2015年6月3日水曜日

日中アジアインフラ支援競争(1):「国際インフラ建設基準」の形成、 「日本は一体何がしたいのか」と苛立つ中国

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● FNNニュース


レコードチャイナ 配信日時:2015年6月3日(水) 9時37分
http://www.recordchina.co.jp/a110118.html

日本がアジアのインフラ建設支援を強化、その狙いは?―中国紙

2015年5月28日、経済参考報によると、安倍首相は21日夜、国際交流会「アジアの未来」で講演し、
日本が今後5年で約1100億ドル(13兆4000億円)の資金を提供し、
 アジアの国のインフラ建設を支援する方針である
ことを明らかにした。

安倍首相によると、日本は、
アジア開発銀行と日本政府系の「国際協力銀行」「国際協力機構」
の3ルートでアジア諸国に資金援助を提供し、アジアのインフラ建設に貢献することができる。
安倍首相は、
「日本は自らの技術的優位を利用して、
 長持ちし、自然環境への負荷が小さく、
 防災・減災の作用を備えた高品質のインフラ
をアジアの国々に提供できる」
と強調した。

日本政府はさらに、
 アジア諸国への巨額のインフラ建設資金提供を通じて、
 日本のインフラ建設基準を定着させ、
 日本の基準を基本とした「国際インフラ建設基準」を形成し、
 今後の国際インフラ建設市場を主導
する戦略だ。

日本メディアの報道によると、タイで建設中の最初の高速鉄道は日本の新幹線技術を採用することが決まっており、両国の交通運輸部門の大臣は27日、高速鉄道の建設協力問題について東京で会談し、関連文書への署名を行う。
首都バンコクと北部の観光都市チェンマイを結ぶこの高速鉄道は全長680kmで、1兆5000億円の建設資金が必要となる見込みだ。
また日本はインドとも、ムンバイからアフマダーバードへの500kmの高速鉄道建設プロジェクトについて実現可能性調査を共同で行っており、今年7月にインド政府に調査報告を提出する方針だ。
マレーシアの首都クアラルンプールからシンガポールまでの全長330kmの高速鉄道建設プロジェクトで年内に行われる国際入札にも日本企業は積極的な参加準備を進めている。

こうしたアジアの国々はいずれも建設資金が不足しているため、建設請負国が巨額の資金援助を提供しなければならないことがしばしばある。
もしも工事に必要な資金が集まらなければ、プロジェクトの契約にこぎつけても実施しようがない。
日本企業のアジアインフラ建設市場のシェア確保に協力し、インフラ設備の輸出戦略を推進するため、日本政府は巨額の資金援助の提供を決定している。

(提供/人民網日本語版・翻訳/MA・編集/武藤)



レコードチャイナ 配信日時:2015年6月4日(木) 16時10分
http://www.recordchina.co.jp/a110521.html

日本のアジア向けインフラ資金、
1100億ドルの出どころは?―中国紙

  2015年6月2日、安倍首相は最近行われた国際交流会議「アジアの未来」で講演し、日本が5年間で約1100億ドル(13兆7000億円)のアジア向けのインフラ資金を提供し、アジア諸国のインフラ建設を支援することを表明した。国際金融報が伝えた。

日本は長期にわたって常に地域組織の前線に立ち、アジア太平洋経済協力(APEC)フォーラムやASEAN地域フォーラム、東アジアサミットの設立を支援してきた。
アジア最大の援助国でもある。
だが1100億ドルは小さな額ではない。
 これをいかに調達しようというのか。

安倍首相は、日本はアジア開発銀行(ADB)と日本政府系の国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)の3つのルートでアジア諸国を資金援助し、アジアのインフラ建設に貢献することができるとしている。

日本は公的支援・民間援助を通じて、アジア諸国のインフラ建設に投資・融資を行う計画だ。
JICAとJBICを通じたアジア諸国への融資・援助の提供のほか、日本はさらにADBを通じてより多くの金融支援を提供することを検討している。

日本は今後、政府開発援助(ODA)の執行機関である日本のJICAを積極的に利用し、ADBとの協力の枠組を設立し、新興市場国のインフラ建設プロジェクトを準備段階から援助し、官民が手を携えて資金供給の拡大をはかっていく見込みだ。

1100億ドルの投資は主に3つのルートで行われる。
 第一に日本政府による円建てODA、
 第二に増資や債券の形式でADBを通じて投資される。
 第三に商業銀行と企業を政府とADBの投資に参加させる。

日本政府が制定したプランによると、日本は今後、その主導するADBを通じて約530億ドルのインフラ建設資金を投資する。
また、JBICとJICAはそれぞれ約200億ドルと約335億ドルを増資する。
さらに、ODAの低金利融資と無償援助資金を大幅に増加させる。

