2015年6月21日日曜日

日中アジアインフラ支援競争(2):AIIBは1000億ドル、日本は1100億ドルという投資額 

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サーチナニュース 2015-06-24 07:33
http://news.searchina.net/id/1578836?page=1

「日本は動機が不純だ」、
「すごくよいこと。熱烈歓迎だ」
・・・日本がアジアのインフラ建設に大規模投資、
中国ネット民の反応は敵意だけでもなかった!

 安倍首相が5月21日、
 アジア開発銀行(ADB)と連携するなどで、
 今後5年間で約1100億ドル(約13兆2000億円)をアジアのインフラ建設に投資する
と表明した。
 日本が中国の推進するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に不参加の方針であることから、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)では日本非難のコメントが多く寄せられたが、「アジアのためにはよいこと」との意見もある。

 中国メディアは同話題を
 「東南アジア争奪戦」、
 「インドネシアでも中国と日本が競争」
と日中の対立を強調する論調で伝えた。

 中国政府が4月15日に発表したAIIB創設メンバー国は57カ国。
 参加見送りは日、米、カナダ、メキシコ、アルゼンチンなど。
 北朝鮮は参加を打診したが、中国に拒絶された。

 AIIBは当初、資本金500億ドル、最終的には1000億ドルとする。
 安倍首相が表明した1100億ドルの投資額は、AIIBの最終的な資本金を上回る。

 中国メディアが、日中両国の対立を強調する伝え方をしたので、微博には日本に敵意を示すコメントが多く集まった。
 「1000億ドルなんて屁だ。
 AIIBは将来、1兆ドル以上を集める」、
 「(日本の)動機が不純だ」、
 「日本人を殴って、顔を腫れあがらせてやる」
などだ。

 しかし、日本を批判しているとは言えないコメントも、少なくはない。
 「タイに行った人は知っていると思うけど、バンコクの道路、高速道路は日本人が作ったんだよね。
 タイは使用権があるだけで、所有権はなし。
 ただし、ある時期までだけどね。
 タイ人は親日なんだよ」
と、日本が他国で歓迎されていることを示す書き込みがある。

 さらに
 「ああ。
 同じ第二次大戦を経たのに、アジアの発展と富は欧州とは比べられないぐらい低い。
 多く建設してくれ」、
 「(日本は)金があるんだな」、
 「すごくよいことだと思うよ。
 熱烈歓迎だ。
 日本は続けてくれ」、
 「以前は武力侵略で大東亜共栄を望んだ。
 現在は科学技術で共栄だな」
などとの書き込みもある。

 日本非難の意見に対して
 「皆、日本に対してなんでこうも単純なんだ。
 奴らが鉄鉱石の産地を押さえてしまうぞ。
 わが中国の高速鉄道の核心の部品が、どれだけ日本から輸入されていると思うんだ」
との書き込みがある。

 日本に対する反感と警戒を表明しているが、
 「中国はすでに日本を圧倒」
などと安直に主張することを戒める意見だ。



サーチナニュース 2015-06-21 10:07
http://news.searchina.net/id/1578475?page=1

タイ高速鉄道を「政治力」で受注の新幹線 
中国は絶対に見くびってはならない=中国メディア


 中国メディア・鳳凰網は15日、タイ国内初となる高速鉄道のパートナーとして日本の新幹線が選ばれたことについて、タイ政府が経済的なメリットより政治的なバランスを重視したとする評論記事を掲載した。

 記事は、バンコクからチェンマイの約660キロメートルを結ぶタイ初の高速鉄道受注競争について
 「残念ながら、日本の高速鉄道である新幹線に軍配が上がった」
と紹介。
 世界における高速鉄道競争において、日本の新幹線が間違いなく中国高速鉄道にとってのおもなライバルになるとし、その安全に対する信頼が大きな強みになっていると評した。

