海里の領海および領空を有することになります。

 しかし、そのような岩の埋め立て工事にせよ、海洋環境を破壊することや、サンゴ礁等の生態系に重大な影響を与えることを国連海洋法条約は国家に許容していないのです。
 国連海洋法条約第192条は、
 「いずれの国も、海洋環境を保護し及び保全する義務を有する」
と定めているのですから。

 また、同条約第290条によれば、
 「裁判所は、終局裁判を行うまでの間、紛争当事者のそれぞれの権利を保全し又は海洋環境に対して生ずる重大な害を防止するため、状況に応じて適当と認める暫定措置を定めることができる」
とも記されています。

 だからこそ、カルピオ判事は、
 「フィリピン政府は裁判所に対して中国による埋め立て工事を停止させるための暫定措置を求めることができる」
ことを指摘しつつ、
 「もし中国が裁判所の指示に従わなければ、中国は国際秩序に挑戦していることになるだろう」
と切り捨てたのです。

 このようにして、南シナ海の85%以上を中国が領有するという九段線の主張が、国際法に照らせばいかに荒唐無稽であるかを、カルピオ判事は示したのです。

(つづく)

(本稿は筆者個人の見解です)



JB Press 2015.6.27(土) 松本 太
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44146

南シナ海の埋め立て、合法と非合法の分かれ目は?
フィリピンからのメッセージ(その2)

前回(「フィリピン最高裁判事が中国の主張を一刀両断に」)に引き続き、マニラからの報告を続けます。

 今回マニラを訪れたのは、「海洋公共財に関する共通の行動に向けて」(Towards Common Actions on Maritime Commons)と題して地域の専門家を集めたワークショップ(6月15日開催)を、世界平和研究所、フィリピン外務省の外交研究所、フィリピン大学の海洋問題・海洋法研究所の3者共催で開催することが目的です。

 基調講演を引き受けてくれたのは、フィリピンの最高裁判所判事で南シナ海問題についての権威でもあるアントニオ・カルピオ判事でした。

 前回は、南シナ海における中国の埋め立て工事はどこまで進んでいるのか、国連海洋法条約に照らし合わせると中国の行為はなぜ認められないのかについて、カルピオ判事の分析を紹介しました。
 カルピオ判事の主張をさらに紹介していきましょう。

■中国は埋め立て工事の前に沿岸国と調整すべき

 最初の法的問題は、中国が7つの礁で埋め立て工事をする際に、ベトナムやフィリピンなどの沿岸国と協議すら行っていないことです。

 カルピオ判事は次のように言います。
★.国連海洋法条約第122条に基づけば、南シナ海は半閉鎖海なのです。
 同条は、
★.「『閉鎖海又は半閉鎖海』とは、湾、海盆又は海であって、二以上の国によって囲まれ、狭い出口によって他の海若しくは外洋につながっているか又はその全部若しくは大部分が二以上の沿岸国の領海若しくは排他的経済水域から成るものをいう」
としています。

 そうなると、
 「閉鎖海又は半閉鎖海に面した国の間の協力」を謳う第123条に従って、
 同一の半閉鎖海に面した国々は、例えば、海洋環境の保護及び保全に関する自国の権利の行使及び義務の履行について、相互に調整を行う必要があるのです。

 しかし、中国はこのような点について沿岸国たるベトナムやフィリピンに通報もせず、協議も協力も行っていないのです。
 この点において、国際社会が中国が埋め立て工事という一方的な現状変更を行っていることを非難しているわけです。

■沿岸国であるベトナムやフィリピンの工事は合法

 中国は、南シナ海でベトナムやフィリピンも同様の工事を行っているのだから、中国も埋め立て工事をやっているのだという説明を行っています。
 しかし、カルピオ判事は、このような中国の見方も法に基づいて一刀両断します。

 すなわち、南シナ海においてベトナムやフィリピンがこれまでに行った工事は、中国とは異なって合法的であることもカルピオ判事から指摘されたのです。

 そもそもベトナムやフィリピンは、中国のように南シナ海の「LTE」(Low Tide Elevation:低潮高地)に対して主権を主張しているわけではありません。
 また、ベトナムとフィリピンは、常に海面上にある「島」においてしか工事を行っていないのです。
 従って、これは国連海洋法条約の上で合法的な行為となると言うのです。

★.なぜ合法なのかというと、同条約第60条および第80条によれば、沿岸国はEEZおよび大陸棚において、人工島、施設および構築物の建設、運用および利用を許可および規制する排他的権利を有しているからです。
 そして、ベトナムやフィリピンは、現在、両国が実効支配している「島」の沿岸国なのです。

 また、台湾でも2014年9月に馬英九総統が、台湾はそもそも南シナ海の「島」に対してしか主権を主張しておらず、その他のLTEに対しては主権主張を行っていない旨を述べたことも、カルピオ判事から紹介されました。
 同判事は、これは中国政府の「九段線」の主張や歴史的主張に対する痛烈な打撃となったと考えています
 (注:「九段線」とは中国が南シナ海の領有を主張するために引いている海上の境界線)。

★.実際、現在の中国共産党が支配する中国政府が成立する以前に正当な中華民国政府であった台湾の国民党政府のトップ、それも国際法に精通する馬総統が、国連海洋法条約に基づく解釈を提示していることは忘れてはならないでしょう。

■中国は公海において人工島を造成することができるのか

 それでは、中国は「公海の自由」の原則を持ち出して、人工島を公海に造ることができるのでしょうか。
 カルピオ判事は、これも法的にできないことを明らかにしてくれました。

 確かに、国連海洋法条約第87条1は、
 「公海は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、すべての国に開放される。
 公海の自由は、この条約および国際法の他の規則に定める条件に従って行使される」
と記し、公海の自由に含まれるものとして、航行の自由や上空飛行の自由などに加えて、その「d.」において、
 「国際法によって認められる人工島その他の施設を建設する自由。
 ただし、第6部の規定の適用が妨げられるものではない」
と明記されています。

 第6部は第80条も含まれますから、この「87条1 d.」の規定が適用されるのは、沿岸国がEEZを越えて大陸棚を主張することができない場合に限定されるのです。

 すなわち、沿岸国であるフィリピンが200海里も越える延長大陸棚を有する場合、その大陸棚に位置している環礁で、中国が人工島を作ることは、公海上であっても問題となるということです。

 また、人工島が公海に建設されるとしても、それは平和的な目的(非軍事)に限ったものであるべきなのです。
 なぜなら、
 第88条において、「公海は平和的目的のために利用されるものとする」と記されているからです。

■近代国際海洋法の基礎への中国の挑戦

 カルピオ判事は、講演の最後において中国が国際社会に突きつけている本質的な問題を提示してくれました。
 それは、
★.海洋の自由という近代国際法の原則に中国が挑戦している
という点です。
 まさに、
★.フーゴー・グロチウスの「自由海論」対ジョン・セルドンの「閉鎖海論」として知られる海洋の原則をめぐる問題そのものなのです。

 グロチウスは1609年に「自由海論」(Mare Liberum)を著しました。
 これは、東インドに対するポルトガルの所有権を否定し、母国オランダの立場を擁護する観点から海洋の自由を論じ、すべての国が東インドとの通商に参加する権利を有することを主張したのです。

 一方、イギリスのジョン・セルデンは、1635年に「閉鎖海論」(Mare Clausum)を著し、グロチウスの自由海論に対抗しました。
 当時のイギリスは近海の漁業支配の独占を狙っていたことから、セルデンはイギリスによる近海漁業の支配の論拠として海洋が領有可能であることを主張したのです。

★.しかし、海洋の自由を訴えたグロチウスの「自由海論」が、
 結局、その後の近代的な海洋法秩序形成を促し、
 現代の国連海洋法条約を根拠づけることになりました。

 この点についてカルピオ判事は次のように述べ、中国の「九段線」の主張が近代の海洋国際法に突きつけている挑戦の意味を明らかにしました。

★.「今日、国家は海洋の全体か、そのほとんどに主権を及ぼすことができるとするジョン・セルデンの議論を、中国は改めて惹起しています。
 この問題が、フィリピンが国際仲裁裁判所に提訴した問題の核心にあります。

 もし、中国の九段線の主張が許容されるならば、海洋法のグロチウス的基礎に対する直接的な攻撃になります。
★.すなわち、
 公海における上空飛行の自由、
 航空の自由、
 沿岸国のEEZに対する権利、
 人類の共同の財産
といったすでに確立されている原則の全てが危機に瀕するのです。

 国際社会は、一国家が海洋法を書き換え、ほぼ全体の海に対する疑いを得ない主権を行使することを可能にし、公海をその主権の管轄下におき、沿岸国のEEZの相当の領域を奪取することを、はたして許容できるでしょうか。
 そのいずれもが、国連海洋法条約における国際社会の法的な海洋上の権利であるにもかかわらず」

 すなわち、中国による南シナ海の埋め立て工事の規模や速度だけが問題なのではなく、埋め立て工事を含めて九段線の主張そのものが国際法に照らして不法であるばかりか、近代の国際法の実質的法源への挑戦であるという単純な真実なのです。

 さて次に、マニラにおいてカルピオ判事が示した中国による歴史の改竄や専門家による議論をさらに紹介しましょう。

(つづく)

(本稿は筆者個人の見解です)



JB Press 2015.6.29(月) 松本 太
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44150

中国が改竄する南シナ海の歴史的事実
フィリピンからのメッセージ(その3)