発展途上国がかつて担保なしには融資を得られなかったリスクの高いプロジェクトにも日本側は資金を提供する意欲を見せている。
先進途上国に巨額の建設資金を提供することにはリスクがあるため、日本政府は国家財政予算の割り当てと日本の金融機構と大型企業による投融資への共同参加によってこの巨額の資金を調達し、実施過程での野党と国民の抵抗を弱める計画だ。
(提供/人民網日本語版・翻訳/MA・編集/武藤)



ロイター 2015年 06月 5日 20:15 JST
http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0OL16820150605

インタビュー:AIIB、中国に拒否権なら参加困難=自民・秋葉氏

[東京 5日 ロイター] -
自民党の秋葉賢也・外交部会長は5日、ロイターのインタビューで、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、
中国が拒否権をもつ状態で参加することは120%あり得ない
との認識を示した。

秋葉氏は
「日本政府また自民党が一番懸念しているのは、公正なガバナンスと債務の持続可能性だ」
とし、
「設立準備会合を聞いている限り、当面は参加できないだろう」
と見通した。

設立準備会合で固まった概要は、設立当初の資本金は1000億ドル。
中国が最大の29%程度を出資し、重要案件では中国が反対すれば決められない「拒否権」ももつとみられている。
融資案件を最終決定する理事会は設置するが、本部に常設しない方針。

常設の理事会でなければ運営のチェック体制が希薄になり、中国の国益に乱用される融資となるリスクが残ると懸念されている。

秋葉氏はこうした懸念が解消されない限り、状況を見極めていく必要があると繰り返し、なかでも
 「日本としては、少なくとも中国が拒否権をもっているような状態では参加することは120%あり得ない」
と語った。

一方で、日本が参加しないことによる唯一のデメリットがあるとすれば、
「アジアの他の国が日本に対してどう思うかだ。
アジアの他の国の立場にたってみれば、日本に入ってもらったほうが金利も安くなるし、変な融資にもならないと思うだろう」
とも述べ、
「フリーハンドとして残しておく必要がある」
と語った。

当面はアジア開発銀行(ADB)との協調融資などを通じて外から働きかける。
「融資案件を厳選し露骨な中国への利益誘導につながるような融資はしない。
 協調融資を通じてノウハウを学んでもらう」
ことは可能と指摘。
年末に形式的には立ち上がったとしても、人材を集め、融資案件を決めていく運営はかなりの困難を要する。
「実際の融資実行は2年くらい先になるのではないか」
と見通し、焦る必要はないとの認識をにじませた。

自民党は外交部会や財務金融部会などの合同部会でAIIBに対する政府方針について、参加判断を明確にせず、慎重な対応を求めるとする報告書をまとめ、安倍晋三首相に提言した。

秋葉氏によると、合同部会では35人中、「是非参加すべき」と明言した議員は3人のみで、全体の8割が慎重意見だったとし、報告書では今後の状況を慎重に見極めるべきとの立場を強調。
安倍首相からは、参加の是非に関する言及はなかったとした。



読売新聞 6月16日(火)14時30分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150616-00050073-yom-bus_all

中国に事実上の「拒否権」…AIIB設立協定



 【北京=鎌田秀男】
 中国が主導する国際金融機関「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)の設立協定の全容が16日、明らかになった。

 資本金1000億ドル(約12兆3000億円)のうち中国の出資額は最終的に297億ドルと最大になり、出資比率などに基づき算定する「議決権」も25%を超えて、最重要事項を決定する際に事実上の「拒否権」を持つことが確定した。
 運営の中心となる理事会では、出資額が上位の中国、インド、ロシアの3か国が常にポストを握る。

 創設メンバー57か国の代表は29日、北京の釣魚台国賓館で設立協定に署名し、年内の業務開始をめざす。

 設立協定によると、資本金の75%をアジアや中東の「域内国」が、25%を欧州などの「域外国」が、それぞれ負担。
 国内総生産(GDP)など経済力を基に算出した各国の出資額は、中国に続いて、インド83億ドル、ロシア65億ドル、ドイツ44億ドル、韓国37億ドルの順となった。



サーチナニュース 2015-06-09 14:47
http://news.searchina.net/id/1577060?page=1

「中国の腐敗問題が解決するまでは『AIIB』に入らないと日本政府がコメントした」
と伝える中国メディア
・・・「世界共通の価値観」などネット民の反応=中国版ツイッター

中国メディア・鳳凰財経は8日、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)で、アジアインフラ投資銀行(AIIB)について日本政府が
「中国の腐敗問題が解決されるまでは入らない」
とコメントしたと伝えた。