 さらに、
 「日本政府が積極的に役割を演じていることも忘れてはならない」
とし、日本政府首脳が積極的に売り込みをかけるとともに、タイに対して利率1.5%以下と予測される低利子ローンの提供を示したことを紹介。
 「この判断はあまり信頼性が高くないかもしれないが、日本のローンが中国より好待遇だったことで、タイが最終的に新幹線に決めた、という見方さえある」
とした。

 記事は、
 「純粋に経済的な角度から考えれば、タイは中国高速鉄道を選ぶはずだった」
とし、規模の大きさと安全性、低価格、中国高速鉄道ネットワークとの接続の可能性といったポイントを挙げた。

 そのうえで、タイが日本に注文を出したことについて
 「政治的な考慮が経済的な考慮を上回った結果である」
と分析。
 高速鉄道を含めたインフラ整備を進めるインドにおいても、同国政府が日本と中国それぞれとの関係における「微妙な処理」を行う可能性があり、似たような状況が発生しうると指摘した。

 一方、
 「日本には日本の謀略があれば、中国にももちろん中国のやり方がある」
とし、膨大な規模の投資や市場キャパシティ、そして政治的影響力が中国高速鉄道の世界進出のうえで大きな助けになると解説。
 「高速鉄道の売り込みは、技術やサービスの競争であるとともに、政治や外交の角逐でもある。
 中国高速鉄道はより積極的に海外市場を開拓すべきだが、同時に日本の高速鉄道の競争力を絶対に見くびってはならない。
 おざなりにすれば、代価を支払うことになる」
と論じた。



レコードチャイナ 配信日時:2015年6月24日(水) 20時10分
http://www.recordchina.co.jp/a112165.html

日本が中国にらみアジアのインフラ投資を強化へ、
AIIBの資本金を上回る勢い―中国メディア

 2015年6月22日、中国メディア・財経によると、日本がアジアのインフラ整備への投資を強化している。
 日本政府はこのほど、タイの高速鉄道建設に新幹線技術を供与することで同国政府と合意した。
 アジア全体へのインフラ投資額は今後5年で1100億ドル(約13兆5000億円)を超えるとみられ、
 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の資本金(1000億ドル=約12兆3000億円)
を上回る勢いだ。

 太田昭宏国土交通相は5月、タイの高速鉄道へ日本の新幹線技術を供与することで同国政府と合意した。
 計画では首都バンコクから北部へ向かう縦断鉄道で、全長約670キロ。16年中ごろに着工し、19年の運用開始を目指している。
★.日本政府は海外インフラ投資を20年までに「30兆円」に引き上げると表明している。

 タイの高速鉄道以外にも、シンガポールとマレーシアの首都クアラルンプールを結ぶ高速鉄道建設計画もターゲットの一つとなっている。
 全長約350キロを1時間半で結ぶ予定だ。
 完成は22年の見通し。
 事業入札時期は未定だが、中国と日本企業が参加の意向を示している。

 日本と中国はインドネシアの高速鉄道建設をめぐっても争っている。
 首都ジャカルタとジャワ島西部の主要都市バンドンを結ぶ計画で、日本は安全性とサービスの質の高さを売りにしている。



サーチナニュース 2015-07-01 07:33
http://news.searchina.net/id/1579705?page=1

中国だけ「嫌だ」がまかり通る特権
・・・「日米が参加しないからだ」「策は弄していない」=中国AIIB関係者

 中国メディアの新京報によると、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立にかかわってきた中国政府・国家発展改革委員会対外研究所の張建平主任は、中国だけが同銀行の重要案件の決定で「拒否権」を持つことになった経緯を説明。
 日米が加入していたら状況は違っていたなどの考えを示した。

 AIIBは出資比率により案件決定の際の投票権が決まる。
 中国の投票権は現状で26.06%だ
 重要案件については75%以上の賛成で可決となるルールで、中国は事実上の「拒否権」を持つことになった。
 また、中国以外に「1国による拒否権」を持つ参加国はないことになる。