●中国の船が浚渫(しゅんせつ)作業を進めるスプラトリー諸島のミスチーフ礁(2015年3月16日撮影)。(c)AFP/CSIS Asia Maritime Transparency Initiative/DigitalGlobe〔AFPBB News〕

 これまで、マニラの会議で行われたフィリピン最高裁のアントニオ・カルピオ判事による国際法の解釈について紹介してきました(「フィリピン最高裁判事が中国の主張を一刀両断に」「南シナ海の埋め立て、合法と非合法の分かれ目は?」)。

 今回と次回は、カルピオ判事が指摘した「南シナ海の歴史問題」と「南シナ海において中国の行動をいかにすれば止められるのか」という専門家の議論についてさらにご紹介したいと思います。

■国連海洋法条約では「歴史的事実」は無意味

 中国はこれまで南シナ海について言及する際に、中国の過去の歴史を持ち出して、中国の領有権を主張してきました。
 例えば、2014年5月のシンガポールにおける「シャングリラ対話」(アジア安全保障会議)において、中国人民解放軍の王冠中・副総参謀長が「中国は漢の時代に早くも南シナ海、特に南沙諸島や関連海域の管理を始め、徐々に完備していった。
 漢の時代とは紀元前200年、今年は2014年。
 この方面の歴史的資料や文献は大量に残されている」と表明しています。

 しかし、国連海洋法条約の解釈においてこのような歴史的事実は何ら意味を有していないのです。
 カルピオ判事は、次のとおり指摘します。

 「排他的経済水域(EEZ)や大陸棚を主張するのに、歴史的な権利や歴史的な権原に言及することはできません。
 国連海洋法条約下において、
 沿岸国に『主権的権利』が与えられるEEZが創設されたことは、
 沿岸国のEEZに対する他国の歴史的な権利や主張を全て消滅させた
のです。
 EEZにおいて『排他的』というのは、その領域の経済的な利用は沿岸国以外に許容されないという意味で、排他的なのです。
 他国が、沿岸国の明らかな了解なくして、そのEEZの天然資源を利用することはできないのです」

 2002年に署名された南シナ海に関するASEANと中国の行動宣言(DOC)においては、
 「南シナ海問題は、普遍的に認められた1982年の国連海洋法条約を含む国際法の原則に従って解決される」
とされており、歴史的事実への言及はありませんでした。

 しかし、2013年1月にフィリピンが常設国際仲裁裁判所に提訴を行った直後には、中国の王毅外相は、
 「南シナ海問題は、歴史的事実と国際法に基づいて解決されるべき」
と言い出したのです。
 ちなみに、DOCに署名したのは、当時中国の外務次官であり、特使を務めていた、現在の王毅外相です。

 6月16日に発出された中国外務省の南シナ海の埋め立て工事に関する声明においても、次のように「歴史的事実」の尊重について言及しています。

 「中国はその領土主権と海洋の権利と利益を固く守りつつ、国際法に従って、歴史的な事実を尊重することを基礎とする交渉と協議を通じて、南シナ海行動宣言を完全かつ効果的に実施するという枠組みにおいて、ASEAN加盟国と南シナ海行動規範の協議を積極的に進め、直接的な関係国との間で関連する問題について解決をすべく努力を継続する」

■カルピオ判事が論駁する中国の歴史的事実

 カルピオ判事は、以上のとおり、南シナ海問題の
 法的解釈において歴史的事実は意味がない
ことを指摘した上で、歴史的事実を見よと言っている中国の主張にあえて応じてみようと言います。

 中国は南シナ海の歴史的事実をどのように捉えているのでしょうか。
 カルピオ判事は、中国がこれまでに提示した次の5点について次々と反駁します。

1):パラセル諸島(西沙諸島)およびスプラトリー諸島(南沙諸島)における中国によるいわゆる主権を示す石碑
(2):中国とフィリピンの過去の地図
(3):中華民国時代の中国憲法
(4):中国による世界に対する公式の宣言
(5):スカボロー礁に対する中国とフィリピンのそれぞれの歴史的主張の真実性

 第1に、
 中国は、「九段線」(中国が南シナ海の領有を主張するために引いている海上の境界線)内の島や環礁に関して、常に豊富に歴史的な証拠を有していると言うのですが、例えば、中国の資料を徹底的に調査したフランス人研究者フランソワ・イグザヴィエ・ボネが本年3月のマニラでの学術会議において、そのような証拠が中国によって捏造されていることを指摘していることを、カルピオ判事は紹介します。

(Francois-Xavier Bonnet, ARCHEOLOGY AND PATRIOTISM: LONG TERM CHINESE STRATEGIES IN THE SOUTH CHINA SEA, Paper presented at the Southeast Asia Sea Conference, Ateneo Law Center, Makati City, Mach 27, 2015)

 例えば、パラセル諸島に関する中国側の多くの資料は、1902年に行われた中国による最初の調査に言及していますが、そもそもそのような調査が本当に行われた証拠がないと言うのです。
 それどころか、中国の別の資料によれば、そのような調査は行われたことがないことが明らかであると言うのです。

 スプラトリー諸島に関しても、同様の方法がとられ、1946年に行われたとされる主権を示す石碑の設置は、その年には行われておらず、実際には1956年に行われているのです。


●「海南省」と記されている島が海南島。スカボロー礁はフィリピンのEEZ内に位置する(出所:Wikipedia)

 第2に、 カルピオ判事は、1136年から1912年に至るまでの中国の公式・非公式の地図を取り上げ、そのいずれもが海南島を中国の最南端としていることを明らかにします。

 一方で、1636年から1933年にかけてのフィリピンの公式・非公式の地図には、スカボロー礁が示されていることを明らかにします。
 スカボロー礁は、1734年の "Murillo Velarde" の地図に記載されており、当時は "Panacot" と呼ばれていました。
 1792年にマドリッドで出版された航海図では、すでに現在の名称である "Bajo Masinloc o Scarborough" と記されています。

 第3に、
 カルピオ判事は中華民国時代の憲法がどのように国土を規定しているか明らかにします。
 1912年、1914年、1924年、1937年、1946年のいずれの憲法においても、中華民国が清朝の領土を引き継いだことが明確であり、その最南端はやはり海南島であるということをカルピオ判事は指摘します。

 1932年9月になってようやく、中国はパラセル諸島が中国の領土であることをフランスに対して主張する公文書を残しています。
 この頃から中国の地図では、ようやくパラセル諸島を西沙諸島として中国の一部であるように記し始めます。
 もっとも、1937年および1946年憲法のいずれも、それ以前の憲法と同様に、その国土が過去の帝国時代と同じであるとしていることに変わりありませんでした。

■自家撞着に陥る中国による歴史的事実

 第4に、
 中国政府が世界に喧伝している歴史的事実が矛盾に満ちていることです。

 例えば、マニラの中国大使館のウェブサイトには、中国がスカボロー礁(中国名:黄岩島)の主権を主張している理由として、元朝時代の中国の天文学者、郭守敬が1279年に訪問し、スカボロー礁に天文台を設置したことが記載されています。

 ところが、1980年1月に中国外務省が作成した「西沙諸島と中沙諸島に対する中国の主権は争う余地がない」という文書では、郭守敬が訪問したのは、パラセル諸島(西沙諸島)の島であって、そこで天文台を建設したことになっていると言うのです。
 この文書と同じ内容が、1980年2月18日に発行された「北京週報」に掲載されています。

 歴史上、郭守敬は27の天文台を建設したとされており、その内26が中国大陸、残りの1つが南海であったとされています。
 ですから、1980年に中国外務省が「西沙諸島」に郭守敬が天文台を建設したとしているのならば、21世紀に入って突然、郭守敬が西沙諸島には属さないスカボロー礁で天文台を建てたと中国大使館が指摘するのは、唐突な歴史的事実の変更であり、自家撞着なのです。
 これを歴史の改竄と言わずしてなんと言うのでしょうか。

そもそも、スカボロー礁は、満潮時に1.2メートルほどの高さで、せいぜい10人が登るのが限度の小さな地形でしかなかったのですから、巨大な天文台を建設することは物理的に不可能だったと推定されます。

 カルピオ判事は、中国河南省に現存する郭守敬の建てたとされる「観星台」と呼ばれる、12.62メートルもある中国最古の天文台の写真と、1995年以前のスカボロー礁の写真を重ね併せて、こうした中国が喧伝する歴史的事実の虚しさを指摘するのです。

 第5に、
 カルピオ判事は、スカボロー礁がフィリピンの歴史的事実に照らしてフィリピンに所属していることを明らかにします。

 もともと、米西戦争の結果、締結されたパリ条約では、スカボロー礁はスペインから米国に移譲された領土には確かに含まれていませんでした。
 しかし、その2年後の1900年のワシントン条約において、スペインは米国に対して、パリ条約の際に基線の外側にあったフィリピン列島に属する全ての島を移譲したことが明確にされています。

 この結果、このワシントン条約をもって、スカボロー礁も移譲されたことが明らかであるというのが、フィリピンの主張なのです。
 この点は、その後の米国政府内部の文書においても明らかにされていることを、カルピオ判事は強調します。

(つづく)

(本稿は筆者個人の見解です)



JB Press 2015.6.30(火) 松本 太
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44151

日本は南シナ海から目を背けてはならない
フィリピンからのメッセージ(その4)