記事は、ドイツで開かれたG7サミットにおいて各国首脳が中国主導によるAIIBについて討論を行ったと紹介。
さらに、日本の外務省報道官が
「中国が汚職問題を解決するまで、AIIBに参加するかを決定しない」
と発言したと報じた。

この記事に対して、中国のネットユーザーの多くが日本側の態度に反発。
「中国はそもそもお前を招待していない。
 存在感出したかっただけだろ」、
「言い訳を探すな」、
「おい、もっといい言い訳はないのか?」、
「日本が歴史を認めるまでAIIBに入れるな」、
「腐敗のない国なんてないだろう」、
「だったら中国が腐敗問題を解決するまで、日本製品も中国に輸出するなよ」
といったコメントが寄せられた。

また、
「日本人は凶悪だが機知にあふれていると言わざるを得ない」、
「つまりは共産党が政権を握っている限りは参加しないということだな」、
「はっきり入らないって言えばいいのに。
 腐敗問題が解決する確率がゼロだってことはみんな知ってる」、
「世界共通の価値観だ」
といった感想も見られた。

総じて、「そんなにいやなら入ってくるな」という見解で一致している印象の中国ネットユーザーだが、コメントからは腐敗問題を持ち出されて
「痛いところを突かれた」
といった気持ちや、後ろめたさもほんの少し垣間見えた。



サーチナニュース 2015-06-15 07:33
http://news.searchina.net/id/1577657?page=1

「日本は何がしたい?」、
「理解し難い敵意!」
・・・アジアのインフラ整備めぐり、度量を誇示する中国メディア

 中国メディアの国際在線は10日、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、日本が対抗してアジアへのインフラ整備支援を行おうとしていると伝え、日本の態度は矛盾があるとしたうえで、
 「日本は一体何がしたいのか」
と疑問を投げかけた。

 記事は、このほど開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)において、安倍晋三首相が中国の人権問題とAIIBのガバナンスを関連付けようとしたとしながらも、賛同を得られなかったと主張。
 一方で、日中および日韓がこのほど財務対話を再開し、アジアのインフラ整備において協力する方針で一致したことを紹介した。

 続けて、
 「日本が一方ではAIIBを非難し、一方では協力を進めようとしている」
とし、日本の態度は矛盾があるとしたうえで、「日本は一体何がしたいのか」と疑問を投げかけた。

 さらに、中国が主導するAIIBには57カ国が創設メンバーとして集まったとし、アジアでもっとも重要な経済大国の1つである日本は参加していないとする一方で、
 「日本はアジアのインフラ整備に向け、今後5年で総額1000億ドル(約12兆3441億円)規模の支援を行う計画」
と指摘。
 また、日本がAIIBのガバナンスに対して懸念を表明していることに対し、「理解し難い敵意」と論じた。

 続けて記事は、中国が高速鉄道を始めとするインフラ輸出において日本と競合するケースが近年増えているとし、
 「日本にも確かに競争力はあるものの、中国がAIIBのもとでインフラ輸出を推進することに対し、日本は圧力を感じているに違いない」
と主張。

 また、日本の挙動が
 「中国と争う意味合いが含まれていようとも、中国は案じる必要はない」
と主張し、日本が本当にインフラ整備という点でアジアに貢献する考えがあるのであれば、
 「日本と中国の和解、協力はアジアの人びとの利益となる」
とし、
 「中国は大国としての度量を示すだろう」
と主張した。



JB Press 2015.6.16(火) 姫田 小夏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44016

甘く見て突っ込むと怪我するアジアインフラ市場
日本企業は無法の荒野を切り開けるか?

 近年、アジアのインフラ市場が注目されている。
 2010~2020年のインフラ関連の資金需要は8兆ドル。
 この巨大市場にいかにアプローチするか、日本企業も大きな関心を寄せている。
 だが、リスクあるアジア事業を日本企業はものにすることができるのだろうか。

 インドのモディ政権は目下国内のインフラ整備に乗り出している。
 その目玉となるのが、10兆円規模の「デリー・ムンバイ産業大動脈構想」だ。
 日本とインドの共同プロジェクトとして注目を集めている。

 このプロジェクトについて、拓殖大学の小島眞教授はこんな内幕を明かす。
 「鉄道事業は土木工事がカギになるが、
 日本のゼネコンは最後まで手を挙げなかった」

 デリー・ムンバイ産業大動脈構想は、貨物専用鉄道を敷設し、周辺に工業団地や物流基地、発電所などのインフラを整備するものだ。
 しかし、鉄道敷設の土木工事入札に対する日本のゼネコンの動きは鈍かった。