 新京報は、
 「中国は拒否権を持っているので、AIIBの決定を独占すると懸念している国がある」
と指摘。
 張主任は同懸念に対して
 「中国は拒否権を獲得するために策を弄したわけではない」
と説明。

 さらに参加国が増えれば、現状の参加国の投票権は「希釈される」と説明。
 「小国が加入しても影響は何もないが、日本や米国が加入すれば(GDPが大きいので)出資額が大きくなり、影響が出る」
と述べた。

 張主任は中国の
 「拒否権」について「乱発することはない。
 中国はAIIB設立という機会を大切にしている。
 中国はAIIBを意思決定が民主的な機構にしていく。
 協議による管理を進める」
と述べた。

 張主任は日米の不参加について過去にさかのぼって言及したわけではないが、中国の“拒否権獲得”は「策を弄したわけでない」と説明した上で、「日米が参加すれば」と論じたので、事実上は「日米が参加していれば状況は違ったものになった」との見方を示したことになる。

**********

◆解説◆
 AIIBの資本金は1000億ドル(約12兆2475億円)で、アジアの国からの出資金を75%、非アジアは25%とする。
 それぞれについて、出資金は参加国の国内総生産(GDP)に比例して定められる。
 出資比率が最も大きいのは中国で、現状で30.34%、インドが8.52%、ロシアが6.66%、ドイツが4.58%、韓国が3.77%だ。

 投票権については12%を「基本投票権」として参加国全体に等分する。
 残りは出資金にもとづいて比例配分する。中国の投票権は26.06%になった。


レコードチャイナ 配信日時:2015年7月1日(水) 19時5分
http://www.recordchina.co.jp/a112926.html

中国がAIIB最大の出資国である理由、
「一挙三得」の株式分配とは?―中国メディア

  2015年7月1日、中国・新京報によると、先月29日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加の意向を表明した創設メンバー国の代表が北京に集まり、AIIB設立協定の署名式に出席した。
 これにより、AIIBおよび同行の今後の運営をめぐり各メンバー国が共に遵守すべき「基本ルール」が成立、順調なスタートに向けた大切な一歩が踏み出された。
★.AIIBの法定資本金は1000億ドル(約12兆円)、
★.うち中国の出資額は297億8040万ドル(約3兆6千億円)と、総額の30.34%を占め、最大の出資国
となっている。

 AIIBの銀行株式は、アジア各国が優先的に割り当てられる。
 規定によると、
★.割り当て率はアジア各国が75%、
★.アジア以外の国家が25%。
 これをベースとし、メンバー国には国内総生産(GDP)の割合に応じて株式が分配される。

 かつて世界銀行とアジア開発銀行(ADB)のプロジェクトに参与した国家発展改革委員会(発改委)対外経済研究所の張建平(ジャン・ジエンピン)所長は、
 「GDP規模に基づき株式を分配するという方法では、為替レートによる計算と現金為替市場での価格・購買力平価の計算が採用される。
 この方法によれば、中国にそれだけの割り当てが行われることも、道理に適っている。
 他の国際金融機関も軒並み、このような方法で株式や投票権の割り当てを行っている」
とコメントした。

 「中国は(AIIBの)一大株主になることを貪欲に求めている」
と報じられたことについて張所長は、
 「株式所有権は、各国の経済発展レベルと直接関係している。
 協定通りに運営すれば、株式の分配に不公平が発生することはあり得ず、中国だけが株式を占有し、中国の出資額が多いことによって他のメンバー国からの不満が生じるような局面は、一切避けることができる。
 それでもなお、中国は、AIIBで最大の発言権を維持することができる。
 これはまさに『一挙三得』と言えよう」
との見方と示した。

(提供/人民網日本語版・翻訳/KM・編集/内山)



サーチナニュース 2015/07/02(木) 15:04
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2015&d=0702&f=business_0702_039.shtml

AIIBに参加して日本!
・・・ぶっちゃけ「経験不足だから」=中国メディア

 中国メディアの環球網は6月29日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)について
  「問題は中国に経験が不足していること」
とする記事を掲載した。
 だからこそ「日本に参加してほしいと表明しつづけている」
と論じた。