 マニラからの報告を続けます(参照:「その1:フィリピン最高裁判事が中国の主張を一刀両断に」「その2:南シナ海の埋め立て、合法と非合法の分かれ目は?」「その3:中国が改竄する南シナ海の歴史的事実」)。

 今回マニラを訪れたのは、「海洋公共財に関する共通の行動に向けて」(Towards Common Actions on Maritime Commons)と題して地域の専門家を集めたワークショップ(6月15日開催)を、世界平和研究所、フィリピン外務省の外交研究所、フィリピン大学の海洋問題・海洋法研究所の3者共催で開催することが目的でした。

■日本の南シナ海問題への関与を批判する中国

 実は、マニラに着いて最初に飛び込んできたニュースは、6月12日に中国外務省の洪磊報道官が日本の南シナ海問題への関与を痛烈に批判したことです。
 最初にその全文を翻訳してみましょう。
 なにしろ、フィリピンの人々から聞いた話と正反対の内容に満ちているからです。

 「中国は、日本側のネガティブな動きに関して、深刻に懸念しており、怒りを覚えている。
 我々は日本側に対して何度も厳粛に抗議を行った。
 私は、中国が南沙諸島とその周辺海域に対して疑うことのない主権を有していることを強調する。
 中国の南沙諸島におけるいくつかの海洋環礁における建設工事は、中国の主権の範囲内で行っているものである。
 それは合法的で、正当化され、合理的なものだ。
 いかなる他国に対して向けられているものでもない。
 したがって、非難には一切値しない。

 日本は南シナ海問題の当事者でない。
 最近、日本は異常な行動を行っている。
 南シナ海問題に意図的に手を突っ込み、地域諸国の関係にヒビを入れ、南シナ海に悪意をもって緊張をつくっている。
 日本の動きは、南シナ海問題の解決や南シナ海の平和と安定を維持する上で、何ら良いことではない。
 それは日中間の政治・安全保障面における相互信頼を深刻に傷つけ、両国関係改善のモメンタムに反している。
 我々は、日本側に対して、南シナ海問題に関して立場を取らないという約束を守り、南シナ海問題を誇張することを止め、利己的な利益のために異なる当事者間の紛争を惹起せず、日中関係改善のモメンタムを純粋に維持し、中国とASEAN諸国が南シナ海の平和と安定を維持しようという努力を尊重することを、改めて呼びかける」

 しかしながら、マニラでの会議では、このような中国の声明を真っ向から否定する地域の専門家の意見と議論が噴出しました。
 何しろ、アントニオ・カルピオ判事(フィリピンの最高裁判所判事で南シナ海問題についての権威)の基調講演が示しているように、
 「中国こそが、南シナ海で国際法に照らして不法な行為により緊張をつくり出し、紛争を惹起し、国際的な秩序を乱している」
ということが議論のスタートポイントだったのですから。

 それに中国が言う、南シナ海問題は中国とASEAN、中国と主権主張を行っている当事国のみで解決するという「双軌思考」(デュアル・トラック・アプローチ)を、誰も共有しておらず、むしろ、公海自由の原則をふみにじっている中国に対抗するためには、米国や日本のみならず、世界の全ての国々が関与すべきであるという意見が支配的でした。
 すなわち、世界の国々が南シナ海問題の当事者だという、ごく常識的な認識です。

■どうすれば中国の行動を止められるのか

 カルピオ判事の講演の後で行った議論の後半になって、中国問題に詳しい1人のフィリピン人知識人から核心的な質問が出ました。
 「果たしてどうすれば中国を止めることができるのか」
という問いです。
 一通りの議論を行った後でも、率直に言ってこの質問に応えることは誰にとっても難問でした。

 何しろ、米国による中国の埋め立て停止要請にすら中国は応じることはなく、今後とも軍事施設などの建設を行うとしているのですから。

 フィリピンの元軍人は、あえてこの質問に答えず、
 「例えば、南シナ海の7つの環礁が軍事基地化され、そ
 こに中国によって核弾頭搭載型原子力潜水艦(SSBM)が寄港することになれば、地域諸国の劇的な反応を招くことになり、連鎖反応が続くだろう。
 そのような事態が目前に迫っており、真に懸念されるべき現実だ」
と指摘しました。

 もう1人のベトナムからの専門家は、
 「中国にとってコストがますます高くなるように経済面での行動や、中国の評判を落とすことになる動きを地域諸国が一緒になってとっていくしかない」
と簡潔に指摘しました。

 フィリピンの政治家からは、
 「反中国デモや、ソーシャルメディアを通じた抗議、中国製品のボイコットといった戦術は、中国の評判を落とす効果につながるので、有益である」
ことも指摘されました。

 会議に参加したフィリピンの人々からは、やはり米比防衛協力強化協定(EDCA)に基づく米国との防衛協力や、日本との間の安全保障分野での一層の協力への期待が改めて強く聞かれました。
 また、かつて東南アジアにあった集団的安全保障機構であるSEATO(東南アジア条約機構)モデルを再検討すべきタイミングに差し掛かっているとの率直な意見すら聞かれました。

 これに対して、日本の専門家からは、この4月に策定された日米新ガイドラインによれば、日米同盟関係に基づいて、南シナ海においても日米同盟が強力に展開されていくことになるだろうとの見通しを伝えました。
 また、日本の自衛隊とフィリピン軍の共同演習や交流も今後一層拡がりを見せることになることも指摘されました。

 また、筆者からは、今後は、日本列島から、台湾、バシー海峡、ルソン島、ボルネオ島へとつながるアーキペラジックな地域防衛コンセプトがますます戦略的に重要になることを強調し、地域諸国の緊密な協力を訴えました。

 筆者が所属する世界平和研究所が、この1月末に提案した協調的安全保障モデルに基づく「アジア海洋安全保障協力構想」(AMOSC)について、会議の冒頭からカルピオ判事からの支持に続いて、賛同の声が次々に湧いたのには驚かされました。
 ここマニラには、日米同盟を有する日本以上に、一刻も早くこうした地域の安全保障を強固にする制度化を進めるべきだという気持ちが強くあるのです。

 法的側面についても、カルピオ判事よりは、当事者であるフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾が、国連海洋法条約に従って、スプラトリー諸島における地形から排他的経済水域の権原が生じないことを相互に明確化することや、フィリピンやマレーシアが協力して重なるEEZを限定する努力をすべきこと等が提言されました。

 今回の会議では、地域の専門家たちが一致する認識をごく簡単にプレスリリースとしてまとめてみました。
 アジア地域の人々の声がいかなるものであるかを、ささやかに示しています。

■中国人のマインドセットを変えよ

 カルピオ判事は最後に実に重い言葉を残しました。

 すなわち、中国が国際法を国家として十全に受け入れないのならば
 「中国人すべてが国際法を理解するように私たちは努力せねばならない」
と言うのです。
 「国民のマインドセットを変化させ、国のマインドセットを変化させるのです」
と、こともなげに言うのです。

 確かに日本の一部の有識者は、そのような地道な取り組みを行ってきました。
 しかし、そのような取り組みはいまだ十全なものではないし、そのようなことが果たして可能だろうかという疑問も大きいかと思います。

 しかし、本当にリベラルな国際秩序を私たちが心底から信じており、それを守りたいのであれば、いかなる困難があろうと、相手のハートとマインドを掴みとるための地道な努力を行う必要があるのでしょう。
 もっとも、それは並大抵のことではないでしょう。

 逆に、それに抵抗することも大変なことかもしれません。
 例えば、中国が現在国内で行っている西欧的価値を否定する動きが、それほどうまくいっているようにも思えないからです。
 そもそも国連海洋法条約を含めて国際法は、中国も共有する大切な規範なのですから、これを中国の全ての人々が正確に理解し、共有することは中国にとっても重要なことなのです。

 ひょっとするとリベラルな国際秩序の感覚とその教えこそが、中長期的には中国の不法な行動を止める大きなブレーキとなりうるかもしれません。
 私たちは、100年かけようと、中国の良識ある人々たちと一緒になって、その可能性にかける必要があることは間違いないでしょう。

■コレヒドール島の歴史が教える南シナ海の未来

 今回のマニラ訪問では、アジアの秩序をめぐる歴史についていろいろ考えさせられました。
 会議前日の休みを利用して、第2次世界大戦中の日米がぶつかった激戦地であるコレヒドール島を訪ねることができたからです。
 今ではマニラから観光船に乗って1時間半ほどでコレヒドール島に到着します。

 1942年5月にフィリピンを攻略した日本軍は、米国の司令部が置かれていたコレヒドール島に総攻撃をかけます。
 あのダグラス・マッカーサー将軍がまさにこのコレヒドール島の駐フィリピン米軍最高指揮官であったことは有名な話です。
 しかし、日本軍の侵攻を前に、マッカーサーはコレヒドール島を去り、オーストラリアに逃げたのです。
 同年5月6日に米軍は、本間雅晴中将率いる日本軍の猛攻に降参します。

 1945年2月になって、米軍を率いるマッカーサーは、日本本土に向かう前に、フィリピンのコレヒドール島の奪回を目指します。
 そのため、2000名の空挺団を降下させ、島を奪回するのです。
 マッカーサーは3年前の屈辱を晴らすかのように3000トンの爆薬を投下したと言います。

 おたまじゃくしの形をしたコレヒドール島の中部にあるマリンタ・トンネルに閉じ込められた日本軍の兵士たちは、投降を拒み自ら絶命します。
 4500人の日本軍守備隊がほぼ全滅し、わずか19名のみが生き残りました。
 その大多数は学徒出陣の若い兵士たちでした。
 最も若い墓碑名には17歳の青年の名前が残されていました。