 「採算性の悪さなどが主な理由でしょう。
 また、今まで経験のないほど長距離の敷設であり、及び腰になった可能性もあります」(小島教授)

 鉄道敷設のみならず橋梁建設など土木分野では、中国が力をつけてきており、日中の品質の差はほとんどなくなってきている。
 「むしろこの分野はコスト競争力のある中国勢が受注するのが自然」(途上国開発の専門家)
だとも言われている。

 手が上がらなかったのは日本の建設業界が疲弊しているからという面もある。
 2009年の「ドバイショック」で日本のゼネコンは体力を消耗しきってしまった。

 また、都内在住の大手ゼネコンOBは
 「五輪が終わるまで、日本企業はアジア市場に目を向けないだろう」
と言う。
 東日本大震災からの復興もまだ道半ばであり、海外案件にまで手を広げる余裕がない
というのが実情だ。

■実は限定される日本企業にとっての「アジア市場」

 バングラデシュは“アジアの最貧国”と言われているが、ここ数年は年率6%の高い経済成長が続く。
 また、“出稼ぎ富裕層”の国外からの送金は、繊維産業に次ぐ同国第2の外貨獲得源となっている。
 首都ダッカでは富裕層による高額品の需要が高まり、もはや実態はアジアの貧しい国ではなくなりつつある。

 バングラデシュでは2013年、国会の総選挙が開催されたのだが、首都ダッカは荒れに荒れた。
 「ハルタル」と呼ばれるゼネストによって交通も生産も麻痺状態になり、日本からの経済視察団や訪問団も足止めを食らった。
 ハルタルを目の当たりにした日本の財閥系企業の出張者は「事業にならない」と踵を返した。
 バングラデシュの成長性に関心を注いでいたものの、提出した報告書には「時期尚早」の烙印を押した。

 翌年、選挙も終わったダッカを、今度は同業の中堅企業の社員が訪れた。そ
 の社員が出した結論は、先の財閥系企業とは異なるものだった。
 同社は今、「世界で最も住みにくい都市」と言われるダッカで、事業に乗り出すべく積極的に動き出している。

 政情が不安定なのはバングラデシュに限らない。
 アジアビジネスには、すべからく政治リスクが存在する。
 それに対して「君子危うきに近寄らず」なのか、はたまた「虎穴に入らずんば・・・」なのか。
 2社の行動は対照的だった。

 「日本企業はアラカン山脈を越えられるのか」は、専門家の間でたびたび発せられる問いである。
 東南アジアと南アジアは、バングラデシュとミャンマーの国境を走るアラカン山脈で分けられる。
 日本企業がミャンマーに関心を持ってもその隣国バングラデシュに関心を向けないのは、
 日本には馴染みのないアラブ文化圏でもあるためだ。

 日本企業にとっての「アジア市場」とは、煎じ詰めれば、ごく近隣のいくつかの国とマーケットに限定されている。

■情報収集が勝負の分かれ目

 アジアビジネスを進めるに当たり日本企業の大きな課題となるのが、現地情報の収集だ。
 ビジネスが成功するか否かは情報量で決まると言っても過言ではない。

 日本企業の情報収集先は、現地の日本法人やジェトロ(日本貿易振興機構)、領事館などが定番だ。
 さらに突っ込んだ情報収集となれば、現地人脈から得ることになる。
 しかし、もちろん簡単にパイプを作ることはできない。
 関係機関を接待し、しかるべき人脈への根回しなどが必要になる。

 「中国で情報収集したければ宴席を利用することだ」と言われる。
 だが、これを実行している日本人ビジネスマンは意外に少ない。
 かつて中国に駐在していた外交官は自身の経験を踏まえ、「飯局を見極められるかだ」と語る。
 飯局、すなわち会食は、中国では囲碁や将棋の対極に通じる一種の主戦場としてとらえられている。

 「私たちには『無駄飯は三度食え』という鉄則がある。
 最初はひたすらよもやま話に徹し、四度目になって初めて話の核心を切り出す」

 中国のみならず、華僑が多いアジアでは情報収集のために宴席が最大限に利用される。
 そして、宴席にはふんだんに金をかける。

 外交の場ではこの「飯局」を通し、誰が決定権を握るのか、その実力はどれほどのものかを見極めるという。
 ビジネスもまた同じだ。
 「飯局」は、相手が味方になるのか敵になるのかを探り合うための重要な場だ。
 中国には「飯局が成功すれば事は成就する」という諺すらある。

 ちなみにこの外交官は駐在中、現地に同化するような服装で市井を回り、市民との対話を繰り返したという。
 中国という土地に慣れ親しみ、市民の生活に溶け込むことも「息の長い情報戦」の一環なのである。