 記事はまず、米国に対する不信感を露骨に示した。
 世界銀行や国際通貨基金(IMF)は米国の利益と一体化していると主張。

 1997年のアジア通貨危機の際にIMFはマレーシア、インドネシア、韓国などに緊急支援を行ったが、極めて厳しい緊縮財政を強いたことで、支援を受けた国の経済が
 「さらに悪化したことは疑いない」と決めつけた。

 日本や米国がAIIB不参加の理由として、監督メカニズムや透明性の問題を挙げていることについて、
 「国際金融機関の監督メカニズムと透明度は規則や機構を1つ制定することでは保障できない」
として、AIIBでは理事会が重要な役割りを担うと主張した。

 さらに、
 「現在に至るまで、世界のすべての国際金融機構は先進国が発足させたものだ」
と指摘。
 AIIBは初めて新興国が提唱した国際金融機構であり、中国は援助を受けていた国であるからこそ、援助を受ける国の「本当の求め」を察知することができると主張。

 その上で、
 「問題は、中国はAIIBのような国際金融機構を運営する経験が不足しており、
 だからこそ、中国は日本の協力を必要としている。
 中国は日本に対して何度も、AIIB参加を希望している」
と論じた。

 日本の不参加については、経済的な理由ではなく、安倍政権がアジア諸国との関係構築で、中国に主導権を取られたくないと考えているからと主張。
 日中両国の主導権争いは
 「アジアの発展できない国に手厚い“漁夫の利”をもたらす」
との見方を示した。

 記事は最後の部分で
 「遺憾なのは第二次世界大戦が集結して70年もたつのに、中日両国は独仏のように、共に歩んで共に地域の経済的反映を構築できないことだ」
と主張した。

**********

◆解説◆
 環球網は中国共産党機関紙の人民日報系のニュースサイト。愛国的な強硬論を「売り物」にする。
 上記記事は言い回しなどで強気な面があるが、「中国には国際金融機関の運営経験が不足」と認めている点で、
 環球網としてややや珍しい論調だ。

 6月29日に北京市内で行われたAIIBの設立協定署名式では、創立メンバー57カ国のうち
 フィリピン、デンマーク、クウェート、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイ
の7カ国が署名を見送る「幸先の悪い異例のスタート」
となった。
 中国当局は相当に危機感を高めている可能性がある。



サーチナニュース 2015-07-06 10:15
http://news.searchina.net/id/1580173?page=1

日本政府によるメコン川流域への投資・・・AIIB対抗が狙い!=中国メディア

 中央人民広播電台(中国中央人民ラジオ局)は5日、日本国民の多くが「生活が苦しい」と訴えるなかで、日本政府がメコン川流域5カ国(タイ・ミャンマー・ベトナム・カンボジア・ラオス)に対して向こう3年間に7500億円の政府開発援助(ODA)を提供することを発表したと伝え、その意図は「中国をけん制することにある」との分析が出ていることを報じた。

 記事はまず、日本の厚生労働省が以前発表した調査報告において
  「62.4%の家庭が『今は暮らしが厳しい。
 政府による補償がないと回答した」
と紹介。
 「日本の経済はますます悪くなっているのか? 
 政府は本当にお金がないのか?」
と疑問を投げかけた。

 そのうえで、4日に東京で開かれた「日本・メコン地域諸国首脳会議」において、安倍晋三首相が
 「日々経済の力強い発展を実現しつつあるメコン川流域は、日本にとって発展の潜在力に満ちたパートナーである」
と強調したことを紹介。
 さらに、今後3年間で同地域に7500億円の政府開発援助を提供することを約束したと伝えた。