 実は、マリンタ・トンネルは、フィリピン共和国の前身となるフィリピン・コモンウェルスの初代大統領であったマニュエル・ケソンが1941年12月30日に、2期目の大統領に就任した場所でもあります。
 このコレヒドール島には、当時のフィリピン政府の本部が置かれていたのです。
 このことは、まさに日米の戦いの中から、戦後のフィリピン共和国が生まれたことを想起させてくれます。

 コレヒドール島のスペイン灯台は、かつて南シナ海を照らしました。
 いままた南シナ海において波が荒立ち始めています。
 日本と米国は、フィリピンの地でも戦争の悲惨さを嫌というほど味わいました。
 私たちの祖父や父たちが経験したコレヒドール島での戦いの本当の意味を、果たして南シナ海に意気盛んに進出しようとしている中国はどれほど理解しているのでしょうか。
 私たちは二度とかつてのような戦争をしてはならないのです。

 フィリピンは、スペイン、そして米国の支配、そして日本の占領を受けてようやく1946年に独立を果たしました。
 カルピオ判事は、中国人に会うたびに次のような問いを投げかけていると語ってくれました。

 「中国は自らだけが歴史の被害者であるかのように主張するが、フィリピンもスペイン、アメリカの植民地主義の辛酸をなめてきた。
 その被害者であるフィリピンの島や環礁を中国はなぜ侵略しようとするのだろうか」

 私たちも、このようなフィリピンからのメッセージを真摯に受け止めねばなりません。
 戦前とは異なる意味で、この問題から目を背けたり、委縮したりしてはならないでしょう。
 戦後私たち皆が営々と構築してきた法と秩序の双方が、南シナ海の行方にかかっているのですから。

(本稿は筆者個人の見解です)





中国の盛流と陰り



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北欧伝統の「クジラ追い込み漁」が始まった: 伝統文化を妨害されたフェロー諸島住民は猛反発、シー・シェパードは黙っていない

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ニューズウイーク 2015年6月26日(金)13時30分 フェリシティ・ケーポン
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/06/post-3730.php

北欧伝統の「クジラ追い込み漁」が始まった
伝統文化を妨害されたフェロー諸島の住民は猛反発


●文化遺産? 父から子に引き継がれてきた伝統でも、「あの団体」が黙っていない Andrija Ilic-REUTERS

 北大西洋に浮かぶデンマーク自治領のフェロー諸島に、2隻の反捕鯨活動家の船が急行している。
 毎年何百頭というクジラとイルカが殺される「野蛮な」漁を妨害するためだ。

 2隻の船はいずれも、過激な活動で知られる「シーシェパード」に所属する。
 ドイツのブレーメンを出発して2日がかりでフェロー諸島に到着する予定だ。

 「grindadrap」と呼ばれるフェロー諸島のクジラ漁は、夏を通じて行われる。
 数百年の伝統を持つ文化遺産でもある。
 しかしこの漁の手法は、長い間論争の的になってきた。

 クジラやイルカは漁師のボートで湾内に追い込まれ、そこでフックやナイフを使って切り殺される。
 地元の漁師は、脊髄を切断するためにクジラやイルカの首を叩き切る。
 漁には子供も含め、村をあげて参加する。

 クジラの肉と脂身は、住民が珍味として食べる。
 しかし近年は、重金属による汚染への懸念が高まり、消費は減少している。

 シーシェパードによると、フェロー諸島の今年の漁シーズンはもう始まった。
 6月初旬に西部のボーアル島で、1日に154頭のゴンドウクジラが殺されたという報告があった。
 漁は通常、クジラやイルカが餌を求めてこの海域にやって来る5月から10月まで続く。


●殺されたクジラの血で湾内の海面が赤く染まっている
Andrija Ilic-REUTERS

 「我々の願いは、思いやりが残酷さを打ち負かすこと――。
 フェロー諸島の美しい湾や海岸が、高度の知性と感情を持ち、社会性の高い哺乳類の血で赤く染まるのを食い止めることだ」
と、シーシェパードはホームページで説明している。

 同グループのイギリス支部長を務めるロバート・リードは、
 「鯨肉が必要な程、飢えているフェロー諸島の住民はいない」
と主張する。
 「grindadrap」は国家的な名誉あるスポーツだが、世界中で行われている他の多くの漁とは違い、クジラやイルカは逃げることができない。
 イルカの群れがいれば、1頭残らず殺してしまう。
 特定の遺伝子をもつ一団が全滅する」

 しかし多くの地元住民は、このクジラ漁は食べ物の重要な供給源であり、プライドの源泉でもあると反発する。
 grindadrapに参加する28歳の若者は昨年、「ナショナルジオグラフィック」の取材に対し、
 「我々の生き方を守るのは大切なことだ」
と答えている。
 そして
 「(反捕鯨活動家の)連中があれをしろ、これをするなと命じること」
に怒りを感じると言った。

 シーシェパードのリードによると、2013年には全部で1534頭のゴンドウクジラとイルカが殺され、1日に340頭のタイセイヨウカマイルカが殺された日もあった。

 昨年、陸上で漁を妨害して14人の逮捕者を出したシーシェパードは、今年は主に海上で活動することにしている。
 クジラやイルカが沖合にいる間に、島に近づかないように誘導する計画だ。



WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2015年07月31日(Fri) 
佐々木正明 (産経新聞社外信部記者)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5223

シー・シェパードVSデンマーク
日本が学ぶべきフェロー諸島の対策

 例年、日本の南極海調査捕鯨や和歌山県太地町の追い込み漁に対して過激な妨害を行ってきたシー・シェパード(SS)が今夏、北欧の捕鯨国での活動を活発化させている。
 北大西洋に浮かぶデンマークの自治領フェロー諸島では、伝統の追い込み漁を阻止しようと、SSは数十人の活動家を派遣、さらに、2隻の船舶を近隣の海域に展開して、海と陸から妨害行為を続けている。
 対して、デンマーク側は、追い込み漁に関する法律を改正し、罰則を強化。警察や海上保安庁だけでなく、海軍の艦船も派遣し、SSの動向を監視している。

 パリに逃亡しているSS創設者、ポール・ワトソン容疑者(国際手配)は頻繁に声明を発表して、捕鯨を行うフェロー諸島の住民たちは「野蛮だ」とアピール、支持者らを煽って、デンマークに圧力を加えている。


●デンマーク・フェロー諸島の漁の様子(提供:地元住民)

■シー・シェパードVSデンマーク

 7月中旬には、浜で地元警察にSS活動家が取り押さえられる映像がユーチューブで公開され、世界各国に「シー・シェパードVSデンマーク」のニュースが大々的に報じられた。
 拘束されたときには地元住民から拍手がわき起こった。
 これまでに7人が拘束されており、今後、法的措置が下される。


◯シーシェパードの活動家が取り押さえられるユーチューブ映像
https://www.youtube.com/watch?v=YsGI5zQ3Lr8

 現地では「グリンド」と呼ばれ、1千年以上も前から、追い込み漁が続けられてきた。
 クジラやイルカの捕獲数や捕獲方法を記した記録は1587年までさかのぼることができるのだという。

 気候条件や地理的条件から農業の発展が難しかったフェローの住民は、海洋に生きる糧を見いだし、命をつないできた。
 年平均で約800頭のゴンドウクジラが捕獲され、母なる海から貴重なタンパク源を得てきた。

 現在のフェロー諸島の人口は現在5万人。
 漁の仕方は全ての島民に受け継がれている。

 漁師たちが沖でクジラやイルカの群れを見つけると、他の漁船にも連絡を取り合って、そのポイントに集結する。
 そうして、互いに協力し合って、群れを漁船で囲むようにして湾に追い込む。
 群れが発見された情報は、瞬時に陸側の街々に伝達され、浜では多くの住民たちが銛を準備して、待ち構える。
 漁船に追い込まれた群れが陸に近づいたときに、男たちが一斉に波打ち際に駆け寄り、クジラを仕留めるのである。


●シー・シェパードが作成したフェロー諸島の追い込み漁を批判するポスター。地元の鯨肉を持っている子供を「殺人者」と罵っている。SSは子供を宣伝材料に使う事も厭わない。

 和歌山県太地町の追い込み漁でも、湾内でイルカを仕留めることは「残虐だ」と非難されているが、フェロー諸島では、太地よりも壮大なスケールで捕獲が行われるため、大量の血がクジラから吹き出て、海が真っ赤に染まる。
 漁は最初から最後までまったく隠すことなく行われる。
 子供たちも漁に参加して、親や祖父からクジラを仕留める方法を教わる。

 島に捕鯨という職業はないのだという。
 誰もが別の本業を持っていて、携帯電話やラジオを通して「これからクジラを追い込む」と呼び出しがあり、漁に参加する。
 そうして、群れの全てのクジラを仕留めた後、警察署長が伝統的な計算方法を使って、無料で各世帯均等に鯨肉を分配する。
 住民は自分たちで食肉処理を行って、各家庭に肉を持ち帰るのだ。

 米国の研究者によると
 「フェロー諸島の捕鯨は、世界中で最も長い間、やり方が変更せずに続けられてきた。
 コミュニティー全体が参加する漁なのだ」
と指摘している。