■郷に従うと悲劇になることも

 中国では「金」も情報を得るための重要な手段となる。
 すなわち贈収賄だ。
 中国企業は賄賂をビジネスの潤滑油のごとく活用する。

 バングラデシュでも、社会構造に贈収賄がビルトインされている。
 贈収賄をいとわないという意味で、中国企業とバングラデシュの企業は相性がいいと言ってよい。
 お互いにビジネススタイルが似ているためか、最近は中国と共同事業を進める大手企業も少なくない。

 ダッカに本社を置く有力コングロマリットのトップは、日本企業との仕事のやりにくさをこう漏らす。
 「日本企業はこの国の賄賂文化を知らない。
 賄賂なくしてビジネスが進まないことを、どうして理解しようとしないのだ?」。

 「郷に入れば郷に従え」と言いたいのだろう。

 しかし、安易に「郷に従う」ことは命取りになる。
 贈収賄に手を染めた結果、すべてを失った日本企業もある。

 ベトナムで高速道路の建設工事を業務受注するために、現地高官に約80万ドルを贈賄した開発コンサルタンティング企業、パシフィック・コンサルタンツ・インターナショナル(PCI、事件後にコンサルティング事業から撤退)がそれだ。
 同社は2009年に不正競争防止法違反で東京地裁より有罪判決が下された。
 この事件は、いまだ「贈賄の悲劇」として日本企業の間で語り草になっている。

■骨のあるビジネスマンはどこへ?

 アジア市場といっても、日本企業が食い込めるのは極めて限定された国、案件だというのが実情である。
 そして、それを担うことができるのもごく限られた一部の人材であると言えるだろう。

 かつての商社をよく知る、ある日本人は、「1980年代までは骨のあるビジネスマンがいたものだが」と語る。
 今や、海外に行きたがらない商社マンすら現れるようになったというのだ。
 政府が商社のお株を奪い、海外でのビジネス案件をまとめようという時代になった。

 「これからはアジア市場」と簡単に言うが、そこはルールもなければ透明さもない世界だ。
 日本企業の快進撃を期待したいが、すっかり大人しく優等生になってしまった今、現実は厳しいと言わざるをえない。



2015年06月15日(Mon)  Wedge編集部
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5060?page=1

存在感高まる人民元
中国が繰り出すAIIBの「次の一手」

 世界が驚いたAIIB設立だが、これで完結しそうにない。
 ブレトンウッズ体制の中核を担うIMFの元副専務理事が語る「中国版IMF」設立の可能性とは―。

 ブレトンウッズ体制は、誕生した1944年からマイナーチェンジを繰り返してきたが、ドラスティックな改革が必要な時期に差し掛かっている。
 私は2004年から10年まで、IMFに在籍したが、その6年の間に日中の地位が逆転した。
 「従来の体制が許される最後の時代」だった
と言えよう。
 それから
 「いよいよこの体制も限界にきているのでは」
という思いを抱くようになってきた。

 IMF改革が遅れている影響は大きい。
 10年に合意した新興国の議決権を拡大させる改革案がアメリカ議会で通らない。
 アメリカ国民にとって、直接の利益に繋がらないことが改革を遅らせている。

 新興国の成長により、世界経済の勢力図が変化しているが、既存の国際金融機関はそれに対応できていない。
 これが中国のみならず、新興国の不満となっている。
 結果として設立されたのがAIIBだ。
 IMFがこのまま機能不全に陥っていると、中国はAIIBのような開発援助機関だけでなく、アジア版IMFのような機関を設立することも考えられる。

 IMFには危機感があるだろうが、各国の思惑が交錯する巨大な組織であり、アメリカ議会の反対もあることから、改革は一筋縄ではいかない。

 日本がADBを設立したときは、アジアの有力国ではあったものの、飛び抜けた存在ではなかった。
 本部も日本ではなく、フィリピンのマニラに置かれている。
 しかし、今の中国は、総裁は当然中国人で、本部も当然北京に置く、という状況だ。

 人民元の国際通貨化は間違いなく進んでいく。
 何をもって基軸通貨かという問題はさておき、基軸通貨になり得る可能性はゼロではないと、AIIB設立のプロセスを見ていて可能性を感じている。
 人民元が中国との取引で使用される割合は高まってくるだろう。
 ただ、
★.人民元建ての預金をもつ、
★.人民元建ての債券を発行する、
ということになると、ドルに比べて魅力は落ちる、というのが現在の状況だ。

 基軸通貨になるには、金融市場の自由化、資本取引の自由化が課題となってくる。
 ドルへの信用はアメリカの経済力と安全保障上の地位があってのこと。
 中国がこうした地位に登りつめることができるか否かが課題でもある。