 また、首脳会議で採択された
 「日・メコン協力のための新東京戦略2015」
において、同地域の経済発展を実現するうえで人材育成や環境保護などの「ソフトウェア」面の措置が重要であるとともに、防災、気候変動対策、水資源管理の措置も必要であることが盛り込まれたとした。
 さらに、会議では安倍首相が安全保障関連法案に対する理解を各国首脳に求めたのに対し、5カ国の首脳が戦後70年における平和国家としての日本の発展を評価し、地域の安定と発展のために引き続き貢献することに期待を寄せたとの報道が出たことを紹介した。

 記事はさらに、日本企業がメコン川流域への投資を絶えず増やしており、日本政府が現地のインフラ建設を通じて日本企業を助け、日本経済をけん引させようと考えているとする分析が日本メディアから出たことを伝えた。
 そして、高品質なインフラ建設、技術移転や人材育成重視の援助を「日・メコン協力のための新東京戦略2015」に盛り込んだ背景には、中国による支援内容との差別化を図って日本の存在感を高めるとともに、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の協力を強化して中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対抗する狙いがあるとの見方も出ているとした。



レコードチャイナ 配信日時:2015年7月8日(水) 1時52分
http://www.recordchina.co.jp/a113343.html

メコン川流域4カ国、「反中」打ち出さず―中国紙

 2015年7月5日、シンガポール紙トゥデイによると、日本とメコン川流域の東南アジア5カ国は4日、共同声明を発表した。ベトナムを除く4カ国は中国と対立する意志を表明せず、声明は南シナ海での中国の人工島建設にも触れなかった。
 6日付で環球時報(電子版)が伝えた。

 声明は
 「南シナ海での新たな事態が問題を一層複雑化し、信用と信頼を削ぎ、地域の平和と安定、安全を脅かす可能性が出ている」
と指摘した。
 「新たな事態」は暗に中国による南沙諸島での埋め立て工事を指しているとみられる。

 一方、東南アジア諸国は日本、中国、米国など主要国と良好な関係を保ち、さらなる経済発展を遂げることを望んでいる。
 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立についても、カンボジア政府関係者は
 「メコン川流域の国々はインフラの充実を求めている。
 中国の助けにより、東南アジアの成長は日中双方の支持を得られるだろう」
と述べた。



東洋経済オンライン 2015/8/1 06:05 美根 慶樹
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150801-00078842-toyo-nb

プロから見ればAIIBは国際機関ではない

  6月29日、アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立協定の署名式が北京で行なわれた。
 設メンバーとして参加を表明した57カ国のうち、フィリピンなど7カ国は署名せず、銀行が運営を開始する年末までに対応を決めるそうだ。

 日本は米国とともに参加しなかった。
 厳密にいえば、参加しないということを決定したのではなく、今後の推移を見守るというのが政府の姿勢である。
 この構想が打ち出された当初、国内では乗り遅れるなという論調が強かったが、今はかなり沈静化したように見受けられる。
 しかし、参加しないことに自信を持てる人も少ない。
 要するに、日本としてはどうするのがよいのかよく分からないというのが大勢だが、私は、やはり日本として参加すべきでないと思う。

■AIIBを観察する側の問題点

 AIIBの問題点を説明する前に、AIIBを観察する側の問題点を一言述べておきたい。
 AIIBは「銀行」なので、政府でも、またメディアでも金融や経済の専門家に振る、つまり担当させる傾向があるが、それは適切でない。
 なぜならば、この銀行は、きわめて政治的であり、銀行としての信頼性、ガバナビリティなどを論じる以前の問題があり、それを明確にしておかないと正しい判断ができないからである。

 AIIBの最大の問題は中国だけがダントツに大きな権限を持っていることだ。
 出資比率は中国が30.34%であり、2位のインド(8%台)、3位のロシア(6%台)を大きく引き離している。
 各国の議決権は出資比率に基づいて算出され、中国が26%を確保している。
 同銀行において重要事項を決定するには75%の賛成が必要なので、中国がノーと言えば他の国がすべて賛成しても成立しない。
 つまり、中国だけが拒否権を持つということなのだ。