■地元の食文化を阻止するシー・シェパード

 鯨肉はステーキ用に焼いたり、日干しにして保存食にしたりする。
 地元の住民は「フェローでは、日干しされた鯨肉はとっても日常的なもので、ごちそうだ」とも語っている。
 鯨肉を薄くスライスして、刺身でも食べるのもフェローの地元料理だ。
 脂身はポテトと一緒に重ねて食べる。

 シー・シェパードに限らず、クジラやイルカを食用にするフェローの文化は、欧米各国はもとより、デンマークの本土の一部の人たちからも批判されてきた。
 しかし、フェロー諸島の自治政府は、海がクジラの血で真っ赤に染まる様子も
 「大自然の生き物が織りなすドラマチックな鮮血の色なのだ」
と反論する。

 さらに、
 「大自然の資源を使うのは、フェロー諸島の島民の権利。
 ゴンドウクジラ漁は厳格に管理されており、持続的可能であり、フェローの暮らしの一部なのである」
と反論している。

 シー・シェパードはこうした地元の食文化を阻止しようとしているのである。
 ポール・ワトソン容疑者は「野蛮な方法であり、どの文明化した社会でもありえない」と主張している。

■今年5月、追い込み漁に関する法令が改正

 昨年、フェロー諸島には約500人のSS活動家が訪れ、漁に対する妨害が行われた。
 うち14人が違法妨害を行った罪で逮捕された。
 この教訓をもとに今年5月に、追い込み漁に関する法律が改正され、悪質な妨害行為を働いた者に関しては、最大で約2年の禁錮刑、約2万5千デンマーク・クローネ(約47万円)を科すことにした。


●デンマークの風刺画家が描いたシー・シェパードの様子を表わす作品。
 SSのカリスマ、ポール・ワトソン容疑者が人形師として活動家を巧みに操っている。活動家は「恥を知れ」「今すぐ寄付を」「デンマーク・ボイコット」などの看板を持っている。

 一方、フェロー諸島自治政府は、追い込み漁に対する情報発信も積極的に行っており、専門のHPでは、漁の歴史やゴンドウクジラの生態、料理方法、規則などのほか、フェロー諸島全般についてわかりやすく学ぶことができる。

◯フェロー諸島自治政府の捕鯨専門サイト
http://www.whaling.fo/

 自治政府内では、英語ができる広報専門官も置いており、世界各国のメディアから問い合わせがあると、迅速な対応を行う。
 メディアの報道がシー・シェパード側の一方的な宣伝に偏り、間違いが散見されたときも、公式HPできっちりと反論する。

 6月にも米誌ニューズウィークの追い込み漁に関する記事に「重大な事実誤認があった」と公式声明を発表した。
 「今回、取材や記事の執筆に当たり、ニューズウィークの記者がフェロー当局や他の関係者にまったく連絡しなかったことに驚きの念を禁じ得ない」
とも指摘、同誌の誤りを質した。

 一方、日本ではフェロー諸島で行われているような過激活動家に対する法整備や、行政機関の迅速で客観的な情報発信は立ち遅れたままだ。

 和歌山県太地町には今年9月から解禁される追い込み漁でも、例年同様、シー・シェパードの活動家が大挙として押し寄せる可能性もある。

 人口3千人の太地町では対応にも限界があり、一義的には和歌山県が積極的で迅速な対応をすべきと考える。
 専門のHPを開設したり、世界中のメディアの記者に対応するため、英語ができる広報専門官を置くことは、低予算ですぐにでもできるはずだ。
 追い込み漁の実態をオープンにして、漁が行われている時期に、日本の特派員らを招待して、太地町へメディアツアーを行うのも一考の価値があるのではないだろうか。









中国の盛流と陰り



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2015年6月26日金曜日

南シナ海問題(6):中国の人工島建設、南シナ海の「生態系破壊」にも懸念

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ロイター 2015年 06月 26日 12:55 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0P60AI20150626

アングル:中国の人工島建設、南シナ海の「生態系破壊」にも懸念


● 6月25日、中国が南シナ海の南沙諸島で進める岩礁の埋め立て工事。海洋環境の専門家の間では、東南アジアで最も重要なサンゴ礁生態系の1つに深刻なダメージを与えていると危惧する声が高まっている。写真は永暑礁で、米海軍の提供映像から(2015年 ロイター)

[香港 25日 ロイター] -  
 中国が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で進める岩礁の埋め立て工事。
 海洋環境の専門家の間では、東南アジアで最も重要なサンゴ礁生態系の1つに深刻なダメージを与えていると危惧する声が高まっている。

 中国は現在7つの岩礁で人工島の建設を行っているが、南沙諸島の衛星画像を分析した専門家らはロイターに対し、サンゴ礁への損傷は建設現場の周辺にも広がっており、環境への影響は当初考えられていたより大きい可能性があるとの見方を示した。

 こうした指摘は、中国側の説明とは大きく食い違う。
 同国政府はこれまで、国連が定めた条約に基づき、サンゴ礁および海洋環境の保護に尽力していると繰り返し表明してきた。

 フィリピンの研究者らと共同で南シナ海の調査を行ってきた米マイアミ大学の著名海洋生物学者、ジョン・マクマナス氏は先に、中国の埋め立て工事によって
 「人類史上で最も速いペースでのサンゴ礁域の永久的喪失」
が起きていると警告。
 米海洋大気庁が運営する海洋学フォーラムのサイトで同氏は、埋め立てに使う土砂を掘る作業や、人工島への接近航路を造るための浚渫(しゅんせつ)工事により、現場周辺では広範囲にわたるサンゴ礁が傷つけられたとしている。

 24日にロイターの電話取材に応じたマクマナス氏は、同海域で領有権を争う国々は自国の主張はいったん脇に置き、残ったサンゴ礁を保護するための海洋「平和公園」を造るべきだと述べた。

 中国の人工島建設に対する海外からの批判の大半は、領有権争いの先鋭化や航行の自由への悪影響に集まっている。

 生態系被害をもたらしていると中国を公に非難したのはフィリピンだけだ。
 同国政府は22日、中国の埋め立て工事は同海域の周辺各国に年間2億8100万ドル(約346億円)の経済的損失をもたらしたと批判した。

 こうした環境面での懸念に対する中国外務省からの回答は、国家海洋局が先週発表した声明を参照するようにというものだった。
 同局はその声明で、「サンゴ礁生態系への影響は、局所的かつ一時的なものであり、管理可能かつ回復可能だ」としている。

 ロイターはさらに詳しいコメントを求めたが、それに対する回答はなかった。

<生物学的多様性>

 複数の米当局者によれば、2013年後半に浚渫工事が始まってから、中国は約800ヘクタールに及ぶ範囲で埋め立てを行った。

 ベトナムなど領有権を争う他の国も、既存施設の拡張などで埋め立て工事を行っているが、その規模は中国に比べるとはるかに小さい。
 同海域では中国とベトナムのほか、フィリピン、マレーシア、台湾、ブルネイが領有権を主張している。

 スプラトリー諸島のサンゴ礁は、世界的に見ると規模は比較的小さいが、専門家らは生物学的多様性に富んでいると指摘する。
 また、オオジャコガイやジュゴンや数種のウミガメなど、絶滅が危惧される海洋生物の生息場所でもある。

 シンガポール国立大学の海洋科学と法律の専門家ユーナ・リオンズ氏は、4月にラジャラトナム国際研究院に向けて実施した調査で、7つの岩礁以外の浅瀬でも、埋め立て工事に使う建設資材用の場所として浚渫が行われていると指摘。
 「何世紀も手つかずだったサンゴ礁が今や失われてしまった」
と報告した。

 同氏は今週に入ってロイターが行った取材に対し、
 「南シナ海のサンゴ礁群に対して現在行われている浚渫は、その規模と性質の点で前代未聞だ」
とコメント。
 そのうえで
 「中国の浚渫船が大規模な破壊の原因になっているように見えるが、全体的な破壊の程度や、人工島の建設が始まる前の他国による破壊の程度は定かではない」
と述べた。

<中国が環境に最も関心>

 一方、中国の当局者らは、人工島の施設について、捜索救援活動や気象観測のほか、環境保護にも役立つと主張している。

 同国外務省・国境海洋事務局の欧陽玉靖局長は先月、新華社に対し
 「関係する島々や礁、海域の生態系保護を中国以上に気にかけている国はない」
と言明。
 そのうえで、国連が定めた生物の多様性や絶滅危惧種の国際取引に関する条約を中国は順守すると述べた。

 豪ジェームズクック大学の海洋生物学者テリー・ヒューズ氏は、埋め立て工事が「局所的には壊滅的」であることを認めたうえで、スプラトリー諸島は、長期的な魚の乱獲と気候変動というさらに大きな脅威に直面する可能性があると指摘する。

 中国の研究者らと共同執筆した2012年の論文で同氏は、気候変動などによって同海域のサンゴ礁が急速に減少したとしている。

 中国の人工島建設は視覚的には目を引く一方、一部のサンゴ礁は大部分が手つかずだと語るヒューズ氏。
 「それらの一部は依然として非常に良好な状態にある」
という。

(Greg Torode記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)



レコードチャイナ 配信日時:2015年7月1日(水) 14時13分
http://www.recordchina.co.jp/a112876.html

中国が南沙諸島の埋め立てを完了、軍事目的含む施設の建設へ
=米国ネット「中国は新たな敵を作るという大きな任務を完了した」

  2015年6月30日、ロイター通信によると、中国は南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島の岩礁埋め立てを完了したことを明らかにした。