 今年はIMFが創設した国際準備資産であるSDR(特別引出権)の構成通貨見直しの年。
 SDRの構成通貨に選ばれれば、国際的な準備通貨として認知されたことになる。
 中国当局の発言ぶりをみると、非常に熱心だという印象をうける。
 現在はドル、ユーロ、ポンド、円が構成通貨だが、ここに人民元が加わるか否かについては、人民元が交換可能な通貨になるか、中国が資本取引の自由化にどう取り組んでいくかということにかかっている。

 AIIBでは、中国の出資割合に注目すべきだ。
 出資比率を決定するGDPの基準が、MER(実勢レート)になるのか、ppp(購買力平価)になるのかによっても相当変わってくる。
 域内国の出資割合を何割に設定するか、という点でも大きく出資比率は変動する。

■見えづらい日本の参加メリット

 4月に行われた日中首脳会談で、習近平国家主席が日本の参加を歓迎する旨の発言をしたと報じられている。
 日本の参加は、AIIBにとっては格付け上、プラスとなり、メリットを享受できる。
 これもどの程度出資するのかにより、メリットも変動するが、日本の参加がプラスに働くのは間違いない。
 また、日本はADB発足以来、中心的に関わってきたこともあり、国際金融機関の運営に長けた人材が豊富にいる。
 中国はこうした人材も求めているはずだ。

  日本が仮にAIIBに参加することになれば、日本の国力に見合った発言権を求めていくことになる。
 そうなると、出資額も相当なものになる。
 これには、国民が納得するだけの利益が十分にあることが必須だ。
 現時点ではそれが見えていないため、様々な要素を適切に判断した上で、最終的に決断すべき。
 焦ってバスに乗り込む必要はない。
 日本が主導するADBのプロジェクトでさえ、日本企業はコスト高ということもあって、あまり受注できていない。
 こうした状況を考慮すれば、日本のAIIB参加のメリットは見えづらい。

 イギリスのAIIB参加は、ロンドンの金融街・シティをヨーロッパにおける人民元取引の中心的な市場にしたいとの強い思いを感じる。
 昨年9月、イギリスは先進国で初めて人民元建ての国債を発行すると発表している。
 本腰を入れて人民元の取り込みを図っていることの表れだろう。

 また、イギリスは、かつてキャメロン首相がダライ・ラマ14世と面会したため、他のヨーロッパの国に比べて、中国との関係構築に出遅れているという思いをもっている。
 ドイツのメルケル首相などは、中国と非常に良好な関係を築いている。
 放っておけば、実需を通じてフランクフルトにシティの座を奪われるのでは、という危機感もあるのだろう。

 中国の経済力の魅力が、世界中で抗しがたいものになっている。
 中国の掲げる「一帯一路」構想は、ヨーロッパ市場と中国市場を近付けるものだ。
 ヨーロッパ各国にとっては、日本と異なりAIIB加盟は経済的なメリットがあると言える。
 いずれにせよ、存在感を増した中国の動きがAIIB設立だけにとどまる保証はどこにもない。

●加藤隆俊(Takatoshi Kato)国際金融情報センター理事長。1964年東京大学法学部卒業後、大蔵省入省。アジア開発銀行(ADB)理事、国際金融局長、財務官等を歴任。退官後、米プリンストン大学客員教授等を経て、2004年から10年まで国際通貨基金(IMF)副専務理事。10年9月から現職。
(聞き手・構成/Wedge編集部)



ダイヤモンドonline 2015年6月17日 田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
http://diamond.jp/articles/-/73361

膨張する「中国の夢」に日本はどう向き合うか

■「一つの世界」と「二つの世界」
中国国内にある路線対立

 東アジア地域で日本は中国と共存していかなければならない。
 覇権を求めていくような中国は困る。
 国内が混乱した中国も地域の安定を著しく損なうだろう。
 国際社会と協調していく中国が好ましい。

 しかし、昨今の中国の行動を見ると、多くの疑問符が付く。
 急速に台頭してきた今日、
 どのような対外関係を営んでいくのが良いのか、何が現実的なのか、中国自身が判っているとも思えない。

 習近平総書記が掲げるのは「中国の夢」という概念である。
 多分、「中国の夢」は世界のGDPの3割を占め、栄華を極めた19世紀以前の中国に戻りたいということなのだろう。
 アヘン戦争、日清戦争での敗北から始まった屈辱を晴らし、失った権益を取り返したいということなのだろうか。

 「中国の夢」は、2010年に日本をGDPで追い越し自信をつけた中国にとって、鄧小平の「力をためるまで低姿勢で」という教えに変わる概念として登場しているかのようである。
 ただ、中国の国内でも「中国の夢」をどのような方法で実現するのかについては路線の対立があるように見受けられる。