 AIIBの本部は北京に置かれる。
 国際機関であれば、本部の所在地は関係国がすべて参加する協議において決定される。
 しかし、AIIBの所在地は中国が影響力を行使しやすい諸国との間で決定済みであり(2014年10月24日、北京で署名された創設に関する覚書)、後から参加した国は「創設メンバー国」としての地位を与えられるが、本部を北京とすることについては、その決定を呑むか、それが嫌なら銀行の設立に参加しないという選択肢しかなかった。
 AIIB設立協定に署名した50の「創設メンバー国」のうち、本部決定の協議に参加できたのはその半数にも満たなかったということである。

 また、総裁も中国人となるだろう。
 中国の圧倒的な決定権から見て当然であり、中国ではすでに具体的な候補者名が挙がっている。

■AIIBは国際機関とは呼べない

 このようなAIIBは国際機関と呼べない。
 世界は平等な主権国家から成立している。
 各国が協力して国際機関を設立する場合、決定権は普遍性のあるルールにしたがって振り分けられ、本部や総裁は全参加国の協議で決定されなければならない。
 AIIBの実体は中国の国内銀行に近い。

 折しも、AIIB設立協定の署名直後の7月7日、
★.中国、ロシア、インド、ブラジルおよび南アフリカの5カ国が設立した「BRICS開発銀行」の第1回総会がモスクワで開かれ、発足した。

 両銀行共にインフラ建設などに資金を提供する開発銀行であるが、対象地域がAIIBはアジア、BRICSにはそのような限定はないという以上の違いがある。

 BRICS開発銀行は5カ国が均等に出資する。
 本部は上海に置かれているが、初代の総裁はインドのクンダプール・ワマン・カマス氏であり、最初の総会がモスクワで開かれたことを見ても5カ国のバランスに注意が払われている。

 実は、設立の準備過程では中国はやはり他の国より多く出資したいと要望し、具体的な出資額まで提示していた。
 しかし、他の国は中国だけの影響力が強くなるのを嫌い、結局5カ国平等の出資比率にした経緯がある。

 中国はこれでは不満だったのだろう。
 BRICSの轍を踏まないよう、AIIBでは中国の出資比率が自然にダントツになるよう初めから周到に計画を進めた。
 中国のGDPは世界の12.7%(2013年)であり、これでは中国だけが拒否権を持つことにならない。
 そこで、規模が小さく中国の主張を聞いてくれやすい20の国だけで設立の青写真を決定し(前記の本部を北京と決定した覚書署名式で)、「アジア諸国の出資が全体の70%以上」という枠組みを設定してしまった(一時期75%にしようとしたとも報道された)。こうすると自然に中国だけが拒否権を獲得することになる。

 中国は米国や日本に対してAIIBに参加するよう勧誘しているが、出資比率は変えないだろう。
 現在でも米国のGDPは世界の22.4%と中国の1.7倍あり、国内総生産にしたがって出資比率を決定しなおすと中国の圧倒的地位は消滅し、最大の発言権は米国に取られてしまうからである。

 個人的な推測だが、中国は今後BRICSにおける各国との付き合いはほどほどにしながらAIIBに力を集中していくのではないかと思われる。

 中国が圧倒的な決定権を持つ銀行を設立しようとしたのは、シルクロード一帯開発計画を進めたいからである。
 この計画は陸上と海上にまたがっており、陸上は中国から中央アジアへつながる「一帯」であり、海上は東南アジアからスリランカ、パキスタンなどの主要拠点を経て地中海まで伸びる「一路(ルートのこと)」である。
 ただし、この2つが別々に使われることはなく、常に「一帯一路」と呼ばれている。

■中国の大国化戦略の一環

 この構想は中国の大国化戦略の重要な一環である。
 その実現のためには、中国は各国と常識的な意味の協力を進めるだけではとても足りず、中国が強力なリーダーシップを発揮していかなければならなかった。