 中国外交部の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は30日、定例記者会見で、中国が南沙諸島で進めていた岩礁埋め立てを数日前に完了したことを明らかにした。
 さらに、次段階として、海洋調査や救難活動、防災対策などを目的とした施設を人工島に建設すると主張し、それらが軍事関連のニーズを満たす建設を含むものであるとも述べた。

 この報道に、米国のネットユーザーからは、
「人工島を建設することは領有権を主張するのに適した手段ではない。
 中国よ、大人になるんだ」
「中国は新たな敵を作るという大きな任務を完了したということだ。
 おめでとう!」
「そして、オバマ大統領は中国を阻止することに成功したと主張するんだな」
といったコメントが寄せられている。



レコードチャイナ 配信日時:2015年7月7日(火) 21時50分
http://www.recordchina.co.jp/a113403.html

日本は南シナ海問題を騒ぎ立てるのを止めるべき―中国外交部

 2015年7月7日、人民網によると、中国外交部の6日の定例記者会見で、華春瑩(ホア・チュンイン)報道官が質問に答えた。

――日本とメコン川流域諸国による首脳会議は4日、共同文書「新東京戦略2015」を採択して、南シナ海情勢に懸念を表明した。

 中国とASEANの関係諸国の共同努力の下、現在南シナ海情勢は全体として安定しており、国際法にのっとり各国が南シナ海で享受する航行と飛行の自由にはいかなる影響も出ていない。

 日本が最近、南シナ海問題において過度に活動し、自国のみの利益のために地域情勢の緊張を誇張し、地域の国々の関係を翻弄し、これに水を差し、南シナ海の平和維持に向けた中国とASEAN諸国の努力を妨害していることに中国側は注意を払っている。

 日本は南シナ海問題の当事国ではない。
 われわれは日本側に対して、南シナ海係争において特定の立場を取らないとの約束を順守し、南シナ海問題を騒ぎ立てるのを止め、実際の行動によって地域の平和と安定を維持するよう促す。

(提供/人民網日本語版・翻訳/NA・編集/武藤)




中国の盛流と陰り



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韓国の李承晩初代大統領、朝鮮戦争勃発の2日後に日本への亡命を打診:歴史を直視すると

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レコードチャイナ 配信日時:2015年6月26日(金) 7時4分
http://www.recordchina.co.jp/a112423.html

韓国の李承晩初代大統領、朝鮮戦争勃発の2日後に日本への亡命を打診
=韓国ネット「国立墓地から追い出せ」
「韓国は根っからの親日国家!」

 2015年6月24日、韓国・KBSニュースによると、朝鮮戦争当時、韓国の李承晩(イ・スンマン)政権が日本に亡命政府を建設する方案を検討していたことが確認された。

 京都・大谷大学のチョン・ウジョン博士は、
 「朝鮮戦争当時、李承晩政権が日本政府に対し、亡命政権の設置を要求したとする文書を、米国立文書保管所で発見した」
と明らかにした。

 同文書には
 「朝鮮戦争勃発2日後の1950年6月27日、
 李承晩政府は米大使館と日本政府に対し、山口県に6万人規模の亡命政権を設置する方案を打診した」
と記録されている。
 日本政府が山口県知事に提案したところ、「食糧問題のため難しいと」との返答が返ってきたという。

 しかし、その10日後、
 山口県知事が山口県の4カ所に250のテントを設置して5万人を受け入れるとの計画書を提出、米国に予算支援を要請していたことも確認された。
 この「非常措置計画書」は日本語と英語で書かれ、日本政府と米軍政にそれぞれ送られた。
 しかし、李承晩政権の亡命政権構想は、連合軍の参戦や仁川上陸作戦などにより戦況が急反転したため、処分されたとみられている。

これについて、韓国のネットユーザーはさまざまなコメントを寄せている。

「こんな売国大統領を『建国の父』と呼んでいるから、安倍首相が韓国を甘く見るんだ。
 国民には『大丈夫』と言っておきながら、自分は逃げる準備をする大統領」
「『建国の父』というのは、『日本に亡命政府を建設しようとした』という意味だったのか…」

「安倍首相の故郷・山口県に亡命政権…」
「これがもし真実なら、李承晩を国立墓地から追い出すべきだ」
「誰が韓国を反日国家と言った?
 根っからの親日国家じゃないか!」

「韓国の元大統領は戦争中に逃げることしか考えていなかったんだね…。
 韓国国民はどうしていつも指導者選びを間違えてしまうのだろう?」
「国立墓地から取り出し、そんなに行きたかった日本に送ってあげよう」
「韓国の歴史を知れば知るほど、『恨みの感情』が強くなる」

「北朝鮮が攻めてきたら、朴大統領も同じようなことをする気がする」
「朴大統領の任期が2年8カ月も残っているということの方が衝撃」



FOCUS-ASIA.COM 6月26日(金)7時9分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150626-00000007-xinhua-cn

朝鮮戦争時、韓国・李承晩政権が日本に亡命政権樹立を打診、
6万人の亡命計画
・・韓国ネット「日本に逃げようとしたなんて」
「歴史を知るたび、失望と挫折を…」

 25日の韓国メディア・ポリニュースなどによると、1950年の朝鮮戦争勃発直後に韓国の李承晩政府が、日本に6万人が亡命して山口県に亡命政権を樹立したいと打診していた事実が報道され、韓国で注目を集めている。

 李承晩政府は朝鮮戦争の勃発(6月25日)の2日後、日本の外務省に「6万人規模の亡命政権を山口県に樹立したい」と打診した。
 これに対し、当時の田中龍夫・山口県知事は「日本の住民も配給が不足している状況」と難色を示しつつ、
 韓国人5万人を収容する「緊急措置計画書」を作成した。

 計画によると、
★.山口県阿武郡など4地域に20か所の避難キャンプを設置し、臨時兵舎1棟に200人ずつ、計250棟の兵舎を建設して5万人を収容する予定
だった。
★.計画書は米軍に提出され、田中知事は予算支援も要請していた。
ただ、釜山が陥落を免れたことで亡命計画は実行されなかった。

★.この李承晩政権の亡命要請は、日本では知られていた。
 だが、韓国ではこれまで“日本亡命政府要請説”としてウワサ扱いをされていたという。
 今回は、韓国メディア・KBSが山口県の図書館で計画書を“発見”し、“亡命要請説”を裏付ける日本側の文書が「初めて確認された」と24日に報じた。

この報道に対し、韓国ネットユーザーからは様々なコメントが寄せられている。

「日本に逃げようとしたなんて、こんな奴はリーダーではない」
「親日・親米の代表的な人物」
「戦争が起きたら、朴大統領も日本に亡命すると思う」
「この国の保守を自称する人々が建国の父と崇める人物の素顔」
「亡命を要請?恥ずかしい」

「こんな奴を歴代のえらい大統領だとして、追従するセヌリ党には反吐が出る。
 軍隊でも彼を偉人として扱っているのが、すごく嫌だった」
「次の大統領もセヌリ党から出たら、国民全員、亡命するしかない」
「一国の大統領が、戦争に知らんぷりをして逃げようとしたなんて、恥ずかしい」
「最低最悪の指導者。
 自国民が殺されても自分は逃げるつもりだった」

「無能でウソをつくのは、2015年現在も変わらない」
「韓国に本当に素晴らしい指導者はいたのだろうか?
 過去の歴史を知るたび、失望と挫折を覚える」
「韓国が分断されたのは、日本だけのせいではなく、米国、日本、李承晩にもてあそばれた結果だった。
 米国は決して韓国の友好国ではない」
「上にいる人はいつだって自分の生き残る道しか考えていない。
 亡命を要請したことに驚くことはない」
「この国の国民であることを後悔する。
 韓国を去りたい」
「今も同じだと思う



レコードチャイナ 配信日時:2015年7月17日(金) 8時2分
http://www.recordchina.co.jp/a114209.html

「李承晩政権の日本亡命説」を報じた韓国メディア、報道責任者を交代
=韓国ネット「歴史を歪曲する日本を批判できない」
「韓国に言論の自由はある?」

 2015年7月16日、韓国・朝鮮日報によると、「朝鮮戦争当時、韓国の李承晩(イ・スンマン)政権が日本に亡命政府を建設する方案を検討していた」と報じ、批判を浴びていた韓国KBSが、報道の責任者を交代させることが分かった。

 KBSは14日、
 「報道局国際部門主幹と国際部長、デジタルニュース局長とデジタルニュース部長らを交代する」
と明らかにした。
 KBSは先月24日、山口県の図書館で保管されていた資料を引用し、
  「朝鮮戦争当時、李承晩政権が日本政府に対し、亡命政権の設置を要求したとする文書を発見した」
などと報じた。
 これに対し、視聴者からは
 「報道の根拠が政府の公式文書ではない。
 ずさんな報道だ」
などと批判が相次いだ。
 李承晩大統領記念事業会など複数の団体も抗議声明を発表した。
 これを受け、KBSは問題の報道に対する反論報道を行った後、記事をホームページなどから削除していた。

これについて、韓国のネットユーザーは以下のようなコメントを寄せている。

「KBSは視聴料を返金しろ」
「当たり前の措置。
 李承晩を親日派に仕立て上げるために、公式文書でもないただの日本の『チラシ』を根拠に報道するなんて!
 KBSにはどれだけの親日が働いているんだ?」
「韓国の大統領や国会議員、放送局の上層部は全員親日なんだね」