★.一方では、中国が高い経済成長を実現し、急速に台頭し得たのは、WTOに代表される国際貿易体制など西側先進国が作ったシステムに依拠したからであり、これを離れて中国の一層の発展は望めず、
 中国は引き続き国際社会の中で諸国と協調しつつ影響力を増していくべきという、いわゆる「一つの世界」観がある。

★.他方、米国を中心とする西側先進国の既得権益を壊すことは可能ではなく、従って
 中国独自の価値観に基づく世界を構築しようとする「二つの世界」論も頭をもたげている。

■米国との「新型大国関係」と
東アジアでの攻撃的な行動の意味

 中国がこのどちらの路線を追求するのかをまだ決めている訳ではないと思う。
 むしろ二つの路線を同時に走らせつつ、現実的な落としどころを見ているということなのだろう。
 そのようなアプローチの中で、まず習近平政権が目指したのは米国との「新型の大国関係」の構築である。

 もし米国が中国の「核心的利益」を尊重すれば、お互いウィン・ウィンの協力関係が構築できる、太平洋は広く、米国と中国で二分できる、という考え方である。
 これでは日本は困るし、米国も合意することはできないだろう。
 仮に台湾が中国の核心的利益とすれば、これに軍事的な統一を試みるのを黙認することを我々はできまい。
 従って米国は
 「協力できる分野を拡大し、利益の相反する分野について管理をしていこう」
というアプローチをとっている。

 中国は米国と安定的関係を目指しつつ、東シナ海や南シナ海において一方的で攻撃的な行動をとってきた。
 まず尖閣諸島についての攻撃的な行動は日本の強い反発、および米国による「尖閣は日米安保条約の対象である」との発言を招き、焦点を南シナ海に移した。

 同国は、ベトナムなど東南アジア諸国との間は、二千年続いた中国の圧倒的な優位の延長であり、
 大国と小国との関係
と見る。
 近年は、ベトナムやフィリピンの排他的経済水域内に入り込んでの石油掘削や広範な範囲の岩礁の埋め立て、恒久的建設物の設置など、一方的な行動をすさまじいスピードでとってきた。

 これはASEANが一枚岩でないことを見越しつつ、米国の反応をテストするという意味合いを持つものと見ることができる。
 米国が引けばここぞとばかりに中国は出る。

 「中国の夢」を実現していくためのもう一つの方策として、同国は米国の介入があまり想定されない「西」に向かった。
 「一帯一路」の構想、すなわち陸と海のシルクロードを整備しようという壮大なプロジェクトを打ち出した。

■西に向かう中国の「一体一路構想」と
一石三鳥を狙うAIIB

 本来であればロシアと利益が相反したはずの構想であったが、ロシアはウクライナ問題で孤立し、中国との連携に活路を見出さざるを得ず、情勢はこの構想を推進するにあたり中国にとってまことに好都合である。
 先月8日のプーチン大統領と習近平国家主席の首脳会談では、ロシアが主導する「ユーラシア経済連盟」と中国の「シルクロード経済ベルト」の連携で協力するという共同声明を発表した。

 そして「一帯一路」構想の資金手当てを担当するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、中国にとって一石三鳥の構想となった。

★.まず中国の経済的要請に応える構想という意味を持つ。
 同国にとって引き続き高い経済成長が国内の安定的統治の必須要件である。
 リーマンショック後の2008年10月に4兆元の内需拡大策を打って以降、中国には膨大な過剰設備と地方財政の疲弊がもたらされた。
 経済成長目標も従来の2桁成長から7%前後へと下方修正されている。
 AIIBはインフラの拡充と過剰施設及び有休労働力の活用という意味で、中国経済の成長の底上げ材料となる。

★.次に、中国の地域での影響力の拡大効果である。
 東シナ海・南シナ海での一方的攻撃的行動は近隣諸国に強い対中警戒心と不信感を植え付けた。
 インフラ投資は東アジア諸国の経済成長のために膨大な需要がある。
 インドのモディ首相やインドネシアのジョコウィ大統領にとってインフラの拡充は最優先政策である。
 中国のソフトな影響力の強化に繋がっていくのは間違いがなかろう。

★.そして英国の先導により欧州諸国が加わった。
 ここに来て中国は国際社会においてのリーダーとしての「正当性」を高めたいと思うに至っているのだろう。

 国際社会の構造変化で新興国の力が増してきた1990年代後半から、新興国にもっと発言権を与えなければいけない、G7・G8からG20に国際協調の場を移そう、世銀・IMF・アジア開発銀行等の改革を行い新興国の出資比率を上げ、新興国の発言権を強化しなければならない、などの声があり、それが試みられてきた。
 しかし多くについて西側諸国の既得権益の大きさや米国議会の反対により実現は途上である。