 中国は、地域の発展のために中国自身が旗を振り、主要なスポンサーとなり、事業の中心になるのは当然であるとみなしているようだ。
 2015年3月末のボアオ・アジアフォーラムで、習近平主席は、
 「中国と周辺の国家が運命共同体の意識を樹立することが重要である」
 「一帯一路(海上シルクロード)戦略はそのための重要なブースターとなる」
と述べたと報道された(4月13日付の『大公報』紙がシンガポールの『联合早報』を引用)。
 これは伝統的な中華思想をほうふつとさせる中国中心主義ではないか。

 最後に、中国の政治状況にも注意が必要である。
 AIIBや「一帯一路」の背景には、共産党の独裁体制を維持していかなければならない、そのためには高度な経済成長、また、それを支える大型プロジェクトが必要であるという中国特有の事情がある。
 短絡的に政治体制と結びつけるのは慎むべきだが、そのような問題がありうることを忘れてはならない。

 アジアの巨大な投資需要を満たすというのは立派なことであるが、AIIBの運営が中国の国家戦略によって強く影響されることは不可避であろう。
 日本としては、国家としてではなく、商業ベースで対応・協力していくのが適切と思われる。



サーチナニュース 2015-08-07 09:01
http://news.searchina.net/id/1584336?page=1

日本の「アジア戦略」
・・・中国よりも見劣りするが警戒が必要=中国メディア

 中国メディアの中国網は5日、中国国際関係学院の儲殷副教授による手記を掲載し、「対日戦勝記念日」が近づくにつれ、中国では「安倍政権の歴史認識」や「日本の軍事化」といった問題が注目を集めているとする一方、
★.「中国が日本の全方位からの挑戦に直面していることが見落とされがちだ」
と主張し、
★.日本は中国の経済・文化面における最大のライバルだ
と論じた。

 記事は、中国は政府や国有企業の主導のもとでアジアにおける影響力拡大を図っていることを指摘する一方、日本は東南アジアや中央アジアにおいて中国の競合相手となっていると指摘。
 日本のアジアにおける戦略のレベルは
★.「中国に比べて見劣りする」としながらも、現地の社会に溶け込み、現地の人びとの支持を得ている点や、現地での投資の効率の高さといった点は一定の強みを持つ
と論じた。

 さらに、アジア各国は政治や経済、文化、民族などがそれぞれ大きく異なるため、現地の状況を把握することが国外進出の成否を握ることになると指摘し、
★.「日本企業は国外進出において細部まで気を使い、粘り強く取り組んでいる」
と指摘。
 一方の
★.中国は政府や国有企業主導であるため、
 責任者は自分の任期にあたる3-5年という期間中に結果を出そうとして
 相手国の調査などが不足する傾向にある
と論じた。

 また記事は、
★.日本の企業は中国より少ないコストで、相手国において高い評価を獲得している
と主張。
 その例として、
★.「中国は巨額を投じて井戸を掘り、日本は井戸のできた地域で各家庭に丈夫な桶を配るやり方」
だと形容したうえで、
★.相手国の人びとは中国がどれだけ援助を行ったかを知らず、むしろ日本人のほうが良い評価を得ている
のが現状だと主張した。

 そのほか、
 中国はアジア各国を「中韓同様に日本の侵略の被害国だと認識している」
とする一方、
 実際は東南アジア諸国は日本によって侵略される前は
 「非独立国であり、西側諸国の植民地だった」
と指摘。
 日本が東南アジアに進出したことで東南アジア諸国は西側諸国から独立することができた
と指摘し、現地のエリート層を惑わし、取り込みつつ、経済や社会面での援助を提供することで、日本は東南アジア諸国における国家イメージを修復することに成功したと主張した。

 続けて記事は、日本と中国のアジアにおける力比べは「中国のぼっ興に伴い、激化している」とし、
★.中国の戦略のほうが日本よりも優れているとしつつも、中国は国家戦略として日本を軽視すべきでなく、日本の長所を認め、アジアにおける日本の動きに警戒すべきである
と主張した。





中国の盛流と陰り



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