「『歴史を歪曲(わいきょく)するな』と日本を批判できなくなるでしょ?」
「歴史をねつ造してまで視聴率を上げたいの?」
「そんな報道をして、元大統領に失礼だと思わない?
 メディアは事実だけを伝えるべき。
 国民をだまそうとするなんてひど過ぎる」

「KBSは歪曲メディアの代表だ。
 KBSの報道は誰も信じない」
「ついに国営放送まで事実を歪曲するようになった…」

「韓国に『言論の自由』は本当に存在するの?」
「亡命政権の設置を要求したとする文書があることは事実。
 火のないところに煙は立たない。
 真実を暴こうとしたメディアを保守団体が潰したのでは?」





中国の盛流と陰り



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「中国製造2025」(2):米独がリードする世界の製造業:崖っぷち中国の「切り札」は製造業の高度化のみ

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サーチナニュース 2015/06/26(金) 05:58
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0626&f=business_0626_004.shtml

米独がリードする世界の製造業、
「第3次革命」に日本が追随=中国メディア

 経済産業省が9日に「2015年版ものづくり白書」を発表したことについて、中国メディアの電子信息産業網は17日、
 「ドイツや米国がリードする世界の製造業における第3次革命に日本が積極的に追随する姿勢を見せている」
と報じた。

 記事は、15年版のものづくり白書において、ドイツと米国がけん引する製造業の変革において、
 「日本の製造業が競争力を失わないとも限らない」
と論じられたことを紹介し、日本はビッグデータなどの情報通信技術を製造業に活用し、競争力を高めようとしていると論じた。

 さらに、ドイツが工業のデジタル化を目指す「インダストリー4.0」を推進し、米国はインターネットを活用する取り組みを推進していることについて、ものづくり白書では「日本の製造業が立ち遅れる可能性がある」と強い危機感を示しつつも、今後はITの力を製造業に活用することが強調されたと報じた。

 続けて記事は、
 「ものづくり白書で発展に向けた方向性が示されたことで、日本の製造業は再び発展する可能性がある」
と伝え、中国の南開大学日本研究院の張玉来副教授の見解として
 「日本が技術面でのリーダーであることは疑いようがなく、日本の製造業は今後、国外の市場に向けて発展していくことになる」
と伝えた。

 一方で、日本の製造業は「ものづくり白書」で強調されたほど危機的な状況にあるわけではないとし、
 「日本人は危機意識が強いためであり、日本の製造業が困難に直面していると判断するのは時期尚早」
と指摘。

 さらに、国連工業開発機関(UNIDO)が発表した世界135カ国・地域における製造業の競争力評価レポート「2012-13年工業開発報告書」では日本が1位だったことを紹介し、むしろ
 日本の製造業の競争力は今なお世界でもトップの水準にある
と論じた。



サーチナニュース  2015/06/28(日) 05:52
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0628&f=business_0628_004.shtml

崖っぷち中国の「切り札」
・・・製造業の高度化=中国メディア

 中国メディアの中国新聞社は23日、中国政府が打ち出した製造業の高度化を目指す「中国製造2025」について、
 「中国が製造強国へ邁進するうえでの主戦場の1つがインフラ市場だ」
と論じた。

 記事は、「中国製造2025」について、今後10年間における製造業の発展方針を示したものだと紹介し、中国が今、製造業の高度化という切り札を打ち出した理由として「国内外の情勢と大きなかかわりがある」と指摘。

 さらに、中国の李克強首相の話を引用し、ドイツや米国が製造業の高度化を推進しているうえ、中国国内の経済は下振れ圧力が高まっていると紹介、
 「中国経済の成長を保つために情報通信技術と融合した新しい製造業を実現する必要がある」
と論じた。

 続けて、中国工業情報化部の毛偉明副部長の発言として、
 「中国製造2025」とは「規模から質」への転換を意味するもの
だと指摘し、現在の中国製造業は
 「技術で他国の制限を受け、基幹技術もない」
と指摘。
 また、
 中国製品にはブランド力もなく、産業構造も非合理的であるため同質化が著しい
と現在の問題点を指摘した。

 一方で記事は、中国の機械設備や電力設備、造船といった分野のほか、航空宇宙産業や鉄鋼といった分野について
 「世界最先端ではないにしても、世界でも競争力はある」
と主張。
 今後は、高速鉄道だけでなく、原発といったインフラの輸出を推進する方針であることを指摘したうえで、中国の李克強首相の発言を引用し、
 「中国は先進国と協力したうえで開発途上国の市場開拓を進め、“三方良し”を実現する必要がある」
と論じた。



サーチナニュース 2015-07-12 11:29
http://news.searchina.net/id/1581013?page=1

「製造業は衰退している」などと
・・・自ら叫んではならない!=中国メディア

 中国メディア・中国経済週刊は6日、昨今中国国内メディアのあいだで「中国の製造業は発展できない」との論調が出回っていることについて、「自ら衰退を口にしてはならない」とする元国家発展改革委員会主任・国家エネルギー局長の張国宝氏による文章を掲載した。

 文章は、近ごろあるメディアが
 「高精度の製造にしても基礎部品の加工にしても、
 中国は世界をリードできないし、’ 
 『製造強国』に匹敵するレベルに到達したなどと語ってはならない」
との論調を展開したことについて、「一理ある」としつつ
 「数十年の努力によって生産量世界一で産業分野も整った製造業大国に成長したという事実に、われわれは見てみぬふりをしてはならない」
と論じた。

 そして、1980年代には少なくとも発電設備の半分を輸入に頼っていた状況が、今では世界の先端を行く発電設備技術を身に着け、世界でもっとも重要な発電設備輸出国としてインドやロシアなどに大規模な設備を輸出していると紹介。
 造船業でも1972年にはわずか2%だった世界シェアが、現在では43%以上を占める世界一の造船大国になり、LNG輸送船や大型コンテナ船、オイルタンカー、深海掘削船、さらには空母やミサイル駆逐艦といった海軍装備まで生産できるようになったとした。

 このほか、通信設備、冶金業などでも昔に比べ目覚ましい発展を遂げたことを例示したうえで
 「われわれは直面する問題について、『民族虚無主義』に沿って自らの衰退を叫ぶのではなく、歴史的見地から論理的かつ全面的に眺めなければならない」、
 「イノベーション能力不足という問題はあるものの、これも差が縮まっていると見るべきなのだ」
と主張した。



レコードチャイナ 2015/07/13(月) 06:30
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0713&f=business_0713_004.shtml

加工貿易の「輝ける時代」は終わった=中国・広東省

 中国メディアの中国青年報は、中国で製造業が数多く集積する広東省東莞市において、
 「加工貿易における輝かしい時代は過去のものになった」
と伝え、受託製造から中国国内の市場に狙いを定め、自らブランドを立ち上げる企業が増えつつあることを紹介した。

 記事は、東莞市で靴の受託製造を行っている企業の関係者の話として
 「商売がうまくいっているときは利益も眼を見張るものがあった」
としながらも、人件費や原材料といったコストが上昇を続けており、現在は1足の靴で最大でも1元(約19.77円)しか利益が出ないと伝えた。

 さらに、同社では5月に工場労働者の人件費が200元(約3954円)も上昇したとし、
 「300人規模の工場では、人件費を回収するだけでも、月に10万足以上の靴を製造する必要があることを意味する」
と伝えた。

 また記事は、
 「国外のブランドは1足あたり5元(約100円)で製造し、その6倍の値段で販売している」
とし、
 「なかには10倍以上で販売しているブランドもあるほどだ」
と伝え、同社では
 「自社のブランドを確立すれば販売もしやすく、利益も多く確保できる」
との結論に達し、自社ブランドの立ち上げを目指す方針だと報じた。

 続けて、東莞市に限らず、広東省の大半の受託製造企業は
 「商売が立ちゆかなくなっていることを実感している」
と伝え、社員数の削減や東南アジアへの移転を選択する企業も増えていると伝える一方、中国の国内市場に狙いを定め、自ら製品を開発しようとする企業も増えていると紹介した。



レコードチャイナ 配信日時:2015年7月13日(月) 7時20分
http://www.recordchina.co.jp/a113720.html

日本のニューエコノミー成長戦略は「有名無実」か―中国紙

 2015年7月10日、「日本再興戦略 改訂2015(ニューエコノミー成長戦略)」と「経済財政運営と改革の基本方針2015:経済再生なくして財政健全化なし」がこのほど、日本の閣議で決定した。
 同戦略では、
 人口減少に対応するため、ITの強化と人材育成によって生産力を高め、
経済の急成長と財政再建を実現することが目標に据えられた。
 経済日報が伝えた。

 今回、日本政府が打ち出したニューエコノミー成長戦略は、昨年発表された「日本再興戦略」の改定版で、
 「産業再興プラン」
 「戦略市場創造プラン」
 「国際展開戦略」
3大アクションプランで構成されている。
 具体的内容は、
「企業の経営戦略強化」
「職業教育など高等教育機関の革新」
「海外IT人材の導入」
「健康・医療関連産業の発展」
「農林水産食品の輸出拡大」
「外国人観光客による観光消費4兆円目標の達成」
「アジア開発銀行との提携による、5年以内で1100億ドルの高品質インフラ投資の実現」
など。
 日本の指導層は、これらの内容について、
 「設備と人材投資を促進し、
 サービス業の生産効率を高め、
 技術革新によって生産性革命を実現する」
と総括している。