 そのような状況の中で、中国は、自らが主体となるAIIB構想について、アジアには膨大なインフラ需要があり、既存機関を損ねるものではないと主張する。
 そして欧州諸国の加入により多分、当初考えられていた構想とは多少異なる方向に動き出しているようである。
 当初は中国が牛耳る銀行の構想で始まったが、現在は国際的なスタンダードを意識し、かつこれまでの国際開発金融機関の官僚主義や高い管理コストを削減するという改革の方向性も打ち出している。

 中国の出資比率は当初想定された50%から30%程度に下げられ、調達について加盟国に限られない公開入札制、理事の常駐はせず管理コストを最小限にすることなどが、考えられているようである。
 確かに中国は最重要事項の決定に拒否権を持ち得るし、理事を本部に常駐させないのも中国の意向を通しやすくする工夫かもしれない。
 しかし建前は「正当性」を維持できる工夫がほどこされているようである。

■中国をこちらの世界に引き込む努力を
AIIB参加はその手段の一つ

 さて、このような「中国の夢」に日本はどう向き合っていくべきなのだろうか。
 日本は価値観の大きく異なる中国の世界に入っていくわけにはいかない。
 中国を孤立させることも同国をめぐる相互依存関係の大きさからすれば現実的ではあるまい。
 むしろ中国をこちらの世界に引き込む努力を続けなければならない。
 このために幾つかの施策は重要な意味を持つのだろう。

 中国は「力には力」と捉えがちであり、日本が日米安保条約の下、万全の安保体制を構築するのは正しい。
 その意味で日米防衛協力の新ガイドラインや集団的自衛権の限定的行使を容認する安保新法制は正しい方向である。米国が内向きとなり、一方的行動よりもパートナーとの協調を求めるとき、日本は日本の役割を増やさなければならない。

 その上で、日本は将来の対中関係のビジョンを語る時が来ているのではなかろうか。
 安全保障能力を上げることと、安全保障環境を良くする外交努力を表裏一体で進めなければならない。
 例えば、偶発的衝突を避け、この地域の軍事的透明性を上げるため地域信頼醸成枠組みを語る時ではないか。
 今こそ中国を巻き込む環境やエネルギー協力の未来図を示す時ではないか。
 そして今こそAIIBへの参加を語る時ではないだろうか。

■日中の戦略的将来ビジョンを示せ
70年談話は大きな機会

 AIIBへの参加については幾つかの点について十分な考慮を払う必要がある。

第一に、アジアで質の高いインフラ構築を実現していくのは日本政府の方針であろうし、これを実現するために日本もAIIBに入って中から影響力を行使していくべきである。
 欧州諸国の出資比率は域外の諸国に割り当てられる25%の枠内での話となり大きな発言力を担保するのは難しい。
 日本が入れば75%の枠の中で相当高い出資比率と発言力を担保できる。
 アジアの諸国は日本が参加し、一定の発言力を担保することで安心をし、歓迎をするであろう。頑なに突っ張る日本より柔軟で能動的な日本が求められている。

第二に、アジア開発銀行(ADB)とAIIBの協力関係を確立することである。
 ADBは質の高いプロジェクトへの融資を実行してきた訳で、その知見を役に立てるべきである。
 ただアジア開発銀行自身も融資枠の拡大や新興国の発言権の拡大など、改革を加速していかねばならない。

第三に、他方、日本は唐突に参加を打ち出すわけにはいかないだろう。
 何故この時期に参加表明をするのか理屈がいる。
 その意味でも日中関係の将来ビジョンを首脳が語るときに、その一部としてAIIBへの参加を打ち出すべきなのだろう。

 本年8月15日は終戦後70年であり、首相談話が想定されている。
 過去に対する真摯な総括(筆者は侵略・植民地支配・心よりのお詫びという村山談話のキーワードを外してはならないという立場である)と共に、未来へのビジョンを打ち出す好機となるだろうし、その際AIIBへの参加も語るべきである。
 このような首相談話は世界に歓迎されるだろうし、日本の地域および国際的な地位は上がる。

第四に、対米関係である。
 対米関係は先の首相訪米により極めて良好な関係にあると考えられる。
 米国は日本が戦略的将来ビジョンを示し、AIIBへの参加をその中に位置づけることができれば納得をするはずである。
 米国が参加できなくとも日本の参加が米国にとっても利益である世界をつくることこそが、同盟関係の役割分担なのだと思う。




中国の盛流と陰り

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