2015年6月30日火曜日

「医療観光/メディカルツーリズム」:「お客様は神様です」

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サーチナニュース  2015/06/30(火) 05:50
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0630&f=business_0630_001.shtml

日本で患者は「お客様」
・・・自国を嘆く中国人が病院に殺到=中国メディア

 中国の大手ポータルサイト「捜狐」は28日
 「なぜ、日本の病院は中国人でいっぱいなのか」
と題する文章を掲載した。

 いわゆる「医療観光/メディカルツーリズム」で日本を訪れる中国人が増加していることを受け、その理由を分析した。
 理由としてまず
 「中国に近く文化面も似ている」、
 「ビザ発給など、医療観光客を誘致する政策が実効されたこと」
などを挙げたが、さらに大きな理由としては
 日本における医療の充実
を指摘した。

 病院の待合室や病室、シャワールーム、手術室、リハビリ施設などの写真を多数掲載。
 いずれも開放的で明るい雰囲気だ。
 文章は「リラックスして医療を受けられる」と強調した。
 なお、使われた写真は日本国内の水準でも、施設が相当に整っている医療機関のものと考えてよい。

 文章はさらに、日本における医療サービスの質の高さを強調した。医療技術が世界一流であるだけでないと強調。日本には「お客様は神様です」という信念があり、患者も「お客様」とみなされるので、「病院は必ず、忠実にあなたの世話をする」と解説した。

 文章は最後の部分で、
 「日本の医療観光が中国人の熱烈な支持を集める根本的な理由」
として、
★.中国国内の病院の「技術やサービスの総合的な水準が、国民が求める水準に達していないこと」
と指摘。
 さらに
★.「治療費は高騰しているのに病気は治らない。
★.入院するのも(順番待ちなどで)難しい。
★.医者には『付け届け』が必要」
などと論じ、
 「やはり、われわれ自身に原因があったのだ」
と指摘した。

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◆解説◆
 日本政府・観光庁は2010年11月、「医療観光プロモーション推進連絡会」の設置を決定。
 それ以前から、「訪日外国人旅行者3000万人の実現」を目指す取り組みの一環として、「インバウンド医療観光に関する研究会」を開催するなどしていたが「医療観光プロモーション推進連絡会」の設置で、民間や地方など、外国人患者等の誘致に意欲的に取り組む各主体のプロモーション支援、情報共有、実情把握に取り組むことになった。

 日本政策投資銀行は2020年における日本の医療ツーリズムの潜在的市場規模を5507億円、経済波及効果を2823億円とする経済波及効果の試算を発表した。
 来日する医療ツーリスト数は42万5000人で、
 うち中国人は31万2000人
との見方を示した。



ZUU online 2015/8/6 17:20
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150806-00000024-zuuonline-nb

中国「爆買い」が今度は病院で?
 「医療ツーリズム」で病院が外国人でいっぱいになる日

 アベノミクス成長戦略でも投資の重要性が指摘されている医療分野。
 中でもその可能性について議論されてきた医療ツーリズムだが、日本ではなかなか広がりを見せない。
 賛否分かれる医療ツーリズムは日本でビジネスと成長するのだろうか。

■医療ツーリズムに対する誤解

 2008年ごろから日本でも注目を集めるようになった医療ツーリズム。
 当初、「Medical Tourism」が「医療観光」と訳されたこともあって、
 「健康診断で日本を訪れた外国人に、ついでに観光してもらってお金を落としてもらおう」
というとらえ方が主流だった。

 しかし本来の医療ツーリズムは、自国で適切な治療を受うけられない患者が健診や療を受けるために他国へ渡ることを意味する。
 たとえば、
★.アメリカなど自国の治療費が高額な国の患者や、
★.イギリスの様に診断後の治療までの待機時間が長すぎる国の患者、
★.中国や中東産油国、ロシアなど、十分な医療施設がない国の患者たち
が他国で治療を受けるというものだ。
 彼らの目的は治療を受けることであって観光ではない。

■アジアに多い医療ツーリズム先進国

 こうした需要に対し、高度で適切な価格の医療サービスを提供している医療ツーリズム先進国として挙げられるのが、
★.タイやインド、韓国
などだ。

 たとえばタイのバムルンラード国際病院やバンコク病院では、多数の国・地域からの患者を受け入れるため、言語や文化、宗教への対策がしっかりとなされている。
 患者のビザ申請などの支援サービスも充実している。
 またインドのアポロ病院やナーラーヤナ・フリーダヤーラ病院、アラヴィンド眼科病院では、独自の手術方式や経営手法により、アメリカと比べてもそん色のない、高い成功率の手術を1/10以下の価格で提供。海外の患者から高い評価と人気を集めている。
 ほかにも、韓国では主に美容形成のニーズが多く、ソウルや釜山などに年間数十万の美容整形希望者が訪れている。
 タイやインドの病院の多くは株式会社化しており、また患者の信用を得るために国際的医療評価であるJCI (Joint Commission International)認証を取得している。

 この様に医療ツーリズム先進国においては既に競争優位性が確立されている。

■海外の患者受け入れに消極的な日本

 日本の病院やクリニックには、海外の患者を積極的に受け入れようという姿勢は見られない。
 その理由は、日本には国民皆保険制度があることだ。
 慣習を変えてまで外国人の患者を呼び込もうというモチベーションが働かないのだ。

 しかし、日本でも医療ツーリズムに興味を示し、実際に実験的に医療ツーリズムを公表せずに行っているところもある。
 社会保障費の抑制が叫ばれる中、病院経営を成り立たせるために、競合施設に先駆けようと考えているからだ。

■日本の病院が持つ競争優位性と投資価値の有無

 医療ツーリズムが日本でビジネスとして成長するための課題や問題点も、既にいくつも浮き彫りになっている。
1つは日本語を流ちょうに話し、かつ医療の知識を持つ中国人スタッフの雇用。
2つ目は第患者が病院に来るまでの間や、病院を離れてから必要になるファシリテーター、コーディネーターと呼ばれる専門の通訳などスタッフの確保。
そして3つ目は、患者が来院直前になってキャンセルする、いわゆる“ドタキャン”の問題や、患者や家族が院内で起こすトラブルだ。

 このように問題や課題はあるものの、日本が医療ツーリズムで他国に勝てる要素はある。
 まず日本は世界に類を見ない医療機器大国である。
 CTやMRIと言った診断装置の保有台数は世界でも圧倒的にトップクラスであり、また重粒子線治療器機、陽子線治療器機、放射線治療器機をも保有する。
 これらは“体を切らずに治す”非侵襲治療を癌患者に提供できるので、海外の癌患者が日本を渡航先として選ぶ可能性は高いはずだ。

★.実は日本は、先進国では普通に使える医療機器が使えない、いわゆる「デバイス・ラグ」と言われる状況にある。
 このため、医師達は最先端の医療機器を使わずに患者を治そうとしてきた。
 その結果、治療技術は世界でもトップクラスといえるほどだ。
 特に心臓血管治療や脳神経血管内治療におけるカテーテル治療の技術は抜きん出ている。

 日本における医療ツーリズムの競争優位性はここにある。
 こうした、非侵襲(または低侵襲)の医療機器を開発している企業や、株式会社化して次の時代を見据えている病院に投資する価値は十分ある。

 日本の病院、クリニックには、外国からの患者を受け入れるだけの高い技術やホスピタリティがある。
 中国からの観光客の「爆買い」が話題の今、日本全国の観光地や小売店は中国からの買い物客でいっぱいだ。
 日本の病院が本腰を入れれば、今度は病院が外国人でいっぱいになるかもしれない。




中国の盛流と陰り



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