 経済財政運営と改革の基本方針によると、2020年度までに基礎的財政収支(PB)の黒字化を実現し、債務ではなく税収増に頼る健全な財政運営を実現する。
 このために、日本は、PB(対GDP)比を2015年のマイナス3.3%から2018年までにマイナス1%に引き下げ、名目GDP成長率を3%(実質2%)以上とし、それによって税収増を実現し、最終的には財政再建を実現させなければならない。

 経済成長戦略は、アベノミクスの核心といえよう。
 だが、日本のニューエコノミー成長戦略の内容を見る限り、その政策骨子は、形ばかりで実質的な内容が伴っていないと思われる。

 まず、政策は、形ばかりで実行性に乏しいものが多い。
 技術革新の促進、産業生産性やコア競争力の向上などは、当然、経済振興にとっての王道である。
 だが、
 「年末までにベンチャー投資企業支援政策の進行チャートを制定する」
 「年末までに協議会を立ち上げ、ビッグデータ・人工知能による産業構造・就業構造変革など新テーマの課題解決に取り組む」
 「国家戦略特区を活用した近未来技術実証を速やかに行うための制度改革等の検討を行う」
などのさまざまな計画はいずれも、今後の検討課題として、関連省庁の大臣に委ねられ、実質的な進展効果は、今のところ予測できない。

 次に、新戦略は、経済発展と政治の安全という重要ポイントから大きく逸れている。
 他の問題が顕著化することによる与野党の対立を避けるため、また、安全保障法案の通過に有利な条件を整えるため、日本政府が昨年提出した「農協改革関連法案」や「農地利用促進のための財政改革関連法案」はいずれも、今期国会の重点が安保法案をめぐる審議であったことから、自民党によって棚上げされた。
 現時点で、昨年の改革目標は、まだ達成に至っていない。

 さらに、基本方針における健全なる財政計画は、2020年度までに財政収支黒字化を実現するという目標を堅持しているが、財政支出額の上限は設けられておらず、基本的には大まかな「目標」に過ぎない。
 また、GDP実質成長率2%という楽観的見通しによってもたらされる税収増を前提としたプランは、2017年4月の消費税再増税に伴うダメージを一切視野に入れていない。

 最後に、特に注目すべきは、第二次大戦後のベビーブーム世代が2020年を過ぎると75歳になり、「後期高齢者」になる点だ。
 これにより、年金・医療・介護など各種社会保障の負担がいっそう重くなり、財政支出に大きな圧力がもたらされる。
 日本の国家と地方政府の債務残高はGDPの2倍に相当し、財政破たんに陥ったギリシャよりはるかに深刻な状況にある。
 これらの問題に直面しているにもかかわらず、健全な財政計画に対する具体的な政策に不足しおり、将来的な実施・執行の効果は、はなはだ疑わしい。

 専門家は、
 「経済成長と健全な財政収支への道は、日本にとって極めて遠い道のりだ。
 アベノミクスが最終的にどのような結果で終わるのか、
 日本の企業家や国民の心の底では、それに対する懸念や恐れが、ずっとくすぶり続けるであろう」
と指摘した

(提供/人民網日本語版・翻訳/KM・編集/武藤)



サーチナニュース  2015/07/28(火) 06:02
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0728&f=business_0728_005.shtml

「製造強国」を定義すると
・・・中国メーカーの弱点「浮き彫り」!?
=中国メディア

 中国メディアの賽迪網は24日、
★.中国は名実ともに世界の製造大国
であると伝える一方、
★.中国の製造業は革新能力に劣り、資源の利用効率も低く、情報化も遅れている
と伝え、
★.中国が世界の「製造強国」となるためには「品質を最優先する」方針を堅持しなければならない
と論じた。

 記事は、「製造強国」について世界で統一された定義は存在しないとしながらも、
 世界で高い知名度を持つ企業を複数擁すること、
 企業が高い革新能力と競争力を持つこと、
 先端技術と基幹技術を持つこと、
 生産効率と品質、安全性を同時に実現できること、
 持続的な発展が可能である
ことなどが「製造強国」の条件だと主張。

 さらに、現代において世界に認められた製造強国は「米国、ドイツ、日本」などであるとし、日米などのメーカーの製品は品質的に信頼性が高く、耐久性も高いため製品寿命が長いと指摘し、
★.製造強国であることの重要な指標の1つこそ「品質」である
と主張した。

 続けて、メーカーの命を握るのは製品であり、製品の命を握る要素は「品質」であるとする一方、
★.中国メーカーの致命的な弱点こそ「品質」にある
と指摘。
 国が定める標準規格においても先進国とは差があると伝えたほか、良い製品については模倣品が次々に市場に出回ることも問題だと論じた。
 中国製品の品質は世界最先端の水準には到底及ばず、
 「中国製造業の命が脅威にさらされていると言える」
と論じた。



レコードチャイナ 配信日時:2015年8月2日(日) 6時40分
http://www.recordchina.co.jp/a115391.html

「日本製造業は没落、中国製造業の未来は明るい」
=そんな考えは間違いだ!―中国メディア

 2015年7月30日、中国メディア・鉄血網は日中の製造業について伝え、日本の優勢と中国の足りない部分に対する認識が欠けていると指摘した。

 中国では、「日本製造業は没落、中国製造業の未来は明るい」との論調があるが、実際はそれほど楽観的ではない。
 日本のPCや家電メーカーの低迷を日本製造業の低迷と結びつける考えは間違っている。
 これらの産業は日本製造業を代表していないだけでなく、衰退もしていない。

 PCや家電においては、価格が競争の大きな要素となっている。
 ところが日本は人件費が高いため、価格の優勢を得ることは難しいからだ。
 たとえ日本の家電メーカーが価格戦に敗れ製造を中止したとしても、中国にとって朗報とは限らない。
 なぜなら製造における先進技術は依然として日本企業が掌握しているからだ。
 さらに、技術力が物を言う光学機器や医療機器において、日本は世界トップクラスの水準を維持しており、高い利益を上げている。
 中国はこうした日本の優勢を見逃しがちだ。

 それに対し中国は技術面での発展は芳しくなく、人件費が高騰する中、いつまで価格における優勢を保てるのかが懸念される。
 中国製品は品質が低いためにトラブルが多く、技術に対する研究や経験が乏しい。
 中国はこうした製造業のマイナス面に対する認識が欠けている。
 昨今、中国企業が世界的な企業を買収するといったニュースをたびたび目にするが、買収したからと言って、中国に高い技術力が備わったということではない。
 さらに、近年中国の家電メーカーは世界規模で販売を伸ばしているが、核心的な技術で発展しているわけではないため他国に比べ優勢を持っていることにはならない。
 技術の優勢を持たない中国は、価格で勝負できなくなった時に何で勝負できるのか、
 それについて深く考える必要がある。



サーチナニュース 2015-08-16 06:21
http://news.searchina.net/id/1585353?page=1

中国製造業「苦境打開」の道を探る!=中国メディア

 中国メディア・第一財経日報は11日、
 「『メード・イン・チャイナ』苦境打開の道を探る」
とする社説を掲載した。

 記事は、
 「富士康(フォックスコン)がインドに工場を建設」、
 「中国の製造業のコストが米国に迫っている」
などといった報道が近ごろ出ていることを紹介。
 人材・環境・資源のコストが絶えず上昇するなかで「メード・イン・チャイナ」が直面している環境はかつてないほどの厳しいものであり、「世界の工場」の立ち位置も過去のものになりつつあるとした。

 そのうえで、
 「物質世界に変化はつきものだからといって、
 中国の製造業を取り巻く環境の変化に対して何の行動も起こさず、
 『メード・イン・チャイナ』の空洞化を招いてしまってはいけない」
とし、製造業の空洞化がもたらす弊害を直視し、ドイツにしろ日本にしろ米国のように強い製造業がなければ強い国や民族は作れないことをはっきりと認識すべきであると論じた。

 そして、中国の製造業におけるコスト上昇、ベトナムやインドへの拠点移設の動きは「予測できるもの」であり、
 「中国の製造業が決して立ち直れなくなるわけではない」
と指摘。
 模索の中から「メード・イン・チャイナ」の局面打開の道を得ることができるとした。

 文章は、今年3月に中国政府が「中国製造2025」実現に向けた配備に着手したことを紹介。
 「中国製造2025」が追い求めているものがまさに「メード・イン・チャイナのグレードアップ」であると説明した。
 そして、
 「付加価値が低い、ハイエンド人材不足、イノベーションに向けた投資不足」
といった問題が際立つ「バージョン2.0」状態の中国製造業を、その道は険しくとも一気に「4.0」まで高めなければ、将来の競争において敗れ去る可能性が高いと論じた。

 そのためには、イノベーションを盛んにさせるための知財権保護強化、研究開発への投資強化などといったさまざまな努力が必要となるとし、企業を主体とし、市場が風見鶏となり、産官学が融合したイノベーション体系の構築が差し迫った課題であるとした。

 また、製造業のグレードアップには人材の支えも必要であるとし、職業教育の発展も重要なセクションであると論じた。
 このほか、「パクリ」のイメージも必ずや拭い去らなければならないことも指摘。
 コスト上昇、外部の競争力上昇という危機をチャンスに変えるために必要なことは、より先見性がありかつ国際的な視点を持って、局面打開の道を探ることなのだと締めくくった。





中国の盛流と陰り



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